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我執(前編) ◆xuebCgBLzA氏


F-4エリア商店街、南側入り口…。
銀二と原田は周りを警戒しつつ、商店街までたどりついた。
銀二の目的としていた場所とは、この商店街だったのだ。
だが…商店街に入ろうとした瞬間…。

ガシャン…!

商店街の中から聞こえた音により、二人の足が止まり、顔を見合わせる…。
「……ガラスですかね…?」
銀二は原田に意見を求める。
「…わからんが…商店街に人がいるっちゅうことは確かやな…」
つづいて微かながら、話し声が聞こえてきた…。
「何を言っているかまでは聞こえへんな…」
「だいぶ北側の出口に近いところで喋っていますね…」
「……その心は…?」
「商店街の構造ですよ……。アーケードの天井…左右の建物……。物音はより響き渡るはずです…。
 それでも聞きづらい物音ということは…かなり距離のあるところからの発信です」
「なるほど…」
言われてみれば、夜の商店街はその闇のせいでぽっかりと口の空いた洞窟のように見える…。
「まぁ…支障はないでしょう…。
 我々の目指していた場所は、商店街入り口から一軒目東側の…この家ですから…」
「せやけど…休憩の前に、放送を聞いとくんやろ…?」
「そうですね…ここが禁止エリアになってしまう可能性もありますし…。
少し商店街から離れて待機しましょう…話し声の主がこちらに来るかもしれない…」
二人は商店街の東側の茂みに待機…。
銀二はそこから病院を気にしているようだった。
一方、原田は商店街入り口を見張った。
当然、この時見張りを優先すべき場所は、商店街の入り口であるはずなのに、鋭い目つきで病院を眺める銀二に原田は違和感を覚えた。
そうしていると、背の高いスピーカーに電源が入った。

「…参加者の諸君、ご苦労。黒崎だ…

* *


……では、以上で放送を終了する。 引き続き、諸君の健闘を祈る」
原田は必要な情報を書き留めつつ、自分の知り合いの名が呼ばれなかった事に安堵する。
「……これでひとまず休める、っちゅうことか…」
ひとつ頷き、銀二が答える。
「では、目的の家に入りましょう…」
そう言い、二人は商店街へ戻る。
家の中に誰もいないことを確認した後、窓から病院とその辺りの道路が見える部屋に落ち着いた…。
そこで二人はこのゲームが始まってから、初めての食事を取りはじめた。
「私はこのゲームが始まってからの二時間、色々な準備をしていましてね。
 そのときにもここを使ったらすっかりここが気に入りまして」
「ほう…。しかし…なんとなくアンタに日本家屋は似合わんのう」
「フフ、それはお互い様でしょう…」
原田は銀二の見せる笑い(冷笑ではない)を初めて見た。
「まぁ…それはそうやな…。ここでは何をしとったんや?」
「このゲームに参加している人間を計るために小道具を作っていました…。
 その小道具を使って宇海零という少年と出会い、麻雀で戦いました」
「平井銀二とやりあったガキか…。難儀やのう…」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。とてもいい勝負だった…」
銀二は勝負のいきさつ、小道具を残したことを話した。
「ガキ相手にえげつない事やっとるやないか…。
 そのガキ、アイテムのお陰とはいえ、なかなかやるようやな…」
「えぇ。危うく私がカモられそうになりましたよ…。
 発想力…行動力…度胸…すべてに及第点を与えても良いでしょう…。
 いえ、彼の年齢を考えたらそれ以上か…」
銀二は、食べ終わったパンの袋を丸める…。
「一度会っておきたい人材やな……。
 アンタに再開して、どんな反応を見せるか…見物やで」

