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見当 ◆wZ6EU.1NSA氏


坂崎美心は立ち尽くしていた。

目の前の光景。
殺す者。殺される者。殺し合い。
そのどちらも少年であった――。



坂崎美心は、一般的な女性である。
体格、腕力、知力、経験(箱入りで育てられた為、多少世間知らずで男性経験に乏しくはあるが)、
どれを取っても同年代の平均的な女性のそれと大差ない。
そんな彼女がこんなゲームに参加したのは、一重に彼女の想い人――伊藤開司に会わんが為であった。

離れて暮らしていた父から、ある日突然都内に家を購入したと連絡があった。
半信半疑ながらも母と共に訪ねるとそこには立派に家があり、家族は再び三人で暮らす事となった。
(我ながら分かりやすい家族だと思いはしたが。)
このように家族が再構築する事が出来たのは、カイジという青年のお陰だとしきりに父は言った。
そして今年の正月の事である。美心の目の前にカイジは現れた。
美心はカイジに想いを寄せていたし、彼も美心を憎からず想っていた。筈である。女の勘である。
実際にカイジは優しかった。地面に落ちた手作りのサンドイッチを残さず食べてくれた。
そう確か――その日の夜の事だった。

まず母が家の前に不振人物がいる事に気付いた。
不安を覚えた二人は父にその事を伝えたのだった。
すると、(当時坂崎家に居候していた)カイジが追っ払ってきます、と家を出て…。
それきり彼が戻って来る事はなかった。
最後に父と何か話していたようだが、それについて父に尋ねても何も答えてはくれなかった。

自分のせいなんだ…。美心はそう考える。
カイジは不審者に対して、「目を付けられたのはオレの方だ」と言っていたが、やはりあの男達は自分をつけてきたのだ。
優しいカイジは美心を怯えさせない為にそんな嘘を吐いたのだろう。
きっと彼は…美心を守る為に戦い、美心の身の安全を慮って姿を消したのだ。
そうとしか考えられない。女の勘である。



――そして舞台は孤島。
初めに出会ったのが黒沢であった事はこの上無い僥倖であった。
自ら戦う強さも、己を守る強かさも持ち合わせない彼女にとっては。
そうでなければ美心は死んでいたであろう。あっさりと。

目の前の二人の少年の殺し合わんとする様を見て、やっと気付いた。
ここは殺し合いの舞台だという事に。

そして生まれて初めて知る「死」という現実…リアル。

餌食…獲物…。弱者は殺される。力無き者は容赦なく死を迎えるのだ。
己の非力さを実感する。
死ぬのは嫌だ厭だイヤだ怖い恐いコワい。
心の扉が開く。

湧き出した恐怖は、あっという間に頭まで美心を満たし、もはや呼吸すらままならない。

少年がこちらに顔を向ける。

そして美心は――どこか遠く悲鳴を聞きながら意識を失った。
黒沢は思考を整理する。

まずは美心。
軽く恐慌状態に陥っているようだから落ち着かせなければならない。女性を守るのは男の義務である。
次に少年。
仲根と同じ位の歳だろうか。彼を保護し、怪我を負っているなら手当てをする。子供を守るのは大人の義務である。
そして、仲根についても訊かなくてはならない。

少年がこちらを向いた。
美心を落ち着かせる前に、敵意のない事だけは少年に伝えておこうと口を開く。
その口が言葉を紡ぐより早く。

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああっっ!!!」

何が起きたのか一瞬黒沢には理解できなかった。
目の前の美心がその場に崩れ落ちるのを見て、それが悲鳴であり、その悲鳴の主が彼女である事に気付いた。

美心の声に怯えたのか少年は駆け出してしまう。
「おいっ…!少年っ…!」
慌てて声をかけるが黒沢の声には気付かない様子でそのまま去ってしまった。

黒沢は逡巡する。
走り去った少年と、美心。

黒沢は美心の傍を選んだ。
仲根と少年の事は気になるし、できれば守ってやりたかった。
だが、今は美心である。
何があっても彼女を守り通すと決意したのは他ならぬ己自身なのだから。

再び黒沢は思考を整理する。
倒れてしまった彼女をどこか安全な場所へ移す。
いや、安全な場所などこの島にはありはしない。
ならば…せめて屋根のある施設へ移動する。

黒沢は意識の無い美心を背負って歩き出した。
人の体温と重さとが背に架かる。

――何、重い物を抱えて歩くのには慣れているんだ。


工藤涯は呼吸を整える。


自分を襲った少年は去りはしたが、警戒は解かない。
涯の視界に入り込んだのは一組の男女。
鼻水を垂らした中年男性と、……個性的な顔立ちの若い女性。
女性は先程の悲鳴の主なのであろう。慌てふためいている。その後ろの男も何だか慌てている。

涯は顔を女の方に向けた。
一瞬の間の後、女は再び悲鳴を上げた。
しかも先程のとは比較にならない程の叫びである。

咄嗟に涯は女に背を向け走り出す。中年男に呼びかけられたが、それに構う余裕などない。
尋常でない今の女の悲鳴はそれなりの範囲に響き渡ったであろう。
それは即ち、此処に人がいる事を不特定多数に示すといういう事だ。
どんな人間が寄ってくるか分からないこの状況はあまりに危険すぎる。
ましてや女の悲鳴に群がってくるような輩に碌な者はおるまい。
まさかこの状況下に於いて、正義の味方宜しく参上仕る人間などいないだろう。
そう判断しての行動であった。

それにしても、と走りながら涯は考える。
何故――あの少年は自分にとどめを刺さなかったのか。
女の悲鳴に驚いたか…?否。女の悲鳴が上がった時あの少年は揺らぎはしなかった。
最後の最後で殺しを躊躇したか…?それも違うような気がする。
印象といえばそれまでだが、あの少年にはその覚悟があるように見えた。

気になる事はもう一つ。
あの女は何故突然悲鳴を上げたのか。
一度目の悲鳴については分からなくもない。あの状況を目にすれば当然の行為ともいえる。
問題は二度目の悲鳴である。
女に顔を向けた際、正面から捉えた顔の痕を見て驚いたか…?驚くな、とは言わないがそれにしては大仰に過ぎる。
自分が人殺しだと分かってしまったか…?だとしたら――大した野生の勘である。

幾ら考えてみたところで無駄である。答えなど出はしない。
涯に分かる事。それは、殺さなければ殺される。という事。
死にたくなければ…生きてここを出たいのであれば、殺し続けるしかないのだ。

だが…この場所は。
オレは誰からもは放たれているのではいか。オレはオレに依っている。自らに由っている。
いや、そうでは無い。遊ばれている。他人の手の上で。こんなものは自由なんかじゃない。


【C-5/アトラクションゾーン/午後】
【工藤涯】
 [状態]:右腕と腹部に刺し傷 他擦り傷などの軽傷
 [道具]:フォーク 鉄バット 野球グローブ(ナイフによる穴あり) 野球ボール 支給品一式×2
 [所持金]:2000万円
 [思考]:生還する この場から離れる

【黒沢】
 [状態]:健康
 [道具]:不明支給品0~3 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]: 美心を運ぶ 闘う

【坂崎美心】
 [状態]:失神
 [道具]:不明支給品0~3 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:人殺し恐い カイジ、父に会いたい



039:観察 投下順 041:目的
039:観察 時系列順 041:目的
028:刃と拳 工藤涯 046:混迷
028:刃と拳 黒沢 047:純愛
028:刃と拳 坂崎美心 047:純愛






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