※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

一致 ◆6lu8FNGFaw氏


ひろゆきと平山はアカギを追う決心をした後、鷲巣と別れ、病院が見えない所まで移動した。
そしてまず首輪探知機の電源を入れる。

F-4の、地図で見ると商店街入口付近に3つの光点が集中している。その光はアカギではない。
その3つの光点は先程からずっと動く様子がないし、アカギがそこまで遠ざかるにはまだ時間的に早すぎる。
同時に、東へと勢いよく遠ざかっていく2つの光点が表示されていて、これは利根川と一条のもの。
それと同時に、西へと勢いよく遠ざかっていく2つの光点が表示されていて、これはアカギとしづかのもの。
あと、鷲巣のものである光点が病院に1つ、病院近くのギャンブルルームに謎の光点が1つ。

他、病院非常口付近に光点が1つ……。これは死亡した天の首輪である。
他、病院から少し離れた場所に光点が1つ。地図と照らし合わせた場所からいって、草むらの中である。
先程からずっと動かないのを見ると、どうやらこの首輪の持ち主ももう息が無いらしい……。

ひろゆきと平山が周囲を警戒しながらアカギの後を追い、F-4へと差し掛かった頃。
探知機に、利根川達のものと思われる光点が一度止まり、東の方からこちらを追う形に変化した。
同時にアカギとしづかのものと思われた2つの光点は急に二手に別れ、別々の方向へと動き始めた。

「別れた…!?」
走りながら、ひろゆきと平山は同時に落胆の声を上げる。
どちらがアカギの光点なのか判別が出来ないからだ。

「しかも、道標がここで止まってるぜ」
平山が地面に目を向け、言った。そこはちょうど商店街南側入り口、路地の交差点にあたる場所だった。



「……僕達も二手に分かれて探すか?探知機はアンタに預けてもいい…!」
「それは…。もし俺の見つけたほうがアカギであれば、正直、俺じゃ足止めさせておける自信がない。
奴とは顔見知りではあるが、一応、敵同士のようなものだからな。逃げられてしまうかも…。
だから、俺が一人で行動してもあまり意味がないんじゃないか」
ひろゆきの提案に、平山は肩を落とし、答える。

(まあ、敵と認識されてたかどうかも怪しいが、名を騙ってたんだ、良く思われちゃいないだろうし…。)
平山が自嘲気味に考えていると、ひろゆきが探知機を見て声を上げる。

「ぐっ…、利根川達が近づいてくる…!」
「ひろゆき、ここはいったん隠れて利根川達をやり過ごさないか」
「でも、ここでまごついてちゃ、赤木さんがどんどん離れていってしまう…!」
「いや、落ち着いて考えてみろ。
もし利根川達とアカギの向かう方向が同じだった場合、俺たちは利根川達の後ろを取れるんだぞ。
アンタは、アカギと話がしたいんだろう…。場合によっちゃ奴らからアカギを助けられるじゃないか。」
「平山…。」
「もし利根川達が見当違いのほうへ向かったらそれはそれで、安心してアカギを追える。
別れた光点のどちらがアカギなのか不明だから、確率は五分五分だが。
これが、今出来る最善の策じゃないか?」


平山は利根川と鉢合わせになる恐ろしさに胃をキリキリと痛めながらも、順序立ててひろゆきを説得した。
ひろゆきが焦っているのを見て、自分がしっかりしなければ、と思ったのだ。その思いが今の平山を強くしていた。


平山の言葉に、ひろゆきはとうとう頷いた。
もし自分が逆の立場であったら、同じことを提案するだろうと思ったからだ。

二人は、商店街入口の民家の中にずっと位置を変えず点灯したままの3つの光点を不気味に思いながらも、
少し離れたもう一つの民家の中へと身を隠した。


「ここで手掛かりは途絶えているか……。」
利根川は交差点の真ん中で苛立たしげに舌打ちした。

「どうしますか?予想できる方向としては…」
「待て、和也様が『トイレ』と仰られて通信が途切れてから、十五分以上も経っている。
もう一度、和也様に呼びかけてみる」
一条の言葉を制すると、利根川は携帯している盗聴器に向かって声をかけた。
「和也様…」

