とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part03

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匿名ユーザー

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-③布ではなく幸せを織りました-


共同生活三日目

上条はなにやら美味しそうな匂いで目が覚める、すると…
ケロケロッ、パシャッ
軽快な機械音?というかカエルの鳴き声のようなものが聞こえた

「………」
「えっと…美琴さん…アナタは何でこの私、上条当麻の寝顔を写メってやがりますか…」
起きた目の前には携帯をカメラモードでスタンバっていた美琴がいた
上条が起きたと共に写メを撮ったのだ(撮影時の音は美琴の携帯がカエル型な為か?)

「い、いやーなんか寝顔が可愛かったから…なんて、ってアンタも今度取ればいいじゃない!」
はじめは恥ずかしさからかモニョモニョしていたが後半は素直になれずに叫ぶ

「それは…多分美琴がやる分にはまだ合法だろうが…
彼氏でもない俺がやればそれは只の変態になってしまうのではと不幸な上条さんは思うわけで…あと当麻からアンタにクラスダウンしてるから」
そう上条はぼやいた

「と、まあ本来写メ撮りに来たんじゃなかったわね、朝食できたわよ?あと、おはよ当麻」
最後の一言は恥ずかしくなったが本来の目的の朝食コールが出来たので
そそくさと風呂場から出で行く美琴
遅くなった挨拶と共に上条が目覚めた要因、美味しそうな匂いを思い出した

ぐぅ…
と、お腹も鳴り空腹感が予想以上にあることを知る

「ああ、わかった今行くよ…おはよう美琴」
上条も離れてしまった美琴に聞こえるようにすこし大きい声で返答する
ただ、なんかこの朝の会話…恋人同士の同棲生活みたいだなと思い、挨拶は美琴に聞こえたのかわからないくらい小さな声になってしまった

「もう少し堂々と言いなさいよ…バカ」
そう呟いた美琴の声は上条には届かなかった

・・・・・・・・・・・・

「それにしても、本当に美味いな美琴の料理」
朝食も食べ、片付けも終ったところで上条が真顔で言うので美琴は照れてしまうのだが
「そんなことないわよ、あ、そうだ今度は当麻の手料理も食べてみたい…かな」
そう言って美琴はえへへと楽しそうに笑う

…このままこの生活続けると美琴と離れて生活できなくなるような気がするのは俺だけか?

「さすがにあのレベルの料理は作れねえからな…あー…頑張ります…」
少し否定気味に言い出したが、美琴の目がウルウルしだしたので拒否権はないと察した
最後は無言の潤んだ眼差しに脅されるかのように約束する羽目になった…
料理の勉強をしておこうと上条は心に誓った

「でも、まあ今は私が作るけど…今日はどうするの?このあと」
美琴は上条にこの後の確認を取る

「そうだな…4時過ぎれば白井と合流できるだろうから昼飯食うまで今日はのんびり部屋でくつろがないか?昨日で今行けそうな所はほとんど散歩しちまったしな」
それで今日の午前中は部屋でのんびりしようという事になった

「さて、と洗濯物でも畳むか、美琴はテレビでも見ててくれ畳み終わったらお茶でも出すからさ」
そう言って上条は干していた洗濯を畳んでいく、はたから見るとテキパキと畳んでいるように見えるが実はある程度適当…それを見て美琴は…
「あー、もうっ!そんな雑な畳み方だめでしょ」
と言って洗濯物を上条から取り上げ綺麗に畳んでいく…

「はいはい…どうせ上条さんは雑ですよ…」
そう言って仕事を取られた上条はキッチンに向かいお茶を出すことにするのであった

「確かここにお茶とか入れておいたはずだよな?おっ、あったあった」
上条の家にやってくるのは主に魔術関係者か隣の土御門くらいなものでどこにお茶を置いておいたのか使う機会がないので若干忘れ気味である

「ん?コーヒーとココアもあるか…おーい美琴、ココアとお茶、コーヒーがあるけどどれ飲む?」
そう洗濯を畳んでいるはずの美琴に尋ねるが反応がない…
あれ?聞こえてるはずだろ…と顔を上げて美琴の方を見る

美琴はすぐそこにいるのが見えたがなにやら動きがない
「おーい美琴?」
とお茶とかはまず放っておいて美琴のいるほうに近づいて行く、すると

美琴は俺のパンツを持ったまま硬直…というか恥ずかしさのあまり気絶していた
「なんというか…ある意味凄い光景といいますか…
電撃能力あれば漏電で家電全滅だったなあ…」
と考えていたがこのままだと美琴が起きてもループしそうだったので
パンツだけは先に畳んで片付けておこうと考えた

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「う、ん…あれ私、当麻の洗濯物畳んでたんじゃなかったっけ?」
あまりの衝撃だったのか、まるまる記憶が抜け落ちている美琴であった

「お、起きたか?ちょっと待ってろ…」
そう言って上条はキッチンに行き、淹れてきたココアを美琴に差し出す
美琴は時計を見ると3時間くらい時間が進んでいた
「あ、もしかしてまた気絶しちゃった?…ゴメン」
迷惑をかけてしまったことに対して謝るので自然と表情も暗くなる

