四節 Eternal Melody26


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風に頬を撫でられ、ギルバートは闇の世界から帰還した。
「お目覚めになられましたか」
微笑んで語りかけてきたのは大神官だ。汗の浮いた彼の額を、手ずから拭ってくれていたようだ。
「僕は……いや、セシルたちは!?
 ダークエ……くっ、ごほっ」
気が急くあまり咳き込んだ青年の目を覗き込み、大神官は再び微笑んだ。
「ご心配は無用です。
 お立ちになれますか?」
不思議と、気分はあまり悪くない。ギルバートは大神官に手を取られ、寝かせられていた籐の長椅子から降りた。
そのままバルコニーの縁へと導かれる。
これまで、周囲の音に耳を傾ける余裕はなかった。だからはじめギルバートは、木の葉がざわめいているのかと思った。
大勢の人間が、思い思いに歌っている。
それは大神官が妹に許しを与えたときよりも、いっそう強く、また豊かなものになっていた。
「これは……いったい?」
「これがトロイアの、そしてこの大地の答えです。
 殿下のお心が民を揺り動かしました。
 そしてセシル殿が、クリスタルの力を解き放ちました。
 見事ダークエルフを討ち果たし、今こちらへと向かっています」
大神官の説明は、ほとんどギルバートの耳を素通りしていた。
町が歌っている。森が、大地が歌っている。
それが自らの成したことだと、ギルバートはようやく理解した。
彼は一枚の葉、一滴の水でしかなかったかもしれないが──
同時に風を受ける最初の葉、降り注ぐ雨の最初の一粒だった。
(アンナ……)
ギルバートの胸の中で、愛しい人の面影が、吐息が、鮮やかによみがえる。
抱きしめた肌の柔らかさも、暖かな鼓動も、すべて。
(なんとなく、わかった気がするよ……)
強く手すりを掴んだギルバートの元へ、優しく風が吹き寄せる。
歌は詩人と口付けを交わし、再び風に乗って、空高く溶けていった。
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