とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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誰でも簡単! なんちゃって読心能力者




よくもまぁ、毎度毎度怪しい話題【はなしのネタ】を持ってくるもんだと美琴は感心していた。

フェミレスのテーブルを囲むのは、美琴、白井、初春、佐天の4人。要するにいつものメンバーだ。
そしてテーブルの中央には謎の機械【オモチャ】が置かれている。
やはりというか勿論というか、これは佐天が持ってきた物だ。

「じゃじゃーん! 巷で大流行中の『誰でも簡単! なんちゃって読心能力者』です!
 いやー、手に入れるのに苦労しましたよ!」

「ピカコン パシュパシュパシュパシュ テッテケテッテッテーーテッテー♪」という効果音とともに
嬉々として説明する佐天だが、どこの巷でどんな人に大流行中なのか、一切誰もツッコまない。
これもまた、いつも通りの光景だ。

「……それで? 今回はどのようなオモシログッズをご持参なさいましたの?」

一応白井は食いついてみる。
本当は白井本人は大して興味ないのだが、愛しのお姉様がこういうのを好きだからだ。

「ふふん! よくぞ聞いてくれました! これはですね、人の心が簡単に分かるオモチャなんです!」
「人の心…ですか?」

初春も興味を持ったらしく、パフェを食べる手を止めて佐天の方を見る。
佐天はニヤリと笑うと、オモチャの解説をし始めた。
佐天曰く、このオモチャは人の声紋から緊張などを読み取り、
相手が本当に考えているであろう事を推測し、文字にして画面に表示する、という物らしい。
要するに、嘘発見器と昔発売されたバウリンガルを足して2で割った感じのオモチャだ。
だがオモチャといえどそこは学園都市製だ。性能は折り紙つきである…らしい。佐天が言うには。

「へぇ、面白そうじゃない。けど本当に当たるの?」
「あっ! 御坂さんまだちょっと疑ってます? じゃあ何か質問してみてくださいよ」

言われて美琴は考えた。普通はこういう時「あなたは男ですか?」など、
相手が「YES」と答えた場合確実に嘘だと分かる質問をするのがセオリーだ。
しかしそれでは面白くない。そこで美琴は、

「あなたは今日、初春さんのスカートを捲りましたか?」

という質問をした。初春は口から盛大に生クリームを吹き出したが、周りは気にしない。

「いいえ、あたしは初春のパンツに全く興味がありません!」

たった今3人は、まじりけのない純度100%の嘘を聞いた気がした。
そして『なんちゃって読心能力者』の画面には、

『もっちろん捲りましたよ!
 ちなみに今日は白と水色のストライプでした! 5日前に穿いてたのと同じヤツですね!』

と聞いてもいない情報まで事細かく表示された。
あまりの実験結果に佐天は鼻を高くし、美琴と白井の二人は「おお!」と声を上げ、
初春は顔を真っ赤にしながらテーブルに突っ伏した。

美琴は少し考えて、白井にこんな質問をぶつけてみた。

「ねぇ黒子。私のお気に入りの下着がごっそりなくなったんだけど…アンタ何か知らない?」

突然の不意打ち。白井は首を90度左に回し、汗をダラダラ掻きながら答える。

「ししし知りませんの。くろ、黒子は無実ですのよ?
 け、けけ、決して盗みなどと風紀委員にあるまじき下劣な行為はしておりませんので」

もう『なんちゃって読心能力者』を使うまでもないと思うが、一応画面を覗いてみる。

『ハァ…ハァ…お姉様のランジェリー……全て…全て黒子の物ですのおおお!!!
 ハァハァ…クンカクンカ……良い香りですの……で、では今度はお味の方を……
 計へtd。k4ぼjーwま射plせx「mzあろh@js音gvゃ6rくぃfbもジョ』