先程から和也に向かって何度も声をかけているのだが、返事が無いのだ。
「村上?……奴もいないのか。どうなっているんだ…」

まさか、和也様の身に何か起こったのではないか?そんな考えが利根川の脳裏を掠める。


いや、と利根川は己の考えを否定する。ギャンブルルーム内にいて「何か」が起こるなど考えられない。
……考えられないのだが、和也様がトイレに立ち、盗聴器のスイッチが消されてからかれこれ十五分。
異変が起こっていたとしても、和也様の身の危険を示すような『音』がこちらに届かない。察しようが無い。

「何か異変が起きている…。想像もつかないような異変が…。」
「異変、ですか…?」
「ああ。二人とも応答しないままなんておかしいじゃないか」
「そうですね…。では、一度引き返しますか。確かに、和也様の指示が得られないままでは…」

一条の言葉に、利根川のこめかみがひくついた。

“所詮、お前は指示待ち人間……!”
今まで生きてきた中で最も屈辱的だった言葉を思い出し、利根川の頭に血が上る。

「待て…。分かった。一条、お前だけ戻れ。俺はアカギを追う」
「ええっ…?」
「この蛍光塗料の跡、アカギがこれに気がついている可能性がある。
だが、気がついていない可能性もある。つまり、ただ単に、垂れ落ちていた塗料がここで尽きただけ、という可能性もな。
そこでだ。もし塗料に気がついていた場合、塗料の指し示す方向…。西側へと、アカギがわざわざ逃げるだろうか?
裏をついて、ここから別の方角へ逃げるのではないか」
「なるほど…確かにそうですね」
一条は利根川の言葉に頷く。



「だが、和也様からの情報によるとアカギはしづかを抱えて逃げているのだ、まだそう遠くへは行けまい。
だからお前は、西以外の3方位に注意を向け、アカギの姿を探しつつ元の路を戻るのだ。
アカギのこの塗料跡がもし罠であれば、アカギは俺達を出し抜いたことに安堵し、存外近くに留まっているかも知れん」
「なるほど…。和也様の下にも戻れますし、アカギも殺せたとすれば一挙両得ということですね」
「俺はもう一つの可能性、アカギがこの跡に気づかずに逃げている可能性を追う。
女一人抱えて走って、後ろを振り返る余裕がなかったかも知れんからな」
「わかりました…。流石は利根川先生ですね。緻密な洞察力…!」
「おべっかはいい…。よろしく頼むぞ」
「分かりました。和也様の下に戻り次第、すぐにギャンブルルームから連絡いたします…!
私達が互いに連絡できる手段はそれしかないですからね」
「うむ」
「では…お気をつけて」
「ああ」
二人はそこで頷き合うと、互いに反対方向へ向かって走り出した。


利根川は西へと走りながら、一条との会話を思い返していた。
(先程一条に話したことは、半分は本音…。だが半分は違う…!)

アカギは間違いなく塗料の跡に気がついているだろう、と利根川は考えていた。
あれ程の男が気がつかない筈がない。
では、利根川は何故、あえて他の3方向でなく、塗料跡の示す方向、西へと進むことを選んだのか。


(アカギは裏の裏をかく男だからだっ…!)
利根川はぎり、と奥歯を噛み締める。

(事実、すでに「裏の裏」をかかれて、病院前で逃げられたではないか。それも俺が予想した正反対の方向にだ。
つまり、あの時アカギは俺達を紙吹雪で撹乱させ、逃げたと見せかけてすぐ傍に隠れていたのだ。
そうして俺達が明後日の方向へと走っていったのを見計らって、逆に逃げた…!
ここから考えられること、アカギは罠を張ったと見せかけ、その実罠でもなんでもない方向に逃げている。
西方向に行った跡を残して、あえて西へ…!
あの時、俺の考え方は読まれていたのだ。そして奴は俺の洞察力の裏をかいてくる…!
多少それが危険な選択でも、構わず選択する。
『奴隷』を出したと見せかけておいて、実際に本当に『奴隷』を出すような選択でもな…!
まるで、あいつのように……!)

