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余裕  ◆JsK8SvgrFA氏


太陽はその位置を水平線の近くまで落とし、その光は夕焼けとなって空と海を赤く染めている。
その光の中を歩く一人の男が居る。
飄々と、あるいは堂々と。
それは、この戦地では、ひどく目立つ歩き方だった。
このゲームに参加、いやさせられた多くの者はこんな歩き方はできない‥‥‥!
敵がいつ襲ってくるか、わからない状況である。
怯えながら歩く者。警戒しながら歩く者。武器を構えながら歩く者。
誰もが、己の生命の危機を常に感じている‥‥‥‥!
できないっ‥‥! この男の様にただ普通に歩くことなど‥‥到底っ!

その男--平井銀二は、ただ無防備に歩いているわけではなかった。
彼も、常にあらゆる不測の事態は想定している。
想定しているが、それでも彼の態度には感じられる‥‥! ある種の余裕!
その実力からする自信か‥‥‥。
しかし、若者にありがちな、裏打ちの無い自信によるものでは無い‥‥!
長年、精神的にも肉体的にも数多くの修羅場を潜り抜けてきたものだけが持てる自信。
そしてその余裕は、その自信からくるものだけではなく‥‥さらに!
彼が感付いているある事実‥‥!
それは、このゲームを根本から覆すことも可能な、ある『気付き』‥‥!
それこそが、彼の態度に余裕をもたらしていたのであった‥‥‥!


銀二の姿に、先に気付いたのはアカギだった。
原田克己と共に、F-6のホテルを目指している最中であった。
アカギ、足を止める‥‥‥!
アカギが一点を凝視して立ち止まっていることに、やや遅れて気付く原田。
「アカギ、どうした?」
原田はアカギの視線の先を追う。そして、銀二の姿を確認する。
「‥‥‥あのおっさんがどうかしたか?」
「ククク‥‥‥なかなか面白そうなオヤジだぜ」
「アカギ、声をかけるのか?」
「‥‥‥まぁ、見てな」
アカギは原田にそう言い残し、銀二に歩みよっていく‥‥‥!


「よぉ」
アカギは銀二の後ろから声を掛けた。
銀二がゆっくりと振り向く。そしてアカギの顔を見据える。
「私に何か用かい?」
「おっさん、どこに向かって歩いてるんだ?」
「特に目的というのはありませんが‥‥‥‥あなたは?」
「俺はアカギ。こいつは原田だ」
アカギは手短に自己紹介する。
「私は平井銀二と言う者です‥‥‥。
 そうですか、アカギさんですか。はじめまして。
 原田さんの方は‥‥、原田さんは私のことをご存知ないと思いますが、
 私は原田さんのことは存知あげております‥‥‥!」
そう言って銀二は、アカギに意味ありげに笑って見せた。
「そうか。まあ俺の顔は知れわたってるからな。
 俺を知ってる奴がいても不思議じゃない‥‥‥」
原田は関西最大規模の暴力団組長である。こういうことは多いのだろう。
「それで?」
「平井さん。
 見たところ‥‥あんたは殺し合いには‥‥乗ってないみたいだな」
「‥‥‥そう見えますか?
 あなたたちこそ、どうなんです?」
「‥‥‥そうだな‥‥‥。
 俺たちは‥‥‥」
アカギはそこで言葉を止めて、銀二をじっと見つめた。
原田は、銀二にやや胡散臭さを抱いていた。
‥‥‥この男‥‥只者じゃねぇ‥‥‥!
‥‥‥アカギは、気付いているのか‥‥?
アカギは、言葉を続けた。
「とりあえず、殺し合いには乗ってはいない。
 平井さん‥‥そういうことで、お互い協力するってのはどう?」
「‥‥‥つまり、情報を共有したり、行動を共にしたりってことですね。
 それは、悪い話じゃない‥‥‥。
 しかし‥‥‥そうした場合、私のメリットは?」
銀二は言葉を区切り、アカギと原田を交互に見比べ、少し考えた後に言葉を発する。
「それに‥‥君が何を企んでるかは知らないが、
 当面、君の本当の狙いはそんなことじゃないだろう‥‥?」
アカギ、意表を突かれる‥‥!
原田にも言っていない、本音‥‥‥! 本当の作戦!!
それを嗅ぎつけてくるとは!!
「‥‥‥ククク‥‥‥やっぱり面白いぜ‥‥‥アンタ‥‥‥。
 じゃあ、話を変えよう。
 ‥‥‥‥‥ギャンブルはどうだ?」
「‥‥‥そうですね‥‥‥。
 私もそれを望みます‥‥‥」
アカギと銀二は、目を合わせて微笑み合った。