「まあ、気にすんなってのも無理かも知れねえけど、こんなの迷惑の内に入んねーよ」
上条は特に気にしてないようだ
「そっか、ありがと」
美琴はそう言い渡されたココアをすする
ほんのりと甘いココアに暗い気持ちもやわらぐ

「そう言えば洗濯物片付いちゃってるけどちゃんと畳んだの?」
疑問が浮んだのは気絶した後残りの洗濯物はどうしたのだろうかという事だった
「ああ、それなら心配すんな、美琴の畳んだやつ見てなるべく同じようにして畳んだから大丈夫なはずだ」
そう言って上条もココアをすする

「なんだ、当麻もやれば出来るじゃない」
ふふっと笑いながら話す美琴は上条が見たこともない優しさを放っていた
それは、上条が記憶を失っているから見たこともないのであり、記憶があればこう感じただろう
『母親に見守られてるような温かい感覚』と…

「なんか、ここ数日で美琴のイメージが大分変わったな」
上条はそう呟いた
「ん?なにか言った?」
美琴は不思議そうな顔でこっちを見ている

「なんでもねーよ」
そう言い上条は惚れてしまった目の前の明るい少女を笑顔で見ていた


それから雑談していたがお腹がすいた為打ち切って昼食の準備に取り掛かる

「今日はパスタにしようかと思うんだけど…異論はある?」
既に異論は受け付けませんと言っている様な美琴の発言に上条は苦笑いしながら
「美琴さんの作る料理なら異論はありませんよー」
と上条は答えた

「うん、よろしい、美琴センセーに任せなさい」
と美琴は嬉しそうに頷きながら調理に取り掛かった

「うーん、食器も出したし…やることもねえから暇だ…」
そう、やることをやってしまった上条は美琴が作り終えるのを待ってる間暇になっていた
そして、ふと自分の携帯を見て土御門にでも縁田が学校に来ているか聞いてみるかそう思い立ち
土御門に電話してみる、時間的に昼休みなので出てくれるだろう

~~♪~♪カチャ
『おいおい、カミやん!一人だけずる休みとかずるいぜよ!さっさと学校に来るにゃー』
電話が繋がると同時に怒られた…
「お、おい、どうした土御門…なんでそんなイライラしてるんだよ…」
苛立ちを感じさせる土御門の声音に上条は理由を聞いてみる

『それは、カミやんが来なかったせいで俺まで吹寄に捕まっちまったからに決まってるんだにゃー』
あー…そうですか、俺は吹寄の避雷針代わりとして存在してるんですね…と泣きそうになった
「まあ、それはどうでもいいんだ」
そう言った瞬間『ワイも怒っとるんやでー』と土御門の後ろにいるであろう青ピの声が聞こえた
「今日、縁田学校に来てるか?」
上条はそう聞いた
『ん?縁田かにゃ?ちょっと待つぜよ…おーい縁田、カミやんが呼んでるぜよー』
と犯人であろう縁田が学校に普通に通っていたことに上条は驚いた

『変わりました…縁田ですけど、お聞きしたいことはわかりますが今はお答えできません』
と、こちらから言う前に答えられた…
というか聞きたい事をわかってる時点で犯人は確定したようなものだ
「おい…美琴を泣かせておいて答えられないってどういうことだよ!」
気付いたら電話越しに怒鳴っていた、キッチンで調理している美琴が驚いて何事かと見ている
「気にすんな、飯を食べながら説明するから…」
と美琴に小声で言ったが、後で絶対に説明してもらいますからねと不承不承といった感じの態度で調理に戻っていった

『言いたい事はわかります、それでも今は説明できません…でも、必ず時期が来たら答えます』
と繰り返してきた…そして最後に一言
『簡単な説明は今夜土御門さんにでも番号を聞いてしますので』と言って一方的に切られた
「なんなんだ…くそっ」
そう言って携帯を置いた…

少しして料理を持ってきた美琴がテーブルの皿に盛り終わったところで聞いてきた
「で…縁田さんはなんだって?」
と言ってきたので「なんだ…聞いてたのかよ」と上条は言った
「聞こえるに決まってるじゃない、この広さだもの」と美琴はあたりを見回す

「縁田は説明する気はあるが、まだ時期じゃないいから多くは話せないらしい…
それでも今夜少しだけ説明する電話をくれると言って一方的に切られた」
そう言って焦っているかの様に上条は携帯を見た…

「まあ…悩んでも仕方ないし食べちゃいましょ?せっかく作ったのに冷まっちゃうし」
そう言って一口食べ「うん、おいしい」と美琴は笑い上条を見る

「かなわねえな…」
上条はそう呟き美琴のパスタ料理を口に運ぶ

うまいうまいとバクバク食べる上条にもう焦った様な表情はどこにもなかった
それを見て安堵した美琴も食事を再開する

・・・・・・・・・・・

「うまかったよ、ごちそうさま」
そう言って上条は笑った
「うん、お粗末さまでした」
美琴もそう言った上条を見て笑った

上条は洗い物をする為に二人分の食器を持って行った
洗い物をしながら上条は一つの決意を固めた…
夏にあのアステカの魔術師と約束した
『御坂美琴と彼女の周りの世界を守る』その約束はもはや約束ではなくなった…
誓い…それくらいまで強固なものになっていた、もはや魔術師は関係なく…自分の意思で…
つまり、上条当麻の中で御坂美琴という少女はそれほどまでに大きな存在になりつつある

