FF6-リターナ本部4

 ティナが目を開けると、そこはベッドの上だった。
視線を巡らせると、傍らにはロックがスツールに足を投げ出し、
両手を頭の後ろで組んだ姿勢で天井をぼんやりと眺めている。
 その横顔を見つめながら、ティナはバナンの言葉を心の中で反芻していた。
自分が、彼らの希望になる……。
希望という言葉はあまりにも漠然としすぎていて、
考えてみても、霧のようにもやもやと捉えどころが無い。
 今はただ、あと一歩踏み出す為の勇気が欲しい、ティナは考えていた。

「ロックは…どうしてリターナーに入ったの?」
 いきなり声をかけられて少し驚いたようだったが、
ロックはティナに向き直った。 自分の右手をティナの額に起き、
次に自分の額に手をやる。そしてほっと小さく息を吐いた。
「熱は無いみたいだな。頭痛はもう大丈夫なのか?」
「うん。少し眠ったせいで気分は良いみたい」
 ティナが上半身を起こす。ロックは右手で軽く頭をかいた。
「で、なんだっけ。俺がリターナーに入った理由?」
 ティナが頷くと、ロックは自分の膝に視線を落とし、
両の拳をぐっと握り、やっと口を開いた。

「俺は大事な人を帝国に奪われた。
俺が帝国を憎むようになったのはそれからだ。
帝国がこのままのさばれば、俺のような人間が増える一方だ。だからさ」
「そう…大事な人の為なのね」
 一瞬、ティナは遠くを見るような目になった。
「でも、私にはそんな人はいないわ…」
 ロックは慌てた様子でティナの手を握った。
「そんな事はない。逆に君を大事に思ってくれる人もいるかもしれない。
その人のためにも…」
 慰めとも本気ともつかないロックの言葉に、
ティナは首を傾げながら立ち上がった。

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最終更新:2008年02月01日 09:40
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