黙りこくっているルーファウスを見下ろすカダージュの目には、勝ち誇った光が、これでジェノバを取り戻せるという確信が宿っていた。
当然だ。ルーファウスがこうして黙りこくっている間にも、エッジの市民は一人また一人と殺されていく。
一般人が虐殺されていく様を延々と見せつけられて、しかもそれが自分のせいとあっては、口を割らずにいる人間などいない。いくら時間を稼いだところで、時間の経過はカダージュたちに有利なのだ。
とでも思っているのだろうか。
彼に人質などという安っぽい脅しは通用しない。
一時は恐怖政治まで掲げていた男だ。自分のせいで罪もない人が苦しむ姿を見せつけられても、特になんとも思わない。
クラウドに話して聞かせた「世界に対する責任」も半分は建前だし、エッジへの支援事業はその建前の裏づけと、人々の記憶に神羅の名を残し続けるためのアピールでしかない。
エッジの市民が何人死のうと、ルーファウスの知ったことではないのだ。
「なあ、カダージュ」
かなり長い沈黙の末、ルーファウスがやっと口を開いた。
「ひとつ教えてくれ」
「…ひとつだけだよ?」
カダージュは、いつもの甘ったるい声で応じた。ルーファウスが話題を逸らそうとしているのをのを知りながら。しかし目算がすでに大きく外れていることを知らずに。
「おまえは…ジェノバ細胞を手に入れて元通りになるといっていたが」
内心ではそんなカダージュを嘲りながら、ルーファウスは淡々とした声で続ける。
「あれはどういう意味だ?」
見え透いた探りだ。だが、自分の優位を信じているせいか、カダージュはあっさり話に乗ってきた。
「もうわかってるはずだよ、社長。 彼が、帰ってくるのさ」
そう、ルーファウスもすでに気づいていた。カダージュ達の狙いにも、
「…セフィロス」
その後ろで糸を引いている、「彼」の存在にも。
最終更新:2007年12月13日 07:41