ふぅ…
上条は一息吐き、洗い物を片付け水を止めた…

時刻は午後1時半

腹休めに少し散歩しながら白井との待ち合わせに向かおうかという事になり例の公園を歩いている

「にしても、どうするか…白井には美琴が見えないわけだし…俺が通訳すればいいのか?」
そう言い上条は首をかしげる「それとも面倒だがメールで会話するか?」と

「なるようになるわよ、あの子はあの子でしっかり…しっかり?してるから…多分…」
よく考えるとしっかりしてるのか心配になるがしっかりしているはずだ…
と美琴は後半疑問に思ってしまったことに黒子…ゴメンと心の中で謝った

「美琴がそう言うならそうかもしれないけどよ…」
そう上条は言うが…どうせまたドロップキックか鉄矢でも飛ばされるんだろうな…と思う訳で

結局二人共に良いイメージが浮ばなかった…

「それでも合流まであと2時間強はあるわよ?散歩だけじゃ潰れないと思うんだけど…」
そう言って美琴は顎に指を当て考える

「だからこその徒歩での移動だろ?」
白井とした待ち合わせ場所は第七学区セブンスミスト入り口、ここからは結構距離がある為時間は潰れるだろうと上条は思う

「って、当麻…最初から歩きオンリーで行くつもりだったの?」
上条がなにも言わなかったので電車でも使うのかと思っていた美琴だが、まったく違った意見にげんなりする、同じ第七学区でも端から端まではかなり広い…それを考えるとそこまで歩く距離は長くないにしても女の子としては正直しんどいと思う…

「そういうつもりはないけどな…ただ、電車とかだと改札通らないといけないから美琴はどうなるかわからないし…ってことで徒歩で移動することにするか…ってなったわけだ」
意外と深く考えている上条に美琴は感謝しつつ、自分の事ばかり考えていた自分を叱る

当麻は私の事を考えてくれてるじゃない…私のバカ…
「ううん、ごめん…私のこと考えてくれたんでしょ?嬉しい…ありがとう当麻」
そう言って上条に感謝する美琴の目にはうっすらと涙が溜まっている

「お、おい美琴何泣いてんだよ…つーか、お前最近泣いてばっかだな…ほらこれ」
そう言ってハンカチを手渡す上条
「こ、これはうれし泣きだから良いの」
そう言って美琴は小さく舌を出し、受け取ったハンカチで涙を拭う

そのままセブンスミストまで二人でゆっくり歩いていった

午後4時頃

「おーい、白井ー待たせちまったか?」
そう言って上条が声をかけた相手はこちらを振り返ると
「あら上条さん、それで…お姉様はどちらにいらっしゃいますの?」
開口一番美琴の事を聞いてくる白井に苦笑いし誰もいない横の空間を親指でクイッと指す

「おちょくってるのだとしたら後で承知いたしませんが…
上条さんは本当にお姉様がそこにいらっしゃると言うのですね?」
そう白井が問いかけてきたので上条は頷く

すると白井は右手を握られる感触に驚いた
「…お姉様?」
強く握り返される

「あああ、やっとお会い出来ましたわぁ~お姉様~」
と握り締めた右手に頬ずりをする白井
「…ははは、よかったな美琴」
「ちょっと、助けなさいよー」と聞こえたが多分幻聴だ
目の前には大げさにはしゃぐ空間移動能力者と振り回される超電磁砲
迷惑そうな顔して結構楽しんでんじゃねえか美琴のやつ
そんな二人を見ながら微笑んでいる幻想殺しがいた…

・・・・・・・・・・

「で、上条さん…お姉様は何をお求めにセブンスミストに?」
そう聞いてくる白井に焦る上条…
{おい、美琴何で白井に言っておかねえんだよ}
とこそっと耳打ちする
{忘れてたのよ…ほら説明して}
そう返されたが…
下着…なんて言ったら昨日のフライパンの二の舞…今回は確実に凶器の鉄矢が飛んでくる
{不幸だ…}
「不幸って言うな、こらー」隣で美琴が叫んでいるが白井には聞こえないので聞こえないフリをする
「雑貨だよ、服とか歯ブラシとか日用品だ…」
不自然ではないように遠まわしに上条は言う
「そうですの…だとしたら上から下に回ってきたほうが楽ですわね」
そう言って白井は別段怪しまずに納得してエレベーターに向かう
遅れまいとホッとした上条と無視されてむくれている美琴の二人も向かう

途中で、あれ?もし満員になれば美琴がまずいんじゃ…と思ったが
幸いなことにエレベーターは最上階の売り場で降りるまで誰も乗り入れて来なかった

「それじゃ、行きましょうか?お姉様」
どうやら、美琴と白井は繋いだ手でやり取りが出来ているようだ
例えば、強く握ればYes、弱めればNoといった具合だろうか
美琴は上条にわかるように声で「うん、そうそう」、「ちがうってば」と言ってくれているのでわかるが、白井と美琴の様に手だけでわかることにまず上条は敵わないなと思うわけで…
やはりパートナーとしてすごくお互いを信頼し合っているんだろうと少し羨ましい上条なのである