「そうですね…。
 彼のリアクションひとつで友好関係にも敵対関係になりうる…」
「敵対…?負けた事に逆上してぶつかってくるっちゅうことか?
 アンタが苦戦したほどの切れる奴やろ…?
 ガキとはいえ…そんな幼稚な真似するかね…」
原田はペットボトルの水を体に流し込む。
「あの頃の少年は多感ですからね…。
 それにこの状況だ…どんな人間も極限状態に追い込まれる…。
 冷静になれというほうが難しいでしょう…」
「それもそうか……。んで…これからどうする…?」
「ここで仮眠を取りましょう…。日が昇る前には出発したいですね…」
「―――どこに?」
少しの間の後、原田が聞き返す…。些細な質問ではあったが、これは行動決定権を持たれているが自分の納得のいくように事を運びたいという原田の意思表示でもあった。
「……零を捜します…。引き続き、見所のある人物も…」
銀二の頭に一瞬、森田の顔が浮かんだ…。
「兎に角、今は休みましょう…お先にどうぞ…。
 ニ時間後に起こします。都合よく壁掛け時計もある…」
はっきりしない目的を聞き、腑に落ちない原田…。しかし、睡眠は取れるときに取っておかなくてはならない。
起きた後、港の探索をするのだろうと思い、今は寝ることにした。
「わかった…。ほな、先に失礼するで…」
押入れから毛布を出し、横になる…。
余程疲れていたのだろう。五分もしないうちに意識が消えた…。

…と、思った刹那、何かが顔に当たり、覚醒する…。
起き上がりながら銀二の顔を見ると、銀二は真っ直ぐと自分に当たった何かを指差していた。
それは丸められた紙くずだった。
「何や…」
銀二は『開け』とあごで合図をすると、手元のメモ用紙に何かを書き始めた。
原田は紙を開き、息を呑む。

『声を出すな。筆談でこれからの目的等を書き出す。
 質問はその都度、紙に書いて見せる事。
 まず初めに身を隠す場所としてこの場所を選んだ理由。
 ひとつは、部屋の窓際にカメラの死角があること。
 この島にはカメラが点在している(理由は後)。
 カメラの死角で筆談を堂々とできる部屋が必要だった。
 しかし、単純にカメラの死角である部屋は多々ある。
 そこで二つ目の条件。病院前の通りを見渡せる部屋。
 片方が睡眠をとっている間、起きている方は窓から、
 病院の窓、及び病院前の通りを観察する。
 肉眼で確認できる限りの情報をメモする(これも理由は後)。』
一枚目は以上。原田は急のことで驚いたが「主催に知られてはいけない話」であるということ、「病院」がこの話の鍵であることを嗅ぎ取る。
銀二は二枚目を原田に手渡し、三枚目に取り掛かる。
『このゲームの概要について。
 このゲームは帝愛、蔵前、在全の三グループの共営により成り立っている。
 この島も三グループが共有しているものだ。
 表向きは遊園地をメインとした複合レジャー施設を装っている。
 が、それは、三グループが共営の病院をもつための口実である。
 次に、島に点在するカメラについて。
 それは参加者を監視するためだけではなく、第三者を楽しませるためにある。
 このゲームの上では、賭け、トトカルチョが行われている。
 それも相当数の世界中の成金が参加している。
 今回のゲームで動く金は、兆を越えると思われる。
 そのため、主催者は一時も参加者から目を離すことはできないのだ。』
一枚目と違って、だいぶ確信に迫ってきた内容に驚きを隠せない原田。
口をあけている原田に銀二は、三枚目を差し出す。

