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情報 ◆tWGn.Pz8oA氏


「森田………森田鉄雄…!」

森田は背後から不意に名前を呼ばれ、その顔に一瞬緊張の色を走らせた。
十分な警戒をしていたつもりだったのに、忍び寄る人影に気づくことが出来なかった———
己の迂闊さに歯噛みしながら、声のした方向を振り返る。
「……………遠藤……!!」
立っていたのは、森田をこのゲームに引きずり込んだ張本人、遠藤であった。
遠藤は軽く手を挙げて形ばかりの挨拶をする。
が、森田はそれを待たずに遠藤へ差し寄り、初めて出会ったときと同じように襟をねじり上げた。
「ぐっ…………」
「どういうことだ……殺し合いなんて…聞いてねえぞ……!!」
「ックク………よせよ…!俺だって知らされちゃいなかったんだ……」
今にも噛み付きそうな瞳で睨み上げる森田。しかし、遠藤に怯む様子はない。
胸元を掴む森田の腕を右手で捉えると、ニヤリと挑発的な笑みを浮かべる。
「それに、この島にいる以上条件は同じ……こっちも命を張ってるのは変わらない…」
そう、遠藤自身もこのゲームの参加者である。
ここで今さらこの男を責め立てても詮無いこと。そんなことは森田自身も十分理解していた。
だがその一方で、理性の蓋では閉じこめておけない怒りが、森田の身体の中を巡って止まないのである。
遠藤の指先が森田の腕を僅かに圧迫する。
数秒の後、森田はようやく怒りを腹に収めると、跳ね飛ばすように掴んでいた手を離した。
「………クソッ……!」
「ゲホッ…………フン、そうさ…俺たちは同じ穴のムジナ…せいぜい仲良くやろうぜ……」
遠藤は乱れた襟元を整えつつ森田に向き直って言う。

仲良くやる?
よくその風体で言えたものだ。

当然、森田に遠藤と「仲良く」やっていく気などあるはずもない。
森田は遠藤を一睨みすると、そのまま背を向けて歩き出そうとした。
だがそんな睥睨など意に介さず、遠藤は去ろうとする背中に再度声をかける。
「待てよ森田……!組まないか?俺と…」
「………ふざけてんのか……?なんでアンタなんかと組まなきゃならない…!?オレは御免だ……!」
「まあそう言うなよ……別にちゃちな仲間ごっこをしようってんじゃない…」
遠藤は相変わらず口元に嫌味な笑みを浮かべたまま、再び森田との距離を詰めていく。
「お前はこのゲーム…殺し合いに乗る気なんてない……
 あくまでもこの間の写真の奴らを救出するのが目的……そうだろ?」
「…………………。
 …救出か………そんな大層なことは考えちゃいない…神威の二人はともかく…」

平井銀二は別、そう言おうとしているのは遠藤にもわかった。
確かにあの男は、参加候補者の中でも別格。
主催者の息子である兵藤和也を除けば、
神威秀峰や鷲巣巌といった権力者達とすら一線を画しているだろう。
『帝日銀行頭取・土門猛や政治家・伊沢敦志と強い繋がりを持ち、
日本屈指の資産家である蔵前仁との地下ギャンブルで勝利』
数行の記載しかない名簿の詳細欄には、これでもかと言うほど錚々たる人物達の名前が踊っていた。

(そうだ…銀さんはオレの助けなんてなくても生き残れるだろう……
 でも…もし、万が一、ってことも無いとは言えないのがこのゲーム……!
 その「万が一」のためにオレはいる………)

「まあ、細かいことはいい。とにかく、人を殺して回ろうってんじゃないのは確か…
 俺もそうさ……参加したのだって、簡単に言やあハメられたんだ。
 だから金でなんとかなるならそれで済ませたい…殺しなんざしたくねえ……
 ま、一番良いのは、この馬鹿げたギャンブルがなくなっちまうことだがな………」
半ば自嘲の音を混じらせながら、すらすらと虚言を吐き出す遠藤。
言わずもがな、彼は今までの人生で何万回と似たようなことをこなしてきた男である。
今さら言い淀むことはない。
「フン…信じられるかよ……っ!」
「そうだろうな……いいさ…全幅の信頼なんて端から期待してない…
 ただ…これから行動を共にするなら、多少は信じてもらえないと困っちまう」
勝手に同行する前提で会話をする遠藤に、森田は食傷気味な表情を見せる。
遠藤は肩をすくめて溜め息をつくと、おもむろにデイパックの中から一綴りの書類を取り出した。
「俺の唯一の支給品さ…このゲームの参加候補者の情報が載っている」
「…情報………?」
「これが俺の生命線……!同行してくれるなら見せよう………!」

