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説得の切り札 ◆WdJ/TIgKPQ氏


「三好…」

二回目の放送を聞いたカイジは、美心が死んだ時ほどではないが、動揺を隠しきれずにいた。
一方で、不謹慎だと思いつつ…沙織の名前が呼ばれなかったことに安堵していた。
殺されたのは4人。
有賀が居なくなったためか、明らかにペースは落ちている。
(もしかしたら、もう有賀のような殺人鬼は…いないんじゃないか?)

田中沙織を探してアトラクションゾーンを北上しながら、微かな希望を胸に抱く。
しかし、その希望はすぐに打ち砕かれた。

「………っ!」

アトラクションゾーンの中程の木に、ぶら下がっていたもの…

切り離された、子供の首。

吊るされて大分時間のたち、半分乾きかけたそれは、見るも無罪な姿になっていた。
一瞬カイジは目を背け、込み上げてくる吐き気をこらえる。
恐怖と怒りの後、ただただ涙が溢れた。

果物ナイフを取り出し、震える手で死体を吊るしていた髪の毛を切ろうとした時。
揺れた死体の口周辺からはらりとメモが落ちる。
メモを手に取ったカイジは、急速に冷静さを取り戻し…乾いた血が付着した紙をじっと見つめる。
数分後…何かを決意したかのような表情で、ポケットにメモをぐっと押し込み、作業を再開した。
死体を下ろし、近くの茂みを掘って埋め…静かに手を合わせた。

一通り探し回ったが、沙織を見つけることはできなかった。このまま闇雲に探しても埒が明かない。
もう一度南下し、アカギに会って詳細を聞くほうが、まだ可能性は高いのではないか。
それに…もし、接触できたとしても、飛び道具を持つ彼女を前にたった一人で、
武器も小さなナイフだけでは、説得を試みる前に殺されてしまうかもしれない。
だが、こちらが複数でいれば奇襲はかけにくい。
複数でうまく囲むことができれば、説得のチャンスができる可能性もある。

(人を…探そう。)

カイジは重い足取りで歩き出した。




外に気を配っていた沢田は、ふと気配を感じて立ち上がった。

(誰か…来る。)

毒が仕込まれたナイフを構え、扉を小さく開ける。
体格からして、若い男。
かすかに足を引きずっている。負傷しているのだろうか。

沢田の存在にはまだ気がついていないようで、徐々にこちらに近づいてくる。
殺し合いに乗っているかは不明だが、休息している仲間がいる今、戦闘はできるだけ避けたい…
一度は身を潜めてやりすごそうとしたが、
近づいてきた男の服装、そして長髪に見覚えがあることに気づく。
そう、確か、ゲーム開始前に爆死した男を止めていた男…

伊藤カイジ。

涯から聞いた田中沙織の話では、伊藤カイジは対主催者の立場をとっていたはずだ。
それに、零も伊藤カイジに会いたがっていた。

沢田は接触を決め、裏口から外に出て、カイジの名を呼んだ。




「伊藤カイジ、だな?」

カイジは、名前を呼ぶ声に足を止めた。
相手の姿は見えない。

「誰だ?」

返事をしながら、思考を巡らせる。
こちらを殺すつもりなら、わざわざ声をかけてきたりはしない。
気づかれぬうちに奇襲をかけるほうがずっと簡単だ。
声をかけてきたということは、敵であれ味方であれ、何らかの情報交換を求めている可能性が高い。
その情報を相手が得るまでは、自分は殺されないだろう。

民家の影から、中年の男が現れる。
男の手にナイフを認め、カイジは一歩下がって距離をとった。

「脅かしてすまなかった。オレは沢田という。
 単刀直入に用件を言おう…同じ対主催の立場を取るものとして、お前と話がしたい。」

この男は、自分が対主催の立場をとっていることを知っている。
平井か、アカギか、井川ひろゆきか…自分を知る誰かと接触したのだろう。
確かに、対主催として味方が増えるのであれば、ここで沢田と話をしておきたい。
しかし、自分にはその前にやるべきことがある。

「申し訳ないが…対主催として動く前に、他にやらなきゃいけねぇことがある。
 アンタが手伝ってくれるなら話は別だが。」

「やること、とは?」

「…田中沙織という女性に、会う」

「田中沙織だとっ…!」

大きな声をあげた沢田の反応に、カイジも驚く。


「田中さんを知っているのか?」
「あぁ…」
沢田は、遠目で捉えた華奢な女性を思い浮かべた。赤松の最後の姿が脳裏をよぎる。

「仲間を一人…殺されたよ」

無念さを浮かべる沢田、そして絶句するカイジ。

あのとき田中沙織を止めていれば…。
あの後も一緒に行動していれば…。
こんなことには…ならなかった…っ!

