「先延ばし」(2009/11/26 (木) 00:26:40) の最新版変更点
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先延ばし ◆X7hJKGoxpY氏
「こいつは驚いたな……」
ボソリ、と遠藤がつぶやく。
『12 D-4 イガワヒロユキ ムラオカタカシ』
突如ディスプレイに現れた文字。
一瞬何のことだか分からなかったが、すぐに見当はついた。
「……これは全員の現在地のデータか?」
機械に疎い森田が尋ねる。
「いや……これはそれだけの代物じゃない………」
遠藤はそう答えると、『サツガイ』と書かれた箇所を選択した。
再び別の文字列。
『12 D-4 アリガケンジ』
「こいつは……」
「ちなみに最初に俺達が見たのが『ギャンブルルーム』……
他にも『ジュウヨウカイワ』、『コウセン』、『エリアイドウ』とある………ここまで言えばわかるだろ?」
「……なるほどな」
流石に森田は物分かりがいい。
ほぼ理解したのだろう、僅かに緊張を解いた気配がした。
このファイルにはバトルロワイアル開始からこれまでのあらゆる記録が送られてきている。
ギャンブルルームの利用者、何らかの重要な会話――例えば協力するために会話した人物、
誰かを殺害した人物、他者と交戦した人物、他のエリアに移動した人物。
ご丁寧にもそれぞれ該当するエリアまで書かれているようだ。
「とまあ……これは俺の推測だが、大きくは外れてないはずだ」
「頭の数字は何だと思う?時間か?」
「だろうな……正確にはおそらく1時間単位で書かれている………
俺の勘だが、1時間おきに新しいデータを送信してくるんだろうな」
「…………」
遠藤は自分の考察を言い終えると、僅かに伸びをして森田に目を向けた。
何を思ったのか、森田はそのまま考え込んでいる。
「どうした?いい情報が手に入ったんだ……少しは喜んだらどうだ」
「いや……何故奴らがこれを支給品にしたのか気になってな………アンタはどう読む……?」
「………このギャンブルを円滑に進めたいんだろ?」
「いや……それもあるが………おそらくは……」
「……おそらくは?」
「ある程度予測はしていたが……おそらくは警告だ。
お前たちは我々の手のひらの上にいる、余計なことを考えるな……とな」
遠藤は息をのんだ。何故これまでそんな根本的なことに気付かなかったのか。
ギャンブルルームの利用歴やエリア間の移動歴などだけなら分からなくもない。
だが、重要な会話を見極めるには、無論会話の把握は必須。
つまり――
(盗聴っ……!)
考えてもみれば当然であろう。
ここに集められた者の中には修羅場をくぐってきた曲者が数多くいる。
万全を期して何らかの監視をするのは必須。
盗聴器ばかりかカメラもいたるところに仕掛けられている可能性は高い。
そして、事前に参加者の策を読み取ろうとするはず。
策を練りいざ反乱、となったら間違いなく本来の意味で首が飛ぶことになるだろう。
(対主催の目は潰えたな……)
遠藤は考える。
無論、彼自身はもともと細い糸の上を渡るような暴挙に挑戦する気はない。
いうなれば、盗聴されていたところで己のスタンスは変わらないのだ。
しかし、森田はどうか。
お人好しで、且つ平井銀二に心酔している。
余程のことがなければこのギャンブルに乗ることはないだろうと思っていた。
だが、万が一もある。
望みが潰えた今、森田が乗る可能性は十分にある。
そうなれば真っ先に狙われるのは近くにいる自分だ。
逃げるなら、或いは殺すのならば、今しかないのではないか。
遠藤はそっと森田の様子を窺う
見たところ、森田に変わった様子はない。
(早計、か……?)
