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泡沫 ◆6lu8FNGFaw氏


……地獄だ。
この光景はまさしく地獄の光景……。

平井銀二は、その部屋の惨憺たる様子に眉根を寄せながら、
しかし顔を伏せたりはせず、じっと見つめていた。
己の“罪”から目を逸らすまい、と。


数十分前。
銀二は、原田と共に隠れ家を去り、病院へと歩いた。

 『進入禁止エリアの解除権が行使されるタイミング――
 つまり主催と対主催陣営が大きく動くと予想されるタイミングこそが
 我々が行動するにふさわしいチャンスとなる。
 第3回放送がAM6:00、解除権の行使はAM7:00まで。
 この時間帯が勝負。森田の強運に乗る形を取る。』

原田にメモで指示した通り、銀二の計画を実行に移す為。
放送を聞き、隠れ家を出る前に時計を確認すると、時間は予定通り朝6時を少し回ったところであった。

先程までここにアカギと和也がいたことは、病院を監視をしていたので把握している。
隠れ家まではかなりの距離があるが、外がだんだんと明るくなってきている。
服装や髪の色を遠目でも視認出来、それで判別出来た。

くぐもったような爆発音と、アカギが急いで病院から出て行ったこと。
胸騒ぎがする。きっとこの予感は外れてはいないだろう。事態が転がり始めている。

非常口から病院に入ると、原田は廊下に散っていた紙切れに目をやった。
「これは…」
原田は紙片のいくつかを拾い上げ、パズルを組み立てるように廊下に並べる。
「どうやら…誓約書やな。2枚同じものがある」

銀二は、原田が並べた紙を見下ろした。
「一つはただ真ん中で破ったもの、もう一つはビリビリに引き裂いている……。
紙を引き裂いたところを見ると…アカギと和也の間に何かがあったのでしょうね。
彼らは同時に病院に入っていきましたが、出るときは別々でした。
……アカギはともかく、兵藤和也にはこの先近づかないほうがいいでしょう、原田さん」
「何でや?」
「ビリビリに引き裂いて捨てたのは、彼の精神が穏やかでなかった、という事です。
この島に来る前の彼を知っています。彼は楽天的な所もありますが、愚かではない。
いつもの彼なら、すぐに冷静になって痕跡を持ち帰るくらいはするでしょう」
「……なるほどな。この先、近づかんようにするわ」
「ええ……」

(あなたにはこの先、生き延びてもらわねばなりませんから)
銀二は口には出さず、目で原田にそう伝える。原田は頷いた。

「さて…治療をせなあかんよな。診察室は……」
「探しましょう。左腕の痛みが辛くてね……『できるだけ早く』処置したい」
銀二は少し大袈裟に左腕をさすって見せた。原田は頷く。

廊下の端まで歩くと、そこには大きな爆発痕があった。
「何やこれ…」
原田はそのまま疑問を口にした。
『銀二が本来探していたもの、目的』がこれであろうことは気がついていたが、思わず口に出していた。
薄い壁があったと思われる爆発痕の奥には、誘うような闇が…階段が下へと続いていた。

「早く怪我の処置をしたいのは山々ですが…興味があります。行ってみましょう」
「ああ…そうやな」
二人は、ゆっくりと階段を降りていった。

階段の下に存在していた錆びた鉄の扉は、開いていた。
埃っぽい空気の中に漂うきな臭い匂いが鼻を突く。
「…………!」
原田は息を呑んだ。

その部屋には…暗がりの中、夥しい数の死体が転がっていた。
さすがの原田も眉間に皺を寄せる。
「…ありがとうございます、原田さん」

銀二は部屋の光景から目を逸らす事無く、淡々と原田に言った。
「ここでなら、私一人でも『処置』が出来ます。自分がやらかした『怪我』の処置がね…。
もう大丈夫。あなたはここを出て、あなたのすべきことをして下さい」
「………………」

原田は銀二の横顔を見つめる。銀二は決意を込めた目で部屋の中を凝視していた。


原田が階段を上がって行った後、銀二はしばらくの間、じっと死体の山を見つめ続けた。

……これは俺の“罪”だ。
人を騙し、こうなると分かっていてこの島に人を送り続けた。
債務者を陥れることなど今まで数限りなくやってきたが、これはもっと…質が違う。
“悪人”のやり方ではない。悪魔の所業…いや。これはもっと卑劣な、卑怯者のやり方だ。
森田が知ったらどう思うだろうか…想像に難くない。