先程、一条が何気なく発した言葉を切っ掛けに、利根川の怒りはどうしようもなく沸騰し全身を焼き尽くすように熱く広がっていた。
鬼の様な形相で、路地を駆ける。
冷静さを欠いている状態。だが、今の利根川はそれに気がつかない。
結果としてはアカギの逃げた方向に無事向かっているのだが、
今の精神状態でアカギと出くわす、その危険性にまで考えが及んでいなかった。


利根川と一条が別れた数十秒後、平山とひろゆきは民家の入り口からそっと外へと出てきた。
「利根川が向かうことになったな…」
「ああ…。」
「……大丈夫か?平山…」

幾らか平常心を取り戻したひろゆきが、平山を気遣う。
平山は、額にびっしり脂汗をかいていた。夜目にもそれがはっきりとわかる。
「……大丈夫だ。それに、逆に考えてみると、これは安全でもあるんだ」
「あ、安全…?」

ひろゆきは目を見開いて平山を見る。平山は言った。
「利根川と合流した直後に他の参加者に襲われ、別れてからずっと、俺は不安でたまらなかった。
奴に見つけられたらどうしよう、リモコンを作動したらどうしよう、ってな。
だが、逆にこっちが利根川を見張り、後を追っていれば、どうだ…?
へまさえしなけりゃ、俺が利根川に見つかることはことはないじゃないか」
「なるほど…。怖い相手だからこそ、相手をよく見て、相手の死角に居続けることで、結果的に逃れるわけか」
「それに、俺は奴らの仲間に関する情報を探りたい…!」
「平山…?」
「ここへきて、ようやく気がついたんだ。
俺の記憶力…今までの経験…利根川達の話していた言葉…!
これを繋ぎ合わせたら、何か重要な切り札になるかも…!」
平山は拳を握り締めた。


「切り札、って…?」
「参加者の中にいる、俺達にとっての敵の存在…!」
「敵…利根川達に指示を出している仲間か。でも、それが…?」
「今ここで順番に説明してる時間はない。利根川の後を追おう。そのうち機会があれば説明する」

ひろゆきは頷き、平山と共に利根川を追い始めた。
アカギの可能性のある光点は2つとも、もう探知機の圏外になっている。
だが先程、利根川の走っていく方向、西側に、アカギの可能性のある光点の1つは進んでいったのだ。
二人にとって、利根川を追うことと、アカギを追うことは今や同じことであった。


時は数分前。
民家に隠れ、利根川達が現れるのを待つ間、平山は必死に頭を巡らせていた。
思えばゲーム開始当初、利根川にいいようにやられてから、不安と緊張でろくに考えていなかった。
だが、今は利根川の興味の対象がアカギに移っている為、多少冷静になって今までを振り返ることが出来た。

平山が元々持っていた「参加者名簿」。
これは本来、他の参加者に比べてゲームが有利になるはずの代物である。
では何故平山は、このゲームで最初に出会った人物、利根川の人相や、利根川の危険性に気づけなかったのか。

田中沙織の持っていた名簿とは違い、平山の持っていた名簿には顔写真が載っていなかったのである。


順を追って話そう。
平山はゲーム開始直後、一応は自分の支給品を確認した。
銃火器など、ゲームを有利に進められる武器が入っているかもしれないと考えてのことである。

ここで利根川と出会う前に参加者名簿を目にしているのだが、
それなら利根川の情報を見ているはずなのに、利根川の顔を見て驚いたりしている。

平山がカイジに参加者名簿を防具代わりに譲ったのも、名簿に顔写真が載っていないので、
見知らぬ参加者に出会っても、名前を知らなければ情報が役に立たない不完全なものだからである。
平山の参加者名簿にはトトカルチョを示すと思われる数字も載っていない。
だから、どの参加者がより危険か、とカイジや沙織のように予想し、用心する術がなかった。
もし載っていれば、数字に強い平山は、その数字の意味を注意深く考察して、用心していただろう。
…利根川の倍率は決して低くないのだから。

