一節 刻む足跡2

通路の終着点にある粗末な扉を開けた先には、小さな扉からは想像出来ない程の広い空間が存在した。
それも、ただ広いだけでなく、天井までの距離がもの凄く高いのだ。
「親方!」
入って、すぐにでも若い男が此方へと駆け出してきた。
「おおう! 待たせたな。準備は?」
「万全です! 後は飛び立つだけです」
「そうか、ご苦労だった。引き続き頼むぞ!」
シドがそう言うと、若者は威勢よく返事を返し去っていった。
「どういう事……だ?」
「ああ……牢獄を出た後な、直ぐにでも発信できるように準備をさせとったのだよ。
さすがに結構前に隠しとったし、整備をしなければ飛び立てんのだよ」
「そうか……」
牢獄で言った、準備とやらにはこの作業も含まれていったのだろう。
「さて! 着いてこい! いよいよ発信の時だ!」

広間の中心辺りに、一際目立つ存在として置かれた船があった。
「これがエンタープライズだ!」
既にブリッジへの吊り橋も架けられており、乗り込み可能な状態だ。
「これが……凄い……」
セシルが感嘆の声をあげる。
「おい……一体どの辺りが凄いのだ?」
セシルとは対称的にテラが疑問を馳せる。見れば、ヤンも同じような心境のようだ。
「凄いって、そりゃ、もう全てに於いて旧来の飛空挺とは違う!」
「そうなのか……」
だが、テラには力説するセシルの言葉にやや、難解めいたもの感じたのか、シドに話を振る。
「まあ、初見の人間には判らぬと思うが、現存技術の髄を結集した事は確かじゃ……」
セシルはかつて飛空挺団の隊長を務めていた。だから彼はこの様な話には随分と詳しい。
「まあ、とにかく。発信するぞ!」
シドのそのかけ声に呼応するように、甲板を初めとしたらゆる場所で、シドの弟子の技師達が忙しなく動き出した。

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最終更新:2007年12月17日 04:04
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