小説2_魔王の世界


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央国歴501年 春の期 36日目

城の地下から発掘された予言の書により、世界を滅亡に導く魔王の存在が明らかになった。
そして、王の命により、多くの戦士達が魔王討伐の旅に出た。しかし、魔王討伐の知らせはもたらされなかった。
しかし、町の中はまだ平和な雰囲気が続いており、人々は想像もしていなかった、魔王が自分達の生活の場に現れるとは。

城下町の商店街 朝

「親方ぁー、もう朝ですよー。早く起きないと、お客さんが来ちゃいますよー。」
キンキンの子供の声が、家の中に響く。
「あー、わーってる。もうすこし寝させろー。」
眠たそうな親方の返事が聞こえる。
央国の町の商店街は、北の山脈と王の住む巨搭に日を遮られ、日の出が遅い。それに合わせて、どの家も起きだすのは遅い。
このパン屋に来た見習い人は、そんな事情とは関係なく、日が昇るずっと前から起きて、その日の支度をしている。一刻ほどかけて日課の柔軟体操をするが、それでも日はまだ登らないし、親方も起きてこない。その後に、何かに取り付かれたようにてきぱきと材料を並べ始め、慎重に粉を量り、こね始める。
小柄な見習い人は、大きな調理台で作業をするのが少々難しいらしく、恨めしそうな顔をする。
見習い人は、地球の日本国で言えば小学生程度の年であった。とても幼いように思えるかもしれないが、見習い人というのは大体これくらいの年で親元を離れ、手に職をつけるために働くものである。
このパン屋は、そうやって玄関をまたいだ新人の見習い一人と、親方一人によって営まれている。
「こらっ!生地を棒で練るな! (スパァンッ 」
「ごめんなさい親方!」
壁まで吹っ飛ぶような親方の張り手を受けて、見習い人は微動だにせず、即座に謝った。
「おっとすまん。また本気で殴っちまった。つい癖でな。」
「…ふつうの人だったら、死んでるんじゃ?」
「いやー、はっはっは。あー、本当に助かったよ。俺の店から逃げ出さないヤツが手に入って。」
「アイテム扱い…?」

同日 昼食時

この時刻、町の街路はとても賑わっている。あちこちの商店からはとてもいい香りがして、昼間から酔っ払い達の談笑が聞こえてくる。ピエロの仮装の男が、街角でバイオリンを弾き、硬貨を集めていた。
そんな町の中、紫色の毛むくじゃら大牛が歩いてきて、いなないた。
「おお、ちょっとすごいなあれは、どこの見世物の着ぐるみだ?1硬貨投げてやろう。」
その牛の少し後ろに、みすぼらしい格好をした少年が居た。
その少年は、実は魔王だった。

少年は言った。
「僕はー、この国の王様になりにきましたー!」
それを聞いた人々は、それを笑顔で迎えた。
「どうすれば王様になれますかー?」
人々はさらに、暖かく笑った。
「誰か、今の王様を呼んできてくださーい。」
ようやく、野次が飛んだ。
「みせるものが無いなら、とっとと田舎に帰れー!」
そこで、ようやく少年は考え始めた。

少年は、国一つを一人で滅ぼせるほどの力を持った魔王で、一国の支配者になるという夢のために、央国の首都にやってきた。しかし、一体どうすれば王になることができるのか、わからなかった。今の王様を殺してしまうことはとても簡単だが、それをしたところで、王子あたりが次の王になるだけではないのか、と。とりあえず首都に来れば、なるようになると期待していたのだが、アテが外れてしまったのだ。
少年は、考えが甘かったことに、とても後悔する気持ちになりながら、悩んだ。そして、自分勝手な結論に至った。

「僕はこれから、王様の椅子に座りに行きます! そうしたら僕が王様です!」
もちろん野次が飛んだ。
「そりゃ無理だろー」
「無理じゃありません! ガンダーロが道を開けるから! よし、行けガンダーロ!」
少年が、前に居た奇妙な牛に呼びかけると、牛はゆっくりと歩き出した。牛の名前はガンダーロと言うらしい。
大きな牛のいきなりの動きに、そばに居た男が驚いて尻餅をついた。男はたらふく飲んで酔っていたので、さっきから何度となく転んでいたのだが。
「なんだー?脅かしやがって、大体こんな、紫色の牛なんて、いるわけないだろ。どこかでワイン樽丸々盗みやがったな小僧、ついでに牛も盗みやがって。見世物のくせに面白くねぇんだよ。」
男はそう言い放って、紫の牛の前に立ちはだかった。
「お前どこの牛だ?盗人小僧の言うこと聞くなんて、どんな間抜けな牛だ。あぁん?」
少年はまた悩んだ。