利根川に出会った時には、まだ自分と「安岡」と「赤木しげる」の項目と、参加人数くらいにしか目を通していなかった。
死にたくないという願望に心を支配され、今為すべきことが見えていなかったのだ。
また、もし参加者と戦わなければいけなくなったとき、相手のバックボーンを知っていると、
いざ相手に止めを刺す時やりにくいというか、躊躇してしまうかも、という思いもあった。
だが、それは『死』という可能性から目を逸らしたいが為の甘えでしかない。
冷静であれば、参加者名簿全てのページに目を通し、内容を記憶することに勤めていただろう。

そうすれば、利根川幸雄の名前を聞いたその時に、ある予感が走ったに違いないのだ…。


名簿に簡潔に書かれた、『「帝愛」グループの「元」No.2である』…という、値千金の情報。
そして、参加者全員に配られている支給品、メモ帳。そこには『TEIAI』と薄く印字されている。
この二つの不吉な符号が意味するものは、一つ…!

以上の点を、開始直後から予備知識として心得ていたなら。
利根川に名前を告げられた直後か、悪くても利根川に肩を撃たれた直後、
命乞いなどせず即座に、一目散に逃げ出すことが出来たはずだ。
素人が銃を扱えば、走っている的に向かってめったに当てることなど出来ない。
多少なりとも冷静であれば気がつけたであろう。
利根川が平山を撃つ事が出来たのは、握手をするくらいの至近距離であったからである。

この恐ろしいゲームを開いている主催者グループとの接点……!
開会式で、ゲーム説明の為だけに躊躇せず人を殺せるような組織にいた、「元」幹部の言いなりになるくらいなら、
流れ弾に当たるリスクを考えても逃げたほうがずっとマシである。

だが、平山は持っていた情報を有効活用することが出来なかった。
運が悪かったのではない。他の参加者に話しかける前に、やるべき準備を怠っていたのだ。
今となっては、虚しい理想論に過ぎないが。

もっと理想を言えば、標がやっていたように、自分が名を呼ばれるまでの間、
名が呼ばれた他の参加者を観察し、顔と名前を一致させておくことが必要であった。
平山には瞬間記憶という才能があるのだから。
そうしていれば、平山はこの島でもう少し賢く立ち回れていた筈だ。


だが、平山は開会式で山口が死んだのを見て頭が真っ白になってしまった。
死を恐れたがゆえの茫然自失。故に、頭が回らなかったのだ。

ひろゆきと事務所で出会ってからは、幾分冷静になり、希望を持つことが出来た。
その時に、ひろゆきと話をしながら参加者名簿やパンフレットに一度目を通し、内容を記憶しておいた。

その後、カイジと出会い、カイジに利根川の詳しい情報を聞く。
帝愛が主催者であること、利根川が元幹部であった事実をカイジからも聞く。
メモにあった「カイジ」「兵藤和也」「遠藤」「一条」そして「利根川」が『帝愛』のキーワードで繋がっていること。
その時、遅ればせながらようやく平山は『帝愛』という言葉の持つ意味、重要性に気が付くことが出来た。


さて、時間を利根川、一条が交差点で話し込んでいた時まで進める。
ここで平山はもう一つの重要な会話を耳にすることになる。

 「何か異変が起きている…。想像もつかないような異変が…。」
 「異変、ですか…?」
 「ああ。二人とも応答しないままなんておかしいじゃないか」
 「そうですね…。では、一度引き返しますか。確かに、和也様の指示が得られないままでは…」
 「待て…。分かった。一条、お前だけ戻れ。俺はアカギを追う」
 「ええっ…?」


利根川と一緒にいる人物が『一条』であるということ。
そして、二人に指示を出している人間が『和也様』…兵藤和也であること。
利根川は、メモに書いていた当初の目的通り、兵藤和也と一条という仲間を見つけ、共に行動していたのだ。

平山は一字一句違えずメモの内容を記憶している。
遠藤はまだ放送で名前を呼ばれていないので、殺せていないのだろう。
同じく、伊藤開司も。
そして、『参加者名簿』にあった情報。

