三節 不和の旋葎5


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実のところ、セシルたちに次なる手段のあては無い。ギルバートの見舞いには、歌を通して各地の伝説・伝承に通じた彼の知識を借りられないか、という思惑も含んでいた。
質問を受けたギルバートの指が、見えない琴糸をかき鳴らし、喉の奥で旋律を奏でる気配が生まれる。しかし、彼の唇から音が漏れることは無かった。
「……それらしい歌は聞いたことがある。
 磁力の洞窟の話は、昔からこの国で有名だそうだから」
期待に見事応えたギルバートは、彼の知る古い物語をセシルに教えた。
それは世界を巡り、莫大な財を成した男の冒険譚の一部。無実の罪によって魔物がひしめく洞窟に置き去りにされた男が、己の知恵と幸運で窮地を切り抜け、両手いっぱいの宝石と共に帰還するまでを綴った一節である。
殺した魔物の肉を餌に巨大な鳥をおびき出し、その両足に捕まって海を渡る下りは特に人気が高く、その部分だけ抜き出して歌われることも多い。
その鳥が、空飛ぶ黒いチョコボという現実味に乏しいものでさえなければ、セシルにとっても大いに参考となったところだ。
感謝を述べようとして、セシルは、ギルバートの不透明な視線に気がついた。
「……相変わらずなんだね、君は。
 羨ましいよ」
「どういうことだ?」
聞き返すセシルに向けた、ギルバートの表情は柔らかい。しかし彼の声は、眼差しと同様、どこか乾いている。
「言葉通りだよ。
 僕はアンナに何もしてあげられなかった。
 ローザのためなら、なんだって出来る君が羨ましい」
共に旅をしていた頃は、考えもつかなかった印象をセシルは受けた。
ギルバートのかすれた声は──ひどく耳障りで不愉快だ。
「君たちの事情は、神官様から教えていただいたよ。
 クリスタルを、ゴルベーザの手に渡すわけにはいかないんじゃなかったのかい?」
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