「……“皆様”、私は平井銀二です」
銀二は、生きている人間は他に“誰もいない”部屋の中で、静かに語り始めた。


「今から罪の告白をしましょう…。
私は、とある『実験』の為にこの島に人を送りました…。
借金で首が回らなくなった人間とその家族を『この島に行けばまともな生活を送れる』
と偽り、ここへ送り続けました。私は知っていました。ここで何が行われるかを。
『細菌兵器』……!
極秘裏に進められていた『細菌兵器』の実験の為、この偽りの島は造られました。
この恐るべき実験には、ある3つの大企業が関わっています。
おそらくこの国の人間なら誰もが知っている大企業……!
……そして、実験は行われた。その結果、大勢の人間がこの病院で命を落としました」
銀二は一度言葉を切った。過去へと思いを巡らす。

……自分はいつからこうなってしまったのか。
若い頃より『この国を手にしたい、この国を変えたい』と考えていたはずだった。
その為に巨悪になって裏社会でのし上がり、金の力でこの国を買うつもりでいた。
森田が共にいれば成し得るはずであった。だが……今思えば、泡のように儚い夢。
『天運に愛される男』森田が離脱した時点で気付くべきだったのか。

「許されることではないでしょう…。
私は実験の痕跡を探す為にこの島に来ました。
許してもらおうなどとは思わない……ただ、私は死ぬ前に確かめておきたかったのです」

銀二は、眼前の死者たちに話しかけるようにして…実際は、首輪の盗聴器の向こう側にいる
大勢の人間達に向かって…話し続けた。
スキャンダルの公表、当事者である銀二の口から事実を話すこと……銀二の本当の目的であった。

「この目で実際に見て確かめること…それが必要だと思った。
こうして確かめられた今、もう思い残すことは無い」

ふと、そういえば今日の夕方に、アカギやカイジと再会する約束をしていたな、と思い出す。
状況は自分が思っていたよりもずっと早く進んだ、と銀二はフッと口元に笑みを浮かべる。

あの隠れ家でずっと敵に遭遇せず、しかし森田とは再会出来たことも、
自分達が病院を訪れる直前にアカギがこの『目的』の部屋を開けたことも、
意味のある偶然の一致…運命であったのだろう。

銀二は、懐からナイフを取り出した。
武器とはいえない、食事用のナイフ…いわゆるはずれ武器である。

(だが、俺の『役目』を終える為にはこれで十分……)

銀二は、そのナイフをおもむろに首輪にあてがった。
ぎりぎりと力を込めると、首輪は不意に大きい警告音を発し始める。
ビーッ……ビーッ……

音の感覚はだんだん短くなっていく。それでも銀二は手を緩めようとしない。
ピピピピピピ……
音はいよいよ最後の警告を発し始める。


島に来る前……この島での殺し合いの準備をしていた頃、一人の技術者と知り合った。
彼は人格破綻者であり、目先しか考えぬ性格で浪費癖があったが、能力は一流であった。
銀二は借金を肩代わりして恩を着せ、彼に近づいた。
そして彼は、銀二の望む通りの精密機械を作り上げた。

それは、銀二の体の中…心臓の近くに埋め込まれている超小型の機械。
電池は、首輪の技術と同じものを使っているが、電源はオフになっている。
銀二の心臓が止まった時に、初めて電源が入るつくりになっている。

電源が入ると、この機械は自動でとある場所に銀二の位置情報を送る。
携帯電話のGPS機能のようなものである。
島の外部の人間…主催者達にとって望ましくない、ある『銀二の関係者』に
位置情報が送られる手はずになっている。

島の位置情報を外部に送り、生き残っている参加者の為に救援を呼ぶこと。
それが銀二のもうひとつの目的であった。

(そして、主催者達……)

決して簡単には捕まらないであろうが、ともすれば彼らを転覆させることが
出来るかも知れない。日本の経済は再び激震に襲われるだろうが…。

首輪の警告音がいよいよ激しく鳴り響く中、銀二は、ある人物達に思いを馳せた。

(俺の役目はここまでだ。後は任せたぜ、お前ら……!)


【E-5/病院付近の草むら/朝】

【原田克美】
 [状態]:健康
 [道具]:拳銃 支給品一式 
 [所持金]:700万円
 [思考]:銀二の遺志を引き継ぐ もう一つのギャンブルとして主催者を殺す ギャンブルで手駒を集める 場合によっては主催と話し合い、手打ちにする 兵藤和也に警戒
※首輪に似た拘束具が以前にも使われていたと考えています。
※主催者はD-4のホテルにいると狙いをつけています。
※2日目夕方にE-4にて赤木しげるに再会する約束をしました。カイジがそこに来るだろうと予測しています。
※村岡と誓約書を交わしていましたが、村岡が死亡したので無効になりました。
※『島南、港を探せ』『病院内を探索する』『黒幕は帝愛、在全、蔵前』『銀二はアカギや零とは違う形の対主催体制をとる』という内容の銀二のメモを持っています。
※森田が主催と交わした契約を知りました。

【平井銀二 死亡】
【残り 16人】

159:墓前 投下順 161:巨獣
162:出動 時系列順 159:墓前
150:記録 原田克美 164:見敵必殺




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