分からない。
が、下手な行動は自らの首を絞めることになろう。
(警戒は必要だが……ひとまずは保留だな………)
遠藤は保留――とりあえず先延ばしにしようと、そう結論づけた。
ちょうどその瞬間、コンピュータから電子音が響く。
* * *
南郷もまた、森田や遠藤のいるショッピングモールを訪れていた。
目的は武器の補充、そして安全な隠れ家を見つけること。
南郷は、いまだ己のなすべきことが分からなかった。
ただ、生きたいという気持ちが漠然とあるだけ。
あの青年のように人を殺すのか、ギャンブルで稼ぐのか、或いはアカギのような頼れる仲間を募るのか――
分からないからこそ、彼は身を隠したかった。
答えを出すのが怖かったから、せめてそれを先延ばしにしたかった。
自分では分からない、気付きもしない微かな恐怖であるが故に、その小さな壁を乗り越えられない。
先延ばしという自覚のない消極性を抱え、彼は建物の中に足を踏みいれた。
* * *
「新しいデータが送信されてきたようだな……」
ディスプレイには新しい文字列が表示されている。
遠藤は即座に時間を確認した。
「ほぼ15時……このデータを見る限りじゃ、案の定14時からのデータのようだな」
「俺達の手にすることができる最新データって訳か」
「ああ……多分、な」
二人は即座にデータを確認する。
重要なポイントは殺人者と近接地域に移動してきた者の把握である。
「いた……少なくとも俺達より後、このエリアに入ってきた奴………」
南郷という男。
参加候補者名簿と合わせて見る。
「遠藤……どうだ?」
「危険人物の可能性はさほど高くない……こいつも俺が誘ったんだが……
話した限りじゃさほど切れる人物じゃねえな………
一回三好って奴とやり合ったようだが、まだ一人も殺して無いようだし、逆にその三好って奴が他の奴を殺してる。
まあこいつが絶対乗ってないとは言わんが、積極派に襲われたって線が濃厚だろうな」
「そうか……」
どうするべきであろうか。
争いを避けるならここは隠れるべきであろう。
しかし、仲間を増やすチャンスは決して多くはない。
遠藤曰く遭遇してもリスクは少ないらしいが、その言を信じてもいいものかどうか。
南郷と無防備な状態で遭遇することだけは避けたい。
早く決断せねばならない。
行動を先延ばしする余裕などないことは承知している。
だがしかし、森田は迷っていた。
【D-7/ショッピングモール/午後】
【森田鉄雄】
[状態]:健康
[道具]:フロッピーディスク 不明支給品0~2 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:銀二の手掛かりを得たい 接近している南郷に対して対策を練る
【遠藤勇次】
[状態]:健康
[道具]:参加候補者名簿 不明支給品0~2 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:森田に警戒 森田を利用するか見切るかひとまず保留する 接近している南郷に対して対策を練る
※遠藤は森田に支給品は参加候補者名簿だけと言いましたが、他に隠し持っている可能性もあります
【南郷】
[状態]:左大腿部を負傷、低度の精神疲労
[道具]:麻縄 木の棒 一箱分相当のパチンコ玉(袋入り) 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:生還する 身を隠す場所を見つける
|036:[[鏡]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[投下順>本編投下順]]|038:[[駆け引き]]|
|036:[[鏡]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:[[時系列順>本編時間順]]|038:[[駆け引き]]|
|023:[[情報]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:森田鉄雄|057:[[手足]]|
|023:[[情報]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:遠藤勇次|057:[[手足]]|
|011:[[盲目]]|COLOR(#FFFFFF):BGCOLOR(#a9a9a9):CENTER:南郷|057:[[手足]]|
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**先延ばし ◆X7hJKGoxpY氏
「こいつは驚いたな……」
ボソリ、と遠藤がつぶやく。
『12 D-4 イガワヒロユキ ムラオカタカシ』
突如ディスプレイに現れた文字。
一瞬何のことだか分からなかったが、すぐに見当はついた。
「……これは全員の現在地のデータか?」
機械に疎い森田が尋ねる。
「いや……これはそれだけの代物じゃない………」
遠藤はそう答えると、『サツガイ』と書かれた箇所を選択した。
再び別の文字列。
『12 D-4 アリガケンジ』
「こいつは……」
「ちなみに最初に俺達が見たのが『ギャンブルルーム』……
他にも『ジュウヨウカイワ』、『コウセン』、『エリアイドウ』とある………ここまで言えばわかるだろ?」
「……なるほどな」
流石に森田は物分かりがいい。
ほぼ理解したのだろう、僅かに緊張を解いた気配がした。
このファイルにはバトルロワイアル開始からこれまでのあらゆる記録が送られてきている。
ギャンブルルームの利用者、何らかの重要な会話――例えば協力するために会話した人物、
誰かを殺害した人物、他者と交戦した人物、他のエリアに移動した人物。
ご丁寧にもそれぞれ該当するエリアまで書かれているようだ。
「とまあ……これは俺の推測だが、大きくは外れてないはずだ」
「頭の数字は何だと思う?時間か?」
「だろうな……正確にはおそらく1時間単位で書かれている………
俺の勘だが、1時間おきに新しいデータを送信してくるんだろうな」
「…………」
遠藤は自分の考察を言い終えると、僅かに伸びをして森田に目を向けた。
何を思ったのか、森田はそのまま考え込んでいる。
「どうした?いい情報が手に入ったんだ……少しは喜んだらどうだ」
「いや……何故奴らがこれを支給品にしたのか気になってな………アンタはどう読む……?」
「………このギャンブルを円滑に進めたいんだろ?」
「いや……それもあるが………おそらくは……」
「……おそらくは?」
「ある程度予測はしていたが……おそらくは警告だ。
お前たちは我々の手のひらの上にいる、余計なことを考えるな……とな」
遠藤は息をのんだ。何故これまでそんな根本的なことに気付かなかったのか。
ギャンブルルームの利用歴やエリア間の移動歴などだけなら分からなくもない。
だが、重要な会話を見極めるには、無論会話の把握は必須。
つまり――
(盗聴っ……!)
考えてもみれば当然であろう。
ここに集められた者の中には修羅場をくぐってきた曲者が数多くいる。
万全を期して何らかの監視をするのは必須。
盗聴器ばかりかカメラもいたるところに仕掛けられている可能性は高い。
そして、事前に参加者の策を読み取ろうとするはず。
策を練りいざ反乱、となったら間違いなく本来の意味で首が飛ぶことになるだろう。
(対主催の目は潰えたな……)
遠藤は考える。
無論、彼自身はもともと細い糸の上を渡るような暴挙に挑戦する気はない。
いうなれば、盗聴されていたところで己のスタンスは変わらないのだ。
しかし、森田はどうか。
お人好しで、且つ平井銀二に心酔している。
余程のことがなければこのギャンブルに乗ることはないだろうと思っていた。
だが、万が一もある。
望みが潰えた今、森田が乗る可能性は十分にある。
そうなれば真っ先に狙われるのは近くにいる自分だ。
逃げるなら、或いは殺すのならば、今しかないのではないか。
遠藤はそっと森田の様子を窺う
見たところ、森田に変わった様子はない。
(早計、か……?)
分からない。
が、下手な行動は自らの首を絞めることになろう。
(警戒は必要だが……ひとまずは保留だな………)
遠藤は保留――とりあえず先延ばしにしようと、そう結論づけた。
ちょうどその瞬間、コンピュータから電子音が響く。
* * *
南郷もまた、森田や遠藤のいるショッピングモールを訪れていた。
目的は武器の補充、そして安全な隠れ家を見つけること。
南郷は、いまだ己のなすべきことが分からなかった。
ただ、生きたいという気持ちが漠然とあるだけ。
あの青年のように人を殺すのか、ギャンブルで稼ぐのか、或いはアカギのような頼れる仲間を募るのか――
分からないからこそ、彼は身を隠したかった。
答えを出すのが怖かったから、せめてそれを先延ばしにしたかった。
自分では分からない、気付きもしない微かな恐怖であるが故に、その小さな壁を乗り越えられない。
先延ばしという自覚のない消極性を抱え、彼は建物の中に足を踏みいれた。
* * *
「新しいデータが送信されてきたようだな……」
ディスプレイには新しい文字列が表示されている。
遠藤は即座に時間を確認した。
「ほぼ15時……このデータを見る限りじゃ、案の定14時からのデータのようだな」
「俺達の手にすることができる最新データって訳か」
「ああ……多分、な」
二人は即座にデータを確認する。
重要なポイントは殺人者と近接地域に移動してきた者の把握である。
「いた……少なくとも俺達より後、このエリアに入ってきた奴………」
南郷という男。
参加候補者名簿と合わせて見る。
「遠藤……どうだ?」
「危険人物の可能性はさほど高くない……こいつも俺が誘ったんだが……
話した限りじゃさほど切れる人物じゃねえな………
一回三好って奴とやり合ったようだが、まだ一人も殺して無いようだし、逆にその三好って奴が他の奴を殺してる。
まあこいつが絶対乗ってないとは言わんが、積極派に襲われたって線が濃厚だろうな」
「そうか……」
どうするべきであろうか。
争いを避けるならここは隠れるべきであろう。
しかし、仲間を増やすチャンスは決して多くはない。
遠藤曰く遭遇してもリスクは少ないらしいが、その言を信じてもいいものかどうか。
南郷と無防備な状態で遭遇することだけは避けたい。
早く決断せねばならない。
行動を先延ばしする余裕などないことは承知している。
だがしかし、森田は迷っていた。
【D-7/ショッピングモール/午後】
【森田鉄雄】
[状態]:健康
[道具]:フロッピーディスク 不明支給品0~2 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:銀二の手掛かりを得たい 接近している南郷に対して対策を練る
【遠藤勇次】
[状態]:健康
[道具]:参加候補者名簿 不明支給品0~2 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:森田に警戒 森田を利用するか見切るかひとまず保留する 接近している南郷に対して対策を練る
※遠藤は森田に支給品は参加候補者名簿だけと言いましたが、他に隠し持っている可能性もあります
【南郷】
[状態]:左大腿部を負傷、低度の精神疲労
[道具]:麻縄 木の棒 一箱分相当のパチンコ玉(袋入り) 支給品一式
[所持金]:1000万円
[思考]:生還する 身を隠す場所を見つける
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