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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/7スレ目短編/246」(2010/04/04 (日) 14:09:05) の最新版変更点

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*とある少女の記念写真 #asciiart(){{{ 特集、常盤台の才女! そんなキャッチコピーと共に、ある週刊誌の表紙を茶髪の少女が飾った。 着ている物こそいつも通りの学校指定の制服であったが、プロがほどこしたであろう、うっすらとしたメイクがその魅力を増し、さらに木目が美しいシックな椅子に腰かけ、その構図を邪魔しない程度の控えめな白い花束を手にした少女の姿はあらゆる人々の視線を奪い、その週刊誌は学園都市各地で売り切れ続出となった。 その才女は急いでいた。この数日は本当に忙しく目まぐるしいスケジュールに追われていた。原因はもちろん例の雑誌である。 もともと学校からの依頼ということで承諾した取材であった。その有する能力から、あらゆる奨学金や保障を学校から受けている彼女は、基本的にそのような依頼を断ることを良しとしていなかった。その律義な性格の結果がこの多忙である。 ほんの数ページ分の取材(といっても質問に一方的に答えるだけのものであるが)と写真を1枚。それが彼女の生活を大きく変えた。 (もとから注目されたりするのには慣れていたけど、こんなに周りを疎ましく思ったのは初めてね…) 一つの雑誌の売り上げが伸びればその商法に便乗しようとするのは当然と言えよう。結果として彼女のプライベートとしての時間も大きく減った。 何とか調整してひねり出した時間に外を歩けば、数多の握手やサインを求められ、無言であらゆる方向から向けられる数々のカメラに笑顔を返した。 彼らのほとんどが彼女というより流行に興味があるような連中で、そのモラルのなさから、幾度か自分のもつ超能力を発揮してやろうかという衝動に駆られたが、今の自分は常盤台中学校というブランドを背負った看板である。 突発的な行動で母校の名に傷を付けるわけにはいかない。 強固な”自分だけの現実”を持ち、滅多なことでは自制心を崩すことのない彼女であるが、多くのストレスが自らの内に溜まっていくのを感じる。 しかし、そのストレスの原因は心ない野次馬たちだけではない。 (もう1週間も会えてない…) あるツンツン頭の少年。 ある不幸体質な高校生。 ある危機を救ってくれたヒーロー。 そして…。 (この写真、きっと見たわよね。どんな風に思ってるんだろう…) 今の自分を縛る1枚の写真。異なる意味で彼女―――御坂美琴はその写真に縛られていた。 過密なスケジュールが続いた日々だったが、偶然にも今日1日だけ予定がぽっかりと空いている。 明日からはまた取材という名の束縛が待っている。閉鎖的な学園都市とは言え、1週間も経てば流行は陰りを見せているが、それでもまだ忙しい日が続きそうだ。 そう、つまり、今日を逃す手はない。 自然と足が速まるのを感じる。 目指すはいつもの自販機の前。奥義・でんげきっく(ビリビリ蹴り)を披露したあの公園へ―――! 「―――!良かった、いた!」 途中で明らかににわかとしか思えない自称ファンの集団につかまり、何度目か分からないサインと、もはや癖になった笑顔をプレゼントした美琴は、息を切らしながらも目当ての場所につき、さらに幸運なことに目当ての人物を発見した。 (…って、そういえば、何て言って話しかけよう…!?) 少年に会いたい気持ちばかりが先行して、話題や用事を何も考えてないことに気がついた。 いつもならここで逡巡して機会を失ってしまう彼女であったが、しかし今の自分には逃すだけの時間的な余裕がない。 「あ…アンタ…!」 仕方なく呼びかけて自分の存在をアピールする。 「ん…あぁ、ビリビリか。久しぶりだな」 「ビリビリって言うなー!」 瞬間的に電撃を出し、それが相手にあたる直前に霧散するのを見て、一躍「時の人」となった自分が少年と今まで通りの関係でいられていることに安心する。 