四節 これから23


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前触れもなく風が湧き出す。セシルらに群がる近衛兵たちの後方、かたく絞った布のようにきつく渦を巻き、捩れながら伸び上がる。
近衛兵が2、3人、甲冑ごと持ちあげられ悲鳴と共に上空へ消えた。地上に残った者も、横殴りの風に姿勢を崩され、地面にはりつくはめになる。
例外はただひとり、階段の半ばに陣取る老賢者。かざした杖の先端に灯る光を見るまでもなく、彼の魔法がこの竜巻を生み出したことは疑いなかった。
「うひゃぁぁぁ……」
パロムの悲鳴を風が引き千切る。武装した大の男がこの様なのだから、子供の体重でこらえきれる訳がない。ヤンの道着にかじりついていなければ、止める間もなく空に吸い込まれていっただろう。
セシルは手を伸ばし、荒れ狂う風の牙先から小さな体をもぎとった。ポロムと2人、体の下に庇い入れ、セシル自身を重石にする。
「ヤン! 動けるか!?」
返答の代わりにモンク僧の腕が持ち上がり、分厚い筋肉をまとった体を仰向けの状態からひっくり返した。
テラの待つ階段を指差してヤンに頷く。砕けた岩石の破片が頻繁に降り注いでいるが、階段を挟む崖そのものはなおも強固にそびえていた。
柵の内側へ、崖の根元へ、腹這いのままにじり寄る。風が届かない場所までたどり着き、降りてきたテラに双子を託した。
続いて、階段の手前で動かないヤンの体を引っ張り上げる。流れ出た血が風で冷やされ、ぞっとするほど冷たかったが、息はあった。
すかさず蘇生魔法を準備するテラ。拙い輪唱のように、そっくり同じ呪文を紡ぐポロムの声を耳にして、老人特有の長く伸びた眉が寄った。
レイズの呪文は人事不省に陥った者の意識を取り戻させる。ひとりの人間に重ねてかけても意味がない。
セシルもポロムのミスを悟り、代わって傷を治すためにケアルの呪文を唱え始めた。本職の魔道士には遠く及ばないものの、これもまた、パラディンに転身して手にいれた力のひとつだ。
呪文が完成する間際になって、ポロムが判断を誤ったことに気付き、ケアルラの呪文に切り替える。
パロムひとりが、なす術なく血で汚れたヤンの手に取りすがっていた。
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