買い物をしながら階層を下へ下へと行くと当初の目的の服、下着売り場のある階層に来た
そんな三人(見られてるのは二人)を遠くから見てる少女達がいた

「佐天さん、佐天さん、みっ見てください!白井さんが男の人と二人きりで服売り場にいますよ」
と遠くから見ると花瓶のような頭に見える髪飾りをつけている少女が隣にいる少女に話しかける
「おー、ほんとだ、でも珍しいねー白井さんが男の人といるなんて、しかも御坂さんといる時の様な笑顔だし…これはまさか…もしかするとなのかな?」
と佐天と呼ばれた少女と花飾りの少女は顔を見合わせて…
「そのまさか…ですかねえ?」「そうだよねえ…これは」
などと盛り上がっている事などいざ知らず…買い物を続ける三人


「にしてもカゴの中が物で溢れるのは良いが…買いすぎじゃねえか?これ」
そう、なぜか白井と美琴がバラバラに美琴の着る服を持ってくるのでカゴから溢れそうになるほど服が入っている…
「そ、そうね…ここから絞っていこうかなー…ははは」
と現実に戻ってきた美琴がカゴを見て言う
{おい美琴…殴らないで聞いてくれよ?…いいか、下着はどうするって待て待てっ!
その拳を下ろしてくださいゴメンなさい…でも実際問題俺がいたら買えねえだろうが}
という事で上条がトイレに行っている間にメールのやり取りで下着を買ってもらうことにする