思えば、能力を満足できるレベルで放出したのも久しぶりではないだろうか。じんわりとした安心感が胸に広がるのを感じる。 「ったく。久しぶりに会って最初がそれかよ」 電撃を向けられた方のツンツン少年が抗議の文句を口にする。 とは言え、いつものことなのはこちらも同じで、日常の挨拶めいたやり取りに一種の安心感を抱いていたりする。目の前の名門女学院の少女が今をときめく有名人なのは彼も分かっているのである。だが、そんな彼女がなぜこんなところにいるのだろうか。ここは学校と寮の間を結ぶ通学路からは外れた場所にある。 「う、うるさいわねー。アンタがいつまでもそんな呼び方をするからでしょ!私には御坂美琴っていう名前があるんだから!」 「へいへい知ってますよ。今や常盤台の才女として学園都市注目度ナンバー1の美琴センセーですもんね。さすがのカミジョーさんも毎日毎日あっちこっちでお見かけしてる方の顔を忘れたりしませんよ」 「あ…やっぱり見たの…?」 「そりゃあ、そうだろ。学園都市を1時間歩いたらお前を見る確率は180パーセントって言われてるからな。」 ちなみに、1時間歩いて美琴を目にする確率が100パーセント。もう一度発見する確率が80パーセントという計算である。それほどに例の写真は街中に存在する。 そんな上条の軽口にビクッと美琴の肩が震えた。同じように震えた口調で、緊張した身体から言葉を絞り出す。 「あ、あ…あのさ…」 「ん?どうした?」 「…どうだった?」 「どうって、何がだ?」 相変わらず勘の鈍い相手である。決してわざとではないのがまた始末に悪い。 「写真よ。あの写真、アンタが毎日見てくれてるっていう…」 別に上条が見ようと思って見ているわけではないのは分かっていたが、何となく、二人のつながりを作りたくて美琴はそんな言い方をした。 「あぁ、きれいだと思ったよ」 「えっ…!?」 思いもよらずストレートなお褒めの言葉を頂いた美琴は、頬が緩むのを必死で抑えながら鼓動が高まるのを感じる。 「そ…そうかな…?あ、あのね、あんな本格的な撮影は初めてだったし、知り合いに見られるから緊張しちゃったんだけど…」 「いや、さすがプロのカメラマンは違うよな。バッチリきれいに撮れてたじゃないか」 「え…?きれいって…?」 「あれ、プロに撮ってもらったんじゃないのか?構図って言うんだろ。俺は素人だからよく分からないけど、バランスとかぴったりはまってて、いい写真だと思ったぜ?」 心がしぼんでいく感じがした。自分が欲しい『きれい』はその『きれい』ではない。 「そうじゃなくて、わ、私の写真でしょ。撮った方の腕じゃなくて、私のことを聞いてるの!」 「お前のこと?そりゃあ…」 「そりゃあ…?」 少年の言葉一つ一つを聞きもらすまいと、やや身を乗り出す。 「お前ってすげーヤツなんだな、って思ったよ。お嬢様なのは知ってたけどさ、本の表紙を1人で飾っちまって、それがこんなに大人気になるんだもんな。さすが常盤台のエースだよな」 違う。胸がざわざわする。そんな言葉でもない。自分が欲しい言葉はもっと違う―――他の誰とも違う、目の前の少年から送られたい言葉がある――― そこでふと一つの不安が生じた。 確かに彼は超がつくほどの鈍感男で、自分の気持ちに応えてくれることなんて、ほとんどない。それでも他の人の言う御坂美琴とは違う自分を、彼は見ていてくれる。そう思っていた。 しかし、今日の発言はあまりに表面的だ。ふと顔を見上げると、彼は困ったような顔で目をそらした。ぐさり、と心臓に氷の刃を突き立てられた気がした。そして少年の反応から、彼女は一つの結論を得る。 そう、つまり、彼にとってこの写真ひいては自分はそんなに重要な意味を持つものではない。 その結論を出した時には、美琴は少年に背を向け、駈け出していた。 周りの人の視線を感じる。名門と謳われる常盤台のお嬢様が脇目も振らず走っているのだから仕方ない。 同室のパートナーに素行のことでまた小言を言われるかもしれない。どうでもいい。 どうしてか、頬が冷たい―――。 明日の取材は、上手く笑えるかな―――。 バタン―――。 ドサッ―――。 一つ目の音は部屋のドアが閉まる音、では二つ目は? ジャッジメントの仕事から帰って一足先にシャワーを浴びていた黒子がバスタオル姿で部屋の中を覗く。 