「まるで不必要に波風を立てようとしない。どんな相手でも関係をこじらせず、みんなと
仲良くしていたい。そんな風にさえ感じる。欲張りでずるいわよ……」
今まで上手くいっていたのは相手が自分を気にかけていてくれていたからだというのか。
「ごめ……」
何かを口にしようとして、出た言葉がそれであった。
「また! すぐに直すのは無理でしょうけど……」
そう言ってため息を付く。
「努力するよ……」
「実を言うとね、私がその癖を直してほしかったのは……あなたが、この先にどのような事に出くわすか
分からない。でもね、時には何か自分の大切なものの為には何か、もう一つの大切なものを失わなければ
ならないかもしれないてこと……それを分かってほしかったの」
まるで何でも見通すかのような口調。過去の彼女がセシルにとってのそうであったように。
やはり自分は望んで此処にきたのだな。
「何を言ってるのか自分でも分からなくなってきたわ。ごめんね……」
そう言った後、あなたの癖がうつったようねと苦笑してみせる。
「それにしても、今ではあなたの方が背……高くなっちゃたわね」
立ち上がり、セシルの前に立ってみせる。
彼女は女性にしては長身の方であった。しかし、今ではセシルが見下ろすほどである。
「うん……そうだね」
思えば幼い頃。彼女はセシルよりも高かった。
それが今は自分が見下ろす事になろうとは。
思えばセシルには共に悩んだりする友人やいざとなったら助けてくれる友人や仲間はいるが、
自分を叱り、欠点を指摘してくれる存在は数少なかった。
その為、レッシィという女性はセシルにとっては貴重といえる知り合いであった。
「さてと……私は朝食の用意をしなきゃね。今日は大人数になりそうだからね」
意気込み、部屋を出て行く。キッチンへと向かったのだろう。
そしてセシルも外の風へと辺りに行こうと部屋を出る。
外はいつの間にか朝日が昇っていた。
最終更新:2007年12月23日 03:33