「夜行」(2009/11/25 (水) 09:36:24) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
**夜行 ◆mkl7MVVdlA氏
「爺さん、あんたどこか行きたい場所はあるのか?」
闇の中を歩きながら、仲根は市川に声をかけた。
予想していたよりも、市川の足取りはしっかりしている。
まるで道の暗さなど関係がないとでも言わんばかりの躊躇いのなさで
――実際に、市川にとっては昼も夜も関係ないのだが
仲根の腕を杖代わりに一定の歩調を刻んでいた。
「そうさな。・・・人が集まる場所がいい。儂一人では何もできん。
この通り、歩くことさえままならんからな。協力できる人間がほしいところだ。
地図があるならそれを見て、目立つ施設にでも連れていってくれんか」
「人が多い場所に行くって事は、それだけ危険が増えるってことだ。
殺し合いに乗ってる奴らだっているかもしれない。それでもいいのか」
自分の事を棚に上げて、仲根が言った。
既にかなりの参加者が死んでいる。
自分も殺したが、それ以上に殺しをやっている連中がいるはずだ。
そうでなければ、短時間にあれほどの犠牲者が出るはずがない。
そんな奴らに道中に出会ったとして、負けるとは思わなかったが、絶対に勝てるという自信もなかった。
理由は二つある。
一つ目は、出会った相手が、必ずしも一人とは限らないということ。
人数の差はすなわち戦力の差だ。
武器を持ち、徒党を組んで向かってくる相手に、
目の見えぬ市川という荷物を抱えて立ち回るのは得策ではない。
――もちろん、自分の身が危険と判断すれば市川の身柄は容赦なく捨てるつもりだが。
もう一つの理由は、武器の差だ。
先刻、二人組の男と出会った時に痛感した。
配布されている武器には大きな偏りがある。
そしてそれは、時に埋めようのない力の差をもたらすのだ。
ダイナマイトを抱えていた中年の男。あれがもし本物だったとしたら。
想像以上に物騒な武器が配布されていることになる。
ハンドガンどころか、マシンガン、手榴弾、地雷、狙撃銃のような道具があってもおかしくない。
それらを相手に、刃物で立ち回りを演じるのは避けたかった。
「恐いか?」
揶揄するような市川の口調に対し、仲根は苛立ち昂ぶりそうになる感情を押し殺して言い返した。
「あんたは恐くないってのか」
「フン。老いぼれに、死を恐れる気持ちがあるかよ。
・・・まあいい。恐いというなら、無理は言わん。
他の人間に会う前に、儂を捨てて逃げるがいい。
お前さんよりも儂の方が耳はいい。人の気配がしたら、教えてやる。
だが忘れるな。一億集めたところでこのゲームに終わりはない。主催を倒さぬ限りはな」
「その体で、どうやって主催と戦うつもりだよ?」
「博打さ」
「はあ?」
「この島は恐らく、広大な賭博場だ。
お前さんや儂のような参加者を殺し合わせ、
その裏では誰が生き残るか、莫大な金をかけて愉しんでる奴らがいる。
優勝賞金の10億など紙クズとしか感じない、腐った豚の集まりだ。
だが儂は、それを逆手に取る」
「どういう意味だ」
「主催の連中を相手に博打をうつだけのことよ。
そのためには、奴らを賭場に引きずりだすための餌がいる。
儂と同様、主催に勝負を挑もうと考える打ち手も必要だ。
お前さんには、それを揃えるための手伝いをしてほしい」
仲根は、市川から改めて協力を求められ、どのように応えるべきか逡巡した。
先刻同様、理性では相手の言葉が正しいと思っているのに、素直に諾と頷く事ができない。
それは市川の言葉に現実味が足りないせいか、或いは、もっと別の要素があるのかもしれない。
明確に言葉に出来ない違和感。その正体は、一体何なのか。
考えるには、時間が必要だ。
もう少し、この老人と一緒に行動してみるべきなのかもしれない。
対主催、という言葉に嘘がなければ、その時は黒沢を仲間にするよう薦めるという手もある。
市川は、想像以上に頭がキレるようだ。その上、主催側の事情を知っているような風情がある。
自分と黒沢の不幸な行き違いも、目の前の老人ならばうまく解決してくれるかもしれない。
「その件については、もう少し考えさせてくれ。