『私がなぜこの事実を知っているか。

  私がゲームの首脳会議に参加したからである。

 深い理由は聞かないで欲しい。
 そして、誤解もしてくれるな。私はやつらの差し金ではない。
 このゲームを持ってして、確実にやつらを討ち取りたいのだ。
 しかし、私は首脳から一番警戒されている。
 内部の者だった人間が参加しているのだから当たり前だ。
 では、どうするか…?やつらは十二分に準備をしていると思われる…。
 だが、それは正面突破に対しては…だ。
 だから、私はやつらのその傲慢の裏…虚をつく…!
 アカギや、零が考えているだろう角度とは別の角度から刃を突き立てる…!』
ピンと来ない原田、たまらず質問を紙に書き出す。
『何を考えとるんや わいにも知る権利があるはずや』
『私がしたいのはこのゲームに参加する前に掴んだ『病院でのスキャンダル』の裏づけ…。
 しかし、私がガセをつかまされたのかもしれない。詳しくはまだ話せない。
 今はとにかく病院を見張る。休憩後から行動を起こす。
 病院にて収穫があり次第、内容を話す…。』
『ちょっと待てや…。そのスキャンダルが本物やったら、
 帝愛グループがぶっつぶれるぐらいの破壊力があるのか…?』
銀二は小さくうなずくが、「なぜ?」といったような顔をした。
『……ならば…おんりや…。
 このゲームが帝愛主催で、アカギやアンタについていって帝愛がつぶれるんは、
 わい…いや、置いてきた原田組にとってよろしくない…』
この言葉で原田の言いたい事を汲み取り、顔をしかめた…。
『原田組の後ろ盾が帝愛だったということか…。
 しかし残念ですが、そうはいかない。
 私に従わなければ、あなたの首が吹き飛ぶ事になる。
 アカギと私のギャンブルをお忘れか…?』
原田の顔が強張る…。

少し考えて、銀二がペンを走らせた。
『わかった…。
 では、スキャンダルのメッセンジャーをあなたに任せる。
 そうすれば脱出にせよ、優勝にせよ、スキャンダルを告発する前に、
 他の組や企業に後ろ盾を頼むなどの準備もできましょう…。
 この条件…飲んでいただけるか…?』
(わいをメッセンジャーに選んだということは、
 自分はこの地で死ぬということ…。
 この男がこのことに気付いていないわけがない…。
 刺し違えてでも奴等を討ち取ろうという覚悟を背負っている…)
原田は野暮な質問をせずにただ、うなずいた。
『感謝する。では、代わりというわけではないが、いくつか話しておく。
 私はある人物に首輪の爆発を阻止する方法がある、と伝えた。
 だからといって、すぐに試せる方法ではない。
 私の予測では、この首輪を爆発させるためには、
 電波を流し、爆発のチャンネルを呼び出す必要があると思われる。
 つまり、首輪が爆発する直前に妨害電波を流せば、首輪の爆破を阻止できる。
 しかし、その妨害電波の模索中に、
 爆発のチャンネルを呼び出すというかなり危険なリスクも付きまとう…。』
『わいは機械が苦手やからその辺の話はわからんが…、
 簡単に首輪を無効化することはできへんっちゅうことやな…』

『もう一つ、話す事があります。脱出の方法についてです。
 原田さんはお気づきかもしれないが、
 脱出の申請を行うはずのD-4ホテルは、禁止エリアになっている。
 私が見込んでいる人間なら、ここまでは容易に気付けるはず…。
 だが、問題はここから…。
 私は、何らかの方法で脱出の申請を行うことができる、
 と踏んでいる。―――何故か。
 帝愛グループの兵藤和尊は、正当なヒールだからだ。
 いくら不条理な条件を押し付けても、
 それを反故にすることは決してない…。
 具体的な方法としては、まだ分かりかねるが、
 電波の届かない地下からだったり、黒服に金を渡し、
 一時的に首輪を外す事ができたり…。
 確実に突破口はあるはず…』
原田は納得する。自分もまた、兵藤と面識があったからである。
『現段階での話は以上。
 申し訳ないが、私も命を懸ける以上はしくじることが許されないので、
 話せないことも多々ある。質問は?』
(確かに、腑に落ちん点はいくつもある…。
 しかし…この男が己の命を投げてまで奴等と戦うっちゅうことだけは本気や…。
 このゲーム…。銀二についていこう…!)
原田はそう決心して、首を横にふった。
『では、今は休息をとってくれ…。二時間後に起こす…。』
この紙を読み終えると、原田は銀二に背を向けるようにして寝転がった。
銀二は窓のそばに座し、外を見渡した。
星空が綺麗だ…。窓枠が額縁の代わりを成し、そこには一枚の風景画があった。
満月が…星空が…不気味にキャンバスの中央の病院を照らしている…。
夜空を見上げながら、このゲームの発端である夜を思い出していた…。







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