愛しのお姉さまが制服のままベッドにうつ伏せになっているのが見えた。 「あら、お姉さま。おかえりなさいませ。連日お疲れとは言え、そんな恰好でベッドに寝たら、制服にしわがつきますわよ」 お姉さまは常盤台のエースなんですから、とお決まりのセリフを告げようとしたそのとき、そのお姉さまがいつもと様子が違うのに気が付いた。 「お姉さま!?」 目の前にいる御坂美琴は自分の知っている凛々しい姿とは全く正反対で、やわらかいベッドにその身を投げ出し、焦点の合わないうつろな目をしていた。 その状況を見て、11次元の計算を瞬時に行う頭脳が一つの解を叩き出す。 「あの…類人猿が…!」 そこからの行動は早かった。ささっと残った水分を拭き取り、手早く指定の制服を身にまとって靴を履くと、少女の姿はもうそこにはなかった。 部屋にはただ、大切な心を砕かれた一人の14歳の少女の姿があった。 時刻はほんの少しだけ戻って、とある公園――― ツンツン頭の少年はまだその公園にいた。すでに日は落ち、周りに人の気配はない。彼の座るベンチも少しずつ温度が下がっていくのが分かる。 ある少女が彼の前から無言で去ってから時間が経っていたが、彼はそこを離れようとしなかった。いや、離れる気はなかった。 ここから自分の住む寮に帰るまでに、またあの写真を見てしまうことは簡単に予想できる。今は街中に大小さまざまな常盤台の少女の写真が貼られているのだ。 上条は、自分の行いが少女を傷つけたということは分かっていた。そして、その理由となる行動を、自分自身では決して否定できないことも。 もちろん傷つけようと思ったわけではない。しかし、自分の中に譲れないものがあったのだ。それは、少女にも揺るがすことはできない…。 ―――と、背後に何かの気配を感じ、反射的に上条は右手を勢いよく後方へ振った。 強い衝撃が手のひらに伝わったのだが、防御する形となったので、幾度もの戦いで経験したようには吹き飛ばされなかった。 「いまいましいほどのしぶとさですの」 突然現れた少女は彼女の特徴でもあるツインテールを左右に振り、ぐっと上条をにらみつけた。そこに含まれた感情は、怒り。 「単刀直入にお聞きします」 少女は会話をするのも嫌気がさすとも言わんばかりに一方的に言葉を投げる。 「お姉さまに何をしたのですか」 いつの間にかその手には短い鉄色の棒が握られている。彼女の能力そのものでは上条に攻撃することはできないが、それでも自分の中の感情が何もせずにはいられなかった。 着ている服ごと彼を拘束して制裁を加えるくらいはできるかもしれない。 「あいつの写真…知ってるよな」 上条から呟くように言葉がこぼれた。問いに答えるため、というより世界そのものに呪詛を吐くように声を発する。 「当然ですの。私は今ジャッジメントだけでなく、お姉さまのマネージャーも務めておりますの」 上条の言葉に何か強い感情が込められていることを感じながらも、黒子は対峙する。 「私の愛するお姉さまの凛々しいお姿をカメラに収めるというのに、私がただ指をくわえて見ているわけがありませんの」 「そんなにこの写真がいいのか?」 このやり取りから、黒子は目の前の唐変朴がまた心ない一言をお姉さまに告げたのだと確信した。他でもないこの男が。 「当たり前ですの!常盤台の誇るレベル5のお姉さまの大特集、さまざまな人々の視線も釘付けですのよ。本当は黒子だって他の方に見せるのは悔しくて仕方ないくらいですの。貴方は、そんなお姉さまの魅力が分からないんですの?」 口調こそ丁寧なものの、言葉の端々に棘がある。この怒りはエゴみたいなものだ。そう分かっていても大切な人を傷つけた目の前の男を、黒子は到底許すことができなかった。 「本当にあなたは人の心が分からないのですね。類人猿ごときがお姉さまの気持ちを踏みにじるなんて―」 「じゃあ聞くけどよ、なんでこの写真の御坂はいつもみたいに笑ってないんだ?」 「―――!!」 興奮からか饒舌であった黒子の口が止まる。あくまで静かな語り口調のままであるが、上条の声には明らかに激しい感情が込められている。 「どう言い訳しようが、これは学校のプロパガンダじゃねぇか。