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代用品 ◆uBMOCQkEHY氏



涯はうっすら目を開けた。
「大丈夫か・・・?」
だが、意識はまだ、体に戻っていないような感覚であり、
指を静かに動かし、声を漏らすことが涯にできるその場での意思表示だった。
赤松は肩を撫で下ろした。この少年は助かる。
「私はこの少年を君が殺したと考えてしまった…しかし、それは誤解だった・・・すまない」
 赤松は後方を見つめた。そこには、標の死体があった。
 赤松は標の亡骸に近づいた。少しの間であったが、共にこのゲームを戦った少年。
彼はこのゲームの主催者を倒そうと考えていた。
このゲームに参加する者達の命を救おうとしていた。だから、その少年を守ろうと決めていたのに…。
守ってあげられなかった。
赤松は標の亡骸を抱きかかえ、それを茂みの中へ隠した。あまり人目に触れさせたくなかった。
人は死体を自分の死と連想させてしまうのか、生理的に忌み物として見てしまう傾向がある。
このゲームで最後まで戦ってきた少年をそのような目で見てほしくはなかった。
 この肉体には標という人格はすでに存在しないと分かっているものの、まだ、人格が宿っているような気がした。
離れてしまうと、標は寂しい思いをするのではないのか。できれば、そばにいてあげたかった。
 その時、赤松は標のズボンのポケットのふくらみに気づいた。そこには標の支給品であるモデルガンが入っていた。
標は殺人を快楽とするマーダー有賀によって、殺された。有賀は標のリュックを持っていったものの、その目的は殺人であり、標が直接、身に付けているものまでは、興味が回らなかったのだ。
せめて、これを肌身離さず持ち歩けば、標の側にいてあげることの変わりになるのではないのか。
そう考えた赤松はモデルガンを自分の胸のポケットにしまいこんだ。
 赤松は再び、涯の元へ戻る。涯は震えながら、身を持ち上げようとしていた。
「お、俺は・・・」
「しゃべらなくていい・・・」
赤松は涯の体を抱きかかえると、茂みの奥へと歩き始めた。
 標を殺した者はまだ、近くにいるかもしれない。
自分一人でも助かるかどうか分からないのに、手負いの少年を抱えては尚更である。
赤松はとにかく人目に付かず、ゆっくり休める場所を探すことを優先した。

 どれくらい歩いただろうか。辺りは薄暗くなり、鳥の鳴き声が遠くから聞こえてくる。誰とも会わなかったのが、ある意味奇跡である。
闇が体を覆っていく。その重みが体にのしかかってくる様で、どこか不快な息苦しさを覚えさせる。この頃になると、涯も歩けるまでには回復していたが、二人の間には会話が全くなかった。それが赤松の息苦しさを助長させているようであった。
その時、視界が開けた。一軒の民家を発見した。しかし、民家といっても、錆びたトタン屋根に、朽ちて穴があいた壁と、もはや人が住むべき場所ではない。しかし、人工建築にめぐり合えたことは赤松の心に親しみに近い安心を与えた。
赤松は民家の内部を観察した。室内はやはり、屋外同様、床の一部が朽ちて穴が開いており、嗅覚を少しずつ狂わしてしまいそうなかび臭いにおいが漂っている。しかし、夜風は確実に凌げることができるはずである。
「今日はここで休んで、明日に備えないか?」
 赤松の提案に、涯はしぶしぶ同意した。中根との戦いで、涯は右腕と腹部を負傷している。何より、鎖のように体に巻きついているような疲労感が涯の体を支配していた。この感覚を拭い去り、生き抜くためにも、今は休むしかなかった。

 二人はきしむ床に腰を降ろした。しかし、二人の間は、お互いのテリトリーに触れることがないような距離感が保たれており、赤松にはそれが越えることができない壁のように思えた。
「よかったら、傷、手当てしようか?」
 赤松は涯に尋ねるが、涯は赤松がその場にいないかの如く、身動きすらとらない。
 室内に流れる、しばしの沈黙。
 赤松は重たい沈黙に耐え切れなかったのか、少しずつ自分のことを話し始めた。自分は何者か。なぜ、このゲームに参加しているのか、標はどのような少年だったのか。
 一通り離し終わった頃だろう。床を見つめていた涯が口を開いた。
「欠陥住宅だな・・・」
「え・・・?」
 赤松は涯の一言に反応して、その視点の先を見た。床が腐り、そこから柱脚が覗いているのだが、そこにはあるべきものがなかった。
「ホールダウン金物のことかい?」
 ホールダウン金物とは、補強金物のひとつで、地震や台風時に柱が土台や梁から抜けるのを防ぐのに必要不可欠なものである。それがこの民家には存在していなかった。職種が建設業である赤松にとって、この金物は常識の範囲である。しかし、自分より年下の学生で、建築関係に携わっているとは思えない涯が瞬時にそれを見抜いたのだ。赤松は無論、驚く。
「もしかして、建築に興味があるのかい?」
 涯は今まで重たかった口を開いた。
「俺は、かつて、廃屋に住んでいた…」