巨搭に着くまでに人を殺してしまっていいのかと。当然、王の椅子を奪う途中には兵隊達が出てきて、それを倒さないといけないのだが、あまり人を殺しすぎると、王様になった時に国民が誰も居なくなるのではないか。いや逆に、王の椅子をあまり早く取ってしまっては、自分が椅子を取ったことに誰も気付いてもらえないのではないか?
それでとりあえず、軽く叩いてみることにした。

「ガンダーロ、突き飛ばして。」
そう命令され、牛は待っていたかのように、その大きく曲がった角で一瞬にして男の首の根元を貫いた。

町の人々は、絶え間なく絶叫していた。しかし、恐怖のあまり、逃げ出すこともできなかった。奇妙な少年を見るために集まって出来ていた人垣は、あちこちで将棋倒しになり、町の街路は混沌とした状態にあった。
角で突かれた男の首と胴体は、突かれた勢いで宙を舞い、遠くの地面に着地して転がった。
平和な暮らしをしてきた町の人々の様子はそのような有様であったが、町を守る兵隊達の動きは違った。
兵隊は、国を守るために常に心身を研ぎ澄まし、命を捨る覚悟ができている者である。平時の役割は喧嘩の仲裁程度だが、甲冑と槍を装着し、今日も町の各所に立っていた。それがこの風景を見れば、ああこれが噂に聞く魔物に違いないと思い、即座に駆けつけ槍を向け、隙あらば突く。
兵隊達は一人二人とやってきて、牛の角に弾き飛ばされた。甲冑は、紙くずのように砕けて散った。牛は、自分に武器を向けた者に対しては、少年の指示がなくても角を食らわすらしい。

「ああっ、もうっ。だから嫌だったんだ。巨搭までは一人ででも行けたのに!」
少年は、この騒動で国中の人間が逃げ出してしまうことを心配して、牛に文句を言う。その間にも、牛を包囲している兵隊達は次々と投げ飛ばされていく。
「しかたがないや、みんなが居なくなる前に、王の椅子だけは取ってやるぞ。」
そうやって、つぶやいている間に町の人々は牛から離れ、遠巻きにして見守り始めた。ちなみに、家まで逃げたりはしないのは、牛が倒されるまでは、町のどこに居ても危険だと思っているからだ。
そして、一部の無謀な市民は、武器を取って兵隊達に加わった。

パン屋の親方は叫んだ。
「槍なんか持ってねぇで、弓もって来おい!」
そういいながら、本人はすでに飛び道具、どこからかボウガンを持ってきている。熊狩りか何かの経験があるらしい。
近寄る者から順順に突き飛ばして倒していた牛は、間合いの外からの矢を受け、黒い血を流す。
「ああ、ガンダーロ、射られてるじゃないか。もういいや、やってしまえ!」
少年の許可を得て、牛はパン屋の親方に突進した。
「げぼぁっ。」
パン屋の親方は、腹部を角に貫かれ、宙吊りになりながら血を吐いた。一歩で届く距離まででしか角の一撃をしてこなかった牛の、長距離での加速に意表をつかれたことが致命的だった。これはもう助からないだろう。

この脅威的な力を持った牛に命令を下している魔王は、このような戦闘状態でも、とても平然としていた。魔王がどこにでも居るような少年の姿をしていたため、牛のすぐ後ろで立って命令しているという事実があっても、兵隊達は少年を逃げ遅れた子供としか思わず、攻撃しようとはしない。少年は、そのことに無自覚であったが、己の魔王としての力の自信から、決して自分が傷を受けることは無いと思っていた。

牛が、角にぶら下がったままのパン屋の親方にどうやってトドメを刺そうかと思案し始めた時、少年は真横から何者かに殴打されて民家の壁を突き破った。
その者は、この時初めて、後に108人の勇者と呼ばれる者達の一人として央国史に姿を現した。

このページは書きかけです。



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