それは、よく晴れた休日の朝のこと。「村雨」と書かれた表札の文字も見事な、古式ゆかしい門を前に、黒衣の少女がそっと呼び鈴を鳴らす――
【夜羽】「……」片手に小さな包みを抱きしめて立っている。自分で押した呼び鈴への返答を待つ間も、どこかそわそわと落ち着かない様子で
【虎徹】「はーい、いらっしゃいですよぅ」ぱたぱたっと小さな足音を立てて小走りで玄関までお出迎えです。「虎徹の部屋はこっちですよぅ」おうちなので普段着のトレーナーに膝丈のスカートというやぼったい格好なのです。
【夜羽】「……!」一瞬、緊張に声を詰まらせる。とはいえ、温かな出迎えがあったことにほっとした。「……お邪魔、します」ぺこりと頭を下げると、綺麗に靴を揃えてから案内に従い
【虎徹】「いまお茶を淹れますね、待っててくださいよぅ」畳敷きの6畳が虎徹のお部屋なのです。夜羽ちゃんに座布団をだして、ちゃぶ台にお茶菓子を並べてお茶を淹れに台所へ行くのですよう。
【夜羽】「……あ、あの、お構いなく……!」そう声をかけた時にはもう、大切な少女の姿は廊下の向こう。ああー……と思ったものの、心の準備ができるのは幸運かもしれない。包みの中から目的の物を出して膝の上に置くと、虎徹が戻ってくるまでの間、胸に手を当ててすーはーと深呼吸
【虎徹】夜羽ちゃんがそろそろ来る頃だと思ってお湯を冷ましていたところなのでお茶はすぐに準備できるのですよぅ。急須と湯飲みをお盆に乗せて、お湯も魔法瓶に入れて一緒にもって行くのです。ちなみに虎徹はベッドでなくお布団で寝ているのでお部屋は片付いているのです。
【夜羽】「……」では、そんな虎徹さんが部屋に戻ってくると、綺麗な正座のまま胸に手を当てて謎の深呼吸を繰り返している赤毛の友達が
【虎徹】「夜羽ちゃん、足崩して座ってもいいんですよう?」どうしたんでしょう、緊張しちゃってるのかなぁ。自分のおうちみたいにくつろいでくれていいのに。
【虎徹】それから、こぽこぽと交互に湯飲みにお茶を注いでお出しするのです。「お茶ですよぅ」
【夜羽】「……ん」こくり、と頷いた。緊張しているのは遠慮ではなく、大事な話がしたかったからなのだけれど。ただでさえ話し慣れていない口は、乾いてしまって言葉が出てこない。とりあえず、出してもらったお茶を一口飲んで喉を潤し「ありがとう……お茶、美味しい」少し落ち着いたのか、口元をわずかに緩めて
【虎徹】「えへへー、お粗末さまですよぅ」夜羽ちゃんにおいしいって言ってもらえて嬉しいのです。隣に足を崩して座って自分もお茶を飲むのです。「かりんとう、どうぞですよぅ」お菓子もおすすめするのです。
【夜羽】「……いただき、ます」かりんとうを一つ取ると、両手で持ってかりかりかり。こうして隣に座って、一緒にお茶を飲める幸せ――それを意識すると、自ずと本題を切り出す勇気が出てきた。こくんとかりんとうを飲み込み、お茶をもう一口飲んで唇を潤すと。「あ、あの……」隣の虎徹の顔を、じっと見つめ
【虎徹】「……?」なんでしょう、夜羽ちゃんがこっちをじっと見てますよぅ。きょとんとして見つめ返すと、距離は近くて自然ととても良い雰囲気なのです。
【夜羽】「あの、今日は……実は、これ」膝の上に置いていたものを、そっと虎徹の膝の上に移した。黒いベルベットを張った小さな箱、女の子ならそれがアクセサリーの箱だとすぐに連想できるかもしれない。それも、ティーン向けの店で気軽に買えるようなものではなく――もっと、きちんとした部類の。
【虎徹】「なんですか、この箱……?なんだか高級そうですよぅ」手にとって眺めると、開けてもいいですか?と夜羽ちゃんに問いかけて。
【夜羽】「……ん」深く頷く。箱を開ける虎徹の挙動を、真剣な面持ちでじっと見つめ
【虎徹】ぱかりと箱を開けるとそこにはキラリと光る小さな指輪。「こ、これ……夜羽ちゃん?」刀鍛冶の手伝いをしているから物の良し悪しは少しわかるけど、これ…本物のプラチナ……たぶんすごい高いですよぅ?
【夜羽】「……ずっと、一緒にいたい、から」包みの中から取り出したのは、もう一つ同じ箱。開けてみせれば、そこにもやはり同じデザインの指輪。退魔士の戦い、あるいは家業の邪魔にならないよう気遣って選んだ、流れるようなデザインのシンプルなもので「あなたに……もらって、ほしい」
【虎徹】「ふえ?ふえ?い、いいんですか?これ、すごく高いですよぅ?」たぶん虎徹のお給料何か月分…もしかしたら何年分もしますよぅ?