 涯は自分が孤児であること、施設からの庇護を離れ、自立したかったために、占拠屋をやっていたこと、それはあまりのぼろアパートであり、その修復のために、建設関係の本を少しがかじっていたことを言葉少なめに話した。
赤松は、それを静かに聞いた。涯が少しだけだが、自分に心を開いてくれた嬉しさという感情もあったが、それ以上に、涯の生い立ちに愕然とした。この少年は自分の半分の人生しか生きていないはずである。しかし、自分がこれまで生きて感じた苦痛を全て足したとしても、それには及ばない苦痛を彼は味わっているのではないか。
赤松は涯に同世代の少年が持ち合わせている、無邪気な明るさがないことを不思議に思っていた。このような苦境の日々が、彼から明るさを奪っていたのだろう。
赤松は前々から気になっていた涯の左手首を見た。そこには古い切り傷がある。この傷はかつて人間学園に反旗を翻すために付けたものだが、その事実を知らない赤松には、現実から逃れるために、自殺しようとして付けたものに思えてならなかった。それに、先ほど、この地で死に場所を求めている老人にも出会っている。涯も同じような目的で、このゲームに参加しているのではないのか。
赤松は自分の知りえる限りの情報を一つの紐のようにつなぎ合わせることで、こう結論付けた。彼には生きる希望が必要だと。

涯が一通り話し終わった後、赤松は口を開いた。
「将来、うちの会社に勤めないか?」
 赤松は自分が建設業に勤めていること、気のいい仲間がいること、建設という分野がいかに楽しいものであるかを、穏やかな彼からは連想できぬ熱い口調で説明した。穴平建設での生活が彼に未来と希望を与えてくれるはず。涯を救いたい。その気持ちが彼の口を動かしていた。
「君は社会を生きる能力はある。だが、生きるために必要な技術をまだ、身に付けていない。その技術が建設という分野であってもいいんじゃないかな?私が身元保証人になるよ。きっと、この仕事が君の人生を豊かにするものだと思っている・・・僕は君の人生の手助けをしたいんだっ・・・!」
 この言葉に涯は眉を曇らせ、赤松をにらみつけた。
「押し付けがましい親切心か…反吐が出る」
 赤松は息を詰まらせた。何を言っているのだっ・・・この子はっ・・・。
「助けてもらった恩があったから黙ってはいたが、もう俺は…嘘や誤魔化し…その場限りの善意面には辟易としているんだっ…!」
 涯は勢いよく立ち上がった。
「何が手助けしたいだっ…!そもそもあんたが俺を助けたいのは、標という奴を守れなかった罪の重さから逃れたいためだろう。俺を助けることで、一人の少年を救えなかったが、もう一人の少年は救うことができた…!人数としては、プラマイゼロ・・・!一人の少年を救えなかったという罪は帳消し・・・!と、自分の自分は自分に言い聞かせるためだろ…!いわば、俺は標という奴の代用品っ・・・!」
「それは・・・」

 赤松の目の前の視界がぐにゃあと歪む。涯の言葉は、赤松自身さえ気付かなかった暗部の感情をさらけ出していた。涯と行動を共にしている間、標を一人にしなければ、導は死なずにすんだのにと自身を責めていた。しかし、涯が回復していく過程の中で、その気持ちが薄くなっていくのも感じていた。それは涯が回復することを単純に喜んでいたからだと思っていたが、今思えば、自分が責める要素がなくなった安心が働いていたことも否めなかった。
 赤松は胸ポケットをぎゅっと握った。そこには標の遺品であるモデルガンがある。これは標の代わりとして、持ってきたものだ。ああ、自分はいつも代用品で罪の意識を薄めようとしているな。
 赤松は苦しそうな面持ちで涯を見つめた。涯の言葉は否定できない。しかし、涯には人生に希望を見出してほしい。涯の未来を思う、この感情もまた、否定はできないのだ。
 しかし、赤松の気持ちとは裏腹に涯は言葉を続ける。
「仮に、二人でここから抜け出したとしても、あんたが身元保証人になる確証はどこにあるんだっ・・・!このゲームで俺を助けたことで、その罪悪感から解き放たれ、簡単にその約束を反古してしまう可能性もあるっ・・・!所詮、俺はあんたの自己満足のためのコマっ・・・!」
「それは違う・・・」
 私の本心はっ・・・!
「お取り込み中、申し訳ない・・・」
 二人は声の方向を振り向いた。赤松は言葉を無くした。そこに立っていたのは、帝愛から失脚した男、生前、標が警戒していた男、利根川幸雄だった。




その後の流れ

平山が生存不明となり、利根川、新しい奴隷を赤松と決め、懐柔作戦開始。
(共に主催者を倒そう!皆で助かろう!)

