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再起 ◆xsR5u1lNRk氏


(勝つっ……必ず!!)

地位も名誉も金も、そして誇りさえも。
利根川幸雄はその日、己が生涯を賭して築き上げてきた全てを失った。
唯一彼に与えられたのは、敗北者の象徴たる忌まわしき焼印。
額、両膝、両手。
全てに消える事無く残り続け、今もなお疼いている。

『利根川、機会が欲しいとは思わないか?』
『機会だと……? どういう意味だ、黒崎』
『会長は今、あるちょっとしたギャンブルを開催しようとお考えになっている。
その参加者を集めるよう、仰せがあったのだが……ここで成果を挙げられたならば、復活も夢ではあるまい。
仮に帝愛での復活は無理だとしても、観客からお前を買いたいと申し出る者は間違いなく出る。
どうだ、起死回生のチャンスを欲しくは無いか?』

グループ内での発言力を失い地位もどん底に落ちた利根川に転機が訪れたのは、ホンの数日前。
ゲームで一定以上の成果が挙げられたならば、元の地位に戻す事も考えるという黒崎直々の甘い誘いだった。
今の利根川は、彼等からすれば使い捨ての駒としては最適の存在。
ゲームを盛り上げる道化役がこれ程似合う者も他にはいまい。
利根川は自身がそう認識されている事は承知していた、その上で自らの力を誇示する為に参加を決意した。
されどこのゲームには常に、死と隣り合わせの危機が付きまとう。
死んでは元も子もない、取り止めた方が無難。
普通はそう思うだろう……事実、失脚前の利根川は間違いなくそうしただろう……が……っ!

(今のオレには……積み上げてきたものも何もないのだっ……!)

それは利根川にとって逃げ道……安全策などという優しいものに非ずっ……!
彼は散々、若者達に説いてきた。
実力も社会的地位も持たぬ者がチャンスを掴むには、命を賭けるしかないと……!
そして今の利根川は、彼らと同じ……持たざる者っ……!
命以外に賭けるもの無しっ……!!

(ここで命知らずにならなければ、あの凡夫どもと何も変わらんっ……!
オレはあんなゴミどもとは違うっ……!!)

命を惜しみ、二度と巡って来はしない機会を蔑ろにした凡夫達は山ほど見てきた。
自分は彼等とは違う、機会を逃しなどしない。
そう、命を賭けるだけの価値がこのゲームにはあるっ……!!
ここで勝ち上がること、それ即ち己が実力の証明。
常に死と隣り合わせの状況は、言い換えれば常に大詰めの状態。
大詰めで弱い人間は信用できないといった兵頭和尊の言葉を、根底から覆せる……!
これは、二度と巡ってこないと思われていた再評価の機会。
全てを取り戻す最大にして最後のチャンス、起死回生の大勝負っ……!

(だが……ただ優勝するのでは駄目だ。
それだけでは、全てまでは取り戻せん)

しかしこの大勝負、単に優勝を目指すだけでは駄目。
それでは真の意味での勝利を得る事は不可能……
その為には、三つの関門を越えなくてはならない。
そして全ての関門に共通する事項は一つ―――帝愛への忠誠心を示すこと。

(まず第一に優先すべきは、兵藤和也様……会長の御子息の救出だ)

一つ目の関門は、兵藤和也をこのゲームより脱出させること。
彼は帝愛グループ会長―――兵藤和尊の一人息子であり、次期帝愛総帥の座に最も近き男。
直接の面識は無い、しかしその実力の程は聞き及んでいる。
父親譲りの才と性格、恐らくはあのカイジにすらも匹敵すると。

(だが……何故、参加しておられるのだ?)

唯一気にかかるのは、何故主催者は和也をこのゲームに参加させたのか。
このゲームの主催には、言うまでも無く帝愛が絡んでいる。
失脚扱いの自分や一条、部下の遠藤は分かる。
だが、明らかに彼の参加は異質……主催者の息子が殺し合いに参加させられるなど、奇異極まりない。
参加者の選出に何かしらのエラーがあったのか?
まさか兵藤和尊が、それとも兵頭和也自身が参加を望んだというのか?

