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強者と弱者 ◆6lu8FNGFaw氏


草原の影にしゃがみこんでいた和也に襲い掛かるしづか……!

しづかの行動は、和也にとって予想外の行動っ…!
中学生の女子にしては、あまりに根性がすわっているっ…!
無防備にも、強力な武器を持った人間に対し、和也は丸腰…!あまりにも丸腰…!
ここへきて和也は、一瞬頭の中が真っ白になってしまった…!
ゆえに許してしまう…!接近を…!

しかし、互いに1メートルというところで、和也は見逃さなかった……
華奢なしづかの体が、わずかにふらつくのを……。
うなりをあげるチェーンソーの刃を下向きに支え、しかし果敢に向かってくるその少女……
中学生の少女には大きすぎるその代物…!

瞬時に判断する…そして行動するっ…!
上着の懐に手を入れ、一気にそれを取り出す……!


パァン………………!
高い爆発音と、火薬の匂い……!!!

しづかは身をすくませた。
一瞬視界を覆った七色の虹…… 虹……!?

(撃たれたっ……!?)
いや、そうではないとすぐにわかる。
和也が手にしていたもの、それは…… クラッカーだった。
ホームパーティーなどで使うあれだ。
決して武器にはならぬ…だが、相手をひるませるには十分っ……。
一瞬の隙を突き、和也は地面を蹴って逃げ出した。
ギャンブルルームの建物…その裏側へと走るっ……!

クラッカーの紐を払いのけ、しづかはとっさに追いかける。
しかしあることに思い当たり、少し走るペースを落とす。

…地雷は先ほどの1箇所とは限らない…!
なら…和也が通った足跡……。
地雷を仕掛けた張本人が通ったところならセーフティ…まず安全…!
それにおそらく、奴には他に遠距離での攻撃方法を持っていない。
さきほどの接近……。 あの窮地で出てきたのが、ただのクラッカー……。
銃など持っていればすでに使っている……!
しづかはそう考え、和也の足跡を意識しながら敵の背中を追った。


慎重に近づいてくるしづかを振り返り、しづかの行動を訝しんだ和也だったが、すぐに気がつく。
しづかが和也の足跡を辿るようにして近づいてくる、その理由……。
(そうか…! まだ他にも地雷が仕掛けてあると思ってんのか…!
クク… なかなか聡明だな… こいつ…! いい判断だ…!
だが… 残念だな…! それは杞憂っ…!
今俺が意図しているのは全く別のこと…!)

地雷は先ほど爆発した1箇所だけ……!
しかし、敵はそれを知らない…。
誤解ゆえに生まれた隙…隙っ…!
(ククク…! クク……!!)
(追いつめた……。殺す……。
アンタがやったように、一方的に殺す……!殺してやる……!)
しづかの目には迷いはなかった。学習していた。
この空間では…殺るか殺られるか…どちらかしかないのだ……!

ギャンブルルームの裏側へと回り込んだ和也……
そこには数本ばかり木立が立ち並び、建物の影と重なって暗い影を落としていた。

しづかは少しずつ距離をつめていく……。
和也ももう背中は見せない。後ずさりしながら敵の出方を伺う……。

………………。
………………………………。

互いに声を発しないまま、チェーンソーの轟音だけが辺りに響く。
もう互いに2メートルもない……。
和也が一瞬でも気を許せば、襲いかかってくるであろう… うなりをあげて回転する刃が……!

そのとき、和也の足元でパキッと音がする。
足元の小枝を踏みつけたのだが、過敏になっている和也はとっさに反応…ふと足元に目を向けてしまう…

しづかがその隙を見逃すわけが無い……!
瞬時に2歩踏み込み、右下から一気に撫で上げるように左上へと斬りつける……!!
そして…振り上げた左上… 視界の隅で捉えた、確かに感じる音と重み…手ごたえっ……!

ギャリリリリリリリリリッ………!!!


和也が見せた隙……。
一瞬の隙……。
だが、その「隙」こそが和也の罠っ……!


しづかの2歩目の踏み込みで、和也は一気に左側へと走る…!!
左側には木立…!
そう、しづかの振り回したチェーンソーの刃は……その木立の幹に食い込んでいた……!!

