とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part11

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集



翌日の日曜日、第六学区。

この第六学区は学園都市の中でもアミューズメント施設が集中した区画で、多くの生徒が休日を迎える日曜日は、それはそれは物凄い人だかりとなる。ましてや場所が場所、新規オープンしたばかりの遊園地となればそれもひとしおである。遊園地前は待ち合わせの人だかりで一杯になっていた。

そんな中、一層周囲の目を引く存在があった。

御坂美琴である。

彼女、御坂美琴は学園都市の言わずと知れた名門、常磐台中学の生徒であり、その制服が人目を引いている、『訳ではない。』
美琴は今日、いつもの制服姿とはうって変わり、私服を着用していたのだ。

本来、常磐台では休日でも外出時は制服の着用が義務付けられているのだが、美琴はその校則を堂々と破っていた。

では何故、彼女が周囲の目を集めていたのか、それは直接見て頂くのがいいだろう……



「あぁぁぁあヤバいヤバいヤバいヤバい!駄目だ、あぁ私もう駄目だ。心臓がばくばくするぅ! 緊張しすぎて全然寝れなかったぁぁ……あぁもう! あのバカ遅いわよ! 早く来なさいよ! 今何時? へ? まだ10時? 待ち合わせまでまだ一時間も有るじゃないの! あれ、私何時からここにいるっけ、まだ外が暗かったから……」


絶賛テンパり中だった。しかも声を大にして独り言を言っている。うん、完全に危ない人です。ほらそこのお母さんなんか子供に「こら! 見ちゃ駄目!」とか言ってるじゃないですか。はい、これが注目されてた主な理由です。

そんな視線の中、他とはまた違う視線を注ぐ人間がいた。

「うっわぁー……あれ御坂さんなの? 正直他人のふりしたくなる位浮いちゃってるよ……」

「こうやって物陰に隠れて御坂さんを覗き見る私達もあまり、人のことは言えませんよ、佐天さん」

「ぬぅ、初春にしては中々生意気な事を言うではないか……パンツはイチゴのアップリケのお子様スタイルなのに……」

「ちょっ!? 佐天さん!? また私のスカート捲ったんですか!? うぅ、佐天さん対策にズボンはいてくるべきでした……」
「まぁ習慣だし、やらないと調子出ないんだよねー。そうだ! そんなことより初春、ちゃんと白井さんは撒けたの?」