(その真意は、どうにか確かめねばならんな。
まあいずれにせよ、一億を用意し和也様と会う事……それは必須事項だ)

他者に金を譲渡してはいけないというルールは無い。
ならば利根川が一億を用意すれば、和也の最低限の安全は確保できる。
もしくは、最後の二人となった時に自分が一億で辞退し、和也を優勝させる。
考えられる方法はこの二つ、和也を死なせての優勝、自身の中途半端な離脱など論外中の論外。
帝愛への忠誠を誓うにおいて、これは絶対に守らなければならぬ一線。
逆に言えば、彼を生かせさえすれば後は優勝以外どうでもいい。
いや、他に生かしておくべき存在など一人もいない。
そしてその中でも、特に抹殺すべき人物は二人。

(遠藤、貴様はこの手で処分する。
最早貴様は、帝愛に刃を向けた裏切り者でしかない!)

二つ目の関門、部下遠藤の抹殺。
利根川にとって彼は最早、部下にあらず。
既に利根川の耳にも、かの沼での情報は入っている。
あろうことか遠藤はあのカイジと手を組み、帝愛に損失を与えた。
被害総額は六億、加えて最高責任者の一条も地獄へと落とされた。
これだけの真似をした裏切り者を、生かしておく道理などない。
ましてや遠藤は己が部下だった男、責任はいずれ自分が被る事になる。
尚更この手で始末をつけねばならない。
始末自体は簡単にできる。
支給品の拳銃、その銃口を向けて引き金を引くだけ。
殺せばいいだけ、だから至極簡単。
これは参加者全員にも当てはまる……が……!!

例外が一人居る……簡単に殺せないのが一人だけいる……!!


それこそが三つ目の関門、忌まわしき宿敵……!!


伊藤開司……!!


(カイジっ……奴だけはっ!
単に殺すだけでは駄目だ……勝たなければっ!!
勝って殺さなければ、オレは何も取り戻せんっ!!)

カイジだけは、簡単に殺してはならない。
刺殺、撲殺、銃殺、毒殺、全部駄目。
彼を殺していいものは唯一、生き死にの博打、即ちギャンブルのみ。
そう、ギャンブルでカイジを上回りその結果で彼は殺さなければならない。
さもなくば、カイジによって刻み込まれた敗北の烙印は消えない。
カイジよりも下という立場にい続けなければならない、その評価は覆らない。

敗北を塗り替えられるのは唯一勝利のみっ……!
勝たねば未来永劫、微塵に打ち砕かれたプライドは修復できないのだっ……!!

(カイジ……貴様にはオレと同じっ!
いや!! それ以上の屈辱と絶望を与えてやる!!
そして死ね、オレに殺されろっ!!)

利根川の中で交錯する……!
圧倒的憤怒……圧倒的憎悪っ……!!


 * * *



「殺し合いだなんて、そんな……聞いてねぇよ……」

平山幸雄は絶望していた。
彼はこのゲームを、単なる名誉挽回のチャンスとしか捉えていなかった。
浦部に敗北し安岡と手を切られて以来、その評判は地に落ちた。
代打ちとして再起不能ではないかとまで自身で感じていた中、彼は声をかけられた。
日本で指折りの大グループ主催のギャンブル、その参加者として選ばれた。
これはつまり、少なからず自分は評価を受けているということ……!
更にこのゲームで優勝を果せば、再起も夢ではないということ……!
まさに救いの手、起死回生の奇跡っ……!! 

……がっ……!!

それは希望的観測……そうであって欲しいという願望に過ぎなかったっ……!
現実は、死と隣り合わせの鉄火場……無情にして非情っ……!!
知っていれば、こんな勝負は受けなかった……命があってこその人生ではないかっ……!!
賞金も再起の機会もいらない……ただ、ただ生きて帰りたい……それだけっ……!!

「……落ち着け。
何もまだ、死んだって決まった訳じゃねぇんだ……」

生きる為の希望は残されている。
優勝などせずとも、金……一億があればいいっ……!!
どうにかして一億集められれば、生還が出来るのだっ……!!