それより、どこか人気のある場所に行きたいって言ってたよな。連れていってやるよ。
ただし、危険だと思ったときは、あんたが言った通り、見捨てて逃げるぜ」
「結構」
まずは市川の希望通り、この場から移動して、人が集まりやすい場所に向かう。
もしかしたらそこに黒沢がいるかもしれない。
盲の老人を助けている自分の姿を見せれば、或いは。
そんな打算も働かせつつ、足を止めて地図を広げた。
自分達の現在地はB-2。間もなくC-2に差し掛かかる。
人が集まりやすそうなところと言えば―――。
「商店街か」
付近には映画館や病院もあるが、市川を連れて歩くのだ。
見たところ体力があるようにも思えない。近いにこしたことはないだろう。
「行くぞ。爺さん」
「ああ」
仲根は地図を畳むと、市川が自分の腕を掴むのを確かめてから歩き出した。
アトラクションゾーンを出るまで暫く南下する。
途中で発電所から市街地へと続く道にぶつかるはずだ。
後は道に沿って人の気配を探せばいい。
盲目の市川の聴力を、どこまでアテにしていいのか、ハッキリ言って分からない。
(爺をつれて、警戒しながら歩くのかよ。面倒だな)
内心では自分の状況を憂いていたが、はじめて出来た同行者に対する警戒は、
仲根自身も知らぬ間に、少しずつ薄れはじめていた。
********
仲根の腕を杖がわりに歩きながら、市川は自分の思考に耽っていた。
その間も、耳から入る情報を遮断はしない。むしろ常以上に精神を研ぎ澄ませている。
盲目の市川にとって、触覚と聴覚はまさしく自分の目も同然だった。
(この男、意外に使えるかもしれん)
市川は先刻、改めて仲根に対主催のための協力を請うた。
無論、それは表向きだけの話だ。実際に主催と戦う意思などあるわけがない。
だが、ここで仮初めの仲間に引き込んでおけば後々何かと使えるかもしれない。
ダイナマイトを自分から奪っていった男は二人。
それらを相手に、武器を取り上げるための道具として仕立てるにはうってつけのように思われた。
明らかに若いと分かる声から推測して、年齢は二十歳に達しているかどうかというところだろう。
口ぶりからすると、もっと幼いのかもしれない。
異常としか言いようのない現状に対し落ち着いている様子からして、修羅場慣れしている事も分かる。
危険を察知する能力も高そうだ。
耳から伝わってくる足音や、杖のかわりとして掴んでいる腕の感触。
体は文句なしに頑丈だろう。それでいて、喧嘩一辺倒という程の馬鹿でもない。
ある程度は物を考えるだけの知恵がある。
市川は仲根に少し遅れて歩きながら、口端を歪めて笑みを作った。
御しやすく、丈夫な杖。
最初に自分を連れ回した石田に比べて、評価は高い。
拡声器を片手にバンジージャンプ台に登るような突飛で面白い発想はないが、反面で、思考が読みやすく操りやすい。
奪われたダイナマイトを取り戻すことが当座の目的だが、仲根にはそれを教えるつもりはなかった。
物騒すぎる道具を欲しがる理由を説明するのも面倒だったし、
ダイナマイトを持っている相手にけしかけるならば、情報を制限しておいた方が得策だろう。
火薬の塊に好きこのんで飛びかかる馬鹿はいない。
ダイナマイトは、「石田」という男が持っていったはずだ。
そして石田は、対主催を唱える「天」と繋がっている。
ならば、対主催という立場をとり続けている限り、どこかでぶつかるはずだ。
まずは人が多い場所に向かう。その上で、ダイナマイトの所持者を捜し、奪い返す。
だが、ダイナマイト奪還に、必ずしも固執する必要はない。
時と場合によっては、このまま手榴弾のみで自爆を決行してもいいと、市川は思っていた。
求めているのは、死に場所だ。自分以外の他者を巻き込み、華々しく散る。
殺人ゲームに放り込まれた時限爆弾。それが己の役割だ。
巻き込む人数は多ければ多い程いいが、極めて価値の高い強者、猛者ならば。
それが例え一人であっても、殺す価値はある。
例えば、先刻自分を押さえつけた「天」という男。
あれは間違いなく、強者、猛者に属するはずだ。
単に体格が優れているというだけではない。常人にはない、得体の知れない何か。
匂いのようなものが、周囲を漂っていた。
