ある男の経験


健康診断で異常が見つかったらしく、近くの大学病院に精密検査に出かけた。
一通り検査も終了し、家に帰って寝るかと思い始めていた時、医者が深刻な顔をして俺の名を呼んだ。
「yojeさん。ご家族の方はいらっしゃっていますか?」
「いえ、今日は一人で。」
「そうですか…。」
医者はほんの少し表情をゆがめる。非常にやりにくそうだ。
沈黙が流れる。それを打破するために俺は聞いた。
「何か問題が見つかったんですか?」
医者は俺の顔を見た。そして声を振り絞る。
「yojeさん。落ち着いて聞いてください。」
「はい。」
俺は何かを覚悟した。
「あなたの体に重大な異常が見つかりました。」
「…そうですか。治るんですか?」
「…………治療法は見つかっていません。」
まさか。そんな。覚悟はできていたが、まさか不治の病とは。
めまいがしてきた俺は、無意識にこう聞いていた。
「病名は?」
医者の声が聞こえる。
「フラグEDです。」

……はっ?フラグ…なんだって?
「それはどんな病気なんですか?」
「yojeさん。今までの人生を思い出してください。」
なんだって?不治の病にかかった俺に走馬灯のように駆け巡れと?
「はぁ。」
「いままで、フラグが立ったことありますか?」
そう言われれば……ない。
「でしょう。それがこの病気の症状なんです。」
はい?
「先天性フラグ成立不全症候群。通称『フラグED』です。日常生活になんら問題はありませんが、今後あなたの人生に普通の人のような幸福が訪れることはありません。」

それは残酷な宣告だった。
幸福が訪れないのに日常生活には問題ない?
すまん、意味が分からない。

いや、意味は分かる。
今までの人生を振り返れば、そう、あの場面でもあの場面でもフラグが立つことはなかった。
そうか。そういうことだったのか。
そういう星の下に生まれたってことか。

いいぜ。かかってこい。
こうなったからには、道の隅っこの日陰から大声で幸せな奴らを罵り続けてやる。


フラグEDとは?


フラグ成立不全(―せいりつふぜん、英:Flag Erectile Dysfunction; Flag ED)は、「フラグ機能障害」、「フラグ障害」ともよばれる、人生の進行機能障害(Advance Dysfunction:AD)の一種であり、フラグの「立っている」状態の発現あるいは維持のできないために満足に人生の行えない状態をいう。


フラグEDの実例


  • case 1(分岐フラグ)

「うい~、ひっく」→お届けもの完了→「うい~、ひっく」


  • case 2(死亡フラグ)

脇役「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ…。」
→主役「脇役~~!!」

→普通に結婚。


  • case 3(恋愛フラグ)

曲がり角で出会い頭にぶつかる→強制わいせつ罪で逮捕。


  • case 4(生存フラグ)

主役「最後に残ったのは赤と青の2本か。正解を切れば助かる、けど間違えたらドカン…か。」

(紆余曲折あって残り1秒)

主役「赤だ!切るぞ!」

(パチッ)


(どーーーーーーーーーーーん!!)

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最終更新:2008年06月28日 21:03