そのことをあいつが分かってないはずがないし、それを受け入れた上でこういうことをしているんだって分かってる」 でもな、と上条は続ける。 「俺が守るって言ったあいつの世界では、御坂の笑顔はこんなんじゃないんだ」 真夏のある約束を思い返しながら言い放つ顔はこの上なく真剣な表情であり、そのあまりにまっすぐな目に黒子は圧倒される。 「そりゃ、この写真はやっぱりきれいに撮れてるし、写ってる御坂だってすげぇきれいだと思う。お前が独り占めしたい気持ちだって分かるんだ」 お姉さまのため、と盲目的に働き続けてきた黒子に上条の言葉が突き刺さる。 「だけど、だけど…違うんだよ、笑顔が。…俺が好きなあいつの笑顔に比べたら、こんなの何も伝わってこないんだよ」 「あ…」 「そんな作り物の笑顔をみんなに見せて、みんなに褒められて、それであいつが喜ぶとは思えないんだ。むしろ…どこかで嘘をついてる自分がいる。そんな風に考えてるんじゃないかな」 上条の目はやはりまっすぐで―――そしてわずかではあるが、寂しそうな表情を浮かべていた。 決して長い時間ではないが、沈黙が続いた。 意を決したように少女が口を開く。 「上条様…」 「なんだ?」 「それでも貴方が私のお姉さまを傷付けたことは変わりませんの」 「あぁ…分かってる…」 「それに、お姉さまだって中途半端な気持ちで撮影に挑んだわけではありませんの」 「あぁ…分かるさ…」 「きっと本当は一番に誰かさんの感想を聞きたかったんですの」 「あぁ…」 「男なら、責任はとってもらいますわよ」 その言葉を残し、少女は一瞬で姿を消した。そして幾秒も経たないうちに、再びその空間から別の少女が現れた。 「御坂…」上条は自分の覚悟を表すかのように右手を強く握りしめる。 自分の名を呼ばれた少女は、ビクッと体を震わせた。数時間前にも同じように肩を震わせたが、今は込められた意味が異なる。 そんな心情を表すかのように、体が強張っていく。 「御坂…」 再びその名を呼ばれる。そしてその声の主が一歩、近付くのを感じた。 同じ部屋の後輩と彼とのやり取りは、テレポートされる直前に手短に聞かされた。 決して彼は美琴の存在を軽んじてなんかいなかった。それどころか、もっと深い…自分でも気付かなかったような姿を見破っていたのだ。 「御坂、ごめん…。俺が悪かった…」 謝罪の言葉と共に少年がさらに足を踏み込む。 「―――!…いや…!…来ないで…!!」 自分の醜い姿を隠すように、感情が爆発するのを感じる。 「来ないでよ、見ないでよ!どうしてそんなに私に優しくするのよ!」 まぶたが熱を帯びる。 「アンタなんて何もしらない癖に!」 「私がどんな想いでカメラに向かったか!」 「私だって、自分がただの宣伝の道具だって分かってた。それでもね―――」 瞳に涙が溜まっていく。しかし言葉は止まらない。 「好きな人にも見られるこの写真は、本当の笑顔でいたかった!」 「だから、その人のことを思い浮かべながら撮ってもらおうと思った!」 その叫びに、上条が衝撃を受けた。 「だけど、みんなが見る写真に、誰か一人のための笑顔を向けることはおかしいって言い訳をしてる自分もいたの…自分で答えを受け入れるのが怖かっただけなのにね…結局、形ばっかりの笑顔になっちゃって、自分がどんどんそのニセモノの笑顔に慣れていくの…」 声と共にその身が崩れそうになる美琴を支えるため、上条は反射的に右手を出した。 結果として美琴を抱き抱える形になったが、上条はその身体の軽さと細い腰回りにドキッと鼓動が一際大きく鳴るのを意識する。 少女は今にも壊れそうなイメージを抱かせた。 美琴はもたれかかるように上条の腕をつかんでいる。 そのままでは倒れてしまいそうなので、上条はベンチに美琴を座らせ、自分もその隣に並んで座る。 「ごめんな、御坂…」 自分でも驚くほど優しい声でささやく。 「本当に俺は何も分かってなかった。白井に大きなことを言えた義理じゃなかったんだな」 そうだと言わんばかりに、美琴が上条をつかむ力をこめる。それとも、あなたは悪くないと伝えたいのだろうか。 上条はその意志表示を受け入れるように、美琴の頭に手を回すと、 「お前も…立派に戦ってたんだな…」 優しく彼女の頭を抱き寄せた。 その言葉に美琴の抑えていたものが遂にこぼれた。 言葉にならなかった感情が全て流れていく感覚を得る。 