「赤松・涯」(2010/08/02 (月) 19:14:21) の最新版変更点
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**無題 ◆wZ6EU.1NSA氏
子供だ――。
「それ」を目の前に涯は立ち尽くしていた。
否。これはもう子供ではない。子供だった、モノ。
――死体。
…幼い…死体…。
どうにか認識したそれを飲み込む。
他者により命を絶たれたであろう事は明確。無残に撃ち抜かれた胴。傍らに荷物は無い。
殺した者が奪っていったのだろう。
(こんな子供を殺すのか…)
……偽善…甘い考えだ…弱い者を狙うのは狩りの定石ではないか……。
……既に自身の手で人を殺めておいて何を今更……。
……そもそも、己とて奪うつもりであの声に釣られてやって来たのだろうに……。
幾つもの声が涯の頭の中でざわざわと巡り、廻る。
それでも。
それでも割り切れない。
割り切る事ができない。意思とは裏腹に心が拒絶してしまう。
(もし、この子供が生きて自分と行き合っていたのなら…オレは…殺したのだろうか…)
子供とは、圧倒的弱者である。
それはつまり低いリスクで果を上げる事が可能な相手という事だ。
この場に於いて他人にかけるべき情など一分もありはしない。
そのような事をしていれば…狩られる。奪われる。殺される。
それが道理だ。
右手に握られたバットが重い。
質量を増した訳でもないのに。
「矢張り…標くんの事が気になるんだ…それになんだか嫌な予感がする…」
そう告げて赤松は踵を返した。
自然と足早になる。胸騒ぎは収まらない。
赤松は駆け出していた。
そして彼が見た光景は――。
「うわあああああああああああああっ!!!」
本来赤松は冷静で理知的な男であるし、正義感は強くとも独善的な人間ではない。
しかし「それ」を見た瞬間に彼からは理性などというものは吹き飛んでいた。
――標の――。
ただ真っ白になった頭で、
――標の死体――。
赤松はただ闇雲に突っ込んでいた。
死体に気をとられていた涯が突然の雄叫びに気付いた瞬間には男の体当たりを受けて倒れこんでいた。
背中が地面にぶち当たる衝撃。
バットが手を離れて地面を転がる。
傷付いた腹部へ走る重い痛み。
眼前には馬乗りになった男の顔。
節くれだった指に頸を締め上げられる。
男の目から溢れ出した涙がボタボタと頬に降る。
「よくもっ…よくも標くんをっ…!畜生っ…!!」
……違う。オレが殺したんじゃない。オレはやってない……。
……弁明など無駄だ。誰も信じはしない。耳を傾けようともしない……。
……こんなところでオレは死ぬのか……。
……何故だ……。
ざわざわ、ざわざわと、幾つもの声。
「畜生っ…!畜生っ…!畜生っ…!!」
……何故奪われる……?
…自由を… …生すら……
(あの死体の子供は…シルベというのか…)
それが彼の最期の認識。
――涯の意識は闇へと飲み込まれ閉ざされた――
「う…ううっ…」
我に返った赤松は頭を抱えて蹲る。
殺してしまった…いや違う…『殺した』のだ…
人を…子供を…こんな子供を殺したのだ…
オレは…なんてことを…
「し…標っ…標くんっ…標くんっ…」
血溜りまで這い、そこに横たわる亡骸を抱きかかえる。
腕の間から零れる体液と腸。
これは…。
「あ…ああっ…」
これは殴殺ではない…。
何らかの銃火器で打ち抜かれている…。
見ればあるべき物がない…。標のバッグが…。
つまり既に何者かが持ち去ったあと…。
彼は…あの少年は…。
――標を殺してなどいない。
「う…うああああああああああああああっ!!!」
狂ったように赤松は絶叫した。
【B-3/アトラクションゾーン/夕方】
【赤松修平】
[状態]:錯乱
[道具]:手榴弾×9 石原の首輪 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:
※石原の首輪は死亡情報を送信しましたが、機能は停止していません
※利根川のカイジへの伝言を託りました。
※錯乱状態の為、涯の荷物に手を着けていません
【工藤涯 死亡】
【残り 33人】
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