(だが、それを俺一人でするのは無茶だ。
同じ様な目的を持ってる奴は絶対にいる……そいつと協力する……それが最善だっ……!!)

現状考えうる最善の策は、同じく脱出を目指す者との合流。
たった一人で一億を集めるのは、不可能でこそないが為しえる可能性は低い。
最も安全な方法は、徒党を組む事……それも、それなりに実力がある人物が必要。
だが……名簿を見る限り、自身と手を組む可能性のある者の存在は皆無っ……!!

(安岡は俺を見限った……当然、組めるわけが無い。
アカギも同じだ、偽者を語った俺と協力するなんて虫が良すぎる……ありえない……
浦部は論外だ……あいつとだけは、こちらから願い下げだっ……!!)

こうなれば、残された手段は必然的に一つ。
会場内で見知らぬ参加者とコンタクトを取り、協力者となってもらう他に無い。
ここで注意せねばならぬのは、その相手が殺し合いに乗った人物か否か、その見極め。
判断材料はずばり、携帯している武器の有無。
殺し合いに乗っているかいないかに関わらず、武器を持っていない相手ならば接触しても一先ずは安全。

(っと……早速、誰かいるな)

平山は目の前に人影を確認してすぐさま物陰へ移動。
じっくりと相手を観察し、その様子を探る。
見た目は四十代半ばから五十代前半という所、スーツ姿で持ち物はデイバックのみ。
その手に武器の類は皆無、素手での取っ組み合いになったとしても若い自分が圧倒的有利っ……!
ならばいける……いけっ……!!

「おい、そこのあんた!!」

物陰から飛び出し、迷うことなく声をかける。
相手は当然それに気付き、彼へと振り返る。
いきなり襲い掛かられるという事は無い、全てが平山にとって上手くいっていた。
しかし、すぐに平山は己が行いを後悔させられる……見誤った事をっ……!

「うっ……!?」

平山の視界に飛び込んできたのは、声をかけた相手―――利根川の額。
見るからに痛々しい、火傷の跡……一時とは言え、裏に足を突っ込んだ身だから分かる。
日常ではありえないっ……! 血生臭い世界に身を置いている人間、ヤクザや犯罪者達が受ける傷っ……!!
この男は、修羅場を潜っている……ゲームに乗っていても不思議は無い人種っ……!!
もう少しじっくりと監察すべきだったか……!!

「……私がどうかしたか?」
「あっ……いや。
つい、他の参加者を見つけたもんでな……」

自分から声をかけた以上、逃げる事は出来ない。
仕方なく、平山は利根川へと応じる。
まだ、彼が完全にゲームに乗っていると決まっているわけではない。
仮にそうだとしても、見たところ武器を持っていない。
ここは自然に振舞い、相手の出方を伺うべき。

「自己紹介がまだだったな、俺は平山幸雄だ」
「ほう、平山幸雄か……面白い偶然だな」
「ん……あんた、俺を知っているのか?」
「いや、そういう意味ではない。
私は利根川幸雄、君と同じ名前なんだよ」

利根川の何気ない一言に、平山も少々驚いた。
初めての遭遇者は同じ名前の持ち主、確かに面白い偶然である。
しかしこれは、ファーストコンタクトとしては幸運。
相手に親近感を抱かせるには十分な切欠。
そして更なる幸運として、利根川には襲い掛かってくるような様子が無い。
デイパックに手を伸ばそうとはしていない、武器を手に取ろうとはしていない。
つまり、ゲームに乗っている人物ではないっ……!
そう察せた途端、平山は助かったと言わんがばかりの溜息をつく。
強張った表情が綻び、僅かながら微笑を浮かべる。

「それで平山君、君は殺し合いには乗っているのか?」
「いや、俺は乗ってはいない……一億集めての脱出が第一だ。
金品は流石にギャンブルで賭けるが、命まで使う気はないな」

相手に殺し合いの意思が無いのであれば、こちらも素直に応じるのが一番。
一億を集めての脱出が第一であるというその考えを、利根川へと告げる。
利根川も当然それに答えてくれると信じて……それが当然。

