四節 Eternal Melody3


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エリスが城に仕えて、もう二年になる。
主な仕事は場内の清掃と食材の仕入れ、最近は庭園で飼われている鳥の世話も言いつけられることがある。
今日任されたのは、南西のテラスの掃除だった。
飛んでくる木の葉や埃を一所に掃き集め、ある程度溜まったところで籠にすくい上げる。
何度か繰り返すうちに、汗が噴き出して来た。一休みして柵に寄りかかる。折りよく吹き付けた湖からの風が、エリスの労をねぎらった。
『……応えてくれ……』
その風の合間を縫って、声が聞こえることにしばらくしてエリスは気づいた。
『聞こえるかい……セシル……
 テラ……ヤン……
 返事をしてくれ……』
驚いてあたりを見渡し、南からの日を浴びて白く輝く壁の一角に目を留める。
閉め忘れたのか、外の空気を入れたいのか。いつもなら、磨き上げられた樫の扉が嵌っているはずの場所に、今日は薄い緞帳が風に揺らめいていた。
この先は一種の離れになっていて、建物自体は本棟の一部であるものの、このテラスを通らなければ中に入ることは出来ない。あまり使われることのない部屋だが、最近は一人の客が臥せっているらしい。
異国の王族だとか、いきなり押しかけてきた例のバロン人の仲間らしいとか、さまざまな噂が飛び交っているが、あいにくエリスは実物にお目にかかったことがなかった。
立ち入りを禁じられている、という訳ではない。だが用もないのに病人の部屋に押しかけるのは、非常識というものだ。
『セシル……テラ……
 お願いだ、返事を……』
弱々しい声は、いつから続いていたのだろうか。時々混じる咳き込む音に、どうにも嫌な感じがする。
そもそも、この場にいない相手へ呼びかけ続けるのはおかしい。もしかすると熱でも出して、うなされているのかもしれない。
なんとなく周囲を見渡して、誰もいないことを確かめると──思い切って、エリスは緞帳をめくり上げた。
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