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帰参 ◆uBMOCQkEHY氏


「グォ…グォ…」
熊のようなイビキをかいて眠る和也を、村上は横目で見ながらため息をついた。
(もうすぐ一条様と利根川様が戻ってくるというのに…)


話は少し遡る。
村上が誤ってコーヒーを溢してしまい、淹れ直そうとコーヒーメーカーの準備を終えた時だった。
扉から顔を出した和也は村上に言い放ったのだ。
「俺、疲れたから仮眠するわ…あと、よろしく…」
「えっ…」
あと、よろしくって一体何を…。
言葉を把握しきれず、ギャンブルルームへ急いで戻ると、ソファーの上で丸くなって眠る和也の姿があった。
こうして、具体的な指示も与えられないまま、黒服として許される行動であろう屋外の監視を続けているのだ。


(普通なら丸投げじゃなくてこうして欲しいとか頼むのが筋なのに…)
今の村上は参加者の肩入れすることを黙認されている黒服。
多少のマニュアルの違反行為は許される。
ただ、許されているとは言っても当然、限度がある。
限度を越えれば、再び、黒崎から厳しい厳罰が言い渡されるのは明白だ。
どこまでが村上という黒服のボーダーラインなのか。
それを探すのはどこに埋まっているのか分からない地雷を避けながら歩くようなものである。
「利根川様、一条様、早く戻ってきてください……」
彼らが戻ってくれば、もう少し具体的に指示を出してもらえるかもしれない。
そんな淡い期待を持ちながら、村上は小窓からの監視を再開した。



(アイツも気の毒というか……馬鹿だよなぁ……)
和也はうとうとしながら、心中で村上を嘲笑っていた。
一条は鷲巣に殺害され、利根川はアカギ達に捕らわれたかもしくは殺された。
そうとも知らずに、忠犬のように主人を待つ村上が可笑しくしてしょうがないのだ。
無論、仮眠という選択を取ったのは今後、失った戦力を一人で補うためである。
未だに20人以上の参加者が存在している。
第2回放送が終わった時、名前を呼ばれた参加者は4人しかいなかった。
殺し合いに乗る人間が粗方共倒れしたという線も考えられるが、一番の理由は皆、疲れ始めているからであろう。
疲労困憊の参加者を殺すのは容易い。
しかし、自分も疲れていては意味がない。
仮眠は生気を回復させるための準備。
和也達が最後にギャンブルルーム使用料を支払ったのは第2回放送終了後、三人で3時間――1800万円支払っている。
支払ってから1時間経つ頃、一条と利根川はアカギ暗殺に駆り出されているので、残り1200万円は和也の使用料となっていた。
もし、一人で使い続けたとすれば、使用料のタイムリミットは朝の7時頃。
(それまでは寝て過ごすとするか……)
今後のことは起きてから考えよう。
和也は大きなあくびを一つすると、夢の世界へと引き込まれていった。


「一条様…」
サーバーに貯まったコーヒーを眺めながら、村上は呟く。
コーヒーの準備は整った。
後は一条が戻るだけである。
しかし、一条も利根川も戻ってくる気配はない。
時計の針だけが黙々と時間を刻んでいく。
村上の中で一条の身に何かあったのではないのかという不安が過る。
しかし、ふてぶてしい程に眠りこける和也の様子から杞憂だと自分に言い聞かせる。
それが信頼ではなく、開き直りとも知らずに――。
「どうか戻ってきてください…」
村上が切実な願いを口にした時だった。
村上の目に映った人影。
長髪ながら清潔感を感じさせる整った髪、品格ある紺色のスーツ。
ゴミ袋のような物を引きずりながらこちらへ向かっている。
それは紛れもなく――
「い…一条様っ!」

「何っ!あいつ、死んだんじゃないのかよっ!」
村上の喜びと驚きが入り交じった甲高い声に和也も思わず起き上がる。
「え…?今、何とおっしゃって…」
訴えかけるような村上の鋭い視線に、肝の太い和也も笑みを引きつらせてしまう。
「ほ…ほらっ…一条を迎えに行ってやれよっ!」
和也は話をすり替えるかのように村上の背中を押す。
釈然としないものを感じながらも村上は扉を開けた。
「一条様っ…!」
扉の先には一条が立っていた。
一条は淡い朝日を背に受け佇み、村上を見つめている。
逆光の影から浮かび上がる顔はその光に等しい、否、光以上に晴れやかに輝いていた。
「遅くなったな…村上…」
耳に馴染む凛と澄んだ声。
「い…一条様ぁ…」
歓喜の嗚咽が込み上がってくる。
しかし、それが声となる前に、村上は眉を痛々しげに寄せた。
遠目では気づかなかったが、一条の頬や肩などに、剃刀で切り付けられたような傷が沢山あるのだ。
そこからは血がうっすら滲んでいた。
「一体、その傷は…あっ!!」
村上は驚愕のあまり、声を張り上げる。
一条は村上の視線を察し、驚愕の元凶を持ち上げる。
「アカギは取り逃がしたが、その代わり、上等の獲物を捉えることが出来た…」
一条が引きずっていたのは鷲巣巌であった。