「わりぃ白井、俺ちょっとトイレ行ってくるわ、なんかあったらメールしてくれ…それじゃ」
と言って上条は全速力で走って行く

「どんだけ我慢してらしたんでしょう?」
と白井に誤解されるのも知らないで…

~~~♪~~♪
「あら?メールですの…」
と言い白井はメールを確認する

送信:愛する愛しのお姉様
件名:Re2:
本文:下着買いたいんだけど…


「あら、そうですの…お姉様…もしかして上条さんを篭絡させたいんですの?」
といやらしい笑いを浮かべるが…
美琴の手が震えているのを感じ…
「お姉様、お姉様、お姉様!本当ですの!?そこは否定して欲しかったですのっ!!」
あんのぉぉ類人猿がぁぁぁぁぁ!!!!
と心の中で白井はトイレに向かった上条当麻に怒りを覚えるのであった

※ 白井には聞こえないし見えません
「篭絡って…違う違う違う…うぅ…でも…」
頬から耳まで真っ赤に染めぶんぶんと頭を振るし、手足は震える(白井の誤解はここ)…
「恥ずかしいけど…いつもより少し大人っぽい下着買おうかな…」
美琴のこの判断が白井と上条を追い詰めるのは想像に難くない

こうして、白井は放心状態のまま美琴に引きずられる形で買い物を終えた

・・・・・・・

上条が戻ってきました
「おっ、買い物終ってたか、わりぃわりぃ待たせちまったみたいで…この後どうする?」
実は安売りの服とかが目に留まって予想以上に時間をかけて戻ってきた訳なのだが…

「……」
と上の空の美琴と…
「………」
とかなり重い空気の白井が待っていた

「えっと…そろそろ終バス、終電の最終下校時間なんで、帰らないといけないかなーなんて上条さんは思うのですが…」
相対性の空気に耐えられず視線を彷徨わせ落ち着きがなくなってくる上条

「……」
両者共に無言…そこへ…

「「しーらいさーん」」と突っ込んでくる二人の少女…

「それで白井さん、あの男の人は誰ですか?」
と花飾りで頭が花瓶の様になっている少女が白井の腕を掴みながら聞く
しかし、白井は重い空気のまま固まっていて答えないので少女は上条の方を向き、もう一人の少女に目配せをする

近づいて来る目配せを受けた長髪の少女に上条は嫌な予感を感じガタガタと震えだした…
「佐天さん、そちらの男の人も確保です」
上条は頭が花瓶の様になっている少女の一言に上の空の美琴の手を握り走り出していた
幸いにも美琴は白井の手を離していたのでいとも簡単に引っ張って行くことが出来た

・・・・・・・

逃げてる途中に意識を取り戻した美琴が手を握られてることに「ふにゃー」としてしまい
手を引いて走ることが出来なくなった為に上条は美琴をおんぶすることをにした
両手には今日買った雑貨と服の紙袋を持ち、背には美琴という…なんともな姿である
例えるなら、遊園地帰りのお父さんスタイルになった上条だった…

その後もなかなか振り切れない長髪の少女にうんざりしながら走り続けた…

そのままさらに走り続け、気付けばいつもの公園に着いていたわけである…

「ハァ…ハァ…ハァ…な、なんとか撒いたようだな…」
そう言って上条はベンチに美琴を座らせ、紙袋を置き自らも紙袋を挟んで美琴の隣に腰掛ける

時刻は夕方を過ぎ、月が昇ってきている
春と言っても4月上旬、夕方は少し肌寒くなる自分の上着を美琴にかけようとして汗でびっしょりになってることに気付く、これではかけた方が寒そうだ
「あー…ヤベェな…こりゃ、しばらくは動けねえわ…」
そう呟き全身の疲労感に身をゆだねて手足を投げ出す

「動けないですか…それは好都合ですね、上条さんに電話する手間が省けそうです…」
音もなく背後からそう言って人が出てきた

「縁田…」
上条はそう言うと立ち上がろうとするが走りまわった後、急に力を抜いたためか身体を思うように動かせない…結局座ったまま対峙する形になった

「縁田…お前、理由を聞かせてくれ、…なんで美琴にこんな事をした?」
隣で寝ている(気絶から睡眠に移った)美琴を起さないよう声を抑えてはいる
しかし、明らかに敵意を感じる声音だった

「御坂さんには大変申し訳ないことをしました…」
そう言って縁田は目を伏せた…しかし意を決したかのように上条を見てこう言った
「しかし、2度の恩…いえ、3度でしたね、その恩を返すには例え上条さんに怨まれても遂行しなければならないと思う感情を読み取ってしまったから…私はこうしているのです」
そう言い上条をまっすぐ見つめる縁田に嘘偽りは感じられなかった

「ならせめて、その理由だけでも聞かせてくれ!」
上条はまだ思うように動かない身体に苛立ちを覚えながら縁田に叫ぶ

「…理由を答える前に上条さんに3つ、質問があります」
縁田はそう言い、右の人差し指、中指、薬指を立てた拳を上条に向ける

「一つ、あなたはこの三日間を振り返って幸せを感じましたか?」

確かに、この三日間は色々あったけど知らない美琴を見れたり、美琴と一緒にいて幸せだった

「二つ、あたなはこの三日間を振り返って何に気付きましたか?」

俺は…美琴、御坂美琴のことが好きだ…気付いたのはこの三日間のうちだが、多分もっと前から美琴のことが好きだったのかもしれない…それくらい自分の気持ちが理解できた時に心が満たされた、一つだけ空いていたジグソーパズルを埋めるたかのように

そんな風に考えていると俺の整理がついたと見たのか縁田は最後の質問をする…
「三つ、最後にそのことをそこの少女に伝える勇気はありますか?」

………俺は沈黙した、返す言葉が見つからない
