「帝域」(2010/04/20 (火) 00:29:53) の最新版変更点
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**帝域 ◆iL739YR/jk氏
暗黒の地下王国を照らす巨大な光。それは燃え上がる炎によるものだった。
無論、本物の炎ではない。
田中沙織のチャンネルへと切り替えたときに、それは大画面に映し出された。
バニッ…
バニッ…!!
「カカカッ……あの女、予想以上に狂気に満ちておる…実にいい…」
歓喜の声を上げて、手を叩く老人―兵藤和尊―はまるでキャンプファイヤを囲む青少年のように、その惨劇を喜んでいた。
「会長…」
至福のときを破る黒服の声に兵藤はあからさまに機嫌を悪くする。
「なんだ…報告はついさっきしたばかりだろうが…」
「それが…先程発生した火災に関することで、スパコンが新たな予想を算出しました。参加者の首輪に関する内容です」
その内容の重要性に気づいた兵藤は表情を一変し、重厚な声を発する。
「…続けろ。但し、簡潔に要点だけ纏めてな…」
「は……一部の参加者の首輪に使用されている電池が短期間の内に機能停止する恐れがあるとのことです」
「なんだと…! どういうことだ…!?」
「…こちらをご覧ください」
スクリーンに火災の様子と別枠で、黒崎がギャラリーへのクレーム処理の為にまとめた首輪の資料より抜粋された電池の項目が映し出される。
「今回の首輪に使用されている“固体高分子形燃料電池”はその内部にある程度の水分を使用しており、発電するにつれてその水分が徐々に失われていきます。
そのときに消費される水分をきちんと計算した上での今回の運用だったのですが…」
「……このショッピングモールの火災か」
「はい。今回、大型火災が発生したことで、高熱となった建物の内部及びその周囲にいた参加者の首輪は予想以上に電池の水分が蒸発し、失われたと考えられます」
「それで…具体的には…?」
「0時30分現在…スパコンの予想では、田中沙織は約18時間。遠藤勇次は約2時間30分後に機能停止すると思われます」
「他の主催陣はこのことを知っているのか…?」
「いえ、こちらのスパコンと同レベルの予測を得られるとは考えにくいと思われます。
予測される時間が経過した後、該当する参加者の首輪が機能停止して始めて気づくものかと……
もし、この予測が実際のものとなった場合、電池切れにより、参加者の現在位置や生体信号の把握が突然出来なくなります。
そのような異常事態となれば、流石に他の主催陣は放っておかないでしょう」
「そうか…そうか……」
確かに異常事態……!
突然、参加者の動向を把握出来なくなれば指揮系統に混乱をきたすのは必然っ……!
予想外の事態に戸惑う主催陣の滑稽な姿が目に浮かぶ……
カードを持つ者故の持たざる者への優越感……圧倒的甘美………!!
(だが…あまりにもカードが『強力』過ぎる……)
確かに、主催陣の足を引っ張り、参加者にとって有利な状況を作ることは目的の1つ。
だが、これはあまりにも異常事態過ぎる……
このまま黙って見過ごせば、このゲーム自体が崩壊しかねない。
かといって、黒崎に真実を伝えれば即刻に遠藤と沙織の首輪は爆破に、消化作業……
参加者の主催への反撃の目はあっさりと潰れる……
いや、下手をしたらこのゲーム自体を一時中断…あるいは中止するかもしれない。
(それは良くない…お客様の為にも…個人的な目的の為にも…)
暫しの間、何かを考えた兵藤は黒服に問いかける。
「参加者の現在位置は、ここのコンピュータならば首輪のGPS無しでも把握出来るな…?」
「は…はい。ここでのみ閲覧可能な監視カメラの映像も利用し、それらを繋ぎ合わせれば…ある程度は……」
「ならば決まりだ…首輪に関する予測は他の主催には一切伝えてはならん…その代わりに……やってもらう仕事がある……カカカッ……!」
兵藤会長の指示…それは情報の捏造…!
もし、スパコンの予測が的中。首輪の機能が停止する参加者が現れた場合……
彼らの情報は、こちらが用意した偽の現在位置と生体信号を送信する。
これによって、他の主催陣は気づかない…ゲームに忍び寄る異常事態に…一切っ……!
火災が治まらなければ、今後も首輪の機能が停止する参加者の数は増え続けるだろう……
だが、それらの情報は全て捏造…隠蔽…このゲームは潰さない……!
そして終盤……もはや中止など不可能、取り返しのつかない時点で一斉に捏造中止…!
突如として大多数の参加者が主催の監視下から消える……!
慌てふためく主催陣…予想外の緊急事態……!!
