三節 山間57


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身構える間もなく、長老の言葉は続く。
「事件はいたって簡単なものであった。その日、テラは古代魔法の封印を解こうとして、多数の
魔導師を動員していた。だが、研究は失敗。魔法は暴走し、そこにいた多くのものを傷つける事
となった」
「それが原因だったのですか……」
「いや、実験の失敗はミシディアでは珍しくはなかった。それに古代魔法に関する事なら尚更
であった。犠牲者が出ることもあった。この時は幸いにもなかった、その為、住人間の諍いや
テラを始めとした、研究に立ち会った者に恨みを持つものは殆どいなかった」
淡々と語る、長老の話は終わりではなかった。むしろここからが本当に話したい事であったのだろう。
「だが、テラの失敗は多くの住民を落胆させる結果となった。そして日々の研究に勤しむものの自信すら喪失
させてしまった。普通の者であったならそんな事はありえないであろう。しかし、テラだから問題だったのだ。
テラなら出来る、そんな期待に皆すがっていたからだ」
優れた才能を持つ者は一人だけで多大な人間へ影響を与える。しかし、それが必ずしもプラスに
働くとはいえない。それを端的に表した例なのかもしれない。
「誰もテラを恨まなかった。しかし、テラは去っていった。多くの者を傷つけた罪悪感も勿論あったが
それ以上に、落胆する者達を見てはおれなかったのだ」
「…………」
「それは失望したという意味ではない。むしろ皆の期待に応えられなかった自分への戒めであった。
そして、これ以上、自分へ信頼を寄せる者を増やしては民全員への不幸を招く。そう判断したのだ」
テラの存在はミシディアに発展をもたらしたが、それが住人の自らの意思を持つことを阻害していた可能性
にテラ自身は気づいたのだろう。
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