一条…『帝愛傘下の「元」カジノ店長。現在は7億の負債を抱えている』

兵藤和也…『帝愛グループ会長の嫡子。会長直々に指名してゲームに参加』

(利根川、一条、奴らはこのゲームの主催者、帝愛の「元」重要人物。だから互いに協力関係を結んでいる。
三人の中の一番の黒幕は兵藤和也…!主催者の大ボスの息子…!
……確か、アカギを追おうとして探知機を確かめたとき、ギャンブルルームに一つだけ光点があって、何か引っかかってたんだ。
何故その光点は、一人だけ安全な場所に留まって、利根川や一条と共に行動していないのか、って。
利根川、一条、あと一人病院前で見かけた、サングラスに茶髪の人物…!あれがその一つの光点の正体で、兵藤和也だっ…!
主催者の息子ってことは、きっとこのゲームについて色々なことを把握しているはずだ…!)

(一人ギャンブルルームに残っているということは、利根川や一条から特別扱いされているということだ。
だとしたら…、しばらくギャンブルルームから動かないだろう。一条が戻り、利根川が戻ってくるまで、確実に。
で、少なくとも、他に帝愛繋がりの仲間はいない。あの簡潔な利根川のメモを見る限り…!
と、いうことは…、どうなる…?)


平山はある考えに至り、その思いつきに身を震わせた。
(いや、ちょっと待て。そんなの、俺の柄じゃない。カイジじゃあるまいし……!)

平山はその考えを打ち消しかけ、ふともう一度思い直す。
(……待てよ。そうだ。これをカイジに話したらどうなる…?奴は仲間を探していると言っていた。
ということは、カイジに相談すれば、実現もまんざら不可能ではない…のか……?)

平山はもう一つの事実に気が付く。
(いや、というか元々、利根川とカイジは落ち合う約束をしていたじゃないか…!
……いや、だからこそだ…!だからこそ、約束より前に行動し、奴らの不意を突く……!)

(奴ら三人を奇襲するっ…!)


平山の考えた策はこうである。
自分はとにかく、気づかれぬよう利根川を尾行し続け、利根川がギャンブルルームに戻るまで追いかける。
その間、途中でひろゆきに別行動をとってもらい、アカギを探しながら、首輪探知機で他の参加者も探してもらう。
出来ればカイジも見つけ出してもらい事情を話し、もっと出来れば、ひろが説得してアカギにも協力してもらう。
その他にも、出会った参加者達の中で、入れてもいいととひろゆきが判断した場合、仲間を増やしてもらう。
ひろゆきは他の参加者に話しかける度胸があるし、人を見る目、観察眼も鋭いので、仲間探しの役は適任である。
そして、利根川がギャンブルルームに戻り、中に入ったら一度ひろゆき達と合流。


三人はいつか必ずギャンブルルームから出てくる。そこを奇襲する。
銃火器や爆弾を持っている相手なので、不意打ちで命を奪うのも止むを得ないかもしれない。
戦うにしても、どうやって銃に対して応戦するかはこれから考えなければならない。
だが、事前に心積もりしておけば、いきなり出くわすのと違って何かしら手はある筈である。


……先程、利根川と一条の会話を民家の中で盗み聞きしながら、平山は自身の思いつきに興奮していた。
しかし、今こうして息を潜め、利根川の背中を追っていると、だんだんと不安が頭をもたげてくる。

利根川は案外すぐに諦めてギャンブルルームに戻ってしまい、三人は移動してしまうかもしれない。こっちが準備する前に。
それに、こんな大雑把な計画にひろゆきが賛同してくれるかどうかも分からない。
第一、そう上手く事が運ぶとも思えない。
カイジと出会えない、アカギが見つからない、他に仲間を見つけられないなど、不安要素が山のように存在する。
見つけられたとしても、カイジは田中を探し続けていて、断られるかもしれない。
アカギに至っては、たとえひろゆきが言ったとしても協力を得られる自信が全く無い。せいぜい敵に回らないよう話をつけるくらいしか…。

