一節 刻む足跡14

(君も苦しんでいたのか? カイン)
鬱蒼とした心の闇を払い、人生への光明を開いてくれたのはカインだ。たとえお互いに争う事になった
今でもその過去だけは変わらない。
「それ以来、竜騎士団は分裂の兆しを見せました……後継者が見つからなかったのです」
竜騎士団を率いるには、パートナーである竜に認められる必要がある。
それはセシルも知っていた。
「その時、見事団長の竜をてなづけたのがカインさんです。それと同時に父の死を知り、それも克服した。
私達は幼いあの人の実力を認め、全員一致で団長へと推したのです……」
急に副長が震え上がった。顔を俯かせているのは泣いているからだろうか。
「私達は永遠の結束に結ばれたと思っていました。幾度の困難もありましたがカインさんのお陰で
乗り越えてきました。ですが、今はカインさんが何故ゴルベーザに味方をするのか分からない!」
副長は顔をあげた。必死に悲しみを抑えようと勤めているが、既に無意味である。
「だけどっ! あなたは……少なくとも私達以上にはカインさんを! あの人の“理由”を
知っているのでしょう……!」
「…………」
セシルは無言であったがしっかりと頷いた。この剣幕では嘘など到底通用しない。
ましてや、嘘などつきたくもなかった。
「やはり……では、改めて御願いします……」
「わかった……」
もはや、願いの確認などは必要なかった。
「じゃあ……」
身を翻そうとするセシル。
「私はもう少しだけここにいます……」
「…………」
「それと、カインさんの件に関しては私だけの胸に締まっておきます……」
「そうしてくれると、助かるよ」
例えどのような理由があろうとカインがゴルベーザへと味方しているのは
間違いない。それはある意味、バロンへ反乱したとみなすことも出来る。
それを知れば、カインを裏切り者だという者が必ず出てくる。
セシルはそれを避けたかった。少なくとも、カインにもう一度会って話をするまでは。

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最終更新:2007年12月17日 04:08
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