自分の中で強張っていたものが、ゆっくり、ゆっくりと解け出す。 「よく頑張ったな、御坂。今だけでもいい。お前は、俺の前では何の嘘もつかなくていいんだ」 ただの女の子でいいんだよ、と上条は美琴の頭を撫でた。 しばらくの間、美琴は上条の腕に抱かれて、もう体中の水分が無くなるんじゃないかというほど涙を流した。その間、二人は一言も発しなかったが、美琴はずっと上条が自分のことを優しく包んでいてくれるように感じた。 「落ち着いたか?」 さらに十分ほど経って、上条は声を掛けた。 「当たり前じゃない、私だっていつまでも立ち止まっていられないのよ」 そう答えた美琴の目はまだ赤みを帯びていたが、その奥には強い光が見えた。 「その意気なら大丈夫か」 グッと伸びをしながら、いつも通りの彼女の姿を見られたことに安心する。 常磐台のエースとしての美琴と、そして今見せた14歳の女の子としての美琴。 どちらかが本当の御坂美琴の姿というわけではなく、どちらも本当の姿で、ただバランスをとることが必要なのだなと考えた。今回のことは明らかにエースの姿が求められすぎた。引き金を引いたのは自分の発言だったが、いずれこうなっていたかもしれない。むしろ自分の手が届くところで起きてくれて良かった…。 「なぁ、御坂」 「何よ?もう謝罪とかは良いんだからね。私だっていっぱい心配かけたし、そもそも素直じゃなかったのがいけないんだ…し…!?」 美琴はふと自分が叫びと共に「素直に」恥ずかしい告白をしたのを思い出し顔を赤らめた。 (そういえば、思いっ切り大声で好きな人とか言っちゃった…!しかもアイツの目の前で…!) 「どうした?」 「な、何でもないわよ。それより感謝しなさいよ、私のあんな姿、他の誰にだって見せないんだからね!」 「そうですかー、それは美琴センセーに大感謝ですな。」 「あ、アンタ、バカにしてるでしょ!?…って、今、み、美琴って…」 「なんだ、いっつもビリビリって言って怒るくせに名前で呼んだらそれで文句ですか。難しいお年頃ってやつですかね」 「ち、違うわよ!もう、アンタってヤツは…!」 無駄だと分かりつつも、何本か電撃槍を飛ばし、やはり無効化されるのを確認する。 「ったく、こんな日くらいサービスで当たってくれたって良いじゃない」 「いやいや!サービスで命を落とすとか笑い事じゃありませんから、美琴サン!」 「ま、また名前…」 再び赤みを増す美琴。 と―――カシャッいう音が響いた。 「な、何してるのよ、アンタ!」 携帯を手にした上条がその携帯をこちらに向けている。つまり――― 「何って、写真を撮っただけだぞ」 「なんでそんな唐突に…」 「やっぱり、この自然な表情がいいな」 「―――!?」 あまりに直球な物言いに言葉を継ぐこともできない。 「これからも何度も取材とかあるんだろ?撮影もさ」 上条は言うながら、ポチポチと携帯をいじる。 10秒ほどして、ほれ、と言うと美琴に携帯の画面を見せた。 いわゆる待受画像には、顔を赤らめた茶髪の少女が写っている。 「ななな、何してんのよ!やめなさい、今すぐに!」 「いいだろー。俺はこのいつも通りの肩の力が抜けたお前が好きなんだよ」 「―――!?」 さらに顔を真っ赤にさせて黙ってしまう美琴。そんな彼女に上条は少しだけ真面目な顔をして、 「それにさ、さっきも言ったけど、これからまた撮影とかあるんだろ。そんなときに俺はお前がまたニセモノの表情とか考えて苦しまないように、この御坂に笑顔を向けてやるんだ」 いたずら少年のように、ニーッと笑って携帯の中の少女の顔と向き合う。 「そしたらさ、離れた場所からでも、お前と一緒に笑えるだろ」 少しでも気を抜いたら照れてしまうからか、上条は、逆にまっすぐとこちらを見つめてくる。 「―――ばか…」 ずるい。こんなまっすぐな気持ちに応えるだけの言葉なんて持っていない。 だから、 ふぅっ…と一息ついて、 目の前の彼に顔を近付けた。 言葉ではなく想いを添えて、 一緒に笑顔になるために。 とある少女の記念写真―END― }}} #back(hr,left,text=Back)

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