「くっ…!」
(しまった…!)
冷静であれば、しづかも予測できていたはず… この事態をっ…!
だが…自分の持っている強力な武器… 相手が丸腰であること…
その優位のため、心にわずかな緩み…気づくのが遅れたっ…!

幹に食い込んだままうなりをあげるチェーンソーを、反対側に引っ張って抜こうとするも、
引っかかってしまいすぐには無理…!

その一瞬後……左側から衝撃…!
しづかは為すすべもなくふっとばされる…!

和也がしづかに体当たりを食らわせたのだ。
圧倒的な体格差…!あっさり飛ばされる…!
しづかは地面に尻餅をついた。
回転が遅くなり、幹に引っかかってぶらさがるチェーンソー…
やがてそれは、自身の重みで幹からはずれ、鈍い音を立てて落下した。

ふと、左上から影……
見上げると…がっしりした体つきの男…
口元には笑みを浮かべていた……。

その表情っ…!
サングラス越しにはっきりと見て取れた……その目……。
獲物を見つめる獣の目…!明らかな殺意……!
背筋が凍りつく感覚っ……!!

「………………!!!」


気づくと、しづかは一目散に逃げ出していた。
自身の持てる力の限りを振り絞って、後ろも見ずに走った。


逃げろ。逃げろ。逃げろ。
危険。危険。        危険っ……!


本能がそうさせたっ…!
何も考えず、ただ「離脱せよ」と、脳が体に指令を下した…!

しづかはただ走った。草に足をとられようが、伸びた枝に腕をかすろうが、おかまいなしにっ…!

「クク…!こいつはいい…!」
和也はチェーンソーを拾い上げ、ニタリと笑った。
超強力な武器を入手っ……! 僥倖…!なんという僥倖…!

(切断… 切断できる…! あらゆるもの… 特に… 人体っ……!!!)

愉悦に我を忘れかけた和也だったが、ふと冷静に今の状況を省みる。
(しかし… 「音」がな……。)

爆発音、そしてチェーンソーの音…。
あまりに騒がしくしすぎた。
これらの音を聞きつけ、誰かやってくるかも知れない。

そして……こんな轟音を聞きつけてわざわざやってくるのは……
「殺し合い」のみを欲する人物ぐらい……!!
今の状況でそれに出くわすのは和也の本意ではない……。

和也はしづかの走り去った方角を見つめた。
自称フェミニストの和也は、しづかをわざわざ追おうとは考えなかった。
それに… はっきりと刻印されたであろう…。
少女の心に…恐怖…圧倒的恐怖がっ……!

こちらを見上げたときに、少女の目ははっきりと物語っていた……
あの刹那… 強者と弱者… どちらの立場なのか…選別されたっ……!
(……だが、それでも…)
歩き出しながら、和也は考えていた。

(次に会ったとき、そのとき少女が怯えて竦みあがるようなら……………)


和也の姿は木立の奥… 日がやや翳り、深くなりつつある影の中へと溶けた。


【E-5/ギャンブルルーム付近/午後】
【しづか】
 [状態]:健康、やや精神的不安定
 [道具]:不明支給品0~2(確認済み) 通常支給品×2
 [所持金]:2000万円
 [思考]:和也からとにかく逃げる

【兵藤和也】
 [状態]:健康
 [道具]:チェーンソー 対人用地雷三個(一つ使用済)
     クラッカー九個(一つ使用済) 不明支給品0~1個(確認済み) 通常支給品
 [所持金]:1000万円
 [思考]:優勝して帝愛次期後継者の座を確実にする
※伊藤開司、赤木しげる、鷲巣巌、平井銀二、神威秀峰、天貴史、原田克美を猛者と認識しています。

※利根川、一条、遠藤、村岡の四人と合流したいと思っています。
 彼等は自分に決して逆らえないと判断しています。


034:賭博覇王 投下順 036:
034:賭博覇王 時系列順 036:
032:束の間の勝者 しづか 039:観察
032:束の間の勝者 兵藤和也 053:孤島の鬼






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