三人は連れ立ってギャンブルルームへと移動した。
部屋に入ると、銀二は口を開いた。
「ところで‥‥、さっきから気になってるんですが、
 賭けるものはやっぱりそのケースの中身ですかね?」
「これが不満か?」
原田は少しいらだって、アカギが持っていた大きなジェラルミンケースの鍵を開ける。
中身は、札束‥‥‥!! 五億円はあろうかという札束!
「金がこれだけあっても足りないっていうのか?」
‥‥‥しかし、銀二、動ぜず!
多額の札束に、全く臆する様子は見られない!
「そうですね‥‥‥。
 それが本当に金であれば、なぜチップではなくて現金なんです?
 私たちに支給されているのは、現金ではなくチップであるはず。
 わざわざ、そんなにかさばるお金を持ち歩く必要性は無い‥‥‥。
 ‥‥‥それは、本物のお金ではありませんね?」
原田、驚愕っ‥‥‥!
ケースの中身が偽札であることを言い当てられてしまった‥‥!!
「ええ、ギャンブルをすること自体に問題はありませんよ。
 ただ‥‥、私が賭けて頂きたいのは、お金よりも、
 原田さん、あなた自身です‥‥‥!
 私が勝った場合、原田さんにはアカギさんと別れてもらい、私と行動を共にして頂きたい。
 もちろん、ずっととは言いません。
 ‥‥‥そうですね、この勝負が終わってから丸一日‥‥‥、
 24時間の間、私に従って頂く、というのでどうです?」
何を‥‥この俺を従わせる、だと?
原田は当惑し、アカギの顔を伺った。

しかし、アカギは笑った。
「面白い‥‥‥。
 しかし‥‥、アンタはそれに見合うだけ‥‥、
 いったい何を賭けるつもりだい?」
「私の持っている情報を賭けましょう‥‥‥。
 このゲームを根本から覆すことのできるだけの情報です‥‥‥」
黙っていられず原田が叫ぶ。
「アカギっ!!
 こんな奴の言う事を信用するのかっ!!
 そんな情報、有るかどうかもわかったもんじゃないのに‥‥‥」
「持ってるさ、原田。
 平井さんは、何かを知っている。
 ‥‥‥おそらく、それは、俺たちが最も欲しい情報だ‥‥‥。
 何か、このゲームに関する圧倒的な情報‥‥‥!!
 それを持っているから、この男はこんなに余裕があるんだ‥‥」
「さすがはアカギさん、察しがいい‥‥‥」
「アカギっ!」
「いいさ、この勝負受けてやる」
アカギも銀二に負けず劣らずの余裕で答えた。


「‥‥‥さあ、そうと決まったら、種目は何にします?
 おっと、麻雀だけは簡便してください。
 原田さんは確か麻雀の腕の方もかなりお強かった筈。
 ゲームは、アカギさんと私でしましょう」
「‥‥ああ、かまわない」
「そうですね‥‥‥勝負は早いほうがいい。
 サイコロで丁半なんかいかがです?
 ‥‥‥親は、アカギさんで結構ですから‥‥‥。
 ついでに、賽を振るのも私が賭けた後で結構です」
アカギは軽く、更に驚いた顔をする、が、それも一瞬のこと‥‥‥。
「‥‥なるほど、とことん面白い‥‥‥!
 平井さん、アンタって人は‥‥‥!!」


「勝負は一回だ。
 さあ平井さん、どっちに賭ける」
「丁」
原田、内心で快哉を叫ぶっ!
この丁半博打、賽を後出しで振れる親の方が有利‥‥。圧倒的有利っ!
アカギなら、賽の目を操るくらい、簡単にできそうだ。
この勝負、勝ち‥‥。アカギの勝ち‥‥。
が、しかし‥‥‥!
アカギは賽を振り、ツボを開けた。
ピンゾロの丁!!
「ククク、ついてねぇや‥‥‥」
アカギ、認めるっ! 負けを‥‥、あっさりと!
原田、驚愕っ!
「この勝負、私の勝ちのようですね‥‥‥。
 原田さんは、頂いていきますよ」
「ククッ、残念だ‥‥‥‥」
アカギは口ではそう言っているものの、全く残念そうなそぶりは見せない。
余裕綽々、といった感じか。
‥‥‥ちくしょう、アカギの奴何考えてやがるっ‥‥‥!!
内心、穏やかではない原田であった。


三人は、ギャンブルルームを出た。
「ではアカギさん、24時間後に、この場所で‥‥‥、
 原田さんを、お返ししましょう」
と、銀二。
「了解だ。
 じゃ、原田さん、後はよろしく‥‥‥」
原田に軽く会釈すると、アカギはジェラルミンケースを抱えてそそくさと去って行ってしまった‥‥‥!


「‥‥‥納得がいかないようですね、
 原田さん‥‥‥」
アカギが去った後、銀二は、原田を振り返った。
「アカギさんは、わざと負けたんですよ‥‥‥」
「なにっ!!」
原田は憤慨した。
「彼は‥‥‥、非常に頭が切れて勘も鋭い人ですね‥‥‥。
 私のことを一瞬で見抜いたみたいですよ。
 私が持っている情報が何であるか‥‥‥」
「えっ!?」
「しぃーっ!」
銀二は首輪を指差し、人差し指を口に当てた。
原田もすぐに気付いた。この首輪には盗聴機能がついている可能性が高い。
銀二はノートを取り出し、なにやら書きつけ、原田に見せる。

『私が持っているのは、この首輪に関する情報です‥‥‥!!
 アカギさんはそれに気付いたようでしたから、
 あの勝負は、アカギに後で賽を振らせることで、私は勝敗をアカギさんに委ねたんですよ‥‥‥。
 アカギさんは、自ら負けを選んだのです‥‥‥!!
 ということは、アカギさんには、今は一人で行動する作戦があったと思われます‥‥‥。
 つまり、こう言っちゃなんですが、要するに原田さんは今、
 アカギさんにとって足手まといだったんじゃないかと思います‥‥‥!
 私は、あなたたちに会った時に、なんとなくそのことを察したんですが、確信が無くてね。
 ギャンブルという形をとらせて頂きました‥‥。

 しかし、私とアカギさん達が組めば、きっと大きな力となります‥‥‥。
 アカギさんとの再会の約束は取り付けました‥‥‥。
 再会するまでに、私たちにもすべきことは沢山有ります‥‥‥。
 原田さん、あなたは今、私と共に行動するべきなんですよ‥‥‥!!』



【E-4/道路沿い/夕方】
【平井銀二】
[状態]:健康
[道具]:支給品一覧、不明支給品0~2、支給品一式
[所持金]:1300万
[思考]:生還、森田と合流、見所のある人物を探す
※2日目夕方にE-4にて赤木しげると再会する約束をしました。

【赤木しげる】
 [状態]:健康
 [道具]:五億円の偽札 不明支給品0~2(確認済み)支給品一式
 [所持金]:800万円
 [思考]:もう一つのギャンブルとして主催者を殺す
※過去に主催者が開催したゲームを知る者、その参加者との接触を最優先に考えています。
 接触後、情報を引き出せない様ならば偽札を使用。
 それでも駄目ならばギャンブルでの実力行使に出るつもりです。
※危険人物でも優秀な相手ならば、ギャンブルで勝利して味方につけようと考えています。
※首輪に似た拘束具が以前にも使われていたと考えています。
※主催者はD-4のホテルにいると狙いをつけています。
※五億円の偽札
五億円分の新聞紙の束がジェラルミンケースに詰められています。
一番上は精巧なカラーコピーになっており、手に取らない限り判別は難しいです。
※2日目夕方にE-4にて平井銀二と再会する約束をしました。

【原田克美】
 [状態]:健康
 [道具]:不明支給品0~3(確認済み)支給品一式
 [所持金]:800万円
 [思考]:もう一つのギャンブルとして主催者を殺す 銀二に同行する
※首輪に似た拘束具が以前にも使われていたと考えています。
※主催者はD-4のホテルにいると狙いをつけています。
※2日目夕方にE-4にて赤木しげるに再会する約束をしました。




044:彼我 投下順 046:混迷
043:道標 時系列順 046:混迷
029:布石 平井銀二 067:銀と銀と金と銀
027:反逆者 赤木しげる 052:手札
027:反逆者 原田克美 067:銀と銀と金と銀







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