「すまないっ…!俺のせいで…」
深く頭を下げ、うなだれるカイジに沢田は困惑する。
「何があったのかはわからないが…顔をあげろ。田中探しは手伝おう。俺達もいずれ彼女を探すつもりだったからな。」
顔を上げたカイジは、直後、はっとした顔で周りを見渡し、訝しげに沢田を見る。

俺…達?
まだ隠れている仲間がいるのか?

とっさに警戒を強めたカイジを見て、沢田は感心する。
カイジが一般人ではなく、ある程度修羅場をくぐってきていることは容易に想像がついた。
誤解を解くために、すぐに沢田は続けた。

「俺以外にあと二人、この中にいる。二人とも今は休んでいる。俺が見張りをしていたんだ。」

田中沙織の情報…対主催者の情報…
どちらもカイジにとっては今すぐに飛びつきたい情報だ。
しかし、3対1というこの圧倒的に不利な状況で、どこまで沢田を信じてよいものか読みきれず、躊躇もあった。


その時、沢田の後ろの民家の影から、二人の人影が現れた。
暗がりの中、カイジ相手を観察する。随分と若い。子供だろうか。

沢田はすっと移動し、二人の少年とカイジの間に立つと、振り返って呼びかけた。
「…涯、零、起きたのか。」
「はい…」
一人の少年はカイジと沢田を交互に見比べ、冷静に状況を把握しようと努めているようだった。
もう一人の顔に火傷のある少年は、守られるのは性に合わないといった風に拳を構え、一歩前に出る。
「涯、大丈夫だ。戦うつもりはない。零、お前が会いたいといっていた、伊藤カイジだ。」
「えっ!」
零と呼ばれた少年は、驚いて声を上げる。
(もっとも、だいぶ警戒されちまってるけどな。)
囁いた沢田の言葉に、零は少し考えた後、カイジに向かって歩き出した。

「伊藤…カイジさん。はじめまして。宇海零です。彼は工藤涯。」
少年は、自己紹介をしながら近づいてくる。カイジは警戒を緩めない。
見たところ武器は持っていないようだが…子供を使って油断させるつもりか?
しかし、次に少年の口から発されたのは、カイジの予想もしていなかった言葉だった。

「俺は…あなたがホテルで助けようとした、山口の、同級生です。
 彼のために泣いてくれて…ありがとう。」

カイジは、D-4のホテルで、見せしめのためだけに殺された男を思い出す。
自分が必ず敵をとると誓った男…。彼も、まだ若い子供だった。
目の前の少年と同じように。

「そうか…お前の、知り合いだったのか…。」

少年の心情を思い、カイジから戦う意欲は急速に失われていた。
沢田がナイフをしまい、涯も拳を下ろす。
やがてカイジも構えたナイフを下ろし、口を開いた。

「わかった…話をしよう。とりあえず家の中に入ろうか。」




「そうか…」

互いに情報交換を終え、田中沙織の様子を知ったカイジは、力なく呟いた。
状況は…沙織と別れた時より、格段に悪くなっていた。
棄権が出来ず絶望した彼女は、優勝狙いに目的を切り替え、参加者を無差別に殺し始めている。
あの時、沙織を一人にしなければ…もっと早く主催者の罠に気が付いていれば…。
後悔に押しつぶされそうになりながら、カイジは頭を下げ続ける。
「お前は悪くない。そう…自分を責めるな。」
沢田の言葉に少し落ち着きを取り戻したカイジは、3人を見つめて話し出す。

「無理を承知で…頼みがある。彼女を見つけても、どうか…危害を加えないで欲しいっ…!。」

田中沙織に仲間を殺された相手に、彼女を守りたいと伝えるのは、心苦しかった。
だが一緒に行動するからには…はっきりさせておかなければならない。
悲痛な表情を浮かべるカイジに、沢田が安心しろ、というように小さく笑い、言葉を返す。