「そうか……ならば目的は同じだな。
私も一億を集めてこのゲームから脱出したいと思っている。
利害は一致しているのだし、ここは協力といかないか?
同じ幸雄同士、こうして出会えたのも何かの縁だ」

利根川は左手を差し出して握手を求める。
平山にとって、またしても幸運っ……!
味方を、それも中々頼りになりそうな人物を得られた……脱出への第一歩に踏み出せたっ……!!
迷う事無く、平山は手を差し出す。

(全てが上手くいっている、いけるぞ!!
これなら脱出なんて簡単に……)




パァン




「え……?」

直後、平山の肩を衝撃が貫く。
僅かに遅れてやってくる、痛みと焦熱感。
目を見開いたまま、その根源へと手を伸ばせば……赤い液体。
ドロリと手を濡らす、生々しい感触……血っ……!

「う、うわああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

ようやく平山、状況を理解。
途端に、怒涛の勢いで思考が溢れ出す……!

(銃創っ……!
俺が撃たれたっ……!?
一体誰がやったっ……! どうして俺がっ……!?)

平山の中で交錯する……!
溢れ出た思考は、整理できず……!
混乱……! 慌てふためく以外に何も出来ずっ…!!

「ククク……」
「え……?」

そんな平山を尻目に、低い笑い声を出す利根川。
そう、彼は平山を嘲笑っていた。
冷静になれば分かる事……周囲に人影は無し。
ならば誰が彼を撃ったのか……一人しかいないではないか。
真正面に立つ、他ならぬこの男……利根川しかっ……!!

「と……利根川さん……?
一体どういう……あっ……!」

しかし利根川は無手、銃器の類は持っていない。
そう思っていた筈だった……がっ……!
平山は気付く……今、利根川の手に握られているのは紛れも無い銃……!
掌サイズに収まる、小さな護身用の銃……デリンジャーっ……!!

「何も持っていない相手だから安全……素手ならば、若さで勝る自分が有利。
大方そう考えて私と接触したのだろう……その考えはそれほど間違っていない……ほぼ正しい……!
いや……ひょっとすると殺し合いにおいては、定石のような考えなのかもしれぬ」

利根川に支給された拳銃、それはデリンジャー。
彼はそれを、何かあったときにすぐ取り出せ、かつ相手にはその存在を知られない位置に潜ませていた。
無手だから安全という相手の、完全に裏を取れる位置……服の袖口にっ……!!
後は友好的に、のこのこ近づいてくる相手を待つだけ。
そして平山は最高のカモだった。
少し安全を装えば油断し、溜息をついて笑みを零すという体たらく。
標的として、この上ない存在……!

「しかし残念ながら、その定石という地点が……最も浅はかなのだ……このゲームではっ……!!」

撃鉄を起こし、銃口を平山に向ける。
肩では残念ながら致命傷にはならない。
利根川は狙いを平山の頭部へ……確実なトドメを刺すべくっ……!

「ま……ま、待ってくれ!
頼む、頼むから……殺さないでくれ!!
あんたの言う事を聞く、何だってする……だからっ……!!」

平山は涙を流し訴える。
死にたくない……助かりたいっ……!
土下座でも何でもするっ……!!
願いを込めて、心から訴るっ……!!


が……それは墓穴……!
最も取ってはならぬ選択っ……!!


「ほう……何でもか」
「え……?」
「死にたくないから何でもする……そう言ったな、今……!」
「あっ……!!」

この時……平山に圧倒的後悔っ……!
助かりたい一心で、最も危険な言葉を口にしてしまった……!
これは下手をすれば、殺されるよりも惨い展開……全てが完全に裏目っ……!
しかし今更、その言葉を引っ込める事など出来ず……従う他、道は無しっ……!!
そしてこの展開、利根川にとってはまさに理想。
一撃で殺さず敢えて肩を打ち抜いたのも、全てはこの一言を引き出す為の布石……!
願っても無い最高のスタートっ……!!

「何、怖がる事は無い。
最初に言ったとおりに協力してもらうだけだ……ただし、手駒として……!」

依然銃口を向けたまま、利根川はデイパックからあるものを取り出す。
それは彼にとって馴染み深きもの……処刑道具。
Eカードの針具、耳用っ……!!
利根川はゆっくりと平山へ接近、それを装着させる。
しかし、本来用いる部位とは別の……首にっ……!!

