四節 Eternal Melody15


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海の底から見出され、どんなに深い眠りの淵にも、妙なる音色を響かせる。
その楽器はかつて、『夢の竪琴』と呼ばれていた。
「こうか……?
 違う。
 これなら……?」
幾度となく繰り返される古い呪歌のメロディーが、静寂をより引き立てる。
大神官たちが退出してから、これで何百回目になるのか。ギルバートはいまだ知られざる一節を求め、愛用の竪琴を爪繰っていた。
この国に伝わる、悪しき精霊を縛める歌。それを唯一の手がかりに、勝利をもたらす旋律を編み出す。
それがどれほど無謀な試みかは、ギルバート自身も承知していた。

彼が手にした魔法の品は、特殊な旋律を奏でることで、様々な効果をモンスターに及ぼすことができる。
だが定められた旋律はモンスターの種族によって異なり、場合によっては相手を力づけてしまう恐れもあった。
従って、未知の魔物を相手に竪琴の力を使うときは、慎重に相手の様子を伺いながら『効く』旋律を探る──あのダークエルフを前に、そんな余裕はない。
頼れるのは、今までに培った経験と知識。一介の吟遊詩人として身につけた技能だけだ。
(大丈夫、出来るはずだ……)
ギルバートの知らぬ間に、竪琴を覆っていた錆はきれいに磨き落とされ、傷みきった糸も換えられていた。
いったい誰が直してくれたのか。そんな疑問は、もはや脳裏をかすめもしない。
彼の体を気遣い、休ませようとした医師や看護師の手を払い……
──自分を信じるのよ!──
絶えず彼方から響く声、それさえもギルバートは拒絶した。
さもなくば見出せぬ。楽師の直感がそう囁くからだ。
ただ一枚の葉の形にこだわっているうちは、森の広さ深さを知ることは出来ない。
たとえその一枚が、大きく裂けていたとして──誰がそれを気に留めよう。
あの声は悲しみを連れてくる。歌との同化を妨げる。
純粋な、光そのものが結晶したような曲の真髄を掴み、聞き分けるためには、余計なものでしかない。
ギルバートは目蓋を伏せ、すべてを素朴な旋律に向けて投げ出した。
もの柔らかに移ろう音階。大地と調和を讃える言葉。
生命の歓びに満ちた歌。
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