何より、今ここで利根川が後ろを振り向き、撃たれたら終わりだ。

平山は、自分から3メートルほど先を早足で移動するひろゆきに目をやった。
利根川は息を切らせながら路地を走っているが、二人は路地の脇の森の中に入り、木陰に隠れながら追っている。
一人が利根川に見つかったら、もう一人が利根川の不意を突くため、同時に見つからないよう離れているのだった。


先程ひろゆきと打ち合わせしておいた。

(もしひろゆきが先に見つかったら、ひろゆきは日本刀を構えて利根川の目を引き、話しかけて時間稼ぎ。
その時に俺が持っている防犯ブザーを鳴らし、利根川の注意を音へと逸らす。
その隙をついてひろゆきが利根川に斬りかかり、怪我を負わせて逃げる。出来れば利き腕の右腕に。

で、もし俺が先に見つかったとしてもやることは同じだ。
俺が何とか話かけて利根川の注意を引き、その間にひろゆきが出来る限り近づいて横から斬りかかる。
俺と利根川との距離はだいぶ離れているから、利根川が俺に近づこうとするより先にひろが利根川に近づくほうが早い。
…もちろん、有無を言わせずリモコンを向けられ、操作してしまったら、それまでだが…。)

利根川に、もし気がつかれたらと思うと、体の芯が凍えそうなほどの悪寒が体中を取り巻く。

(だが、相手の姿が見えないよりは、見えている今の方がまだずっとマシだ…!
奇襲される心配だけは無いしな。生存確率を少しでも上げる為だと思えば……!)

平山は、2度目にカイジに会ったときの事を思い出していた。

 「平山…生き残れよ…。
 こんなこと言っちゃなんだけど…あんたは…“使える人間”だ…!
 誰から見てもそうだ…!それだけの記憶力があれば…!
 だったら…あんた自身が使え…!
 卑屈になるなっ……!あんたがあんたを使うんだ……!
 セコい真似してでも…生き残れっ……」


平山はフ、と笑った。
今の自分の考え方、行動は、まさにあの時の言葉に集約されている。
(敵の後ろをコソコソ付いて回るなんて、確かにセコいやり方だ…!)

だが、と平山は自分に言い聞かせる。
(これは大事な事なんだ…!
利根川が追っているのがアカギだということ、
利根川の仲間に主催者の息子がいるということ、
利根川の一番の敵がカイジだということ…!
俺の今後の行動次第で、もしかしたら、何かがひっくり返るかもしれない…!)


平山は、一挙手一投足を見逃すまいと、利根川の背中を凝視する。
(俺の実現可能か怪しい空想よりも、とりあえずは今を生き延びることだ…!)

平山の切実な思いは、今や本物の決意へと変わっていた。
(俺がしくじったら、ひろゆきの命も危険に晒される……!
今度こそ………油断するものか………!)



【F-5/路上/黎明】

【一条】
[状態]:健康
 [道具]:黒星拳銃(中国製五四式トカレフ) 改造エアガン 毒付きタバコ(残り18本、毒はトリカブト) マッチ スタンガン 包帯 南京錠 通常支給品×6(食料は×5) 不明支給品0~3(確認済み、武器ではない)
 [所持金]:3600万円
 [思考]:カイジ、遠藤、涯、平田(殺し合いに参加していると思っている)を殺し、復讐を果たす
     復讐の邪魔となる(と一条が判断した)者、和也の部下にならない者を殺す
     復讐の為に利用できそうな人物は利用する
     佐原を見つけ出し、カイジの情報を得る
     和也を護り切り、『特別ルール』によって村上と共に生還する
     利根川の指示に従い、アカギを探しつつ和也の下へ戻る
※利根川とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、 その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※通常支給品×5(食料のみ4)は、重いのでE-5ギャンブルルーム内に置いてあります。