鷲巣巌は類いまれなる商才と剛運、華々しい実績と同時に血抜き麻雀愛好家という残虐性を持ち合わせた昭和のフィクサー。
怪奇小説の怪物のような性質に加えて、晩年は表舞台から遠退いていたことから、
生きているかどうかさえ疑わしい、都市伝説を形にしたような人物であった。
「まさか…あの伝説の鷲巣巌を捉えてしまうとは…」
村上の口から感嘆のため息が漏れる。
村上の感嘆の理由はこれだけではない。
鷲巣は和也が仲間にしようと熱くアプローチしていた。
主君である和也の願望の一つをものの見事に叶えたのだ。
掛け値なしの手柄と言える。
「和也様、貴方が所望していた男です」
君主に戦利品を差し出す騎士のように恭しく鷲巣巌を和也に見せた。
「お…おぅ…流石だな…一条…」
和也の顔は未だ呆気に取られたまま、固まっている。
「和也様…?」
和也の様子に違和感を覚えた一条と村上が首を傾げる。
和也はハッと表情を取り戻した。
「ス…スゴすぎて、言葉、失っちまったぜっ!
だってよぉ、この超怪物に、俺、殺されかかったんだぜっ!
それを捕まえちまったんだっ!お前っ!マジ天才っ!
っていうか、その傷も鷲巣にやられたもんだろっ?」
捲し立てるように一条を絶賛し、勢いのままに傷について尋ねた。
「その通りです…鷲巣巌が仕掛けた罠に引っかかって…」
と、ここで一条の言葉が切れた。
一条の手から鷲巣の体がスルリと抜け、地面に落ちる。
一条の顔が青白い。
貧血を起こしているようであった。
一条の体は重力に引っ張られるかのようにゆっくり崩れていく。
「一条様っ!」
村上は一条を支えようと駆け出そうとした。
「来るなっ!村上っ!」
周囲に轟く一条の怒声。
その剣幕に村上の足はギャンブルルームから出る前に止まってしまった。
一条はよろけながら何とか踏みとどまる。
「お前はここの管理者…お前はお前の勤めを果たせ…」
一条は“俺がそっちへ向かう…”と呟き、自身のディバックを漁り始めた。
「参加者はギャンブルルームを利用する時は…チップが必要だったよな…」
一条は冗談めいた声色で朗らかに語る。
「一条様…まだ、使用料の残金はあります…!払う必要はございません……!」
「えっ!俺の睡眠時間、減らす気か!!!」
和也は素っ頓狂な声をあげる。
さすがにこの言葉には村上もむっとする。
「だったら、ご自身のチップで延長すればいいではありませんかっ!!!」
「えー、ずっとイヤホンに集中して疲れてるんだぜ……」
「貴方の指示に振り回されてきた一条様の方がずっとお疲れなんですっ!!!」
ふてくされる和也に対して、なおも村上は食い下がる。
何時の間にこの二人はこんなに仲が良くなったのか。
一条は苦笑を浮かべながら和也に告げる。
「自分の使用料は自分で支払います……」
再び、一条はディバックの中に手を入れる。
その間にも、一条の顔は確実に血色を失っていく。
一晩中、休む間もなくアカギ追跡に奔走し続けた上に、立て続けに起こった鷲巣との戦闘。
疲労は確実に一条の身体を蝕んでいた。
チップを村上に手渡すのが先か、昏倒してしまうのが先か。
「一条様…」
近くにいながら、一条に手を差し出すことすらできない現状に、村上の内でもどかしさが燻っていく。

「ったく、しょうがねぇなぁ…」
和也は気だるそうに頭を掻くと自分のチップ2枚を無理矢理村上に握らせた。
「一条っ!お前の分のチップは肩替わりしてやったぞっ!」
周囲に人がいないことを軽く確認した和也は一条の腕を掴むと、ギャンブルルームへ引っ張り込み、村上に押し付けた。
「よしっ!村上っ!お前は一条を手当てして休ませろっ!
あと、鷲巣は俺が何とかするっ!」
「は…はいっ!」
普段は物臭のくせに、ここぞという時は妙にカッコをつける。
そんな和也の調子のよさに呆れつつ、村上は一条に声をかけた。
「よくご無事で…」
「お前のコーヒーを飲むまでは死ねないからな…」
「ふふ…そうでしたね…」
村上は自分の肩に一条の腕をまわした。
「すぐに応急処置をします。コーヒーはその後で…」
「あぁ、任せた…村上」
安らかな笑みで一条は答える。
村上への全幅の信頼が滲み出ているようであった。
「かしこまりました…」
この信頼に応えたい。
肩にかかる重みに心地よさを感じながら、村上はゆっくり歩を進めたのであった。