真っ当な人間のフリをしていたが、あの男は少なからず狂気を秘めている。
既に些かなりとも狂っている自分がそう感じるのだから間違いない。
市川の脳裏を、傲慢な子供の声が過ぎった。
赤木しげる。かつて己の自尊心を粉々に砕いた悪魔が見せた狂気。
あれと同じ色の気配を纏う男ならば、この身と共に砕くだけの価値がある。
有象無象の輩を巻き添えにするより、いっそ心地が良いはずだ。
(このゲームを覆す可能性を持つ男。それこそ儂に相応しい)
死んで華となる瞬間を思い描き、市川は声を出さず表情のみで笑った。
【C-2/アトラクションゾーン/夜中】
【市川】
[状態]:健康
[道具]:モデルガン 手榴弾 ICレコーダー 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:ダイナマイトを取り返す 仲根を利用する ゲームを覆す才覚を持つ人間を殺す 商店街(E-4)を目指す
※有賀がマーダーだと認識
【仲根秀平】
[状態]:前頭部と顔面に殴打によるダメージ 鼻から少量の出血
[道具]:カッターナイフ バタフライナイフ 支給品一式×2
[所持金]:3000万円
[思考]:市川に一時的に協力する 黒沢と自分の棄権費用を稼ぐ 黒沢を生還させる 生還する 商店街(E-4)を目指す
|095:[[見切り]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[投下順>本編投下順]]|097:[[謝罪]]|
|082:[[孤軍]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[時系列順>本編時間順]]|102:[[百に一つ]]|
|077:[[闇]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:市川||
|077:[[闇]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:仲根秀平||
**夜行 ◆mkl7MVVdlA氏
「爺さん、あんたどこか行きたい場所はあるのか?」
闇の中を歩きながら、仲根は市川に声をかけた。
予想していたよりも、市川の足取りはしっかりしている。
まるで道の暗さなど関係がないとでも言わんばかりの躊躇いのなさで
――実際に、市川にとっては昼も夜も関係ないのだが
仲根の腕を杖代わりに一定の歩調を刻んでいた。
「そうさな。・・・人が集まる場所がいい。儂一人では何もできん。
この通り、歩くことさえままならんからな。協力できる人間がほしいところだ。
地図があるならそれを見て、目立つ施設にでも連れていってくれんか」
「人が多い場所に行くって事は、それだけ危険が増えるってことだ。
殺し合いに乗ってる奴らだっているかもしれない。それでもいいのか」
自分の事を棚に上げて、仲根が言った。
既にかなりの参加者が死んでいる。
自分も殺したが、それ以上に殺しをやっている連中がいるはずだ。
そうでなければ、短時間にあれほどの犠牲者が出るはずがない。
そんな奴らに道中に出会ったとして、負けるとは思わなかったが、絶対に勝てるという自信もなかった。
理由は二つある。
一つ目は、出会った相手が、必ずしも一人とは限らないということ。
人数の差はすなわち戦力の差だ。
武器を持ち、徒党を組んで向かってくる相手に、
目の見えぬ市川という荷物を抱えて立ち回るのは得策ではない。
――もちろん、自分の身が危険と判断すれば市川の身柄は容赦なく捨てるつもりだが。
もう一つの理由は、武器の差だ。
先刻、二人組の男と出会った時に痛感した。
配布されている武器には大きな偏りがある。
そしてそれは、時に埋めようのない力の差をもたらすのだ。
ダイナマイトを抱えていた中年の男。あれがもし本物だったとしたら。
想像以上に物騒な武器が配布されていることになる。
ハンドガンどころか、マシンガン、手榴弾、地雷、狙撃銃のような道具があってもおかしくない。
それらを相手に、刃物で立ち回りを演じるのは避けたかった。
「恐いか?」