「こ、これは……?」
「この器具はリモコン操作で針を伸ばせるようになっている。
本来は耳に装着して鼓膜を破壊する器具だが、胸に着け心臓を狙うという応用もありだ。
そして君の場合は、こうして首輪越しに首につけさせてもらった……意味は分かるな?」

平山の顔から血の気が引いた。
つまり、利根川がリモコンで操作を行えば針は伸びる……この首輪目掛けてっ……!
そんな事をすれば、針は首輪を突き抜け……爆発は必死っ……!!
死ぬっ……利根川の指一つで……殺されるっ……!!

「外そうとしても無駄だ。
それは特殊な器具がなければ取り外しは出来ない。
力ずくで外そうものなら、このリモコンのアラームが鳴る……その時、私は躊躇なく押すつもりだ。
リモコンの起爆ボタンをな……!」
「き、きばっ……!?」

「そうなれば君は確実に死ぬ。
おっと、リモコンの電波が届かぬ位置に逃げようなどと考えても無駄だ。
この島の大きさならば、端と端にいようが逃げ場は無い……!」

利根川はリモコンを見せ、取り外そうとすれば即座に爆発させると脅しをふっかける。
首輪と密着した状態で爆破すれば、必然的に首輪も誘爆されてしまう。
しかし、利根川の言葉にはブラフがある……この器具に爆弾など積まれていないし、電波の範囲は全く未確認。
単に平山を脅し、絶対的服従をさせる為だけの脅しに過ぎない……だが、この脅しが効果的。
カイジや遠藤達なら兎も角、平山には器具に関する知識は皆無。
ましてや今の平山に、冷静に物事を考えられるわけがない。
利根川の言葉を盲目的に信じる……信じざるをえないっ……!
平山は両膝から地面に崩れ落ち、両手を地に付ける。
重い……背中に圧し掛かってくる……重圧っ……!
命を握られているという、圧倒的プレッシャーっ……!!

「……そんな……」
「ククク、そう落胆するな。
もしも君が私の期待に応えてくれたならば、器具を解除しよう。
いや、そうだな……ゲームが終わった後も部下として扱う事も、考えてやってもいいぞ?」
「……」

平山に、器具を解除するという言葉は胡散臭く聞こえる。
良い様に使い回され、最後に爆破というのはあまりにも典型的……末路は目に見えている。
それでも現状、縋るしかないのだ……そう……
人は希望があれば……そこに手を伸ばすしかないのだ……!
例えそれが、1%にも満たない絶望的なものであったとしてもっ……!!
確立を重んじる平山にとって、何たる皮肉だろうか……


「……俺は何をすればいい?
人を殺せばいいのか?」
「それは可能な状況であればでいい。
それより君に最もやってほしいのは、ある人物の捜索だ。
兵頭和也様、遠藤、一条、伊藤開司……この四人を探し出せ。
一人一人への対応は、この紙に書いてある」

平山に命じられた使命は捜索と伝言。
相手は、越えなければならない関門となる三人に一条を加えた合計四人。
それぞれに対する内容は、こう。

<兵頭和也>
見つけ次第事情を説明して保護、命を賭けて守り抜くこと。
持ち金は全て手渡し、一億に到達しない様ならばそれまで補佐すること。

<遠藤>
見つけ次第殺害すること、その手段は問わない。

<一条>
見つけ次第事情を説明して、私と目的が一致しているならば協力体制を取ること。
渋るようならば「私が元の地位に戻れた時は、地下から出す手筈を取る」と伝え説得すること。
ただし一条が私を蹴落としての優勝を目論んでいる様ならば、隙を見て殺害すること。

<伊藤開司>
見つけ次第事情を説明して、私の前に連れてくること。
間違っても危害は加えず、出来る限り万全の状態という条件で。



関門たる三人に関しては、最早説明するまでもない。
ここで新たに加えられた一条については、利根川は自身と境遇が同じだと判断。
地下送りとなったところを拾われ、ゲームに参加させられた。
ならば目的も必然的に同じ……協力体制を取るのは容易い。
だが、ここで目的に僅かのズレ……蹴落とすという意識があれば、話は別。
同じ境遇だからかつての上下関係は無意味、かつての上司を蹴落として実力が上である事を証明する。
そんな意識があるならば……殺さないわけにはいられない……!