村上も一条も仲間のかけがえのなさを噛み締めていた。
それに対して煩わしさを感じていたのは和也である。
和也は地面に横たわる鷲巣を、怒気を含んだ眼光で睨み付けた。
(なんで、こいつを連れてきちまうかな…)
鷲巣を仲間にしたいと言ったのは嘘ルールを広めるための方便。
鷲巣は融通がきかない上に、仲間に加えればいつ寝首を掻いてくるのか分からない危険因子。
できれば、これ以上関わりたくない。
しかし、嘘ルールが怪しまれる可能性がある手前、それを口にすることもできず――
「あーぁ…どうすっかなぁ…こいつ…」
和也は困り果てた顔で疲れたような吐息をもらした。

【E-5/ギャンブルルーム/早朝】

【兵藤和也】
 [状態]:健康
 [道具]:チェーンソー クラッカー九個(一つ使用済) 不明支給品0~1個(確認済み) 通常支給品 双眼鏡 首輪2個(標、勝広)
 [所持金]:800万円
 [思考]:優勝して帝愛次期後継者の座を確実にする
     死体から首輪を回収する
     赤木しげる、井川ひろゆき、平山幸雄、市川、しづかを殺す
※伊藤開司、赤木しげる、鷲巣巌、平井銀二、天貴史、原田克美を猛者と認識しています。
※利根川、一条を部下にしました。部下とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※遠藤、村岡も、合流して部下にしたいと思っております。彼らは自分に逆らえないと判断しています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、その派閥全員を脱出させるという特例はハッタリですが、 そのハッタリを広め、部下を増やそうとしています。
※首輪回収の目的は、対主催者の首輪解除の材料を奪うことで、『特別ルール』の有益性を維持するためです。
※武器庫の中に何が入っているかは次の書き手さんにお任せします。
※利根川は殺されたか、拘束されたと考えております。
※アカギ、ひろゆき、平山、市川、しづかに対して、殺害宣言をしました。

 (補足>首輪探知機がある、としづかが漏らした件ですが、それは和也しか盗聴していません。利根川と一条はその頃、病院に爆弾を仕掛けに行っていました。)

【一条】
[状態]:身体全体に切り傷(軽傷)
 [道具]:黒星拳銃(中国製五四式トカレフ) 改造エアガン 毒付きタバコ(残り18本、毒はトリカブト) マッチ スタンガン 包帯 南京錠 通常支給品×6(食料は×5) 不明支給品0~3(確認済み、武器ではない)
 [所持金]:3600万円
 [思考]:カイジ、遠藤、涯、平田(殺し合いに参加していると思っている)を殺し、復讐を果たす
     復讐の邪魔となる(と一条が判断した)者、和也の部下にならない者を殺す
     復讐の為に利用できそうな人物は利用する
     佐原を見つけ出し、カイジの情報を得る
     和也を護り切り、『特別ルール』によって村上と共に生還する
    利根川とともにアカギを追う、和也から支持を受ける
※利根川とともに、和也の部下になりました。和也とは『和也同盟』と書かれた誓約書を交わしています。
※『特別ルール』――和也の派閥のみがゲームで残った場合、和也の権力を以って、 その派閥全員を脱出させるという特別ルールが存在すると信じています。(『特別ルール』は和也の嘘です)
※通常支給品×5(食料のみ4)は、重いのでE-5ギャンブルルーム内に置いてあります。

【鷲巣巌】
 [状態]:気絶 疲労、膝裏にゴム弾による打撲、右腕にヒビ、肋骨にヒビ、腹部に打撲  怪我はすべて手当済  背中、頭部強打
 [道具]:不明支給品0~1 通常支給品 防弾チョッキ 拳銃(銃口が曲がっている) 鋏(医療用) 松葉杖 革の手袋
 [所持金]:500万円
 [思考]:零、沢田を殺す
     平井銀二に注目
     アカギの指示で首輪を集める(やる気なし)
     和也とは組みたくない、むしろ、殺したい 病院内を探索する。
※赤木しげるに、回数は有限で協力する。(回数はアカギと鷲巣のみが知っています)
※赤木しげるに100万分の借り。
※赤木しげると第二回放送の前に病院前で合流する約束をしました。
※鷲巣は、拳銃を発砲すれば暴発すると考えていますが、その結果は次の書き手さんにお任せします。
※主催者を把握しています。そのため、『特別ルール』を信じてしまっています。



152:出猟 投下順 154:暗涙
149:伝声(前編)(後編) 時系列順 155:第三回定時放送 ~契約~
144:願意 兵藤和也 158:悪夢(前編)(後編)
144:願意 一条 158:悪夢(前編)(後編)
144:願意 鷲巣巌 158:悪夢(前編)(後編)
144:願意 村上 158:悪夢(前編)(後編)




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