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出猟 ◆uBMOCQkEHY氏


雷鳴のような銃声と同時に目の前で鮮血がはじけ飛ぶ。
鮮血は無機質な台所と佐原の半身を赤く染めた。
佐原はライフルを力なく下し、遠藤の亡骸を見下ろす。
遠藤の頭部は、スイカ割りでものの見事に砕かれたスイカの如く、果実のような肉片を辺りに散ばせていた。
遠藤の首輪がカランと音を立てて床に転がる。
「死んじまったんだよな…遠藤…」
本当に遠藤を殺害したのはオレなのか。
酩酊に近いまどろみが佐原の心に沁み込んでいく。
精神の安定をはかろうとする本能からなのか、佐原は呆然とその惨状を眺めながら、事実を持て余していた。
しかし、腕に残る痺れるような発砲の感覚と、鼻腔に絡みつく異臭が“これが現実なのだ”と佐原に訴えかけている。
「あ……」
佐原はぱらぱらと涙を落としていた。
一人の人間の命を奪った。
遠藤が積み上げてきた人生の積み木を考えもなく壊してしまった。
死ぬことに怯え、その恐怖に耐えきれず一線を越えてしまった。
覚悟を決めていたにもかかわらず、その現実を突き付けられた途端、罪の重みが佐原の心に圧し掛かる。
「遠藤……」
遠藤だけではない。
南郷の命も踏み台にして生を貪っている。
自分はそこまでして生き延びる価値がある人間なのだろうか。
「俺は……」
佐原は虚ろな表情で、ライフルの銃口を己の顎に押し付けた。
「頭……ふっとべば……楽になるかな……」
人間の頭部は、強固な頭蓋骨の中に柔らかい脳髄が詰まっている。
弾丸が人体に与えるダメージは弾丸重量と弾速によって決まる。
弾丸が脳髄に命中して運動エネルギーが人体に伝わると脳髄内での通過経路上に、瞬間空洞と呼ばれる空洞が生じる。
瞬間空洞が発生すると、外へ押し出そうとする力が働き、脳髄は瞬間的にギュッと圧縮される。
この圧力に耐えることができないために、結果的に頭蓋骨は破裂してしまう。

「愚か者か……」
遠藤に言われた言葉を失笑混じりに呟いた。
楽になりたい。
無気力な感情のままに、佐原はその引き金を引く。
ライフルの銃口が火を噴いた。
水飛沫のような血煙が再び、空気の中で舞い上がった。



「はぁ……はぁ……」
佐原は床に膝をついていた。
顔からは大量の汗がだらだらと滴り落ちている。
血飛沫は佐原の頭部からではなく、遠藤の死体からであった。
引き金を引く直前、佐原は銃口を遠藤に向け直し発砲したのだ。
佐原はわなわなと口を震わせ、自分自身に叱責する。
「何やっているんだっ!!俺はっ!!!!」
危うかった。
殺人を犯したという事実を受け入れることができず、まどろんだ感覚で誤魔化そうとしていた。
「くそっ!」
気が緩めば、死神に命を狩り取られる。
南郷の件で悟っていたにもかかわらず、佐原はその甘い誘いに乗りかけていた。
「これは俺の人生だっ!!誰かに取られてたまるものかっ!!!」
佐原は床を何度も悔し紛れに叩く。
それは怯えや無気力、絶望といった死神が好みそうな腐臭を叩きつぶしているかのようでもあった。
「俺は生きるんだっ!!!生きてやるんだっ!!!」
他人の命を奪って生きることの何が悪い。
弱肉強食。
自然の営みの中では至って当然の摂理ではないか。
遠藤達は力がなかったから、死んだのだ。淘汰されたのだ。
なぜ、獣に許されて人間には許されないのか。

「俺は戦えるっ!!!戦ってやるっ!!!」
間違いなく佐原の魂は“生”を求めていた。
それを掴み続けるためならば、幾多の屍を踏み越えていったって構わない。
否、踏み越えなければ、命は簡単に自分の手から離れてしまうだろう。
その覚悟を佐原は改めて己の心に言い聞かせた。
「絶対生き延びてやるっ!!!」
獲物に飛びかかる肉食獣さながらの敏捷さで、佐原は遠藤を漁った。
トレンチコートの懐やズボンのポケットなど、至る所に手を突っ込み、自分の延命に繋がる可能性を探し続けた。
「これは……」
佐原は遠藤が握りしめていたディバックを開け、息を呑んだ。
4本のダイナマイトが入っていた。
「武器だ…」
佐原は黙ってダイナマイトを自分のディバックに移し替える。
民家内に点在する別のディバックも物色した。
他の支給品――拡声器などは直接的に役に立たたないものばかりだったので、あえて置いて行くことに決めた。
勿論、石田と遠藤の所持金である1800万円のチップは回収している。
「ほかには……」
佐原は遠藤の首輪に気付いた。
すでに板倉の首輪を持っているため、必要ない代物ではあるのだが、
板倉の首輪が破損してしまった時に禁止エリアを確かめる手段がなくなってしまう。
それに首輪は爆発機能を備えている。
何かの足しになるかもしれない。
そう考えた佐原は遠藤の首輪もディバックの中に突っ込んだ。
ディバックを閉じる直前、一気に増えたチップに目がとまる。

「あと……7200万円か……」
考えてみれば初めて会場に連れてこられた時、参加者の人数は40~50人ぐらいであった。
このゲームの棄権費用は1億円。
ゲーム開始時、皆、1000万円のチップが手渡されている。
単純に計算すれば、1億円を集めて脱出できるのは4~5人しかいない。
しかも、参加者によってはギャンブルルームで所持金を浪費している者もいるはずである。
時間が経てば経つほど、島全体の所持金の総額は少なくなってしまう。
黒崎は、棄権者は先着順であり、その席に限りがあることを示唆していたが、なるほど、その通りである。
「急がねぇとな……」
1億円を得るためには誰かを殺して奪わなければならない。
もし、殺害するなら、遠藤が逃がした4人の男女からであろう。
チップ回収の目的もあるが、下手に彼らによって噂が広まれば、佐原が不利な立場になるのは目に見えている。
「まずはアイツらを……狩るっ!!!」
残酷な決意を胸に秘め、佐原は民家を飛び出した。



【C-4/民家/早朝】

【佐原】 
 [状態]:首に注射針の痕
 [道具]:レミントンM24(スコープ付き) 弾薬×19 ダイナマイト×4 懐中電灯 タオル 浴衣の帯 板倉の首輪 遠藤の首輪 支給品一式
 [所持金]:2800万円
 [思考]:自力で生還する ほかの参加者(特に黒沢・沙織・仲根・しづか)を狩る
※森田が主催者の手先ではないかと疑っています
※一条をマーダーと認識しました
※佐原の持つ板倉の首輪は死亡情報を送信しましたが、機能は失っていません
※黒崎から嘘の情報を得ました。他人に話しても問題はありません。
※遠藤の首輪は、大型火災によって電池内の水分が蒸発し、夜中3時頃に機能停止しました。しかし、佐原は気付いてはおりません。



151:繰返 投下順 153:帰参
148:愚者(前編)(後編) 時系列順 151:繰返
148:愚者(前編)(後編) 佐原 157:慟哭




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