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混乱 ◆JsK8SvgrFA氏


市川は満足そうに拡声器を置いた。
そして笑みを浮かべ、驚いて言葉も発することのできない一同を、その見えない目で睨みつける‥‥‥!
「‥‥‥さあ‥‥‥。金に釣られた殺人者どもがどれだけ集まるか‥‥‥。
 楽しみだとは思わんかね‥‥‥」
「ばっ、馬鹿野郎!! 何てことしやがるんだっ!」
天は憤った‥‥‥しかし、いくら憤ったところで、一度発してしまった拡声器の声はどうなるものでもない‥‥‥!!
「‥‥‥くそっ‥‥‥!
 わざわざ、人殺しどもを呼び寄せるようなことをしやがって‥‥‥!
 ‥‥こうなったら、死人を少しでも減らせるようにするしかねぇっ‥‥‥!!
 治っ! 手伝え‥‥‥!」
天は、いきなり市川を押し倒した。
「‥‥天さんっ! いったい何をするんです!?」
「奪うんだ‥‥‥市川から、ダイナマイトを!
 さあ、石田さんも手伝ってっ!」
「‥‥‥えっ? ええ‥‥‥。
 ‥‥‥でも、あんまりご老人に手荒なまねは‥‥‥」
地面に押し付けられながらも、市川はまだ余裕の笑みを浮かべていた。

天、治、石田の三人は、市川からダイナマイトがぎっしりと装着されたコートとライターを奪い取った。
「‥‥ふふん。
 わしからダイナマイトを奪ったところで‥‥‥。状況はさして変わらないぞ?
 どのみち、ここを目指して、人殺しがぞくぞくと集まってくる‥‥‥。
 ‥‥どうやって逃げおおせるつもりか?」
「‥‥くっ!
 確かに、ここにいる全員が生きのびれる保障はねぇ‥‥‥。
 それでもっ! 簡単に諦めるわけにはいかねぇんだよ‥‥‥!!
 ‥‥‥でも、戦おうにも、ロクな武器が無い。逃げるしかねぇ。
 ‥‥四人が集団でいると、目だってしかたない。ここは、二手に別れよう。
 俺は市川さんを連れて行く。治と石田さんは二人で逃げろ。
 拡声器とダイナマイトは敵に見つかるとヤバい。持って行っていってくれ」

「‥‥ほぉ、わしを連れて行くというのか?
 それはそれはお人良しなことだのう‥‥‥。
 ‥‥‥盲目の老人は足手まといだぞ?」
「うるさいっ! 確かにお前を助ける筋合いは無い。
 だからといって、みすみす人が殺されるのを放っておくのは許せねぇんだ!!
 お前が嫌だと言っても、無理やりにでも連れて行くからな!」
「‥‥やれやれ‥‥。しかし、それも一興‥‥‥。
 お前さんが、その偽善的な尊い行為の末に命を落とす‥‥‥。
 それを見るだけでも、なかなか楽しいじゃないか‥‥」
天は苦々しく市川を見やった。
「天さん、大丈夫ですか?」
と、治。
「ああ、大丈夫だ‥‥任せとけ。
 それよりおまえらこそ気をつけていけよ‥‥‥!」
ただ逃げるにしても、まだまともに動けそうな治と石田を組にして、自分は持ち前の正義感から市川という不利なパートナーを選んだ天であった。
そして、天と市川は西方向に、治と石田は東方向に別れて、それぞれ歩き始めた。

 *  *  *

治と石田が歩き始めて、まだ間もない頃。
「‥‥治さんっ! 向こうから誰か来ますっ!」
「‥‥え?」
「‥‥しぃーーーーっ!!」
木々の間に、ひどく背の高い少年の姿‥‥!
‥‥その手には、ナイフが握られている‥‥‥!!
‥‥仲根であった。

(‥‥‥あんなに図体の大きい相手とやりあったら‥‥‥こっちは二人とはいえ、勝てるかどうかわからない‥‥‥!!)
治と石田は、反射的に茂みに隠れた。

‥‥ザッ‥ザッ‥ザッ‥ザッ‥‥。

静寂の中、足元の草を踏んで仲根の足音が、だんだんと近づいてくる。
仲根も警戒しながら歩いているのか、その足音は一定ではなく、一歩一歩確かめるように迫ってくる。

‥‥‥頼む‥‥‥。通り過ぎてくれ‥‥‥。

石田は神に祈った。祈ることしかできなかった。

‥‥ザッ‥ザッ‥ザッ‥ザッ‥‥。

足音は、治と石田が隠れているすぐ傍まで迫り‥‥‥‥通り過ぎて行った。
二人は安堵した。
仲根の足音が聞こえなくなって少ししたところで、二人は立ち上がった。
「‥‥ふぅ‥‥。
 なんとかやりすごしたみたいですね‥‥‥」
治がため息をついた、その時である。

「ウッ」

治は後ろから羽交い絞めにされていた。
去ったと思っていた仲根は、一度通り過ぎたと見せて、背後に回りこんでいたのである。

そして、その手に持ったナイフは治の喉をまっすぐに狙っていた‥‥‥‥。

「ヒィィィィッ!!」

石田は驚愕し、尻餅をついた。
‥‥こっ、殺される‥‥‥!!

い、いやまて‥‥‥、まだ殺されていない‥‥‥。
し、しかし、この状況では私にはどうしようもない‥‥‥!
いや‥‥‥しかし!
あるぞ‥‥‥! ダイナマイトが!!
‥‥そうだ‥‥ただ殺されるのは嫌だ‥‥!

目前に死を感じて、石田は通常では考えられない程の力が込み上げてくるのを感じた。
石田は震える声で、今まさにナイフで治の喉を突こうとしている仲根に声を掛けた。

「おいっ! 待て‥‥‥!! これを見ろ‥‥‥!」

仲根は顔を上げた。そして驚いた。
石田が持っているのは、産業用ダイナマイト!!

石田はダイナマイトとライターを仲根に見せつけながら、喋る。
「‥‥‥その人を殺したら‥‥私は自分もろともあなたを吹っ飛ばす!!
 脅しじゃない‥‥どうせ死ぬなら‥‥殺されるより‥‥自分で死んだ方がいい!!」
‥‥‥ありったけの勇気を振り絞って、やっとそこまで言うことができた。

(チッ! やっぱり二人相手というのは少しマズかったか‥‥‥)
仲根は考えた。

それに、さっきの拡声器の声は、もっと老人の声だった‥‥‥。
 ここは、リスクを冒して二人殺すより、確実に殺せる一人を狙った方が賢明‥‥)

仲根は、治を突き飛ばすように離すと、逃げるように去って行った。

「有難う‥‥‥。石田さん‥‥‥。
 危うく死ぬところだった‥‥‥」
「‥‥‥よかったよかった‥‥。とりあえず、命が助かって‥‥‥。
 しかし‥‥‥、道具というものは思わぬところで使えるもんですね‥‥‥」
「そうですね‥‥‥。
 でも、敵はこれだけとは限りませんよ‥‥‥。
 まだまだ気をつけて逃げないと‥‥‥」

 *  *  *

その頃、天は市川を引きずるようにして歩いていた。
内心、市川に対しては怒りでいっぱいである。
(‥‥‥この爺さんは、結局自分がゲームを引っ掻き回すことしか考えちゃいねぇんだ‥‥‥。
 クソッ! 命を軽々しく考えやがって!!
 ‥‥‥でも、今ここでそんなことを言っても始まらねぇ‥‥。
 今更、この爺ぃに何を言っても無駄だろう‥‥‥。
 ダイナマイトを取り上げたから自爆はできなくなったが、まだこの状況を作り出したことを楽しんでやがる‥‥‥‥!!
 それより、ともかくここを脱出することが先決だ‥‥‥。
 ‥‥‥が、正直厳しい‥‥‥。
 手元にはまともな武器もないし、市川にいたっては盲目‥‥‥。
 ここは、せいぜい敵に見つからないように用心して、元いた場所から少しずつ離れていくしかねぇ‥‥‥)
 市川は、そんな天の心情を嘲笑うかのように、ククク、と不敵に微笑んだ。

