上条の学校の学生寮、上条の部屋
インデックスからの制裁に対し、なんとか九死に一生を得た上条は自分の膝の上で気絶している美琴を必死に起こそうとしていた。
「み、みさかさ~ん、夜ですけど朝ですよ~? 起きましょうね~、起きてください、お願いします!」
「み、みさかさ~ん、夜ですけど朝ですよ~? 起きましょうね~、起きてください、お願いします!」
上条が必死になるのには理由がある、それは……
「お、お願いしますから起きてくださいませんか! そろそろインデックスさんの空腹が限界です! 今にも噛みついて来そうな勢いでこっちを見てるから!!」
まだ修羅場が終わっていなかったのだった!!
「ツンツン……ウニ……海の幸……ご馳走……じゅるり……」
「ほら、仕舞いにはよだれ垂らしだした! それに発言が凄く恐いです! 上条さんはどこぞのあんパンヒーローじゃないんですよ!? ほら、上条さんの顔をお食べよ。なんて自殺行為はしませんのことよ!?」
「ん……?あれ、私……」
上条が恐怖でおかしくなりかける中、ようやく美琴が目を覚ました。
「神様仏様御坂様ぁぁ!」
「神様仏様御坂様ぁぁ!」
「ぎ、ぎゃぁぁぁああ!!??」
救世主の登場に喜びのあまり大声を出す上条、その声で一気に覚醒した美琴は自分のおかれている状況を理解し、飛び上がった。
ゴンッ!!! と、とても、とても、痛そうな音が響いた。
「「痛ッ……」」
「「痛ッ……」」
「み、御坂……あの体勢からいきなり飛び上がるなよ……」
「う、うっさいわね!? あ、あんたがあんなことしてるのが悪いんでしょ!?」
「な……も、元はと言えばお前が気絶したのが悪いんだろうが!!」
「え、気絶したの? 私が?」
「あぁ、そうだよ……ってお前、もしかして覚えてねぇの?」
「えっと……たしか料理作ることになって、エプロン着て……そっから先覚えてないわね……」
幸か不幸か美琴は先ほど理性を無くした時の事を覚えていなかった。
「……」
「……」
「え、何? 私何かしたの?」
「御坂、世の中には知らない方が良いこともあるさ」
「何!? すっごい気になるんですけど!? 」
「ヒントはふにゃーだ。これ以上は何も言えませぬ」
「ふにゃー!? 何それ猫? それが私に関係あるの!?」
「ふにゃー……猫? ……ごめんね。スフィンクス、もう我慢の限界なんだよ……」
「やば!?」
美琴が目を覚ましたことで、インデックスの事を忘れてしまっていた上条は猫の悲鳴で今の状況を思い出した。
「御坂!! うちの家族のピンチだ! 急いで飯作るぞ!!」
「御坂!! うちの家族のピンチだ! 急いで飯作るぞ!!」
「え? ちょ、ちょっと!? 質問に答えなさいよ!? てか引っ張るなぁ~!」
――――――
「短髪、おかわりなんだよ!!」
「まだ食べるの!?」
急拵え(きゅうごしらえ)ではあるが何とか六人分の料理を上条の家族が一人減る前に完成させた美琴はインデックスの食欲に驚愕していた。
「上条さんが、びんぼー生活送ってる理由、お分かりいただけたでしょうか……?」
「上条さんが、びんぼー生活送ってる理由、お分かりいただけたでしょうか……?」
「た、確かにあんたを信じるとは言ったけど、ま、まさかホントにここまで食べるとは……はいおかわり」
「ありがとうなんだよ!」
「はははは……こいつの胃はブラックホールなんだよ……にしても御坂、お前ホントに料理うめぇじゃん。上条さんもそこそこかじってますけど、ここまでのは作れませんよ。……うん、旨い!!」
美琴の作った料理を咀嚼しながら、上条は言った。すると夢中で食べ続けていたインデックスも会話に参加した。
「そうだね! 見直したんだよ、短髪! おかわり!」
「そうだね! 見直したんだよ、短髪! おかわり!」
「ま、まだ食べるか……はいおかわり。まぁでも、美味しいって言ってもらえたり、これだけ食べて貰えると嬉しい物ね」
「あぁ、それはわかるよ。やっぱ嬉しいもんだよな。ま、取り敢えず、これで見返すことには成功した、かね? な、インデックス」
「合格なんだよ! 言うことなし! かも。さっきはあんなこと言ってごめんね、短髪」
「……う~ん。どうしよっかなぁ? 私の言うこと一つ聞いてくれたら許してあげるわよ?」
「な!? 人が素直に謝ってるのになんたる言い種かも!?」
「ほらほら、どうするの? もしこの条件を飲んでくれるんなら、またご馳走してあげてもいいわよ?」
本当は自分がここに来たい癖にちょっとずるい方法でそれを提案する美琴。それに多少自己嫌悪に陥りつつも、平静を装う。そんなことを露とも知らないインデックスはそのご馳走と言う言葉に食い付いた。