揶揄するような市川の口調に対し、仲根は苛立ち昂ぶりそうになる感情を押し殺して言い返した。
「あんたは恐くないってのか」
「フン。老いぼれに、死を恐れる気持ちがあるかよ。
・・・まあいい。恐いというなら、無理は言わん。
他の人間に会う前に、儂を捨てて逃げるがいい。
お前さんよりも儂の方が耳はいい。人の気配がしたら、教えてやる。
だが忘れるな。一億集めたところでこのゲームに終わりはない。主催を倒さぬ限りはな」
「その体で、どうやって主催と戦うつもりだよ?」
「博打さ」
「はあ?」
「この島は恐らく、広大な賭博場だ。
お前さんや儂のような参加者を殺し合わせ、
その裏では誰が生き残るか、莫大な金をかけて愉しんでる奴らがいる。
優勝賞金の10億など紙クズとしか感じない、腐った豚の集まりだ。
だが儂は、それを逆手に取る」
「どういう意味だ」
「主催の連中を相手に博打をうつだけのことよ。
そのためには、奴らを賭場に引きずりだすための餌がいる。
儂と同様、主催に勝負を挑もうと考える打ち手も必要だ。
お前さんには、それを揃えるための手伝いをしてほしい」
仲根は、市川から改めて協力を求められ、どのように応えるべきか逡巡した。
先刻同様、理性では相手の言葉が正しいと思っているのに、素直に諾と頷く事ができない。
それは市川の言葉に現実味が足りないせいか、或いは、もっと別の要素があるのかもしれない。
明確に言葉に出来ない違和感。その正体は、一体何なのか。
考えるには、時間が必要だ。
もう少し、この老人と一緒に行動してみるべきなのかもしれない。
対主催、という言葉に嘘がなければ、その時は黒沢を仲間にするよう薦めるという手もある。
市川は、想像以上に頭がキレるようだ。その上、主催側の事情を知っているような風情がある。
自分と黒沢の不幸な行き違いも、目の前の老人ならばうまく解決してくれるかもしれない。
「その件については、もう少し考えさせてくれ。
それより、どこか人気のある場所に行きたいって言ってたよな。連れていってやるよ。
ただし、危険だと思ったときは、あんたが言った通り、見捨てて逃げるぜ」
「結構」
まずは市川の希望通り、この場から移動して、人が集まりやすい場所に向かう。
もしかしたらそこに黒沢がいるかもしれない。
盲の老人を助けている自分の姿を見せれば、或いは。
そんな打算も働かせつつ、足を止めて地図を広げた。
自分達の現在地はB-2。間もなくC-2に差し掛かかる。
人が集まりやすそうなところと言えば―――。
「商店街か」
付近には映画館や病院もあるが、市川を連れて歩くのだ。
見たところ体力があるようにも思えない。近いにこしたことはないだろう。
「行くぞ。爺さん」
「ああ」
仲根は地図を畳むと、市川が自分の腕を掴むのを確かめてから歩き出した。
アトラクションゾーンを出るまで暫く南下する。
途中で発電所から市街地へと続く道にぶつかるはずだ。
後は道に沿って人の気配を探せばいい。
盲目の市川の聴力を、どこまでアテにしていいのか、ハッキリ言って分からない。
(爺をつれて、警戒しながら歩くのかよ。面倒だな)
内心では自分の状況を憂いていたが、はじめて出来た同行者に対する警戒は、
仲根自身も知らぬ間に、少しずつ薄れはじめていた。
********
仲根の腕を杖がわりに歩きながら、市川は自分の思考に耽っていた。
その間も、耳から入る情報を遮断はしない。むしろ常以上に精神を研ぎ澄ませている。
盲目の市川にとって、触覚と聴覚はまさしく自分の目も同然だった。
(この男、意外に使えるかもしれん)
市川は先刻、改めて仲根に対主催のための協力を請うた。
無論、それは表向きだけの話だ。実際に主催と戦う意思などあるわけがない。
だが、ここで仮初めの仲間に引き込んでおけば後々何かと使えるかもしれない。
ダイナマイトを自分から奪っていった男は二人。
それらを相手に、武器を取り上げるための道具として仕立てるにはうってつけのように思われた。
明らかに若いと分かる声から推測して、年齢は二十歳に達しているかどうかというところだろう。
口ぶりからすると、もっと幼いのかもしれない。
異常としか言いようのない現状に対し落ち着いている様子からして、修羅場慣れしている事も分かる。