と表示された。文字化けしたのは偶然なのか、それとも機械側が表示を拒否したのか。
とりあえず白井は黒焦げにされた。まぁ、当然だ。



佐天はコホン、とわざとらしく咳払いをすると、
今回このオモチャを持って来た本当の理由を話し出した。

「さて、これでこのオモチャの性能は分かってもらえたと思います。……約二名の尊い犠牲の上に。
 で、ここからが本題なんですけど……」

佐天からかつてないほどの邪悪な笑みがこぼれる。
美琴はとっさに何が起こるか気付いたが、もう遅かった。

「さて、と。御坂さん? ウワサの彼氏さんについて聞きたいんですけども!」

美琴は「やっぱりかああああ!!!」と心の中で頭を抱える。
どうやらこれが佐天の目的だったようだ。美琴はまんまとその罠にはまってしまった。
興味のありすぎる話題に、初春はガバッと顔を上げ、
白井はチリチリになった髪をとかしながらこちらを向く。二人とも無事復活を遂げたようだ。

「か、かか、彼氏なんていないわよ? 私には、うん」

この余計な一言が、美琴にとっての地獄の始まりであった。
当然、オモチャの画面には美琴の心の声が表示される。

『…でも、彼氏になって欲しい人はいるのよね。
 も~! こんなに好きなのにどうして気付いてくれないのよ~!!』

一瞬の静寂。
佐天は目を輝かせ、初春は自分の赤くなった頬を両手で覆い、白井はテーブルに頭突き【かおドラム】をする。
そして美琴は、初春の100倍…というより原色の赤に近いほどに赤面し、
口をパクパクさせながら硬直している。

「ち、ちち、ち違うの…そういうのじゃないの……」
『違くないよ。私アイツの事大好きだもん!」

「ホ、ホン、トに、す、すすす、す…き…とか、ないかりゃ……」
『ううん、嘘。私はアイツの事が…当麻の事が大大だ~い好き!』

「あの…もう…ア、イツの、事、とか…きょ、興味にゃい、し。むし、りょ、き、きら、嫌い、だし?」
『しゅきしゅき大ちゅき!! 当麻当麻~愛してる~♡』

何かもう、聞いてる(読んでる)こっちが恥ずかしくなってくる。
第三者ですらそうなのだ。美琴本人はたまったものではないだろう。
しかしこのピンチ【チャンス】を佐天は見逃してくれない。
今の佐天は、美琴にとってグレムリンよりも強大な敵なのだ。

「上条さんのどこが好きなんですか?」
「だだだ、だから、しゅ、しゅきとか、じゃにゃい…ってば……」
『ぜ~んぶ好き♡ 当麻の顔も声も性格も全部!』

「いつから好きになったんですか?」
「にゃにゃ、にゃんどもいうけりょ、しゅしゅ、しゅきりゃにゃいんらってびゃ……」
『気づいた時にはもう好きになってたけど…今思うと初めて会った時にはもうメロメロだったのかも!』

「チュウとかしたいですか?」
「しょしょしょしょんにゃもん! じぇんじぇんしたきゅにゃいんりゃきゃりゃ!」
『したいよ~。今すぐ当麻に会ってチュッチュしたいよ~』

もはや現実の美琴のろれつが回っていない。
機械に表示される心の声の方がハッキリしゃべれているのは何とも皮肉だ。
もう佐天の笑いが止まらない。初春は赤くなりすぎて頭から煙を出し始める。
白井は顔ドラムで16ビートを刻んでいた。

そして美琴はというと……
もう駄目であった。これ以上何を言おうと、どんどんドツボにはまっていく。
あと一回でも何かを答えようものなら、確実に『ふにゃー』する自信があった。

―美琴は―
2度とこの佐天の持って来たオモチャに食いつかないと誓った…。
佐天と『なんちゃって読心能力者』に挟まれ
永遠に弄られ続けるのだ。
そして何を言おうと結局ふにゃーするので
―そのうち美琴は 考えるのをやめた。








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