その後も、客のダイジェストリストにだけはこちらから情報を送り続ければ客も不満はあるまい。
そして、この全てを知り…全てを把握出来るのは自分のみ……
もっとも、ここまで積極的にゲームに介入するからには当然リスクもある。
まず、首輪の機能が停止してしまっている以上、これまでのように盗聴することができなくなっている。
盗聴機能が生きている参加者との会話はともかく、独り言などは簡単には拾えなくなる。
これを他の主催やギャラリーにどうごまかすか……
また、一番の問題は能動的に首輪を爆破出来なくなるということ……!
例えば、首輪の電池が切れた参加者が禁止エリアに近づいても、警告音は鳴らない…
その上、予期せぬ状況で禁止エリアに入りこんだ参加者の首輪を爆破出来ない……!
これがかなりの問題……!
もし、錯乱気味の田中沙織が首輪が電池切れの状態でうっかり禁止エリアに入ったりしたら……?
……捏造したデータとはいえ、表向きには位置情報や生体信号はきちんと受信できているのだから
盗聴器や、起爆装置の故障を疑いこそするも、まさか電池が切れているとは思わないだろう。
それが率直な思い。だが、この考えに甘えて見逃してよいリスクではない。
何か対抗策は考えておくべきであろう。
それでも何より目立つは圧倒的リターン…!
ゲームにおける真実…真の情報を掌握することが出来るのは己のみ……!
(これでこのゲーム…ワシの勝ちは揺るぎ無いものとなる…)
全ては王のみぞ知る…帝王は情報戦を制す…
何人たりとも辿りつけない領域に…ただ王は座す…己の勝利を当然のものと感じて……!
【D-1/地下王国/深夜】
【兵藤和尊】
[状態]:健康 興奮状態
[道具]: ?
[所持金]: ?
[思考]:優勝する 黒崎の足を引っ張る 主催者達を引っ掻き回す
※次のようにスパコンの予測が出ました。
何らかの要因で予測が外れることもあれば、今後条件を満たせばさらに該当者が増えることも考えられます。
大型火災が発生したことで、高熱となった建物の内部及びその周囲にいた参加者の首輪は電池の水分が蒸発し、失われた。
それによって、0時30分現在、田中沙織は約18時間。遠藤勇次は約2時間30分後に首輪が機能停止する。
|126:[[本心]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[投下順>本編投下順]]|128:[[偶然と奇跡の果てに]]|
|122:[[再考]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[時系列順>本編時間順]]|119:[[盲点]]|
|117: [[帝王]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:兵藤和尊|130:[[宣戦布告(前編)]] [[(後編)>宣戦布告(後編)]]|
**帝域 ◆iL739YR/jk氏
暗黒の地下王国を照らす巨大な光。それは燃え上がる炎によるものだった。
無論、本物の炎ではない。
田中沙織のチャンネルへと切り替えたときに、それは大画面に映し出された。
バニッ…
バニッ…!!
「カカカッ……あの女、予想以上に狂気に満ちておる…実にいい…」
歓喜の声を上げて、手を叩く老人―兵藤和尊―はまるでキャンプファイヤを囲む青少年のように、その惨劇を喜んでいた。
「会長…」
至福のときを破る黒服の声に兵藤はあからさまに機嫌を悪くする。
「なんだ…報告はついさっきしたばかりだろうが…」
「それが…先程発生した火災に関することで、スパコンが新たな予想を算出しました。参加者の首輪に関する内容です」
その内容の重要性に気づいた兵藤は表情を一変し、重厚な声を発する。
「…続けろ。但し、簡潔に要点だけ纏めてな…」
「は……一部の参加者の首輪に使用されている電池が短期間の内に機能停止する恐れがあるとのことです」
「なんだと…! どういうことだ…!?」
「…こちらをご覧ください」
スクリーンに火災の様子と別枠で、黒崎がギャラリーへのクレーム処理の為にまとめた首輪の資料より抜粋された電池の項目が映し出される。
「今回の首輪に使用されている“固体高分子形燃料電池”はその内部にある程度の水分を使用しており、発電するにつれてその水分が徐々に失われていきます。
そのときに消費される水分をきちんと計算した上での今回の運用だったのですが…」
「……このショッピングモールの火災か」
「はい。今回、大型火災が発生したことで、高熱となった建物の内部及びその周囲にいた参加者の首輪は予想以上に電池の水分が蒸発し、失われたと考えられます」
「それで…具体的には…?」
「0時30分現在…スパコンの予想では、田中沙織は約18時間。遠藤勇次は約2時間30分後に機能停止すると思われます」
「他の主催陣はこのことを知っているのか…?」
「いえ、こちらのスパコンと同レベルの予測を得られるとは考えにくいと思われます。
予測される時間が経過した後、該当する参加者の首輪が機能停止して始めて気づくものかと……
もし、この予測が実際のものとなった場合、電池切れにより、参加者の現在位置や生体信号の把握が突然出来なくなります。
そのような異常事態となれば、流石に他の主催陣は放っておかないでしょう」
「そうか…そうか……」
確かに異常事態……!