今までどんな強敵にも諦めず、重傷を負っても揺るがなかった上条のこころは揺れた…
もしこの想いを美琴に伝えて、今の…今のこの幸せな時間が壊れてしまったらと思うと喉が張り付いたように声が出ない…

「この想いを…伝える?」
ようやく出た声がそれだけだ…しかも相手に聞こえているかも分からないかすれた声

「そうです、伝えるんです…しかし上条さん、今の上条さんには多分、まだできません」
そう言って縁田は目を伏せる

「上条さんはご自身の気持ちの本質は理解しています
しかし上条さんの中の何かがそれを無理やり引きとめているんです…
あ、言い忘れてましたね…私、人の心が読めるんです…深層心理の内面まで…
だから上条さんの答えは私には見えてしまってるんです…お答えは出来ませんが…
という訳で答えられなかった上条さんには理由は教えられませんので…これで」
そう矢継ぎ早に言って縁田は頭を下げ、上条に背を向けて歩き出す…

そして、上条さん…と歩きながら声をかけてきた…
「あと4日差し上げます、その間に引き止めている原因をつきとめて想いを伝えてください」
…しかし縁田が最後に言った言葉に上条は耳を疑った…
「出来なかった場合は上条さんも御坂さんを認識できなくなります…」
御坂さんにはあとで上条さんの携帯を通して伝えますので…と言い去っていった

上条は何も言えずに固まっていた…

・・・・・・・・・・・・

それから10分後、美琴が目を覚ました

「う、うーん…ってあれ、私いつの間に寝たのかしら…」
いつ寝たのか覚えていない美琴は周りを見ていつもの公園にいることが理解できた

「そういえば、当麻と手を繋いでたような…」
と言ったところで顔が真っ赤になるのだった…がすぐに元に戻る
「当麻?どうしたの…」
それは、隣にいた上条を見たからである…

「あ、起きたか…風邪引いちまうから、そろそろ起そうと思ってたんだけどな…」
そう上条は言ったが明らかに何かに怯えているように見える
しかし、それを無理やり隠そうとするから表情が歪んでしまい隠せていない

「当麻…なんか隠してる…」
上条は人には誰かに頼れなんて言うくせに、上条本人は誰かに頼ろうとはしないので性質が悪い
「あ…いや、なんでもないんだ…なんでも…」
そう言って無理に笑おうとする…また一人で抱え込んで一人で解決しようとしている

「私が寝ている間になんかあったんでしょ?それに、少しはこの私を頼ってよ」
そう言って美琴は寝ている間に起きたことを上条に聞く…
そもそも人を頼らないために辛さや悩みなど一切顔には出さないはずの上条がここまで顔に出してしまうほどの悩みを美琴はなんとかしてあげたいと心から思うのだった

「だから…美琴、ほんとになんでも「ならなんで当麻は今にも泣きそうな顔してるのよっ!」…」
隠せてない自分をようやく自覚したのか上条は目を伏せた

「当麻…一つ聞かせて…私ってそんなに頼りない?…今は能力だって失ってるし…いつもより役に立たないわよ…でもそのいつもだって当麻は私を頼ってくれないじゃない…なんで…?」
美琴は悲しかった…今の能力が使えない自分に、ではなく例え能力が使えても自分を頼ってくれない当麻に対して悲しみを覚えるのだった…
それでも、一言、一言を搾り出すように上条にぶつける…そして…

「わりぃ…心配かけちまったみたいで…それでも、今は無理だ…早くても部屋に着くまでには心の整理をすっから…頼む…今は聞かないでくれ…整理ができたら必ず話すから…」
そう言って上条は決意を固めるように大きく息を吸い、吐く…
「わかった…絶対、話してね…待ってるから…」
そう言い美琴もしぶしぶ納得する

「それじゃ、ホントに風邪引く前に帰ろうぜ?」
と言って上条はニカッと笑う
そこには誰かを心配させまいと無理をする少年ではなく
少女のよく知るいつもの少年がいた

踏ん切りをつけたのか上条は、美琴が気絶する前、セブンスミストから追いかけられたあたりからの話を美琴にした、どうやら追いかけて来たのは美琴の知り合いでもあるらしい

そんな話をして笑いながら上条の部屋に帰るべく歩いた

・・・・・・・・・・・・・

時刻は午後八時

上条の部屋に着いたはいいが何故か重い沈黙が流れる
その理由は先程上条が言ったあの一言に美琴がまだかまだかと視線を送ってくるからで…

『早くても部屋に着くまでには心の整理をすっから』
そう、美琴は勘違いをしている…早くても~は最低ラインを示す言葉であり、必ずではない

「あの…美琴さん?上条さんはお腹が空いて死にそうです…食べたら話すんで手料理をご馳走になりたいなーなんて…」
そう聞いた美琴はキッチンに走っていった

ハァ…美琴に聞こえないように溜息をつく
なんて説明したらいいんだろうか…、美琴お前のことが好きだ!…か?違うだろ…
さすがに鈍感な上条でもこの空気で言う事じゃねえと理解している

いや…というか付き合ったら俺の不幸が美琴にも影響しかねないんじゃないだろうか…
って、なんで付き合えること前提で考えてんだ…
つーか、今回のは明らかに俺関連の不幸が美琴に降りかかってるよな?!
能力戻ったら「あん時のお返しだぁー!!!」なんて超電磁砲の捕球させられるんじゃ…
ブルブル……謝ろう、迅速に…飯を食ったら…謝ろう…

鈍感な上条は保身のために選択を誤った…

そう考えてる内に美琴が料理を持ってきた
「あ、美琴わりぃ…皿出してなかったわ、ちょっと待っててくれ」
そう言って上条は皿を取りに行こうとしたが…

「待ちなさい…当麻は心の整理をしてて、皿は私が取りに行くからっ」
