四節 Eternal Melody4


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洞窟を下るにつれて、あたりの空気は急激に冷えていった。
闇の底からかすかに水音がする。次第に濃くなる、水棲のモンスター特有の生臭さ。
「上だ!」
警告と同時に闇が剥がれ落ち、天井から逆さ吊りにこちらを見下ろす、女性型モンスターの存在をあらわにする。
赤紫の髪、薄暮の色の翼、縊死体の紫に染まった肌。赤く輝く目と唇から除く牙が、彼女の持つ吸血の習性をセシルたちに教えた。
しなやかな指がセシルたちを示す。虚空から四匹の蝙蝠が湧き出し、主の命令に従って獲物めがけて飛び掛った。
「サンダラ!」
「どりゃぁっ!」
テラが杖を振りれかざし、魔法を放つ。数条の雷が敵を打ち据え、横ざまに振り抜かれたシドの木槌が、体勢を崩した獣を豪快に吹き飛ばした。
「はっ!」
同時にヤンが床を蹴り、目にも留まらぬ速さで足技を繰り出す。残る蝙蝠も塵となって四散し、伸び上がる爪先は、高みの見物を決め込んでいた女妖の眼前にまで迫った。
ばさり。淀んだ空気を翼で叩き、ヤンの攻撃を回避するドラキュラレディ。
その間にセシルは弓を引き、慎重に狙いを定めていた。ヤンが離れたタイミングを見計らい、不死なる淑女をめがけて矢を放つ。
外れた。
いち早く軌道を見切った魔物が嘲笑を浮かべる。冷たい肌に突き立つはずの矢は、翼の先をかろうじてかすめた。
次の瞬間、鏃に使われた火竜の牙の欠片が炎を発した。
光を忌むアンデッドは、光を生む火に弱い。金色の塊が翼から髪の先、そして胴体を次々に飲み込んでゆく。
悲鳴をあげる間もなくドラキュラレディは焼き尽くされ、ただ一掴みの灰がセシルたちの頭上に降り注いだ。
「お見事」
「……ありがとう」
ヤンの賞賛に含むところは感じられない。かえってばつの悪い思いで、セシルは弓を握った腕を下ろした。
剣が使えないのなら、とセシルは当座の武器に弓矢を選んだ。基本的な扱いは陸軍時代にひととおり学んでいる。
矢はいずれも何らかの魔力や祝福が込められていたし、弓も戦闘用に強化されたものだ。
だが当たらなければ意味がない。
(剣さえ使えれば……)
歯痒さが、セシルの中で育ちつつあった。
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