「‥‥‥そうさなぁ‥‥。
 おまえさんは、人の命を大事にしたい、と思うておるらしいの。
 ‥‥‥しかし、本当にそれだけか?
 おまえさんにも、わしと同じように勝負師としての血は流れておるんじゃないかの?
 この狂気じみたゲームを、『主催者を倒す』という、圧倒的な勝ちで収めたいという欲があって‥‥‥、
 ‥‥‥結局は、自己満足‥‥‥そこに行き着くんではないかの?
 まあ、いい。ぎりぎりの勝負の中で、本当の自分を思い知れば良いわ‥‥‥」
市川は、さらに腹立たしいことを言ってくる。
しかし、市川の言うことも完全に否定しきれない自分もいることに、天は少しいらだっていた。
「‥‥‥ククク。
 おや? なんだか、足音が聞こえるぞ‥‥‥。こっちへ向かって歩いてくる‥‥‥」
天は慌てて周囲を見渡した、が、どこにも人影は見当たらなければ、足音も聞こえない。
どうやら、盲人として聴力の発達した市川だけが聞きうる足音のようだった。

「‥‥赤松さん、気をつけて。人が見える」
そう言って標はモデルガンを構えた。
その方向を見て、赤松も二人の人物を遠くに確認する。
「‥‥‥あれは?」
二人の人影は、片方が片方の手を引いていた。
「‥‥きっと‥‥片方は身体にハンデがある‥‥。怪我か何か‥‥‥。
 それをもう片方がかばっているってことは‥‥。
 あの二人には、戦う余裕があまり無いってこと‥‥‥。
 いわば、弱った獲物‥‥‥。殺してくれ、と言っている様なもの‥‥。
 赤松さん、警戒は解かないで‥‥どんな殺人者が襲ってくるか解らない‥‥」
「‥‥おい、あの二人に近づくのか‥‥‥?」
「‥‥うん、興味がある‥‥」
赤松は、バッグの中の手榴弾に手をかけながら、標について行く。

二人は、足音を立てないように注意しながら、そろりそろりと天と市川に近づいていった。

「動かないで」
天が標に気付いたとき、既に標は拳銃の照準を定めていた。
「‥‥ほれ‥‥来たぞ」
市川は、天を試すかのように笑って見せた。
「‥‥子供‥‥。子供なのか?」
天は驚いた。
「あなたたちには、戦う意志はありますか?」
「‥‥‥俺たちは戦えねぇ‥‥。この爺さんは、目が見えない。
 さっきの声を聞かなかったか? この辺りにいると、人殺しが寄ってきかねない‥‥‥。
 俺たちは、逃げてるんだ‥‥‥拳銃を下ろせ‥‥‥」
「ククク‥‥‥そうさ、わしらには戦うすべが無い‥‥‥。
 坊ちゃん、その拳銃でわしらを殺してしまってもよいのだぞ‥‥‥」
「‥‥‥面白いことをいうね、お爺さん」
 標は、拳銃-モデルガンを降ろした。
「‥‥‥拡声器の声は、お爺さんだね‥‥‥?
 自分でわざわざ殺して欲しいようなことを言っておいて、今は逃げている‥‥。
 ‥‥‥なんで、あんなことを言ったの?」
「‥‥‥おまえみたいなガキの知ったことじゃないさ‥‥‥」
「‥‥‥そう‥‥‥答えなくても‥‥わかるよ‥‥‥。
 ‥‥‥あなたは、自分の命なんかどうでもいいんだ‥‥‥。
‥‥‥このゲームに参加してたら、死ぬことなんて簡単なのに‥‥、わざわざ、あんなことを言った‥‥‥。
 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥きっと、ただ普通に死ぬのは嫌だったんだ‥‥‥‥‥‥。
 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥それがどうした‥‥‥」
「‥‥‥ただ普通に死ぬのが嫌、ということは、
 あなたには、きっと無念なことが有ったんだ‥‥‥。
 普通に‥‥ただ安らかには死んでも死にきれないような‥‥‥何かよほどのことが‥‥‥」

図星である。市川は見えない目を見開いた。
自分の代打ちとしてのプライドを、アカギにズタズタにされた事。
それは、市川にとって最も痛みとして感じ続けている、一番の心の傷である。
その傷があることを、その声から察するところまだ小さな子供に簡単に感付かれてしまった‥‥‥。
市川は、うろたえた。
標は言葉を続ける。
「‥‥‥教えてくれないかな。
 ‥‥‥何があったのか、そして、あなたは本当はどんな人なのか、興味があるんだ‥‥‥」
「‥‥‥ふん‥‥‥。
 おまえなんぞに、簡単に話せるものか‥‥‥」
「‥‥‥そうだね‥‥。
 今は、ゆっくり話してる場合でも‥‥ないし‥‥‥、
 今は‥‥‥‥」

その時である。
「標さぁーーーんっ!!
 赤松さぁーーーんっ!!
 まったく、私を置いてどこにいくざんすか!!」
けたたましく喋りながら、村岡が追いついてきた。
この、『いつ、誰が襲ってくるかわからない』という状況など、全く見えていないようである。
「‥‥‥こんなところにいたざんすか!!
 私がどれだけあなたがたを探したと思うざんす?」
相変わらず声が大きい。
赤松は思わず、村岡を叱った。
「ば、馬鹿‥‥‥!
 声が大きい‥‥‥」
「何ざんす!?」
村岡の声に呼び寄せられたかのように、がさり、と、どこかで人の気配がした。

【B-3/アトラクションゾーン/夕方】
【治】
 [状態]:後頭部に打撲による軽傷
 [道具]:拡声器
 [所持金]:0円
 [思考]:石田と逃げる アカギ・殺し合いに乗っていない者を探す


【天貴史】
 [状態]:健康
 [道具]:鎖鎌 不明支給品0~2 通常支給品
 [所持金]:1000万円
 [思考]:この場をどうにかする アカギ・殺し合いに乗っていない者を探す


【石田光司】
 [状態]:健康
 [道具]:産業用ダイナマイト(多数) コート(ダイナマイトホルダー) ライター
     支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:治と逃げる カイジと合流したい
     ※有賀がマーダーだと認識


【市川】
 [状態]:健康
 [道具]:なし
 [所持金]:1000万円
 [思考]:人が集まるのを待つ
     ※有賀がマーダーだと認識


【仲根秀平】
 [状態]:前頭部と顔面に殴打によるダメージ 鼻から少量の出血
 [道具]:カッターナイフ バタフライナイフ ICレコーダー 支給品一式×2
 [所持金]:2000万円
 [思考]:声のもとへ向かう 黒沢と自分の棄権費用を稼ぐ 黒沢を生還させる 生還する


【赤松修平】
 [状態]:健康
 [道具]:手榴弾×10 石原の首輪 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:できる限り多くの人を助ける 標を守る
※石原の首輪は死亡情報を送信しましたが、機能は停止していません
※利根川のカイジへの伝言を託りました。


【標】
 [状態]:健康
 [道具]:モデルガン 支給品一式
 [所持金]:1000万円
 [思考]:バトルロワイアルの穴を見つける 他の対主催派と合流する
※利根川のカイジへの伝言を託りました。


【村岡隆】
 [状態]:健康 やや興奮状態
 [道具]:なし
 [所持金]:0円
 [思考]:ひろゆきとカイジに復讐したい 生還する
※村岡の誓約書を持つ井川ひろゆきを殺すことはできません。


049:操作 投下順 051:仮定
049:操作 時系列順 051:仮定
032:説得 076:決意
032:説得 石田光司 076:決意
032:説得 天貴史 054:十に一つ
032:説得 市川 054:十に一つ
048:思惑 054:十に一つ
048:思惑 赤松修平 054:十に一つ
048:思惑 村岡隆 054:十に一つ
042:虎穴 仲根秀平 077:




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