四節 Eternal Melody2


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鍛え抜かれたモンク僧の感覚が、音もなく忍び寄る敵の気配を捉える。
「くっ!」
身をひねりざま腕を上げ、ヤンは喉元をかばった。そこへ巨大な影が躍りかかり、赤い血が散る。
無意識のうちに、セシルの手が腰に伸びる。しかし、抜き放とうとした刃はそこにない。
背後から飛び掛った獣は、そのままセシルたちの前方に着地し、豹に似た全身をあらわした。小柄な馬ほどのもある身を低くかがめ、唸り声を上げている。
トパーズ色の地に斑点をちりばめた毛皮には、ヤンの爪による三本の掻き傷があった。あの一瞬で、急所をかばうと同時に反撃までしていたのだ。
「ワシにまかせい!」
出遅れたセシルに代わり、シドが木槌を振り上げた。もとは純粋な工具だが、その強度や重量を熟知したシドの手にかかれば、心強い武器にもなる。
雄叫びをあげてケット・シーに突進する技師を横目に、セシルはケアルの詠唱を開始した。
無理に攻撃に参加して仲間の足を引っ張るより、自らは防御に専念し、仲間の負傷に備えておいたほうがいい。
テラもまた何かの呪文を唱えかけたが、二人に任せておけると判断したのか、手は出さずに様子を見ている。
(剣が使えれば……)
攻撃に回せる人数が多いほど、反撃を受ける機会は減る。無傷のまま敵を倒せる確率が上がる。回復のために、魔力を費やすこともない。
しかしそれは出来ないのだ。洞窟に張り巡らされた磁力が、あらゆる金属を大地に縛り付ける。
剣だけでなく鎧も盾も使えない今、セシルに残っているのは、パラディンになると同時に備わった白魔法の力だけだ。
「こら、逃げるな!」
「よそう、無駄な殺生は避けたい」
戦いはすぐに終わった。不利を悟ったか、背を向けた獣にシドが罵声を浴びせる。二人とも特に怪我はないようだ。
「セシル殿、治療をお願いできますかな」
出番のなかったセシルに向けて、ヤンが左腕を差し出す。最初のケットシーの一撃は、かすり傷よりやや深いダメージを彼に与えていた。
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