危険を察知する能力も高そうだ。
耳から伝わってくる足音や、杖のかわりとして掴んでいる腕の感触。
体は文句なしに頑丈だろう。それでいて、喧嘩一辺倒という程の馬鹿でもない。
ある程度は物を考えるだけの知恵がある。
市川は仲根に少し遅れて歩きながら、口端を歪めて笑みを作った。
御しやすく、丈夫な杖。
最初に自分を連れ回した石田に比べて、評価は高い。
拡声器を片手にバンジージャンプ台に登るような突飛で面白い発想はないが、反面で、思考が読みやすく操りやすい。
奪われたダイナマイトを取り戻すことが当座の目的だが、仲根にはそれを教えるつもりはなかった。
物騒すぎる道具を欲しがる理由を説明するのも面倒だったし、
ダイナマイトを持っている相手にけしかけるならば、情報を制限しておいた方が得策だろう。
火薬の塊に好きこのんで飛びかかる馬鹿はいない。
ダイナマイトは、「石田」という男が持っていったはずだ。
そして石田は、対主催を唱える「天」と繋がっている。
ならば、対主催という立場をとり続けている限り、どこかでぶつかるはずだ。
まずは人が多い場所に向かう。その上で、ダイナマイトの所持者を捜し、奪い返す。
だが、ダイナマイト奪還に、必ずしも固執する必要はない。
時と場合によっては、このまま手榴弾のみで自爆を決行してもいいと、市川は思っていた。
求めているのは、死に場所だ。自分以外の他者を巻き込み、華々しく散る。
殺人ゲームに放り込まれた時限爆弾。それが己の役割だ。
巻き込む人数は多ければ多い程いいが、極めて価値の高い強者、猛者ならば。
それが例え一人であっても、殺す価値はある。
例えば、先刻自分を押さえつけた「天」という男。
あれは間違いなく、強者、猛者に属するはずだ。
単に体格が優れているというだけではない。常人にはない、得体の知れない何か。
匂いのようなものが、周囲を漂っていた。
真っ当な人間のフリをしていたが、あの男は少なからず狂気を秘めている。
既に些かなりとも狂っている自分がそう感じるのだから間違いない。
市川の脳裏を、傲慢な子供の声が過ぎった。
赤木しげる。かつて己の自尊心を粉々に砕いた悪魔が見せた狂気。
あれと同じ色の気配を纏う男ならば、この身と共に砕くだけの価値がある。
有象無象の輩を巻き添えにするより、いっそ心地が良いはずだ。
(このゲームを覆す可能性を持つ男。それこそ儂に相応しい)
死んで華となる瞬間を思い描き、市川は声を出さず表情のみで笑った。
【C-2/アトラクションゾーン/夜中】
【市川】
[状態]:健康
[道具]:モデルガン 手榴弾 ICレコーダー 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:ダイナマイトを取り返す 仲根を利用する ゲームを覆す才覚を持つ人間を殺す 商店街(E-4)を目指す
※有賀がマーダーだと認識
【仲根秀平】
[状態]:前頭部と顔面に殴打によるダメージ 鼻から少量の出血
[道具]:カッターナイフ バタフライナイフ 支給品一式×2
[所持金]:3000万円
[思考]:市川に一時的に協力する 黒沢と自分の棄権費用を稼ぐ 黒沢を生還させる 生還する 商店街(E-4)を目指す
|095:[[見切り]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[投下順>本編投下順]]|097:[[謝罪]]|
|082:[[孤軍]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[時系列順>本編時間順]]|102:[[百に一つ]]|
|077:[[闇]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:市川|110:[[老人と若者]]|
|077:[[闇]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:仲根秀平|110:[[老人と若者]]|
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: