稲荷山蕎麦店繁盛記 四杯目(1)


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「3杯目 月見蕎麦の巻-1-」

『お菊』
女の子が振ってきた。
閉店間際の夜の底。そろそろ閉めようねと表へ出たときだった。
急に目の前にどすんと何かが落っこちてきて、目を凝らしてみると女の子が一人倒れていた。
困ったことになったねぇと頭を掻いて、店の中へ「大黒屋ぁ」と呼んだ。

『向日葵』
稲荷山蕎麦の二階でぼんやりと月を見上げていた向日葵は目を丸くした。今、目の前で月からなにかが零れ落ちたのだ。見間違えじゃない。
一緒に夜空を見ていた夜見も「落ちた」と驚いている。
その何かはふらふらと揺れながら店の近くに落ちた。向日葵はしばらく口を開けて動けないでいたが、慌てて階段を駆け下りて、女将のお菊に報告する。
「女将さん!今ね、お月さんのかけらがおっこってきた」
しかしお菊は「へぇ、そうかい」と別段驚くこともなく、暖簾をしまっている。
「一大事なんだってば!」と向日葵はばたばたと手を動かす。お月さまかけちゃったんだってば。
「月じゃないよ女の子だよ」お菊がなんのことなく言う。
「え?」
「ちなみにそのお月様は回収ずみ」調理場から顔を覗かせて大黒屋が笑った。


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