【F-3/路上/黎明】

【利根川幸雄】
 [状態]:健康 興奮状態
 [道具]:デリンジャー(1/2) デリンジャーの弾(残り25発) Eカード用のリモコン 針具取り外し用工具 ジャックのノミ 支給品一式
 [所持金]:1800万円
 [思考]:和也を護り切り、『特別ルール』によって生還する
     首輪の回収
     遠藤の抹殺
     カイジとの真剣勝負での勝利…その結果の抹殺
     鷲巣の保護
     病院へ向かう
     アカギを探し出し、撃ち殺す
※両膝と両手、額にそれぞれ火傷の跡があります
※和也の保護、遠藤の抹殺、カイジとの真剣勝負での勝利…その結果の抹殺を最優先事項としています。
※鷲巣に命令を下しているアカギを殺害し、鷲巣を仲間に加えようと目論んでおります。(和也は鷲巣を必要としていないことを知りません)
※一条とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、 その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※デリンジャーは服の袖口に潜ませています。
※Eカード用のリモコンはEカードで使われた針具操作用のリモコンです。電波が何処まで届くかは不明です。
※針具取り外し用工具はEカードの針具を取り外す為に必要な工具です。
※平山からの伝言を受けました(ひろゆきについて、カイジとの勝負について)
※計器からの受信が途絶えたままですが、平山が生きて病院内にいることを盗聴器で確認しました。(何かの切っ掛けで計器が正常に再作動する可能性もあります)
※平山に協力する井川にはそれほど情報源として価値がないと判断しております。
※黒崎が邪魔者を消すために、このゲームを開催していると考えております。
※以前、黒崎が携わった“あるプロジェクト”が今回のゲームと深く関わっていると考え、その鍵は病院にあると踏んでおります。
※E-5ギャンブルルーム前には、勝広の持ち物であったスコップ、箕、利根川が回収し切れなかった残り700万円分のチップなどが未だにあります。


【F-3/道路脇の森/黎明】

【井川ひろゆき】
 [状態]:健康
 [道具]:日本刀 首輪探知機 懐中電灯 村岡の誓約書 ニセアカギの名刺 アカギからのメモ 支給品一式×2 (地図のみ1枚)
 [所持金]:1500万円
 [思考]:赤木しげるから事の顛末を聞いた後、ギャンブルで闘う  この島からの脱出 極力人は殺さない  平山と共に利根川をしばらく尾行する 同時にアカギを追う
※村岡の誓約書を持つ限り、村岡には殺されることはありません。
※赤木しげるの残したメモ(第二回放送後 病院)を読みました。
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※鷲巣から、「病院に待機し、中を勝手に散策している」とアカギに伝えるよう伝言を頼まれました。

【平山幸雄】
 [状態]:左肩に銃創 首輪越しにEカードの耳用針具を装着中
 [道具]:支給品一式 カイジからのメモ 防犯ブザー
 [所持金]:1000万円
 [思考]:田中沙織を気にかける 利根川から逃れる術を探る カイジが気になる ひろゆきと共に利根川をしばらく尾行する
※計器に不具合が起きていることを知りません。 (計器の生体信号の不具合だけです。利根川の持つリモコンからの電波では正常に作動します)
※カイジからのメモで脱出の権利は嘘だと知りました。
※カイジに譲った参加者名簿、パンフレットの内容は一字一句違わず正確に記憶しています。ただし、平山の持っていた名簿には顔写真、トトカルチョの数字がありませんでした。
※平山が今までに出会った、顔と名前を一致させている人物(かつ生存者)
  大敵>利根川、一条、兵藤和也  たぶん敵>平井銀二、原田克美、鷲巣巌
  味方>井川ひろゆき、伊藤開司      ?>田中沙織、赤木しげる       主催者>黒崎

 (補足>首輪探知機がある、としづかが漏らした件ですが、それは和也しか盗聴していません。利根川と一条はその頃、病院に爆弾を仕掛けに行っていました。)
 (補足2>首輪探知機は、死んでいる参加者の首輪の位置も表示しますが、爆発済みの首輪からは電波を受信できない為、表示しません。)



130:宣戦布告(前編) (後編) 投下順 132:抜道
141:深緋な虚言 時系列順 136:ひとつの決着
130:宣戦布告(前編) (後編) 一条 137:紫苑の底闇
130:宣戦布告(前編) (後編) 利根川幸雄 136:ひとつの決着
124:光路 井川ひろゆき 136:ひとつの決着
124:光路 平山幸雄 136:ひとつの決着




| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー