とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫 上条さんと美琴のいちゃいちゃSS > 恋する美琴の恋愛事情 > Part02


夢見る美琴のキス事情


「……んん~」
「お、目が覚めたか」

 私は小さく背伸びをし、少し気だるさを感じながらもベッドから身を起こした。

「身体の調子はどうだ、美琴?」

 そう言って彼、上条当麻はベッドの上に腰かけ、私の顔を覗き込む。

「心配掛けてごめんね。もう、大丈夫だから。すっかり回復したか……」

 私の言葉が終わる前に、当麻が右手で私の前髪を掬いあげ、露わになった額に自分の額をくっつけてきた。

「……昨日よりは熱は下がったようだけど、まだ少し熱いな」

 そんなの当たり前だ。だって、私の目の前に当麻の顔があるんだもん。体温が上昇するのは仕方ないと思う。

「まあ、とりあえず今日一日はゆっくりと休養することだ」

 そう言って、額を離す当麻。うう、もうちょっとだけくっつけていたって良いじゃない。昨日は風邪のせいでキスさえできなかったんだから。
 当麻はそんな私の心を察知してかもう一度顔を近づけてくる。

「お姫様、何かして欲しい事はありませんか?」

 微笑みを浮かべたまま当麻が私に問いかける。そんなの決まってるのにわざわざ聞くなんて当麻は意地悪だ。

「………………キス」

 私は顔を真っ赤にし、当麻と顔を合わせられなくなり、当麻から視線を外しながら今私がいちばんして欲しい事を告げる。でも、恥ずかしさからちょっと小声になってしまった。

「よく聞こえないぞ、美琴。俺にわかるようにはっきりと大きな声で言ってごらん」

 やっぱり当麻は意地悪だ。私を苛めて喜んでる。顔は見えないけどきっと私が困る様を見てニヤニヤしてるに違いない。

「…………キス」
「まだ聞こえないぞ」
「……キス」
「ほら、もう少し」
「当麻にキスしてほしい!!んっ!!」

 私が願望を声を大にして叫んだ瞬間、当麻はまるでぶつけるかのように唇を合わせてきた。それはとても激しい情熱的なキスだった。あまりの激しさに私は意識を失いそうになる。

「と、うま……んっ……」

 唇を通して私の気持ちが、当麻の気持ちが、さらに絡み合う舌が情報ケーブルのようにお互いの深い愛情を教えてくれる。

「好き!あっ、大好き!んあっ、当麻、大好きだよ!!」

 もう私は感情の制御なんて出来なかった。私の全てを当麻に知ってほしかった。だから、能力の制御なんて今の私には不可能だった。


       *********


「ん@げ!はんpそtfおい!?あdなのpjだお!!いhcヴぃおんvpqv!!!」

 御坂美琴の意識を現実に戻したのは、そんな意味不明の叫び声だった。

「……ん~、夢か」

 美琴はゆっくりと背伸びをし、半覚醒状態の意識を朝の清々しい空気を胸一杯に吸い込む事によって覚醒させる。

「それにしても、なんて夢を見てるのよ、私……」

 夢の中で上条当麻と現実ではあり得ない行為を行ってしまっている。それ自体に嫌悪感はない。いや、むしろ、可能ならばその段階まで進みたいと思わなくもない。
 そして、枕元に視線を移すと、そこには紙袋が一つ。昨日、上条当麻が風邪をひいた美琴の為にくれたお見舞いの品が入っている。

「ふ、ふふふ、ふへぇ~~~」

 紙袋を見た途端、夢の中身を思い出して顔の筋肉が弛緩し、すっかりだらしのない顔になってしまう。しかも、漏電付きで。もっとも美琴の部屋はエレクトロマスターである美琴への対策として、部屋中に電撃対策が施されているのでちょっとやそっとの漏電くらいでは問題ない構造になっている。あくまで、部屋は……だが。

「お゛、お゛ね゛えざま……よ゛うやぐ、め゛をざまざれまじだが……」

 美琴は声のした方向に視線を向けると、そこには床の上で何故か黒焦げになって倒れている白井黒子の姿があった。

「黒子、あんた……何してるのよ?」
「な゛、な゛にも゛じでおりまぜんば……」

 弁明するかのような台詞の黒子に訝しげな視線を向ける。
 黒焦げになった理由は良く分からないが、おそらく黒子が美琴のベッドの中に潜り込もうとして無意識のうちに防御してしまったに違いないと推測する。なにせ、過去に黒子が美琴のベッドに潜り込み添い寝をしようとしたのは一度や二度ではない。

「あんたも少しは懲りるという事を学びなさいよ」

 そう言いながら、美琴はバスルームへと消えていく。目覚ましの為のシャワーだろう。少しするとバスルームから水音が聞こえてきた。

『お、お姉さまのシャワー……なのに、身体が言う事をききませんの……口惜しやですの……』

 未だ黒焦げ状態の黒子はシャワー室へのテレポートを夢見たまま、意識を失った。
 なお、すでに判っていると思うが、黒子が黒焦げになったのはベッドの中の美琴の悩ましい声で目を覚まし、さらに「当麻、大好き」などとこれ以上ないくらいの微笑みを浮かべた寝言に対し逆上した黒子が美琴のベッドに近づいた途端、夢と連動した美琴の能力が黒子を襲った為であった。実に恐ろしきはデレ美琴なり……


       *********


 時は過ぎ、放課後の時間。
 美琴は再びいつもの公園で上条当麻を待っていた。

「うん。今日はちゃんとお見舞いの礼っていう口実があるし、べ、別に待ってても問題は無いわよね」

 顔を真っ赤にし、一人呟く美琴。
 今日は風邪からも回復し、学校へは普段通り登校したのだが、お見舞いの事、そして夢の事を思い出すたび顔がにやけてしまい、周りの生徒から別の意味で心配されていたのは言うまでもない。

「今日はちゃんと素直に礼を言うのよ、美琴。もしかしたら、運が良ければ、二人の関係も進むかもしれないし……」ニヘラ。

 何を想像したのか、とりあえず顔の筋肉が弛緩しっぱなしで、傍を通った子供が怖がって速足で遠ざかるような表情を浮かべていた。

「お、ビリビリ。久しぶりだな、身体はもういいのか?」

 懐かしい声に美琴は現実に引き戻される。
 たった2日なのにもう何ヶ月もこの声を聞いてなかったような錯覚を覚えてしまう。それくらいに待ち望んだ声だった。

「ビリビリじゃない!私の名前は御坂美こ…と……(プシュウ)」

 声のする方向に身体を向けていつものように対応しようとしたが、夢の中身を思い出してしまい、急に恥ずかしくなり、顔を真っ赤にして、視線を外し、いつもの台詞が尻すぼみになってしまう。

「ん?なんだぁ?まだ身体の調子が悪いのか?」

 そんな美琴の態度に当麻は心配そうに顔を覗き込む。

「ふぎゃっ!な、なんでもないわよ!?別にどこも悪くなんてないわよ!!」

 目の前に当麻の顔が近づいた事により、さらに顔を真っ赤にする美琴。もちろん、視線を合わせる事なんて出来ない。

「んー、どうみても熱があるようにしか見えないな……どれ?」

 そう言って当麻は右手で美琴の額の髪を掬いあげると、自分の額と美琴の額をくっつけた。

「っ!!!」

 その瞬間。美琴の脳内で今朝の夢がフラッシュバックする。

「……ん~、大して熱はないようだけど、まだ少し熱いな。ほら、送ってやるから今日は大人しくしてろ」

 当麻は額を離し、美琴の手を取ろうとした。

「……………………て」
「なんだ?」

 美琴がなにかを呟いているのが聞こえた。

「…………………して」
「御坂さん?」
「………………スして?」
「ええと、何をすれば良いのでしょう?」

 美琴の言葉がうまく聞き取れない当麻は再度顔を近づける。

「……………キうにゃあぁぁぁ!!」

 その瞬間、完全に感情の制御を失った美琴は能力のコントロールも失い、全方位へと電撃を放つ。

「また、このパターンかよ!?不幸だぁーーーー!!!」

 そしてまた上条当麻の叫びが公園に響き渡るのだった。


       *********


「……あれ?私、なんで?」

 美琴が目を覚ますと視界に入ったのは、見慣れた部屋だった。

「ようやくお目覚めですの、お姉さま」

 そして、聞きなれた声。

「黒子、私なんで部屋に?」

 はっきりしない頭を振りながら、反対側のベッドに座っている黒子に問いかける。
 確か公園でアイツと会って……そこまでは思い出せるのにそれ以降の記憶がはっきりしない。いつ部屋に帰ってきたのか全く覚えていなかった。

「ジャッジメントの業務を終えて帰宅の途中に見覚えのある顔の類人猿がお姉さまを抱えて走ってまして。てっきり誘拐かと思って声(鉄矢)をかけた(打ち込んだ)ところ、お姉さまが急に倒れたため病院に運ばれてる最中とのことでした。なので、私が代わりにお部屋までテレポートしてさしあげましたの」

 まあ、本当は当麻の腕の中にいる美琴があまりにも幸せそうな顔をして、しかも当麻の服を離そうとしなかったため、寮の前まで運ばせたのだが、悔しいので黒子はその事は黙っている事にした。

「そっか……また、迷惑かけちゃったな……」

 ベッドの上で神妙になる美琴。しかし、その口元に嬉しそうな笑みが浮かんでいた。

『そっか、当麻が私を抱っこしてくれたんだ。お姫様だっこ。嬉しいよ。ふふ』

「お姉さま?また、なにか良からぬ事考えておられません?考えるなら、是非、私白井黒子の事だけを考えて下さいまし!って、聞いておられますの!?お姉さま!?私を見て下さいませですの―!!!」

そして、また黒子の絶叫が寮内に響き渡るのだった。