そう上条を押し留めて美琴は料理をテーブルに置き、皿を取りにキッチンへ戻った

なんていうか…心配させ過ぎだな
そう思い反省する上条だが逆に心配してくれる美琴にうれしく思うのであった

「さ、たーんと食べなさい、美琴センセー特性の煮込みハンバーグよ」
そういい美琴が持ってきた皿にはホカホカの煮込みハンバーグ

「な、なあ美琴…一つ気になったんだが、ハンバーグにホワイトソースっぽい物で描かれてるのはハートで宜しいんでしょうか?」
出てきたハンバーグは煮込まれ白い湯気が上がり、空腹をよりいっそう煽るかのような見た目かつ匂いが鼻腔をくすぐり上条は恥じも外聞もなければ涎ダラダラになったであろう…
しかし、気になるのがそのハンバーグに描かれた絵柄、それはハートであった

意味深…乙女な美琴の趣味なのか、それとも自身へのアピールなのか疑問な上条は
質問するのは恥ずかしいな…特に後者で聞いて間違ってた時は勘違いのお祭野郎になってしまう可能性があったため遠まわしに柄の確認だけしてみた…

「は、ハートだけど…なに?その…嫌だった?」
とモジモジしながら潤んだ瞳でこちらを上目遣いで見る美琴

「嫌じゃねーよ、むしろ嬉しいと言いますか…しかし、なんか色んな意味が含められてそうで上条さんは勘違いのお祭野郎にはなりたくないなーと」
上条は本心を告げ
「それじゃ、いただきます」
と一口、やはり美味い…こんな料理を作ってくれる美琴が彼女だったらなあ…と考えなくもない

勘違いって何よ…この鈍感…
そう口の中で呟く美琴はむくれる反面、嬉しいという上条の言葉に内心大喜びなのであった
ただ、ハートで自分の気持ちに気付くかなと期待はしていた分少し残念だった

「ま、味わって感謝しながら食べなさいよ」
そう言って素直になれない自分に嫌気が差す
「ああ、すげー美味いぞこのハンバーグ…やべえ、毎日でもいけるかもしれねえ」
などという上条の言葉を聞いた美琴は頬を赤く染めるのだった

「そんなんでよかったら…毎日でも作ってあげるわよ…そんなことより当麻!まだ食べてるけど心の整理ってやつは終ったのかしら?」
最初の部分はゴニョゴニョとまったく聞き取れなかった上条だが急に本題を出されたことに喉にハンバーグが詰まる

「ぐぅっ……」
上条は顔を真っ青にする
あれ?まだ聞いちゃまずかった…?と美琴は首を傾げるがそうではない
「み…みごど…み…水を…」
と喉を押さえて苦しむ上条
「ちょ、当麻!今水持ってくるから」
ようやく上条の状態を理解した美琴が慌ててキッチンから水を汲んでくる

そうして、バタバタした食事が終わり、片付けも済んだ頃

「わりぃ…助かったよ美琴」
そう素直に上条は感謝した
「別に…気付くの遅くなってゴメン」
そう言って美琴は謝る

謝る必要ねえだろ?と上条は美琴の頭をクシャクシャと撫で…
「それじゃ、区切りもついたし、話しますか」
と上条は姿勢を正す
それを見て美琴も姿勢を正した

「さて…まず最初に謝っておく…美琴、本当にゴメン…」
いきなり上条は深々と美琴に頭を下げた

「今回、お前の身に起こったことは俺のせいなんだ…縁田が俺に本当の気持ちに気づかせる為に行動した結果お前に負担がかかったって言われた…」
そこで頭を下げたまま口を閉ざした…

美琴は黙って次の言葉を待つ

「そして、俺は…縁田にこの三日間お前は幸せだったか?と聞かれた、俺はもちろん幸せだと思った、いつもあんなに不幸なのにこんなに幸せで本当に良いのかって程幸せを感じてた…」
そう言い頭を上げ美琴をしっかりと見る

「そして、縁田は俺にこの三日間で何に気づいたか?って聞いてきた、内容まではまだ言えない…でも、俺は気付いたんだ…自分の中にあった本当の気持ちに」
そう言って上条は時々目を伏せながら喋っていたが最後の言葉は美琴を見て力強く言った

「って事なんだが…やっぱまだ納得いかねえよな…最後に縁田に言われたのが2つの質問のすべてのことを美琴に伝えられるのか?って言われたけどまだ俺には言えそうにない…」
そう言って上条は頭を掻く
やっぱ…タイムリミットは伝えたほうがいいのか…
そう考えると自然と上条の顔は暗くなる

「当麻?私についてなんか言われたんでしょ?大丈夫…なんとなくわかってるから」
そう言った美琴の方を見た上条は一瞬目を疑う…
美琴の存在が薄れたような気がしたからだ、なんというか陽炎のように美琴の姿が揺らいだのだ
しかし、それは一時的なものだったらしくすぐに元に戻った
どうやらそれを美琴も感じているのか少し暗い顔をしているが聞く決意は固いようだ

「ああ、わかったよ…美琴、落ち着いて聞いてくれ縁田が言った残り時間はあと4日、それを過ぎたら俺も美琴の存在を認識できなくなるって言われた…」
そう、美琴にとっては上条が認識できているのが精神の最後の砦なのだ
その砦を失うという事は精神の崩壊を示しているわけで

「しかし、絶対そんなことはさせねえ…俺は絶対認めない、恩返しっていう縁田にとっては大切なことかも知れねえがそれで美琴が泣いてていいはずはねえ、縁田の幻想は俺がぶち殺す」
上条はそう言って右手をミシミシッと音が鳴るほど握り締めた

その時

ピリリリ、ピリリリリ
と上条の携帯が鳴り出した…名前を見るが非通知
ピッ
「縁田か?」
このタイミングで電話をかけてくるやつは一人しか思い当たらなかった

・・・・・・・・・・・・・・・・

上条は自分の部屋の扉に背を預け通路に立っている

時間は今から数分前