「まあ、分かったけど……このカイジって奴はどうするんだよ?
あんたの前につれて来いって言っても、あんたの位置が……」
「そんなことは場所と時間を打ち合わせておけば問題は無い。
そうだな、まずは……定時連絡時に発電所で会おう。
禁止エリアに指定された場合は、その周辺の何処かに私はいる。
そこで一先ずの情報交換と、次の待ち合わせとについて話す。
カイジを見つけたならばつれて来い」

一先ずの目標は、定時連絡時の発電所での合流。
このまま発電所を拠点にするという考えは没。
それは他者に情報が漏れた時、ほぼ確実に奇襲を受ける。
ならば得策なのは、一点に絞らず一定時間置きに拠点を移すというこの方法……これがベスト。

「では、伝える事は以上だ……行け」
「え……」
「どうした、行けといったのが聞こえないのか……?」
「あ、ああ……分かった、分かってるからっ……!!」

伝える事を伝えたならば、後はさっさと解散。
利根川はリモコンをちらつかせ、平山は即移動。
その姿は脱兎……死にまいと必死になって逃げる、か弱き餌……!
平山は完全に、利根川という野獣に追い込まれてしまっていたっ……!!


同じ幸雄の名を持ち、同じく名誉挽回の為に参加を決めた両者。
境遇は全く同じ筈だった二人、しかし状況は完全な利根川の有利。
何が二人に差を生んだのか……それはずばり、覚悟の有無……!
利根川は己の命を賭し、何があろうと再起を果そうという覚悟があった。
しかし、平山にはそれがないっ……!
再起を果せずとも良い、命だけ助かれば良いと考えた……人としてはある種当然……しかし、消極的思考っ……!!
それでは積極的思考の利根川に、勝る道理無し……! 差が開いて当然っ……!!

(ここは言うなれば、命を賭けて目的を果す者達が集う戦場だ……!)

命を賭ける覚悟なくして戦いに望む兵になど……戦場は味方せんっ……!!



【C-3/平地/真昼】
【利根川幸雄】
 [状態]:健康
 [道具]:デリンジャー(1/2) デリンジャーの弾(30発) Eカード用のリモコン 針具取り外し用工具 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:ゲームで優勝、もしくは和也を優勝させての離脱
※両膝と両手、額にそれぞれ火傷の跡があります
※和也の保護、遠藤の抹殺、カイジとの真剣勝負での勝利・その結果の抹殺を最優先事項としています。
※一条はその目的次第で協力・殺害を判断します。
※平山と次の定時連絡時に発電所で落ち合う約束をしました。
※デリンジャーは服の袖口に潜ませています。
※Eカード用のリモコン
Eカードで使われた針具操作用のリモコンです。
電波が何処まで届くかは不明です。

※針具取り外し用工具
Eカードの針具を取り外す為に必要な工具です。


【平山幸雄】
 [状態]:左肩に銃創、現在も軽い出血中 首輪越しにEカードの耳用針具を装着中
 [道具]:不明支給品1~3品 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:利根川の命令に従う 兎に角死にたくない
※和也の保護、遠藤の抹殺、カイジを利根川に会わせる事、一条に接触する事を優先事項としています。
※針具に爆弾がついている、リモコンは何処にいても操作可能と思い込んでいます
※利根川と次の定時連絡時に発電所で落ち合う約束をしました。

※Eカードの耳用針具
Eカードで使われた鼓膜破壊用の針具です。
専用の工具がなければ解除は出来ず、無理に外そうとすればリモコンのアラームが鳴ります。


012:生きるために 投下順 014:装備
012:生きるために 時系列順 015:危険人物
初登場 利根川幸雄 041:目的
初登場 平山幸雄 025:3人目のアカギ






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