券面区間は在来線なのに...


 前々回の記事で紹介した「幹在特」の特急券は田沢湖線の盛岡・大曲間のもので,在来線区間のみとなります.なのに,なぜ幹在特の表示が付くのでしょうか.旅客営業規則によればこんな文言があります.

第188条第11号(旅客運賃・料金の割引等に対する表示)
 第57条の3第4項の規定により証明する乗車券及び特別急行券に対するもの
幹在特
または「幹在特」


第57条の3 第4項
旅客が、 東北本線(新幹線)の特別急行列車と奥羽本線福島・新庄間の特別急行列車 (第57条第2項第6号(注1)の規定により1個の特別急行列車とみなす場合を含む。) とを福島駅において直接乗継ぎをする場合当該線区を直通して運転する列車に乗車する場合を含む。 )及び 田沢湖線、奥羽本線大曲・秋田間の特別急行列車とを盛岡駅において直接乗継ぎをする場合当該線区を直通して運転する列車に乗車する場合を含む。 )で、次の各号に該当するときは、奥羽本線福島・新庄間及び盛岡・秋田間の1個の特別急行列車に対して別に定める特定の特別急行料金によつて 指定席特急券、立席特急券、自由席特急券又は特定特急券を発売する

(1)乗継ぎをする後乗列車の特別急行券の有効期間の開始日(指定席特急券及び立席特急券にあつては、当該特別急行列車の乗車日)を先乗列車の特別急行券の有効期間の開始日の当日とする場合

(2) 当該乗車に必要な乗車券及び特別急行券を同時に購入し、又は当該乗車に必要な乗車券を呈示して、先乗列車及び後乗列車の特別急行券を同時に購入し、これに相当の証明を受けた場合

 まず,後半の第57条の3第4項に注目しましょう.言い換えると,「こまち」「つばさ」号の在来線改軌区間と新幹線の列車を,同じ日に盛岡駅または福島駅を跨いで乗る場合,直通の有無や新幹線の上下を問わず在来線部分に割安な特定特急料金が適用されるという意味です.項目内の第1号,第2号は当日中の乗車,同時購入という乗り継ぎ割引の条件に相当するものです.条文中太字に示したように,「乗継」が前面に押し出されており,斜字にして示した「直通列車」はその一部でしかないという意味です.かつて東北新幹線の各駅でも乗継割引が利用できたので,その名残ではないでしょうか.この条目により第188条第11号が効き,券面に「幹在特」の文字が現れます.


  図1.幹在特の概念

種明かし


 前回画像として紹介した券は,盛岡駅で上下異なる方向に乗り継いだ時(つまり,八戸方から新幹線で南下し,盛岡で秋田方面に乗換)に作ってもらった在来線区間の特急券で,特定特急料金の適用を受けるため「幹在特」と表示されます.この券だけ見ると在来線改軌区間のみの利用でも,単に「幹在特」の特急券だけ買えばいいのではと思われますが,この特急券は単独発券できず,乗り継ぎ相手の新幹線の特急券も同時に発券するように設定しておかないと発券できませんので悪しからず.
 ちなみに,「つばさ」号や「こまち」号は 山形・秋田への直通列車 としてのメリットが大々的にPRされているため,上下方向が異なっても「幹在特」が適用できることは雲隠れした存在といってもいいでしょう.実際にこの券を買うのにも手間取りました.それにしてもなぜ指定券の発行を伴う席無し特急券の形で発券するのかは本当に謎です.

 ちょっとまて,直通する列車の券は「新幹線特急券」一枚になるはずでは?直通する列車の在来線区間の特急券は発売されないだろう,だから第57条の3第4項はおかしいだろうという声も挙がりそうです.実際,直通列車の券は一枚になりますから.
 簡単に言えば,福島駅または盛岡駅をまたぐ山形新幹線および秋田新幹線の「新幹線特急料金」なる料金体系は存在しません.理由は簡単.第54条の3第4項に書いてあるとおり,この区間の料金は直通しようが乗り継ごうが,


として計算するからです.じゃあ在来線区間の特急券はどうなったのというと,第184条第6項の条文をよく読めば判ります.

第184条第6項
新幹線と新幹線以外の線区を直通して運転する特別急行列車に乗車する場合に発売する特別急行券又は特別車両券 (注2)については、新幹線の特別急行券又は特別車両券と新幹線以外の線区に対する特別急行券又は特別車両券を 1枚 のものとすることがある。また、普通乗車券と当該特別急行券又は特別車両券とは1枚のものとすることがある。

ちなみに前々回の記事の終わりにちょろっと触れたガーラ湯沢の件,わかりましたでしょうか.ガーラ湯沢行きの特急券がなぜ幹在特にならないのか,それは次のとおりです.
  • 在来線に直通する→第184条第6項は効く→特急券は一枚になる.
  • 田沢湖・奥羽本線でない→第57条の3第4項は効かない
→第188条第11号が効かない→幹在特にならない.


 最後になりますが,券面の「?」な印字事項として似たようなものに「幹特在特」があります.九州新幹線の「つばめ」号絡みであり,地理的にも遠いので実際に入手する機会がないですが余力をみて研究の対象としていきたいと思います.


(注1)本質ではないので条文の掲載はしませんでしたが,山形駅の改札内で同一方向のつばさ号を乗り継ぐ時,特急料金を通算する場合のことを云っています.

(注2)グリーン車のことを規則の上では特別車両と呼んでいます.

文責:里見 拓(2008.12.09)