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人殺し ◆X7hJKGoxpY氏


「お前のせいだっ!クズッ!クズッ!脳無しっ!」
「何言うんですか!末崎さんも同じじゃないですかっ!仮にもヤクザなんだからやって下さいよぉ!」
「黙れっ!クズがっ!ヤクザなら下のもんにやらせるのが当然だろっ……!」
「下のもんってどういうことですか!」

安藤と末崎は不毛な言い争いを続けていた。
論点はなぜ治を殺せなかったか――単なる責任のなすりつけ合いであった。
「お前に殺しを覚えせてこの地で生き残る覚悟を決めてほしかったんだっ……!親心………!
海だ……!母なる海っ……!海のように広い心っ……!」
「何を訳のわからないことを………!」
もともとこのような議論に意味などない。
作戦の要点は金を奪うことであって、殺すことでは無いのだ。
そして作戦は成功した。
殺すだの殺さないだのはこの作戦自体には関係のない話である。
しかし、火が点いてしまえば同じことであった。
一度壊れた関係は容易には元に戻らない。
この「バトルロワイアル」の舞台では尚更である。

「ダメじゃお前は……もう共闘はできんわっ!役立たずがっ!」
「役立たずはそっちでしょう!いいですよっ!もう解散しましょうっ!」
まさに売り言葉に買い言葉。
こうなってしまえば関係の修復は到底不可能であった。
更には、お互いがお互いを使えない人間と見ているのだ。
もはや共に行動する価値は無い。
安藤は立ち上がり末崎に背を向けた――その時だった。
「待て……」
「え?」
「金は置いていけっ!支給品もだっ!」
「な……誰が置いてくかっ!」
「わかっちゃいねえな……ヤクザを」
末崎はそう言うと、包丁を取り出し安藤へと向ける。
安藤の背筋が凍った。


 * * *


「カイジさん……カイジさぁんっ………」
三好はカイジを求めてふらふらとさまよい歩いていた。
きっとカイジなら助けてくれる。
今の三好にはそれしか見えていない。
彼はひたすらカイジに逢いたかった。
その為ならばどんなことでもする気になった。
「カイジさん……カイジさぁんっ………」
三好はカイジを求めてふらふらと歩きアトラクションゾーンへ行きついた。
カイジがどこにいるのかは分からない。
考えることのできる精神状態でも無い。
カイジの目指すアトラクションゾーンへ向かったのは完全に彼の本能だった。
虚ろな目で三好はカイジを呼び続ける。
「カイジさん……カイジさぁんっ………」
三好はカイジを求めてふらふらと歩き――そして見た。
包丁を太った男に突き付けるガラの悪い男。
一目見て人殺しだと思った。
今の三好には、人殺しは自分やカイジにとっての敵であるという認識しかなされていない。
その心理は、常軌を逸している。
(カイジさんの敵……殺せば………カイジさんに褒めてもらえる……助けてくれるっ………!)
三好はその思いのままに暴挙に出た。
銃を構え、「人殺し」へと走り寄る。
ギョッとする「人殺し」。
(構わない……人殺しだから……敵だからっ………!)
そのまま三好は弾丸を撃ち込む。
脚に、腹に、額に、胸に。
「人殺し」は叫び声をあげる暇さえ与えられず、あっさりと死んだ。
だが、三好は止まらない。
(敵を殺さなきゃ……カイジさんは助けてくれないっ!殺すっ……殺すっ……殺すっ……!)
こぼれた包丁を手に取ると、三好は「人殺し」の喉をえぐり、胸をめった刺しにする。
「殺すっ……殺すっ……殺すっ……殺すっ……」
いつしか三好の思いは、そのまま声に出ていた。