「ホントに!? となると背に腹は変えられないかも! わかった、条件を飲むんだよ! それで、私はどうしたらいいのかな?」
「ホントに!? となると背に腹は変えられないかも! わかった、条件を飲むんだよ! それで、私はどうしたらいいのかな?」
「OK。じゃあ…」
どんなことをさせられるんだろう、と息を飲むインデックス。そして、箸を進め続けるも二人が気になり意識を向ける上条。
そんな二人に注目されながら美琴は答える。
そんな二人に注目されながら美琴は答える。
「私のこと、短髪じゃなく、ちゃんと名前で呼んで?」
その美琴の発言に対し二人は目を丸くした。「え、それでいいの?」
「なによ、不満な訳?」
「ううん、そうじゃないんだよ。でも、てっきりもっと凄いことさせられるんだと思ってたから……」
「何よそれ、私は鬼じゃないわよ?」
「いや、でも正直俺も以外だった。流石に酷いことはしないだろうと思ってたけど、まさかそうゆう内容とは」
「アンタまで……アンタ達の中の美琴さんはどうなってんのよ、って言いたいとこだけど、まあ無理もないか。さっきあれだけ喧嘩したんだもんね。……でもね、私は本気よ? もう、今までみたいな喧嘩腰は嫌なの。私はアンタと友達になりたいの」
「……その気持ちはうれしいよ。でも、何で? あなたの言葉借りるなら、さっき、あれだけ、喧嘩したんだよ?」
「そうね、実際私は、アンタ達の関係をまだ認めた訳じゃないし、納得もしていないわ。けどね?」
「けど?」
上条がその先を促す。
「さっきその子が私が作ったご飯食べてるとこ見て、色々と話をして私は、この子ともっと話をしたい、もっとご飯食べさせてあげたい、友達になりたいって思ったの」
「さっきその子が私が作ったご飯食べてるとこ見て、色々と話をして私は、この子ともっと話をしたい、もっとご飯食べさせてあげたい、友達になりたいって思ったの」
そこで美琴は一つ間をおいて続けた。
「だから、私と友達になってくれますか?」
「……しょうがないなぁ。いいよ。友達、なってあげても」
「何よソレ、なんで上から目線なの?
私は御坂美琴。よろしくインデックス」
私は御坂美琴。よろしくインデックス」
そう言いつつ美琴は手を差し出した。それにインデックスの手が重ねられる。
「あんまり舐められない為にはこれくらいはしておかないと駄目かも。だって、簡単に渡す気はないからね。
私はインデックスだよ。よろしくみこと」
「あんまり舐められない為にはこれくらいはしておかないと駄目かも。だって、簡単に渡す気はないからね。
私はインデックスだよ。よろしくみこと」
「ふふ、私だって簡単に負けるつもりは無いわよ? 美琴さんは日々レベルアップし続けてるんだからね!」
こうして二人は友達(ライバル)となった。とても手強い強敵だ。だがなんにせよ、美琴の今回のBOSS攻略は成功した、と言っていいだろう。なんとも微笑ましい光景である。
と、そこに不粋な声が一つ……
と、そこに不粋な声が一つ……
「あ、あの~上条さんにも分かるように説明していただけませんかね?」
「な!? アンタには言えるわけ無いでしょ!!」
「……とうま、デリカシーというものをいい加減学んだ方がいいんだよ……」
「え? これって俺が悪いの? だって二人とも途中から意志疎通しててなんの事言ってるかわかんなかったんだもん! 上条さんも仲間に入れてください!」
「知るかバカ! 今のは女の子の会話なの! 男はおとなしく傍観してなさい!」
「そうだよ! だからとうまはとうまなんだよ!」
「扱い酷くない!? 俺だって……」
いたたまれなくなったのか上条が急に立ち上がり反論しようとするがその際バランスを崩してしまい……
「っ痛てて……」
「な、なななななぁぁあ!!???」
……隣に座っていた美琴を押し倒した。
「あ、あんたいきなり!? いくらなんでもこんなところでなんてそんな、インデックスもいるのに、いや私はいいんだけどでも……」
「あ、いやこれは事故だ、わざとじゃない。だから御坂落ち着け。頼む落ち着いて。」
「ふにゃー」
「やっぱ駄目かぁぁぁぁ!!??」
バッとゆう勢いで美琴に右手で触れる上条、だが、これだけですむほど甘くなかった。
「とうま、ちょっと前も似たようなことがあったよね? あれから一時間もたってないのに全然懲りてないようだね。これはちょっと強力なお仕置きが必要かも。」
「は、ははは……不幸だぁー」
そして、本日二度目の悲鳴が学生寮に響き渡ったとさ……