突然、参加者の動向を把握出来なくなれば指揮系統に混乱をきたすのは必然っ……!
予想外の事態に戸惑う主催陣の滑稽な姿が目に浮かぶ……
カードを持つ者故の持たざる者への優越感……圧倒的甘美………!!
(だが…あまりにもカードが『強力』過ぎる……)
確かに、主催陣の足を引っ張り、参加者にとって有利な状況を作ることは目的の1つ。
だが、これはあまりにも異常事態過ぎる……
このまま黙って見過ごせば、このゲーム自体が崩壊しかねない。
かといって、黒崎に真実を伝えれば即刻に遠藤と沙織の首輪は爆破に、消化作業……
参加者の主催への反撃の目はあっさりと潰れる……
いや、下手をしたらこのゲーム自体を一時中断…あるいは中止するかもしれない。
(それは良くない…お客様の為にも…個人的な目的の為にも…)
暫しの間、何かを考えた兵藤は黒服に問いかける。
「参加者の現在位置は、ここのコンピュータならば首輪のGPS無しでも把握出来るな…?」
「は…はい。ここでのみ閲覧可能な監視カメラの映像も利用し、それらを繋ぎ合わせれば…ある程度は……」
「ならば決まりだ…首輪に関する予測は他の主催には一切伝えてはならん…その代わりに……やってもらう仕事がある……カカカッ……!」
兵藤会長の指示…それは情報の捏造…!
もし、スパコンの予測が的中。首輪の機能が停止する参加者が現れた場合……
彼らの情報は、こちらが用意した偽の現在位置と生体信号を送信する。
これによって、他の主催陣は気づかない…ゲームに忍び寄る異常事態に…一切っ……!
火災が治まらなければ、今後も首輪の機能が停止する参加者の数は増え続けるだろう……
だが、それらの情報は全て捏造…隠蔽…このゲームは潰さない……!
そして終盤……もはや中止など不可能、取り返しのつかない時点で一斉に捏造中止…!
突如として大多数の参加者が主催の監視下から消える……!
慌てふためく主催陣…予想外の緊急事態……!!
その後も、客のダイジェストリストにだけはこちらから情報を送り続ければ客も不満はあるまい。
そして、この全てを知り…全てを把握出来るのは自分のみ……
もっとも、ここまで積極的にゲームに介入するからには当然リスクもある。
まず、首輪の機能が停止してしまっている以上、これまでのように盗聴することができなくなっている。
盗聴機能が生きている参加者との会話はともかく、独り言などは簡単には拾えなくなる。
これを他の主催やギャラリーにどうごまかすか……
また、一番の問題は能動的に首輪を爆破出来なくなるということ……!
例えば、首輪の電池が切れた参加者が禁止エリアに近づいても、警告音は鳴らない…
その上、予期せぬ状況で禁止エリアに入りこんだ参加者の首輪を爆破出来ない……!
これがかなりの問題……!
もし、錯乱気味の田中沙織が首輪が電池切れの状態でうっかり禁止エリアに入ったりしたら……?
……捏造したデータとはいえ、表向きには位置情報や生体信号はきちんと受信できているのだから
盗聴器や、起爆装置の故障を疑いこそするも、まさか電池が切れているとは思わないだろう。
それが率直な思い。だが、この考えに甘えて見逃してよいリスクではない。
何か対抗策は考えておくべきであろう。
それでも何より目立つは圧倒的リターン…!
ゲームにおける真実…真の情報を掌握することが出来るのは己のみ……!
(これでこのゲーム…ワシの勝ちは揺るぎ無いものとなる…)
全ては王のみぞ知る…帝王は情報戦を制す…
何人たりとも辿りつけない領域に…ただ王は座す…己の勝利を当然のものと感じて……!
【D-1/地下王国/深夜】
【兵藤和尊】
[状態]:健康 興奮状態
[道具]: ?
[所持金]: ?
[思考]:優勝する 黒崎の足を引っ張る 主催者達を引っ掻き回す
※次のようにスパコンの予測が出ました。
何らかの要因で予測が外れることもあれば、今後条件を満たせばさらに該当者が増えることも考えられます。
大型火災が発生したことで、高熱となった建物の内部及びその周囲にいた参加者の首輪は電池の水分が蒸発し、失われた。
それによって、0時30分現在、田中沙織は約18時間。遠藤勇次は約2時間30分後に首輪が機能停止する。
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