「ハアッ……ハアッ……」
「人殺し」を完全に仕留め、三好は息を上げる。
激しい動きに体がついていかないのだ。
三好はチラリ、と太った男に目を向けた。
腰を抜かして動けない様子である。
(この人は……人殺しじゃない……敵じゃない……殺したらダメッ………カイジさんは助けてくれない……
それより……この人もカイジさんのところへ連れて行ってカイジさんを手伝わせよう……
きっと……カイジさんのためになる……褒めてもらえる……助けてもらえる………)
三好はそう考えて、太った男に向かってニコリと微笑んだ。


 * * *


安藤は恐怖のあまり声も上げられなかった。
九死に一生を得た――それはいい。
だが目の前での凄惨な殺人、そして自分を見てニヤリと笑う殺人鬼。
頭の中が真っ白になる。
股間が生温かい。
どうやら失禁してしまったようだ。
替えのズボンもパンツも無い。
ここでは乾かすのも難しい。
いや、末崎のズボンを履けばいい話か。
そんなことばかりを安藤は冷静に頭の中で整理していた。

「ふふ……良かった………助かったんですよ………」
不意な男の一言で、安藤は現実に引き戻される。
今は生きるか死ぬか、その瀬戸際であった。
(ううっ……死にたくない………)
碌でもない人生だったが、まだ未練はある。
命乞いの一つもしたかったが、しかし声が出ない。
安藤は恐怖に耐えられずギュッと目を瞑る。
「なにを怖がっているんですか?人殺しは死んだのに……」
人殺しはお前だ、と安藤は心の中で叫んだ。
そもそも末崎が本当に自分を殺すつもりがあったのかも怪しいところだ。
治を目の前にしたときのあの様子を見る限り、殺す度胸があるようにも見えない。
だからといって末崎を憐れむ気持ちにはなれないが、
少なくともこの男に人殺しと言われたのでは末崎も浮かばれないだろう。
この男は狂気に身を堕としているのか、自分がやったことの意味をうまく捉えていないに違いなかった。
このような男に何を言っても無駄である。
この状況下で命乞いも出来ない自分を慰め、死への覚悟を決めた。
――だが、男の口からは意外な人物の名が出てきた。

「大丈夫……助けてくれますよ………カイジさんなら……」
(……え?)
安藤の緊張がフッと解ける。
思わぬところで出てきた知り合いの名。
自分は助かるのではないか、そんな気がした。
「あの……カイジって………伊藤カイジ……?」
「はいっ……!知ってるなら話は早い……オレはカイジさんの仲間です!一緒にカイジさんを探しましょう!」
まさか、ここでカイジの名が出るとは思いもよらなかった。

カイジならいいアイディアもあるかもしれない。
ここから生きて出ることも、あるいは可能だろう。
カイジの姿を広間で一目見かけたとき、安藤はそう考えた。
しかし自分は裏切り者――カイジが自分を信用するであろうか。
普通に考えれば無理な話である。
だが状況は変わった。
今はこの男がついている。
自分には裏切りの前科はあるが、仲間であるというこの男と行動すればそれも帳消しになるはずだ。
――出来ればこんな狂人とは一緒に行動したくないが、生き延びるためにはやむを得まい。
カイジの知り合いということで、下手に手を出しては来ないだろう。
安藤は心を決めると、末崎の支給品を回収し、男に向かって宣言した。
「もちろんです……カイジさんを探しましょう!一緒に!」



【B-5/アトラクションゾーン/午後】
【安藤守】
 [状態]:健康
 [道具]:木刀 不明支給品0~8 通常支給品×3
 [所持金]:2800万円
 [思考]:カイジと合流する 三好を利用してカイジの信用を得る 生還する

【三好智広】
 [状態]:精神消耗
 [道具]:イングラムM11 30発弾倉×5 包丁 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:カイジに会う カイジの敵となる人物は殺す 生還する


【末崎 死亡】
【残り 36人】



025:3人目のアカギ 投下順 027:反逆者
025:3人目のアカギ 時系列順 027:反逆者
016:保険 安藤守 044:彼我
011:盲目 三好智広 044:彼我







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