「俺達が彼女を探したいのは、復讐のためじゃない…彼女を止めるためだ。
 悪いのは彼女じゃない。彼女に殺しを強いている、このゲームだ。そうだろう?」

零と涯も力強く頷くのを見て、カイジはもう一度、安堵のため息をついた。
この3人なら…共に行動しても衝突することはなさそうだ。


「そうと決まったら、田中沙織を止める作戦を考えねぇとな。零、お前が言っていた案はどうだ?」
「えぇ…田中さんを止めるために、ギャンブルルームで安全を買う案を考えていたんです。 」
なるほど…と言いかけたカイジを遮るように、零が続ける。
「でも、おそらく、その手はもう使えない。」
残念そうに言う零の言葉に、カイジだけでなく沢田も驚いた。
「そうなのか?いい案だと思っていたんだが。」
「既に…盗聴器でこの案を聞かれてしまった可能性が高い。
 俺が主催者だったら、長時間ギャンブルルームに籠る参加者がいれば、真っ先にそこを禁止エリアにする。」
あぁ…と呟き、沢田は床に目を落とした。

それでも…田中沙織に殺人をやめさせるには…優勝以外の道を示すしかない。

沈んだ空気を破るように、カイジも話し出した。
「俺にも彼女を説得するための手がかりがある。まだ使えるかはわからないが…。」

零が、メモとペンを差し出す。自分と同じ過ちを繰り返さないように。
受け取ったカイジは、さっと何かを書き、手で隠すようにしながらメモを見せた。

『ゲームは監視されたギャンブル。筆談はトイレで。トイレなら、盗撮の可能性が低い』


メモを読んだ3人ははっとする。
確かに、仕掛けられているのが盗聴器だけとは限らない。
トイレとはいえ確実に安全とはいえないだろう…客に見せず、主催者だけが監視すれば問題ないからだ。
こちらから相手が見えなくても、向こうにはこちらの行動も、情報も筒抜け。
まるで目隠しされたまま、ただ手がかりを求めてさ迷うだけ…。

ふいに零の頭に、クォータージャンプのときの記憶がよぎる。

(目隠しされた状況で、有利に立てたのは…相手の死角があったからだ。
 死角がないなら作ればいい。敵からは見えず…味方だけが覗ける死角を…っ!)

零は立ち上がり、3人分のデイパックとタオルを掴んで戻ってきた。
デイパックをコの字型に並べ、上からタオルをかける。
唯一開いた一面から覗きこむようにして字をかけば…体が壁になり、完全な死角になる。
内容がカメラに写ることはない。
簡単な方法だが、情報を主催者の目から隠せるのは大きい。
「なるほどな。ついでにタオルも首に巻いておくといい。万一カメラがあったらまずい。」
カイジは沢田が放ったタオル受け取り、ぐるりと首に巻いた。




作った死角の中で、カイジはペンを走らせる。

『上下水道は島外にある。水道管を通って脱出できる可能性あり』

「この作戦の前に、まずこいつをどうにかしなきゃだな…」

書き終えたメモを見せながら、カイジは首輪を押さえていまいましげに言った。

「…首輪は…外せない…。」

「え?」
唐突な呟きに、3人の視線が零に集中する。
「あ…いや…さっき、そんな夢を見てて、思わず…。ごめん…なんでもない。」
視線に気がついた零は、気まずそうに謝る。
「しっかりしろ。まだ寝ぼけてるのか?」
「ま、棄権詐欺する連中だ。優勝すりゃ外せるって保障もないがな。」
呆れ顔で言う涯と、笑いながらそれをフォローする沢田。
しかし、カイジは…真剣な顔で黙り込んだ。

「カイジさん、どうかしましたか?」
零の問いかけに、しばらくしてカイジは、ゆっくりと口を開く。

「…本当に、外せなかったとしたら?」
「…?」
「優勝しても、首輪が外せなかったら…」
ぐっと手を握り締め、語気を強めてカイジは続ける。
「俺は前、同じ主催者のギャンブルに参加したことがある。 その時連中は、勝者に賞金を与えると言ったんだ。
だがレース後、こっちが逆らえないのをいいことに…もっと過酷なゲームを強いてきた。
結局レース後賞金を取りに行くまでの道で…勝者の大半が死んだ…
俺だけが生き残ったが…一歩間違えたら、俺も死んでいたっ…!」
怒りを込めて言い放ったカイジに、3人は言葉を失う。

「あっ…」
直後、零は何かを思い出し、急いで標のメモを取り出しページをめくる。

(あった…!)

標のメモにも、はっきりとこう書かれていた。

『赤松、代打ちを知らない 試験でない可能性大 ⇒ 主催に優勝者を生かす理由無し』

殺し合いが代打ちの選抜でないならば、優勝者を生かすメリットはどこにもない。
それどころか、証拠隠滅、資金節約…殺すメリットの方が遥かに大きい。
そして主催者はその気になれば、顔も見せずに、優勝者を殺すことができる。

「そうだな…それしかない。」

標のメモを確認し、カイジは先程書いた水道の情報の下に書き記す。

『優勝しても生き残れない。生き残るには、主催者を倒すしかない。』

この情報を田中沙織に伝えれば。
沙織を止めるだけでなく、対主催者に引き込むことができるかもしれない。
いや…必ずできる。カイジには確信があった。
有賀に襲われたとき、騙されていると気づいた彼女は、驚異的な勇気と行動力で、危機を跳ね除けたのだ。
しかも彼女は一度主催に裏切られている。
再び裏切られる可能性を指摘すれば、彼女は主催を倒そうとするだろう。生き残るために。
主催を倒したあとは、上下水道など何らかの方法で脱出すると伝えればよい。

「策は整ったな。すぐ出発するか?」
沢田の言葉に、零が首を横に振った。
「まだ沢田さんが休んでいない。当初の予定通り、第三放送までここにいませんか?
 カイジさんも、少し休んだほうがいい。」
「俺は大丈夫だ。ならば、カイジに決めてもらおう。」

本当は今すぐにでも沙織を追いたいが…足の傷のこともあり、休憩も欲しい。
悩むカイジに、決定権は委ねられた。



【E-3/民家/黎】

【伊藤開司】
 [状態]:足を負傷 (左足に二箇所、応急処置済み)
 [道具]:果物ナイフ 地図 参加者名簿 島内施設の詳細パンフレット(ショッピングモールフロアガイド、
      旅館の館内図、ホテルフロアガイド、バッティングセンター施設案内)
 [所持金]:なし
 [思考]: 田中沙織を探し説得する
      仲間を集め、このギャンブルを潰す 森田鉄雄を捜す
      一条、利根川幸雄、兵藤和也、鷲巣巌に警戒
      赤木しげる(19)から聞いた情報を元に、アカギの知り合いを捜し出し、仲間にする
      平井銀二の仲間になるかどうか考える
      上水道、もしくは下水道へ続く場所を探す
※2日後の夜、発電所で利根川と会う予定です。
※アカギのメモから、主催者はD-4のホテルにいるらしいと察しています。
※アカギを、別行動をとる条件で仲間にしました。
※明日の夕方にE-4にて待つ、と平井銀二に言われましたが、合流するかどうか悩んでいます。
※第三放送まで休むか、外に出て行動するかは、次の書き手にお任せします。
※カイジ達は田中沙織に関する情報を交換しました。
その他の人物や、対主催に関する情報は、まだ交換していません。

【工藤涯】
 [状態]:健康 右腕と腹部に刺し傷 左頬、手、他に掠り傷 両腕に打撲、右手の平にやや深い擦り傷
     (傷は全て応急処置済み)
 [道具]:鉄バット 野球グローブ(ナイフによる穴あり) 野球ボール 手榴弾×8 石原の首輪 支給品一式×3
 [所持金]:1000万円
 [思考]: 田中沙織を探し、殺人を止める 零と共に対主催として戦う 
※石原の首輪は死亡情報を送信しましたが、機能は停止していません。

【宇海零】
 [状態]:健康 顔面、後頭部に打撲の軽症 両手に擦り傷 睡眠中
 [道具]:麻雀牌1セット 針金5本 標のメモ帳 不明支給品 0~1 支給品一式
 [所持金]:0円
 [思考]:田中沙織を探し説得する 対主催者の立場をとる人物を探す 涯と共に対主催として戦う 
※標のメモ帳にはゲーム開始時、ホールで標の名前が呼ばれるまでの間に外へ出て行った者の容姿から、
どこに何があるのかという場所の特徴、ゲーム中、出会った人間の思考、D-1灯台のこと、
利根川からカイジへの伝言を託ったことなど、標が市川と合流する直前までの情報が詳細に記載されております。

【沢田】
 [状態]:健康
 [道具]:毒を仕込んだダガーナイフ ※毒はあと一回程度しかもちません
     高圧電流機能付き警棒 不明支給品0~4(確認済み) 支給品一式×2
 [所持金]:2000万円
 [思考]:田中沙織を探し説得する 対主催者の立場をとる人物を探す 主催者に対して激しい怒り
赤松の意志を受け継ぐ 零と涯を守る



117:帝王 投下順 119:盲点
129:強運 時系列順 126:本心
108:水理 伊藤開司 126:本心
116:夢幻 工藤涯 126:本心
116:夢幻 宇海零 126:本心
116:夢幻 沢田 126:本心




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