赤松さんは標が警戒していた人物と分かっているものの、その言葉を信じたくなる。

利根川、主催者を倒すためには、兵藤和也という男が必要であることを話す。
しかし、和也が帝愛の人間であるということを話すと、
なぜ、助けなければいけないのか、
あんたは帝愛に復帰したいのではないかと問い詰められるため、
謎の多い人物だか、頭が切れる人物で、打倒帝愛には必要不可欠な存在と話す。

自分は多少医学に心得はある。
リュックの中の武器関係(あくまでリュックの中の武器)は全て赤松さんに預ける。
だから、涯を私に預けてくれないか?と、利根川、おねだり。
(赤松が利根川の企みに気づいた時の人質として。赤松さんと分かれたらすぐに殺す予定なのだが)

これで奴隷完成かと思いきや、赤松さん、利根川がいないとき、
社長から兵藤和也が主催者兵藤の息子だと聞いていたため、
なぜ、帝愛元側近のあなたが兵藤の息子である和也の存在を知りえてないのか、
と問い詰め、あなたは信用できないと利根川を標のモデルガンで脅す。
「ふん、あのおしゃべりが・・・和也様のことまでしゃべっていたかっ・・・!」
社長、利根川の殺人リストに追加決定。

利根川、一旦、引き下がるも、モデルガンであることをすぐに見抜き(だって、ヤクザだもん)、
赤松さんの手を撃ち抜く。赤松さんの指が飛ぶ。

―あの平山のように、奴隷は、常に皇帝の命令に忠実でさえ、あればよいのだ。
皇帝の思考を考えようとする奴隷はいらぬ。

かつて、カイジという皇帝の思想の裏をかいて、二度刺してきた奴隷の存在を赤松さんと重ね合わせて、
利根川、心の中で勝手にご立腹。Fuck you・・・!
「ぶち殺すぞ・・・ゴミめら・・・!」

利根川、銃口を涯に向けて、発砲。

その時、赤松さん、銀と金神威編での邦男が秀峰の銃弾を避けたときのように、肘を前に突き出し、涯を守る。
「人間が希望そのものっ…!この少年は、私の希望だっ・・・!」
赤松さん、利根川へ特攻。自身が利根川と乱闘になることで、涯が自身の身のかわいさから赤松さんを見捨てて逃げてくれるだろうと考えたため。

だが、脚を撃たれ、腹を撃たれ、利根川に拳が届く前に、その場に崩れる。

――希望によって、ねずみは死ぬ。
利根川倒れる赤松を見つめながら、勝利に酔いしれ、注意力が飛散。
立ち尽くしているだろう涯に標準を向けようとした瞬間、
倒れていく赤松の後ろから、鬼の形相で涯、まさかのドアップ出現。
赤松さんが走りだしてすぐに、涯も走っていた。
いわば、赤松さんは盾状態。希望、迫る。

涯の光より速い拳炸裂。奴隷は三度刺す。

――希望によって、蛇は倒される。
利根川、左目を失明。涯はとどめを刺そうとするも、赤松さんに止められる。
「うまく、言えないが…人を殺してしまった人間の…世界は広がらない…必ず…閉じていく…そんな気がするんだ…」

利根川から銃を奪い、赤松さんと場所移動。
「この腕じゃ、もう設計図がかけないな…」
「なら、俺が書き方を覚える・・・あんたの代わりに働くっ…!」
涯、デレる。

赤松さん、自分が知りえる情報を書いたメモと生前、標が一目置いていた零の存在を伝える。
Gw5emrGiE氏の「状況」と、沢田と零のやり取りの対になるような回想。
ちなみに、この時、赤松さんは零を探そうと提案するも、標は
「今、彼には彼の考えがあって、行動しているはず。
かえって、僕達と合流することで、彼の計画に制限が生まれてしまうかもしれない…
何より、もし、志が一緒であれば、彼とはこの地のどこかで、また、会える…そんな気がするんだ…」
と、提案を却下する。
その頃、零は打倒主催者という考えには到達してないどころか、ギャンブルで大損していたとは知らずに・・・。

赤松さんは涯に伝えると、安心したのか息絶える。
「あんたはゼロじゃないっ…人間だっ…!」
赤松さんはユーアーヒューマン。

涯、打倒主催者を決意。標、赤松さんの思いを託すため、零を探す。




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