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奇縁 ◆JsK8SvgrFA氏


「‥‥‥‥チッ、何で俺がこんな目に‥‥‥‥。クソッ!」
ふらふらとあてどもなく歩く平山の脳裏には、その言葉しか浮かんでこない。
日差しがやけに眩しい。
太陽は随分長い間、天の一番高いところに居続けるような気がして、ちっとも時間が進まないような感覚だけがある。


大体、あのアカギって野郎に関わってからロクな事が無い。
せっかく川田組の代打ちとして上手くいきかけた矢先、あの野郎が来て俺は組を放り出された。
刑事の安岡でさえ、連絡すらしてこない。


行く宛もなく、雀荘でわずかな金を稼ぎつつ、生活する毎日。
そんなある日のこと、どこのものとも知れない黒服に声をかけられたのだ。
「‥‥‥‥ぜひ、貴方の貴重な才能を、私共のギャンブルで発揮して頂きたいのです‥‥‥‥」
心のわずかな隙を突かれた平山は、言われるままに彼らの車に乗り込み、そこから先の記憶が無い。
気が付いたら、この気違いじみた殺人ゲームに巻き込まれていたわけだ。




とりあえず、支給品には反り返った棒状のものがあり、長い鞘を引き抜いてみるとずっしりと重い日本刀。
「マジかよ‥‥‥‥」
確かめるように刃先を指先でなでてみる。
「‥‥痛っ」
指先にわずかに切り傷。にじみ出る紅い血。真剣だ。
「‥‥‥こんな武器を支給してきやがるなんて‥‥‥‥。
 本気で殺し合いをしなきゃいけねぇのかよ!」
 ‥‥‥どうする、俺‥‥‥‥
 どうしようもねぇっ‥‥‥‥!」
平山はただ混乱し、ふらふらとあてどもなく歩くだけだった。


視野のはるか先に、人間らしき影があるのに気づいたのは何分前だっただろう。
「どうするっ! 俺!」
平山には咄嗟に決断ができない。


あれは人だろうか。しかし動かない。
もう少し近くに寄って確認してみようか。
‥‥‥人だ! 風体からして参加者だ!
あ、気づかれた!
どうする、俺!
逃げる? いやしかし、相手は武器を持っている? 持っていない?
あ、こっちへくる! ゆっくりと近づいてくる!
目が合った!!!


平山は、一度合わせた目をそらすことができない。
なぜならその相手の目は、平山がかつて見たことも無い、純粋な輝きを放っていたからだ。
しかし、いくら純粋な輝きとはいえ、ここは殺人ゲームの真っ只中である。
平山の手は反射的に日本刀に伸びていた。




邦男は、平山の影を正しく認識していなかった。
ただ、そこに人が居る。
先ほどの黒崎のスピーチの意味さえ、理解できていなかったのである。
死んだはずの兄。殺したいほど憎い父親。
その姿を再び見たこと。驚愕。


‥‥‥何もかもが判らないまま、支給されたものを受け取り、この殺し合い‥‥彼にはその意味すら解っていなかったが‥‥‥の中に放り出されたのだ。


彼にしてみれば、平山の姿はまさに、
「兄か? 父か?」
の確認でしかなかったのである。


平山と邦男の距離は、少しずつ狭まっていく。
殺らなければ、殺られる。
平山は覚悟を決めた、つもりだった。


邦男に向かって日本刀を抜き、小走りで大きく振りかぶって力いっぱい一気に振り下ろす。
その瞬間。
平山は間近で邦男の目を凝視してしまう。
なんて純粋な、目。




振り下ろした刀に、勢いは無い。
もともと、強い決心のもとに振り下ろした刀ではなかった。
しかし、その刀は邦男の体を翳めた。
飛び散る血潮。
「わーーーーーーーーーーーっ!!」
驚くほど大きな声を上げて倒れる邦男。




どれくらい時間がたっただろうか。
平山は、倒れた邦男をじっと見つめていた。
「‥‥‥ついに‥‥殺っちまった‥‥‥」
初めての殺人。
いままで自分の命を賭けて何かしたことも無い代わりに、人の命を軽々しく弄んだことも無い。
そんな自分が、人を殺してしまった。
平山にとっては、そのことがただひたすらショックで、その場を動けなかったのである。
しかし、だんだん冷静さを取り戻していくに従って、本当に死んでいるのか?と言う疑問も頭をもたげてきたのも確かであった。


脈を診る。生きている!


平山は、反射的にポケットから綺麗にアイロンの当たったハンカチをとりだし、邦男の血を拭う。
「‥‥‥傷は‥‥浅い!」
頭にあるのは、「殺してなくて良かった」という安堵の気持ち。



邦男が倒れたのは、傷のせいと言うより急な不意打ちによるショックだった。
正気を少しづつ取り戻したとき、目に映ったのは自分の傷の血を拭ってくれる平山だった。
「兄さん‥‥‥‥‥」
そう、今まで邦男に対してこんなに優しくしてくれるのは、兄の勝広だけだったのである。
邦男は、平山に心を許した。
否、平山にではない。
平山のことを、兄と重ねて見てしまったのである。


黙々と血をふき取る。男は気が付いたようだ。
そのすがるような目。
本当に殺さなくて良かった。
生きていてありがとう。
「やっぱり間違ってる‥‥こんな人の命を簡単にやり取りするこの糞ゲーム!」
冷静になった平山に、沸々と怒りが込み上げてくる。
「とりあえず‥‥‥あそこに見えるのは病院か。
 こいつをなんとか手当てしてやらないと。
 立てるか? お前」


平山は邦男に肩を貸し、二人でゆっくりと病院目指して歩き始める。
歩きながら、平山は思う。
「‥‥‥そういえば‥‥俺、こんなに誰かから本気で頼られたことあったっけ?
 いつもいつも‥‥‥俺は結局利用されてばかりだった‥‥‥‥」




【E-5/道路沿い/真昼】


【平山幸雄】
 [状態]:健康
 [道具]:日本刀 不明支給品 0~2 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:対主催 吉住邦男の怪我の手当てをする


【吉住邦男】
 [状態]:浅い刀傷
 [道具]:不明支給品0~4 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:平山幸雄(※)についていく 神威秀峰を殺す
     ※平山幸雄と、兄である神威勝広の区別が曖昧です




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