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活路 ◆WdJ/TIgKPQ氏


(遠藤は、無事か…)

第二放送後。
森田は遠藤を殺してここに来たわけではないらしい…だが、まだ信用はできない。
他に気になるのは、一条…板倉を殺した男。
しづかが生きているということは、板倉が裏切ったのだろうか。
思考は頭の中をぐるぐると回るが、何一つ答えは出てこない。
とりあえず禁止エリアを地図に記したが、次の行動が思いつかなかった。
これから自分はどうしたらいいのか。
どうすれば、助かるのか。生きてここを出られるのか…

「これから…どうするんだ?」

(どうするって言われても…どうすりゃいいんだよ!オレが聞きてぇよ…)

しかたなく、佐原は聞き返した。

「南郷は、どうする?」
「俺は…」

南郷の頭に浮かんだのは、走り去って行った、森田の後ろ姿。

「首輪を探しにいこうと思う。」
森田の力になり、ほんの僅かでも、このゲームに抵抗する。
それが今自分にできる、唯一の役目だと思っていた。
地図を取り出し、記憶を辿りながら南郷は続ける。
「ゲームが開始してすぐ、一つの死体を見つけた。確かD‐5エリアのあたりだったと思う。
 もしあの死体がまだそのままなら、首輪を回収できる。」


佐原は目を閉じ、思考を巡らせる。

遠藤と森田。二人を前にして、あの状況で発砲できなかった。
いざという時に戦えなければ…例え銃を持っていても、オレは狩られる側だ。
だったら、たとえ手負いの仲間でも、共に行動したほうがいい。
それに…南郷は裏切らない。
いつのまにか、森田と同じように佐原も、そんな信頼感を抱いていた。

「…確証はもてないが…オレにも一つ首輪のあてがある。」
「おぉっ!本当かっ…!場所はどのあたりだ?」
首輪について話し出した佐原を見て、自分の作戦に協力してくれたのだと解釈し、南郷は笑顔を浮かべた。

森田は板倉が一条という男に殺されたと言っていた。
板倉がしずかともう一人の男と合流したのが、エリアF‐6のホテル前。
もう一人の男が一条だと仮定すると、もし彼らがホテルから遠くに移動していなければ、
板倉の死体はホテル近くにあるはずだ。
もっとも、万一まだ一条やしづかが残っていた場合、最悪の事態になってしまうが…

「教えてもいいが…二つ条件がある。一つ目は、危険があったとき、南郷を守りきる保証はできない。
 二つ目に、見つけた首輪はオレが持つ。それが条件だ。」
「…二つ目はともかく、一つ目は正直きつい…が、しかたないな。
 どのみち命がけのゲームだ。それで構わないよ。場所はどのあたりだ?」
「すぐ隣のエリア…F‐6だ」
「だったら…先にそっちへ行ったほうがいいな。終わったらD‐5に行こう。」


傷ついた南郷にペースを合わせ、二人で東に移動すること数十分。
ホテルを探索していた二人は、一つの部屋に踏み入ったところで、で足を止める。

「読みは当たったみたいだな」
「あ、あぁ…」
目の前には、懐中電灯に照らされて、
白いスーツを着た大柄な男性が、壁にもたれるように倒れていた。

黒崎の説明の最中に殺された、山口という男。
ゲームスタート直後に入り口に転がっていた、少年の死体。
どちらも目にしたとき、全身が硬直するほどの恐怖を感じたが、あくまで他人事だと、なんとか割り切ってきた。
だが今目の前に冷たく横たわるモノは、少し前まで佐原と会話し、共に行動していた相手だ。
その現実は佐原に重くのしかかる。

二人は、ゆっくりと死体に近づく。
肩に傷がある。それが致命傷になったのだろうか。
長いパーマのかかった髪は乱れ、首元に目をやると、懐中電灯の光に照らされて首輪が鈍く光った。
死体の歪んだ顔、微かな泡の跡、首にあるにかきむしったような跡。それを見て、南郷が呟いた。
「この死に方…D‐5で俺が見た死体と似ている。」
「ということは…そっちの死体も、一条が殺した可能性が高いな。」
一条、という名前は危険人物として、二人の頭に刻まれた。

「とりあえず一個目だな。」
ふぅとため息をつく南郷。
しかし佐原は、眉を寄せて死体を見つめたまま呟く。
「それははいいんだけど…どうやってはずすんだ?コレ。」

「あっ…」
南郷も眉を寄せ、しばらく考える。
「何か衝撃を与えて爆発させてしまえば、とれるんじゃないか?」
最悪首輪が壊れなくても、首のほうが…
南郷はその様子を想像しかけて、身震いしてやめた。
「確かにそれはアリだが…下手に近づくと爆発に巻き込まれるしな…。」
「その銃で撃ってみるのはどうだ?」
「この銃で首輪を?いや、それは…」

貴重な弾を死体に使うわけにはいかない。
それに、銃声を聞きつけて、より強い武器を求めて殺人鬼が集まってきたら、
今の佐原にはどうすることもできないのだ。
(くそっ…使えなきゃ、こんな銃、飾りじゃねぇかっ…!)

他に爆発させる方法はないかと、二人は頭を捻る。
「禁止エリアまで運んで、投げ込むとか…」
「うーん…もうちょい死体が小さけりゃいけるけど、コレを運ぶのはちょっとなぁ…。
 あんたは怪我してるんだから、実際運べるのはオレ一人だし…」
「役に立てず申し訳ない…」
「謝らなくていいからさ。落ち込む暇があったら考えてくれよ。」
「そ、そうだな…。そうだ、俺の持ち物が使えるかもしれない!」

佐原は南郷の持ち物に期待を寄せる。
手にした木の棒以外に出てきたのは、麻縄、パチンコ玉。
パチンコ玉を見て遠藤とのやりとりを思い出し、佐原は小さくため息をついた。


「縄を死体につけて、パチンコ玉を撒いた上をひっぱるのはどうだ?禁止エリアまで運びやすく…」
「まぁ…できなくはないけど…。移動するたびにパチンコ玉全部拾う気か?」
「ある程度のロスは仕方ない。今後使い道もないだろうしな。」
「いやそうじゃなくて。通った後にパチンコ玉が残ってたら、誰か追っかけてくるかもしれないだろ。」
「あぁそうか…ううむ…」

だが、他の方法…
リスクを覚悟して首輪に衝撃を与えたり、銃声を響かせたりするよりは
禁止エリアに運ぶというのは、まだ精神的に楽な方法に思えた。
禁止エリアでなくてもいい。何か、他の起爆条件を満たしてやれば…

(他に考えられる起爆条件…例えば…電波が届かない場所に置くとか…)

ふいに、佐原は、温泉旅館で辿りついた”圏外論”を思いだす。
マンホールから地下に潜り、電波を遮断する脱出法。
電波の遮断と同時に起爆する可能性を考えて、保留になっていた方法。
一時は森田達との遭遇ですっかり忘れていたそれが、再び光を取り戻す。

(ま…まてよ?板倉の首輪は、まだ爆発してないんだよな…。
 で、条件さえ合えば爆発する。ということは…)

首輪。マンホール。そして南郷の持っていた麻縄。
頭の中でその様子を思い描く。

(…試すことができるっ…!マンホールの中に縄をつけた首輪を落ろして、爆発するかどうか!)

思いついた名案に、鼓動が早まる。 


(そのためには…爆発させずに、この首輪を外さなきゃいけない。)

首輪を爆発させずに、板倉の首から外す。
思いつく方法は一つ…

佐原は覚悟を決め、木刀を握るように、レミントンの銃身を逆さにして両手に構えた。

急に明るくなった佐原の表情に、何か名案が浮かんだのかと期待していた南郷は
その行動を見て慌てだす。

「おい…何をするんだ?直接首輪を叩いたら、爆発した時に銃が痛むかもしれないぞ。」
「…叩くのは首輪じゃない。首と頭だ。」
「なっ…!」
「板倉の頭を潰して、首輪を取る。」
「そんな…」
「方法は、それしかねぇ。」
「ちょっとまて、さっきまで爆発させて取るって言ってたじゃないか…」
「それじゃダ…」
 理由を口に出しかけて、盗聴の可能性を思い出し、佐原はぐっと言葉を飲み込む。


この作戦を森田や主催に知られるわけにはいかない。
 筆談で説明しようとも考えたが、とりあえず面倒だったので後回しにする。
「やっぱり爆発させるいい方法は思いつかなかった。安全に外すにはこの方法しかない。」
「うっ…だ、だが…」

オレは、南郷と同じ”普通の”人間だ。南郷の気持ちはわかる。
オレだって、人間の頭なんて潰したくない。
でも、生きるためには、この方法しかない。

「…板倉は死んだ。死んだら何もできない。オレ達が生きる残るためだ。」
「佐原…」

道中みかけた死体を憐れみ、帽子を被せた南郷にとって、佐原の思考は常人のものとは思えなかった。

「南郷。頼みがある。手が滑らないように、その縄を貸してほしい」
佐原の頼みに、南郷は縄を渡す。
申し訳ない。自分は手伝えない。外で待っている。
そう言って南郷は佐原に背をむけ、ぱたりと部屋のドアが閉まった。


佐原は縄を銃身に巻き付けると、板倉の死体を横に寝かせ、懐中電灯を固定した。
目を背けないよう、ぐっと板倉を睨みつけ、銃身を振り上げる。

(うっ…)

…手に力が入らない。
体が、心が。
これからやろうとしている行為を拒否している。

それでも、やるしかない。

一度銃を下ろし、死体の脇に落ちていたジャケットを顔にかぶせる。
こみ上げる吐き気、ぞっとする感覚を抑え込み、心の中で繰り返す。

(板倉は死んだ。死んだら無力だ。もうただの物体なんだ…)

何度も、何度も、
自分に言い聞かせる。

(ここは現実だ。死んだ人間より、生きたオレの気持ちが優先される…!)

頬を涙が伝う。
あの時は、最後の最後で負けてしまった。
もう負けるわけにはいかない。

(負けるな…!オレが生きること、何よりそれだけを考えろっ…!)

佐原は歯を食いしばり、歪む視界の中、板倉の首元めがけて銃身を振り下ろした。


鈍い打撃音が響く間、闇に包まれたドアの外で、南郷はただ茫然と立ち尽くしていた。
首輪を爆発させることだって、結果的には死体を破壊することになる。
だから、佐原に嫌悪を感じること自体、偽善なのかもしれない。
それでも…

(首輪が外せるくらいまで、殴って頭を叩き潰すなんて…!)

やがて、中で物音がしなくなり、しばらく時間が経った。

「入っていいぜ。」

その声にドアを開け、部屋に踏み入ると、
板倉の上半身には、板倉のそばに落ちていたジャケットがかけられていた。
なるべく板倉のほうに目をやらないようにしていたが、その心配はなかったようだ。
なんと声をかけたらいいかわからず戸惑う南郷に、
佐原は無言で一枚のメモを差し出した。
そのメモに目を通し、南郷は驚きで固まる。

『森田は主催の手先だ。でなかったら、主催に騙されている。。
 首輪を調べれば脱出のカギが見つかる。だから主催は森田に首輪を集めさせたんだ。
 首輪を主催に渡してはいけない。主催の思うツボだ。
 オレはまだ爆発していない首輪を集めて、首輪を起爆させないで逃げる方法を探す。
 あと、盗聴には気をつけろ。このメモの内容は口にするな。』

「そんな…」

南郷は、佐原が首輪の場所を教えてくれた時点で、
森田の作戦に協力するつもりなのだと思っていた。
それなのに…まさかこんな流れになるとは…

「オレはこう思う。だから、こうするしかなかったんだ。」
「佐原…」
「D‐5に向けて、すぐにでも出発したい。あと、縄はもうしばらく貸りててもいいか?」

さっきまで死体を殴っていたとは思えないほど、明るい口調の佐原に
南郷は「あ、あぁ…」と返すことしかできなかった。


佐原と南郷は、ホテルを後にして、北に向かって歩く。
目指すのは、南郷が死体を見たと言っていたD‐5エリア。

南郷の心は揺らいでいた。
一度は自分の命まで懸けようと思った、森田の決意。
あの時の森田が、自分を騙しているとは思えなかった。
だが、佐原の言うことも理解できる。
もしかしたら、佐原の言うように、森田は主催に騙されているのかもしれない。

森田に対する敵対心には同意しかねるが
少なくとも佐原はD‐5に首輪があるとわかった上で
足手まといの自分を、見捨てずに連れてくれている。
悪い奴ではない…と思いたい。

(もう一度、森田に会って話がしたい。それまでは、なんとか生きのびないとな…。)

一方。

佐原は迷いのない表情で、南郷の傷を意識しつつも、歩くペースを速めていた。

板倉の首から首輪を抜き取ったとき、自分の中で何かが吹っ切れたのを感じた。
死んだら終わりだ。
だから、生きるためなら、なんでもやってやる。

南郷を切らなかったのは、少しでも警戒の輪を広げるため。
そして、以前佐原が森田を疑った際思いついた案…
主催や、参加者の動きを読める森田に、首輪集めに協力したと思わせ、
自分の作戦をカモフラージュするため。

(首輪を集めれば、脱出できるかもしれないっ…!)

そう思うと、5kgの銃の重さも、不思議と気にならなかった。

目的の首輪が爆発前であれば言うことなしだが、
爆発後の首輪だって、調べればなにかわかるかもしれない。
首輪は、生き残るための希望だ。
絶対に、主催に渡すわけにはいかない。
もし南郷がD‐5にある首輪を森田に渡すと言い出せば、銃で脅してでも奪うつもりだ。

最終目標は 島からの生還、ゲームからの離脱。
出来るかどうかではなく、出来なければ未来はない。

(森田…やっぱりお前は信用できないっ…!
 オレは自分のやり方で生き残ってやる…これが、オレの答えだっ…!)



【F-6/ホテル/深夜】

【佐原】 
 [状態]:健康 首に注射針の痕
 [道具]:レミントンM24(スコープ付き)、弾薬×29 、懐中電灯、タオル、浴衣の帯、麻縄、首輪、支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:首輪を集める 首輪を使って脱出方法を探る 自力で生還する 森田を信用しない、遠藤と会いたくない
※森田が主催者の手先ではないかと疑っています
※一条をマーダーと認識しました
※佐原の持つ板倉の首輪は死亡情報を送信しましたが、機能は失っていません
※D-5の首輪を回収後、マンホールで首輪の実験をしたいと思っています

【南郷】
 [状態]:健康 左大腿部を負傷  精神不安定
 [道具]:木の棒 一箱分相当のパチンコ玉(袋入り) 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:生還する 赤木の動向が気になる 森田の首輪集めを手伝うか迷っている  森田ともう一度話したい
※森田と第3放送の一時間前にG-6のギャンブルルーム前で合流すると約束しました。
※一条をマーダーと認識しました



122:再考 投下順 124:光路
121:慕効 時系列順 125:我執(前編) (後編)
111:転機 佐原 132:抜道
111:転機 南郷 132:抜道




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