~~~~~~~~
「縁田か?」
『上条さん、六割がた喋れてるようですね?正直になっていただいて結構です』
ふふっと笑う声が電話越しに聞こえる、上条は少しイラッとしたがまずそれはおいとく

「で、美琴に変わればいいのか?というか、電話越しでも能力使えんのかよ…」
ムスッとした声で言ったが縁田は気にはしないようだ

『ええ、お願いします…あと、上条さんはしばらく外で待っていてください…ちなみに私の能力発動の鍵はほとんどが声なのですが、そこは気にしないで下さい…私生活では使わないんで』

「当たり前だ!あとなんで俺が外に出るんだ?」と返したら
『内容は御坂さんから聞いてください、相手から聞く…この工程も大事なんですよ?』
そう言われたのでしかたなしに電話を美琴に渡し、俺は通路に出た

~~~~~~~~~~

「縁田って、丁寧なのか大雑把なのかよくわからねえ…」
まあ、出会って話したのもここ数日の数時間だけなのだからわかるはずはないのだが…

「悪いやつではない…それは言える…許せねえけどな…」
それは上条の感覚だけだが間違いではないと思う、ちなみに最後のは私怨

「でも…こういう手の込んだことをしてるってことは計画犯だよな…」
縁田を助けたのは先月2回この間1回の計3回、先月から今月に計画を立てたことになる

「うーん、縁田と同じクラスになったのはこれが初めてだし…面識なかったよな?」
上条は知らないが一応不幸な男、フラグ男の通り名は1年全体に知れ渡っているので、知らないのは上条だけなのであるが理由は周囲の暗黙の了解により割愛

そう考えてる内に電話は終ったらしい
「当麻ー、電話終ったわよー」
美琴がそう叫ぶ声が聞こえたため思考を戻して部屋に入った

□ □ □

携帯を切り、ふぅ…と溜息を吐く
ここは、どこかのホテルの一室、今日は女装をしなくてもいいという事で落ち着いてくつろぐ
「ミリ様は今日はご学友とカラオケとか言ってましたし、今日は一人のんびりと過ごしますか」
そう言うや否やバタンッと部屋の戸が力任せに開かれる

「鶴!今日は私の友達連れてきたからマネキンになりなさい」
と言って後ろから少女がさらに二人入って来た

「おぉ、イケメンですねー、この人が噂の鶴さんですかミリちゃんの彼氏の」
そういった少女は隣のもう一人の少女ときゃっきゃと騒いでいる

どんな噂かものすごーく気になるのですが…そう思っていると少女から一言
「そうそう、鶴?女装したら今度はこの四人でカラオケ行くから」
……あれ?

「ミリ様…カラオケはもう行ってきたのでは…?」
ミリ様だってーと外野二人がうるさくしているのに少々苛立ちを覚えるが無視することにした

「ん?ファミレスで女装した鶴が見たーいってことになったから戻ってきたわけなのよ?」
とサラッと言われ肩を落とす縁田であった

「一応鶴は短パン穿いてるから身ぐるみ剥いでる間にめぼしい服そこから選んでおいて~」
と外野の二人に指示を出し少女は逃げようとする縁田を組み敷き服を脱がしていく

…大変の見苦しい為この後の表現は割愛…

「ハァ…ハァ…ハァ…撒いたか…」

縁田は現在カラオケの一室に連れ込まれ10曲連チャンで歌い続けて
「ちょっと…休みます…」
そう言って抜け出したはいいが部屋から出た所で、他の部屋から出たスキルアウトのボスに一目惚れされ追い回される羽目になった…現在裏路地を走っております

「こんなとき、上条さんなら助けてくれると思うのですが…
 今はあの二人は大事な時間を過ごしているんです、邪魔しちゃ悪いですね…」
そう言って後ろから聞こえる野太い「オレの子猫ちゃーん」なる恐怖の声に鳥肌をたて逃げる

「上条さーん!なるべく早く結果出してくださーい!!」
と届きもしないエールを叫ぶ縁田は夜が明けるまで逃げることになるのであった…

□ □ □

時間は戻り、上条の部屋
時刻は午後9時48分

「………というわけなのよ」
美琴は上条に縁田からの内容を説明し終えた
美琴は理由の説明を受けただけだったが内容は簡単に言えば俺も知っていることであった

「つまり、あれか…縁田は2度目の俺が助けた時に俺と美琴の記憶を読んだ訳か」
そう、2度目の救出の際、俺はよく覚えていないのだが美琴と俺の追い駆けっこに巻き込まれた不運のスキルアウトが追っていたのが縁田本人であるらしくその時に「ありがとうございます」という何気なく放った言葉に疲労のため能力が乗ってしまったらしい…

「で、その結果追い駆けっこの最中の俺らの気持ちを全部読んでしまった…てことか」
そこまで言って上条は気づいた…俺の深層心理が美琴を好きと言っているなら…
それをくっつけようとしている縁田は美琴の深層心理も同じだからくっつけてしまおうとしてる
それか、上条になびくように美琴の心理を吊橋効果でも何でも使って心変わりしようとしてるのか判断できない…

「今日は…なんか疲れちまったな…」
そう言って上条はハアと溜息をつき身体を伸ばす

「そうね…私も今日は疲れたわ…」
今日って美琴料理以外なんかしたっけ?
と言ったら歩いたじゃない…と言われたが帰り走ったの俺ですよね…とは言えず

「まあ…なんにせよ、風呂先入れ、俺汗びっしょりかいちまったから最後の方いいだろ?」
そう言って美琴に先に風呂に入ることを勧める

「うん、わかった」
そう言って美琴は今日買った雑貨からタオル、服からパジャマと下…
バッと美琴は上条のほうを見た

「上条さんは何も見てませんっ」
と、危うく下着をもろ見そうになってしまった上条は首を痛める勢いで視線をそらした

「信じてあげる…」
ドスの聞いた声で言ってしまったが信じてやろうと思う美琴だった

しかし、ここから上条の苦悩は始まる…
理由その一、昨日は食器を洗っていてマシだったが何もしてないと水音と鼻歌、息遣いが聞こえるので健全な男子高校生には多少というか、かなり刺激が強すぎるのである

その二、その疲労困憊の中美琴の残り湯…昨日も同じことがあったが刺激が強すぎたため一瞬意識が飛んで狼になりかけた…

その三、なんとか風呂から上がり美琴を見ると今まで貸し出していたジャージと違いパジャマの女の子が部屋にいることで意識してしまい、何を話せばいいのかもわからなくなってしまった

結果…風呂に入る前より上条は疲れてしまったのだった…

「そろそろ寝ない?」
そう美琴が切り出してくれなかったら上条はおかしくなっていたかもしれない

「お、おう…そろそろ寝ないとな」
そう言って上条が立ち上がる

「それじゃ、美琴おやすみ」
「おやすみ、当麻」
そう言って電気を消した…


浴槽ベッドに入り、上条は
「縁田…俺は今美琴と一緒に過せて幸せだ…そこんとこだけは、お前に感謝しないとな」
そう呟き、深い眠りに堕ちていく

こうして共同生活の三日目が終わるのだった


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