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見切り ◆6lu8FNGFaw氏


ウィンドウの黒い背景、緑の文字がチラチラと点滅を始めた。
……否、点滅しているように見えるのだ。

森田はぎゅっと瞼を閉じた。
目が画面の文字を追い続けることを拒否している。

半日モニターの前で画面を見続けて、いい加減疲れた。
一時間ごとに更新されてくるデータは膨大なものであった。
それをメモ書きで整理していくうちに、要点をまとめるコツのようなものは掴んだが、
頭の中が容量一杯でメモリ不足といった具合である。

しかし、半日かけてデータを収集したことは圧倒的に有益である。
森田は今、全ての参加者の中で一番、このバトルロワイアルの状況を把握していた。
誰がいつどこで、どのように会話し、動き、殺し合ったか…。
どのような人間がどんな考えを持って、理性を以って、または感情のままに行動してきたか…。
「主催者」側の人間でなければ本来知りえぬ情報…!
言わば、この島(世界)における“神”の目線…!


(…いや、待てよ。本当にそうか…?)
森田はふと、モニターから目を逸らし、俯いた。

(あ………!)
あることに思いが至り、思わず声を上げそうになるのを堪えた。

(……もし…俺が主催者だったら…このフロッピーは…)

森田は近くに座っている遠藤や南郷に気づかれぬよう、ゆっくりと息を吐いた。
(となると…。俺が次にすべき行動は何だ…?)

メモ帳にペンを走らせながらしばらく思案した後、森田は遠藤を盗み見た。
相変わらず参加者名簿を見つめている。
内容を頭の中に叩き込んでしまうつもりなのだろう。

南郷の方を見ると、あぐらをかいたまま、うつらうつらと舟を漕いでいる。
(…………………)

じっと南郷を睨みつけていると、南郷はふと視線に気がつき、森田の顔を見た。
「何だ……?」
「南郷…」

森田は近寄ってきた南郷の胸ぐらを掴んだ。
「ここがどこだかわかってるのか…」
「は…?」
「今、俺たちは戦場の中にいるんだぞ。わかってるのかっ…!」
「はあ…」
「自覚してくれっ…!」

森田は南郷を突き飛ばした。南郷はよろめき、呆然と森田を見た。
森田は顔を画面のほうに戻し、いらいらとキーボードを叩いた。

(何だ何だ…。八つ当たりか…?
クク…。ずいぶんイラついているようだな……。)
遠藤はその様子を名簿越しに眺めながら、ほくそ笑んだ。

南郷は場の空気にいたたまれなくなったのか、「トイレだ」と言い残して下の階に下りていった。

「森田…」
遠藤は森田に声をかけた。

「何だ…!」
「愛想が尽きたろう…?」
「……………」
「奴には戦おうという意志が感じられない…ただ留まっているだけ…。
お前はさっき、『南郷によって、救われる窮地もあるかも』などと言っていたが…。
そんな仮定になんの意味がある…?奴がどうやって役に立つと言うんだ…?」
「……今はまだわからない。だが…そのうち…」
「森田…!」

遠藤が立ち上がり、声を荒げる。こちらを見る森田の目には迷いがある。苛立ちや焦りが渦巻いている。
(もう一押しだ…)

「一体、何をいつまで待ち続けるつもりだ…?
そうこうしているうちに、お前の大切な人間が危険な目に遭うんじゃないのか…?」
「うっ…」
森田は遠藤から目線を逸らした。

「森田…。お前には非情と感じられる選択なんだろうが…。
南郷を見捨ててここを出ないか…?」
「ここを…?」
「そうさ。先程やったように、フロッピーはノートパソコンに入れて持ち歩けばいい。
バッテリーは数時間ほどしか持たないが、島に点在する建物を渡り歩けば充電くらいできるはずだ。
お前も、もう飽き飽きしてるんじゃないか…?ここにいつまでも留まり続けることに……」
「……………」

森田は何か反論したそうに遠藤を見上げていたが、やがて言った。
「そうだな…」

(折れた…!)
遠藤は心中で喝采を上げた。
今までずっと、この時のために退屈な時間を耐えてきたのだ。
森田に近づき、言い寄り、縛りつけ、翻弄する。
元々、一筋縄でいく相手だとは思っていない。だからこそ、回りくどい方法をとった。
意地の張り合い…。折れた方が負け…!全てこの瞬間のために耐えてきたのだ。

森田を同行させ、自分の意のままに操ること。それがゲーム開始以来の遠藤の狙いであった。

森田の強運…。
遠藤はそれに便乗したかった。
しかし、森田はカイジのように、弱者を助けようとする『悪癖』がある。
そのためなら危険な状況でも飛び込んで行きかねない。付き合わされるこっちの身が持たない。
だから、『見切りをつけさせる』必要があった。
一度、戦力にならない参加者を見限らせておけば、
次同じような事があったときも、見限るという考えにスムーズに辿り着きやすい。
その流れを作るために今までの行動があったのだ。

今ようやく、森田が遠藤の意見を聞き入れた。森田は唇を噛んでじっとモニターを見つめている。
「行くか…。南郷が戻ってくる前に…」
「待ってくれ。さっき言っていた『バッテリー』ってやつだが…」
「ああ……」
「ここにこれだけの数のパソコンがあるってことは、その…バッテリーも沢山あるってことだよな…?
バッテリーを沢山持っていけば、なかなか充電できなくても、
しばらくはノートパソコンを動かせるんじゃないか…?」
「ああ、型が合えばな」
「型…。俺はパソコンに関しては全く無知なんで、どの型がいいのかわからない。
できるだけ沢山探してきてくれないか…?」
「……………」
「頼むっ…」

森田は悔しそうな顔で遠藤を見る。遠藤は呆れ笑いを浮かべながら頷いた。
「仕方ねぇな…」

遠藤がバッテリーを抱えて戻ってきたとき…森田の姿はそこに無かった。

(逃げたか…?)
遠藤は森田がずっと座っていたパソコンの画面を見つめた。
黒い画面のウィンドウは先程と変わらず、緑の文字を表示している。遠藤は息を吐いた。

(いや…森田がフロッピーを置いていくわけがない。
こんな有利な道具を手放すはずがない。
それに、俺の元に置いて行けば、自分が『特定される側』になることくらい承知しているはず…。)

遠藤はパソコンの前に座った。あと5分で次の情報が送信されてくる。


「追って来ないな…」
「そうだな。だが、急ごう。できるだけ離れておきたい」

南郷と森田はE-7、ショッピングモールから出て森の中を南下していた。
二人は急ぎ足で、ある地点を目指していた。

森田が先程南郷に八つ当たりをした時、南郷の手にメモの切れ端を握らせていたのだ。
メモの内容は、自分がこれから遠藤の目をごまかしてショッピングモールを出ること、
その時に南郷にも同行してもらいたい、先に下に下りていてくれ、というものであった。

「森田…」
「何だ…?」

森田は振り返って南郷を見た。

「その…良かったのか?俺が同行者で…」
「ああ、もちろん…。さっきは刺々しい態度を取って悪かったな…演技だったんだ、許してくれ」
「はあ…」
「遠藤に気づかれぬよう、アンタにメモを渡したかったんだ。
俺は…遠藤からどうしても離れたかった。奴は俺を利用しようとしていたから…!」
「そうか…」
「アンタはちょっとのんびりしている所があるが、信頼できる。俺の直感だがね。
もううんざりなんだ…。騙し合い、身近な人間同士で潰し合うなんてのはっ…!」
森田の顔が険しくなった。何か嫌な出来事を思い出したらしい。

「…ところで、今どこに向かってるんだ?」
「温泉旅館だ…ここを真っ直ぐ行った所にある。そこに…さっき出会った男、佐原がいるんだ。
例のフロッピーで確認しておいたから間違いない」
「さっきの…?」
「そうだ…今のうちなら、仲間に引き込めるかもしれない」
森田は言いながら、早足で歩いた。


「やられた……」
遠藤は時計を見ながら、苦々しい顔で呟いた。
時計の長針が12の数字を過ぎても、画面が更新される気配が無い。
差込口を調べてみると、案の定フロッピーは抜き取られていた。

フロッピー内のファイルを立ち上げたままフロッピーを抜くと、画面がデスクトップに表示されたままになることがある。
おそらく、わざとそうしたわけではないのだろう。
森田はパソコンに疎いゆえに、データが破損するかもなどと危惧もせず、起動中にフロッピーを抜いたのだ。

(森田はもうここにはいないな…!)
遠藤は舌打ちした。

(だが…、それならそれで…!)
遠藤は、画面を一旦閉じると、慣れた手つきでパソコンを操作し始めた。


「佐原って男を仲間に…?」
南郷は足の痛みを堪えながら、必死で森田の後を付いて行く。

「そうだ…。奴は今混乱している…。数時間温泉旅館に篭ったまま、身動きできないでいる…。
なんとか説得して仲間にするんだ」
「だが、危険じゃないか…?あの男は銃火器を…」
「遠藤に誘導されて、佐原が今までの行動を話していたろう…?
誤射によって自分の首を絞めるようなことになってしまったと。
それに、さっき佐原は俺たちを撃てなかった…。
神経を逆撫でしないよう落ち着いて説得すれば、きっと…」
「しかし…」
「それに、俺は『切り札』を持っている。奴を説得する『切り札』を…!」

「切り札…?」
「そう…佐原の話に出てきた“板倉”という男…。佐原が誤射してしまった男だが…。
板倉は、1時間ほど前に死んでいるんだ…!一条という男に殺された…!」
森田の話、これは全てパソコンに送られてくる情報から得た物である。

「フロッピーが偽りでないことを信じてもらうには、フロッピーで得た『佐原に関する情報』を示せばいい。
佐原が話していないことも知っているのだから、納得してくれるはず…!
その上で、板倉の死を佐原に告げる…!
佐原の一番の懸念は、板倉によって佐原の悪評を流されること…。そして板倉に命を狙われること…!
その不安を拭い去ってやることができる…!」
「なるほどな…」
森田の話に、南郷は頷きながら相槌を打った。


「クク…転ばぬ先の何とやらだな…!」
遠藤はパソコンを操作しながら、一人笑った。
デスクトップには黒い画面が開き、緑色の文字が画面を勢いよく流れてゆく。

遠藤はバックアップを取っておいたのだ。
パソコンの起動の仕方もよく分からずまごついていた森田からフロッピーを借り、挿入した後、
フロッピーの中身をパソコン本体のハードディスクに保存しておいた。

画面に森田の現在位置が表示された。
ショッピングモールを出て、森の中を南下している。
向かう先は…温泉旅館。そこには佐原がいる。

「南郷と行動しているのか…。」
後を追おうかと思ったが、やめた。返り討ちにされたらたまらない。

(森田とは離れたが、フロッピーの中身を手に入れることができた。
このことを森田は知らない…!)

いつか、奴を出し抜くことが出来る筈である。
森田の位置を確認しながら、遠藤は低く笑いを漏らした。


森田は歩きながら、フロッピーを取り出した。

(このフロッピーに送られる情報は、一見『主催者』の持っている情報そのもののように見える。
だが、本当にそうか…?
南郷のことや、佐原のことは正しかった。今は『正しい情報』を送って来ているということだ。
だが…。後々、もしこの情報の中に虚偽の情報が混ざり始めたら…?
直接赴き、この目で確かめでもしない限り、情報の真贋…信憑性はわからないっ…!
主催者が『情報を操れる』んだから…!)

情報の信憑性を疑うのなら、これ以上情報を手に入れても混乱するだけである。
今までの情報は全てメモし、頭に叩き込んだ。
遠藤の持っていた参加候補者名簿を見て、参加者の名前も顔も、どういう人物かも把握している。
参加者達が、この島で半日間どういった行動をしてきたかも…十分把握した。

(今後、情報を鵜呑みにしていたら、危険だ…!
だから…俺は自分の足で歩き、自分の目で確かめる…!これはもう…)
森田は手の中のフロッピーを眺めた。少し躊躇するが、振り切るように首を振る。

(必要ない…!)
パキッとプラスチックの割れる音が響いた。



木々の奥に旅館の瓦屋根が見えてきた。
近づいていくと、こじんまりとした民家風の建物が姿を現す。

「行くぞ…!」
森田と南郷は、入り口を警戒しながら旅館の中へと入っていった。




【D-7/ショッピングモール/真夜中】

【遠藤勇次】
 [状態]:健康
 [道具]:参加候補者名簿 不明支給品0~2 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:森田の動向を探る、今後の行動について考える
※森田に支給品は参加候補者名簿だけと言いましたが、他に隠し持っている可能性もあります。
※森田の持っていたフロッピーのバックアップを取ってあったので、情報を受信することができます。



【E-7/森/真夜中】

【森田鉄雄】
 [状態]:健康
 [道具]:フロッピーディスク(壊れた為読み取り不可) 不明支給品0~2(武器ではない) 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:後々、銀二の助けになるよう準備をする このゲームの隙を見つける 
      遠藤を信用しない 南郷と行動を共にする 佐原を仲間にする
※フロッピーで得られる情報の信憑性を疑っています。今までの情報にはおそらく嘘はないと思っています。
※遠藤がフロッピーのバックアップを取っていたことを知りません。

【南郷】
 [状態]:健康 左大腿部を負傷
 [道具]:麻縄 木の棒 一箱分相当のパチンコ玉(袋入り) 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:生還する 赤木の動向が気になる 森田と同行する




094:息子 投下順 096:夜行
094:息子 時系列順 107:猜疑と疑惑(前編)(後編)
071:それぞれの試金石(前編) (後編) 森田鉄雄 107:猜疑と疑惑(前編)(後編)
071:それぞれの試金石(前編) (後編) 遠藤勇次 115:金の狩人(前編)(後編)
071:それぞれの試金石(前編) (後編) 南郷 107:猜疑と疑惑(前編)(後編)




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