【夜羽】「値段のことは……いい」買いに行った時、給料の三ヶ月分が定番だと店員が言ったから、それに倣った。でも、本当は値打ちなんてどうだっていい。「大切なのは……ずっと一緒にいたい、気持ち。だから……そっちを、もらってほしい」だめ?と、期待と不安の混じった表情で小首を傾げて
【虎徹】「ずっと、一緒に……、うん。わたしも夜羽ちゃんと、一緒にいたいですよぅ」駄目なんて言うわけがありません。無口な夜羽ちゃんがはっきりと言葉に出して意思を表してくれたんです、虎徹も……淡いキスで気持ちを表現します。
【夜羽】「……ん、」寄せられた唇を、ちゅっと軽く吸って。「ありがとう……嬉しい」一度離して感謝を伝え、甘いはにかみの表情を浮かべながら、そっと虎徹の左手をとって指輪を填めようと
【虎徹】「あ……」左手の、薬指。その意味を理解して、頬を赤く染めます。「夜羽ちゃん……わたし、嬉しいですよぅ」あまりの嬉しさに瞳から涙を溢れさせながら、夜羽ちゃんの胸に飛び込んでしまうのです。
【夜羽】「……よかっ、た」胸に飛び込んできた虎徹を、ぎゅうっと強く強く抱き返して。「約束する……ずっと一緒、何があっても、ずっと、一緒」安心させるように、あるいは自分が安心を求めるように。華奢な背中を、何度も何度も優しく撫でて
【虎徹】「ふええ、えへへ……嬉しいよぅ」夜羽ちゃんの胸元に包まれて、背中を優しく撫でてもらって。もう幸せすぎて昇天してしまいそうなのです。お胸がとてもやわっこくて素敵なのです。お腰も細いし……思わず両手でまさぐってしまうのです。やわやわ。
【夜羽】「……ん、っ」積極的に触られると、いつもと違う雰囲気に息を詰める。でも、大事な虎徹のすることなのだから、嫌なわけがない。こちらはこちらで、前髪越しに額に口付けたり、綺麗で真っ直ぐな髪を梳いたりと親愛のスキンシップを
【虎徹】「はふぅ……夜羽ちゃんと……結婚……」優しい夜羽ちゃんの愛撫のぽわぽわした夢心地のなかで、結婚後の妄想なんかが広がります。玄関でお出迎えして、ご飯になさいます?お風呂になさいます?それとも…わ、た、し?なんちゃってなんちゃって。きゃーきゃー!思わず夜羽ちゃんのおへそをくりくりいじったりなんかしちゃうのです。
【夜羽】「ん……」触られ慣れていない窪みをくすぐられると、ふるっと下肢が震えた。つい最近生えたばかりで、まだ自制に慣れていないモノが、ワンピースの下で疼き始めるが――今はまだ昼日中。それはさすがに、と考えなおし、下心を耳元へのキスで誤魔化し
【虎徹】「んゅっ……」耳元くすぐったいですよぅ、ふるふるっと背中をふるわせてからお腹をくるくるっと指先でくすぐって抗議するのです。
【夜羽】「……」くすぐられると、さらにひくんと震える自身。こんなところが下半身に直結しているとは、自分でも知らなかった。覚えておこう。……それはともかく、悩ましげに口元を歪めると、悪戯な指先をそっと手に取った。姫君に愛の誓いを立てる騎士のように、恭しく唇を寄せて
【虎徹】「……」手の甲に口付けられる様子をぽーっと見送って。直後ポンっと音を立てて赤面が爆発するのです。な、な、な、なんだかお姫様みたいでとても恥ずかしいですよぅ!
【夜羽】「……可愛い、虎徹」取ったままの手に、大切そうに頬を寄せ。「……大好き。これからも、ずっと」ふふ、と温かな笑みを零し
【虎徹】「はう……」まじめな顔でそういうふうに言われちゃうとますます恥ずかしくなってきちゃいます。でも……わたしも夜羽ちゃんが大好きなんです。指先でくいっとあごを引き上げて……はじめての情熱的なディープキスをプレゼント……。目をつぶって夜羽ちゃんのお口の感触を夢中で味わうのでした。
【夜羽】「……ん、ふ……」愛しい虎徹の身体に両腕を回してしっかりと支えながら、深いキスに一生懸命応えて。柔らかい唇も、絡め合う舌も、ずっとずっと離さない――そう、強い想いを込めて。ここは教会のチャペルでもないし、白いドレスもまだないけれど。終生変わらぬ愛を誓う心は、間違いなく本物で。それを確かめ合うように、二人は長い長いキスを交わし合っていたのだった――。
【虎徹】「夜羽ちゃん……大好き……」(これが、愛なのかなぁ)