森田は戸惑っていた。
遠藤は一にも二にも信用出来なさそうな男である。当然同行などしたくはない。
だが、情報ーーーどこまで詳細が記載されているかは不明。
そもそも、その内容が正確なものであるかもわからない。
しかし、限られた人数で行われているこのバトル・ロワイアルにおいて、
情報は多分に有用な武器のひとつである。
森田に選択の余地はなかった。

「…………悪いが…オレはアンタにやれるもんなんてないぜ…」
「構わねえさ…武器も持たずに一人で歩き回るよりは、お前といる方が危険は減る…
 それだけでも俺にとっちゃ恩の字だ……とりあえずはな…」
「ケッ……言っておくが、アンタが襲われても助ける気はないからな……!」
「クク…上等上等。俺とお前はあくまでも同行者…それ以上でもそれ以下でもない……だろ…?」
「……………なら、いい…」

遠藤は参加候補者名簿を地面に置き、早々と情報交換をする体勢に入る。
支給品の時計は14時を指していた。


「とりあえず…このくらい、か……」
それから十数分。
整然と文字や写真が並んでいた名簿は、所々朱の乱雑な字で彩られていた。
二人が主に行ったのは、参加している人物の絞り込みと危険人物のチェックである。
名簿には森田の知る巽や川田の名前が載っていたが、
説明会場での記憶と照らし合わせて不参加が確定。
安田も同じく名を連ねていたが、五十音順で森田よりも遅いために確実な判断はできなかった。
似たような背格好の人物を見ていたこともあり、彼については保留となった。
また、二人が印を付けた危険人物は
有賀、神威秀峰、利根川、一条、村岡、兵藤和也の6人。
しかしこれはあくまでも最小限であり、単なる目安でしかない。
誰が殺人鬼になってもおかしくないこのゲームでは、突き詰めれば全ての人間が危険人物なのだから。

「そうだな……じゃあ、さっさと行こう。時間が惜しい」
支給品のペンをデイパックに放り込んだ森田は、手早く立ち上がりスタスタと歩き始めた。
遠藤もそれに続き、慌ただしく名簿をしまい込みながら森田の背を追う。
「ったく、気持ちは分かるが置いていくな……!
 ところで森田……どこに向かうつもりなんだ?」
「向かうのはD-7…大型ショッピングモール」
「ショッピングモール………?」

遠藤の疑問の答えは明らかにされないまま、二人は目的地のショッピングモールに到着した。
ガラスの扉越しに見える館内は薄暗く、放課後の学校を思わせる不気味さが漂っている。
二人が近づくと、自動ドアはあっけなく開いた。建物自体に電気は通っているようだ。
巨大な吹き抜け構造の館内に、森田達の足音が甲高くこだまする。
期待はしていなかったが、エスカレーターは電源が切られ、単なる階段と化していた。
そんな中、唯一灯りを点すエレベーターが一層不気味さを煽っていた。

3階のフロアに立った森田は、立ち並ぶ家電製品の間をすり抜けてある一角に向かう。
「あった………!」
森田の視線の先にあったのは、パソコン売り場。
煌びやかなポップがいくつも踊り、互いに性能の良さを競っている。
森田がこの地を目指した目的は、ここに来てやっと遠藤の知るところとなった。
一台のパソコンの電源を探る森田の手にあったのは、
彼の支給品、一枚のフロッピーディスク。
「……えっと……あれっ……?」
「………貸してみろ」
おそらくパソコンというものを使い慣れていないのだろう。
遠藤は、電源を入れるのに試行錯誤する森田からフロッピーを奪い取ると、
手早く本体とディスプレイのスイッチを入れ、パソコンを起動した。
「はあ………慣れてるんだな………」
「…フン……仕事である程度はな………」
たかが電源を入れただけで感心する森田に、遠藤は調子を狂わされる心地がした。
遠藤はフロッピードライブに半ばまでディスクを突っ込むと、何を思ったのかぼそりと呟いた。
「これ……入れたら爆発とか………」
が、背後からの視線が険しくなったのを感じ、素直に挿入する。
直後、本体からぎこちない読み取り音がして、ディスクの中身が画面に表示された。

「……これは…………?」


  12 D-4 イガワヒロユキ ムラオカタカシ



【D-7/ショッピングモール/午後】
【森田鉄雄】
 [状態]:健康
 [道具]:フロッピーディスク 不明支給品0~2 通常支給品
 [所持金]:1000万円
 [思考]:銀二の手掛かりを得たい フロッピーの中身を確認する

【遠藤勇次】
 [状態]:健康
 [道具]:参加候補者名簿 不明支給品0~2 通常支給品
 [所持金]:1000万円
 [思考]:森田を利用して生き延びる フロッピーの中身を確認する

※遠藤は森田に支給品は参加候補者名簿だけと言いましたが、他に隠し持っている可能性もあります



022: 投下順 024:武器
019:老怪 時系列順 024:武器
002:勇と金 森田鉄雄 037:先延ばし
002:勇と金 遠藤勇次 037:先延ばし







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