四節 Eternal Melody8

「オマエタチ ヨクココマデ コレタ!
 ダガ タドリツクコトハ デキテモ
 ツチノ クリスタルハ オマエタチノ テニハ モドラナイ」
片言でダークエルフは宣告し、いやに大きな右手を振りあげる。
「タチサレ!」
突然足元から吹き上がった炎が、セシルたちを飲み込んだ。
不意を突かれたが、魔法によって生み出された火は、長くは続かない。
「でぇぇぇぇい!」
炎を振り切ってシドが突撃する。体重の乗った一撃が、まさに振り下ろされようとした瞬間、ダークエルフの姿が歪んだ。
火が燃え移った木槌は標的を外れ、床に打ちつけられて砕け散った。
「おのれ、生意気な!」
お返しとばかりに、テラがファイラの呪文を放つ。だが鈎爪の伸びた手が振られると、賢者が喚んだ炎は一瞬で掻き消えてしまった。
ヤンは静かに気を高めている。
セシルは彼らの治療のために、ケアルラの詠唱を開始した。
それよりも先に、ダークエルフが次の手を打つ。
「オロカナ」
またしても業火が。そして冷気が、雷光が。身構える暇も与えず、次々と襲い掛かった。
セシルは何とか呪文の続きを唱えようとした。だが雷に打たれたせいなのか、体が痺れて口がうまく回らない。
「オモイシレ!」
竜巻が生まれ、部屋中を荒れ狂う。散々に翻弄されたセシルの体を、最後に透き通る床が受け止めた。
氷に等しい冷たさが、残る僅かな体力さえも吸い尽くす。
「勝ち目がない……退くぞ!!」
耳元でヤンが怒鳴る。朦朧とする意識の中で、セシルは勝ち誇るダークエルフの嘲笑を聞いた。
「オボエテオケ!
 オマエタチ ゴトキガ コノワタシニ カテルモノカ!」
目の前で、シドが空の酒樽のようにひっくり返っていた。テラはピクリとも動かない。

ダークエルフの魔力の前に、セシルたちは敗れ去った。

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最終更新:2007年12月14日 03:54
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