「習慣にしないでください!! ……白井さんに関しては大丈夫ですよ。今日の仕事を押し付け……ごほん、変わってもらったので」

「初春、お主も悪よのぅ……」

言わずと知れた柵川中学コンビ、佐天と初春であった。

「……でも、いいんですかね、ホントに。御坂さんをつける、なんて」

「つけるなんて人聞きの悪い。これは一人で不安であろう御坂さんを陰ながら応援するためにだね……」

「そうですか。で、本音は?」

「ぶっちゃけ興味本意です! こんな美味しい状況この私が放っておけるかぁ!!」
「佐天さん、サイテーですよ……って、あれは?」

その時初春が何か気付き顔を向け、佐天もそれにならう。

「あれ、あの子何処かで見たことあるような……」

「やっぱりそうですか? あの人って確か常磐台に実習に来てた……」



「あれーお前達ー確か初春と佐天だったかー」

「んー?どうした舞夏? 知り合いかにゃー?」


なんと、そこにいたのは土御門兄妹だった。



「んーまぁ知り合いというかー友達の友達って感じだなー。御坂の友達でよく話に出てくるぞー」

「ふーん。超電磁砲の……」

「あ、どうも佐天涙子です。えーと確か土御門さんでしたっけ? 盛夏祭の時にお会いしましたね。そちらの男性は?」

「ご丁寧にどうもなー。こっちの金髪サングラスは私の兄貴だぞー」

「よろしくだにゃー。俺は土御門元春だぜい。超電磁砲の友達ってことは、もしかしてデートが関係してるのかにゃー?」

お互いにあらかた自己紹介を済ませると、土御門は本題を切り出した。

「はい! 今日のデートを見学に来ました! ってあれ、何で知ってるんですか!?」

「あーそこはあれぜよ。俺は上条当麻と同級生だからにゃー。でも今日来たのは君達とは違う理由ぜよ」

「ああ、成る程、理解しました。違う理由、と言うのは?」

「ふっふっふ。それは企業秘み……」

「ただの財布だぞー。私が来たいと言ったんだがー、私の懐具合ではちょっとここは厳しいんでなー」

「舞夏……兄に面子を立てさせて欲しいにゃー……」

「あ、あははは……そうですか……でも以外です、舞夏さんもこうゆうとこ好きなんですね」

「むぅ、それはちょっと失礼じゃないかー? でもその認識で合ってるぞー、今日は遊びに来た訳じゃないからなー」

「ふむ、となると……」

「君達が超電磁砲、俺達は上やん、と目的は一緒ってことだにゃー。(まぁ俺はちょっと立場が違うけどにゃー)」

「なら、ここは……」


「「共同戦線、といきますか!!(といくかー)」」



ーーーー

自分を見守る人間がいて、しかも変な協力体制を敷いていることなど露知らず、美琴は相変わらずテンパっていた。

「……あれ? そもそも遊園地なんて来るのいつ以来かしら? しかもアイツと二人なんて!! どうしよ、何したらいいかわかんない!? と、取り敢えず何か乗ったらいいの!? 二人で仲良くメリーゴーランドや、観覧車に……ってそれだと端から見たらどうみてもカップルじゃない! や、やだ恥ずかしいわよ!! いやでも日はデートって言ってるのに今さら何を……うがぁぁぁ!! アイツは頼りにならないし、私がしっかりしないと駄目なのに、落ち着け私!!」

寧ろちょっと悪化していた。
終いには電気も漏れ出している。
これには傍観者達も焦ったらしく……

「ちょ、なんか御坂さん電気漏れてますよ!?」

「ま、不味いにゃー、このままだと警備員を呼ばれかねないぜい」

「ど、どうします!? 御坂さん止められるなんて上条さん位ですよ!? でもまだ待ち合わせには一時間もあります!!」

「……いや、噂をすればってやつみたいだぞー。本当、タイミングのいい奴だなー……」


「って落ち着いてなんかいられるかぁぁぁぁあ!!! あ、しかも電気漏れちゃってる!? 駄目、早く抑えないと、他の人に……なんで? 抑えられない、レベル5にもなって何やってんのよ私!? 止まって、止まってよ!!」

とここで、ふいに、誰かに頭を撫でられた。いや、誰かなんて決まっている、漏電している美琴に触れられるのなんてこの世でもそうはいない。



「ふぇ?」

「ほらよ、大丈夫か、御坂。」

「あ、アンタ! 何で!?」

「そりゃあ約束してたしな。来るに決まってんだろ。なんとなく、お前が待ってる気がして、ちょっと早めに来たんだよ。ほら落ち着いたか?」

そういって上条は頭を撫で始める。
するとどうして、美琴は徐々に落ち着きを取り戻した。昨日撫でられた時とは違う、そう、言うなればいつか鉄橋の上でされたように、頭を撫でられるとホッとしたのだ。

「……ホント、アンタって奴は……敵わないなー。よくもそう私がドキッとすることばかり言えるわよね」

「うん? なんのことだ?」

「何でもない! ありがと、もう落ち着いたから手離していいわよ。 ……だからもういいって!! いつまで撫でてんのよ!!」

「いやー何で女の子の髪ってこんなにやらかいんだ? 俺とは大違いだよ」

「だぁーかぁーらぁー、やめろつってんのがわかんないのかこの天然たらし野郎ぉぉぉ!!!!」

ビリビリィッ!!
辺りに心臓の悪い音が響くが、それはすぐにかきけされた。

「こらこら、こんなとこでビリビリしちゃいけませんよ」

「うっさい! 誰のせいだ誰の!!」

「ははは、ごめんごめん。 ……いつも通りに戻ったみたいだな……」

「うん? 今なんか言った?」

「うんにゃ、何も。さ、じゃあそろそろ行こうぜ、俺腹減った」

「腹減ったって、遊園地は食べ物目的で行くところじゃないわよ、たく。」

そう言って二人は遊園地に入場していく。
「……いやぁ、一時はどうなるかと思いましたけどなんとかなったねー」

「ですねー。上条さん様々です」

「御坂さんが上条さんをヒーローって言ってた理由ちょっとわかった。御坂さんが困ってる時に必ず助けに来る、か。カッコいいですね、上条さん!」

「君達まで……上やん恐るべし……これも報告しないとにゃー」

「こうしてみると中々お似合いの二人だなー。さて、私達もいくぞー。ぐずぐずしてると見失うからなー」

こうして傍観者達も入場していく。

いよいよ、デートの始まりだ。


ーーーーーー



「ああー!! 楽しかった!!」

午後4時、ひとしきりアトラクションを楽しんだ二人は休憩を取っていた。

「駄目だ、目が回る……何で女の子はあんなに絶叫系が好きなのか……」

「逆に、何でアンタはあんな波乱万丈な生き方しててこの程度が駄目なのよ。
……あまり、楽しくなかった?」

「いんや、それはない、なんつーの? 俺、遊園地なんて初めて来たけど、これでも中々楽しんでるんだぜ? お前のお陰だよ。サンキューな」

「バッ、バカ! そんなこといちいち言わないでいいわよ! 照れるじゃない」

「え、何が?」

「こんの、天然野郎……」


上条と美琴がいい雰囲気に包まれるなか、一方で、傍観者達は重い空気に包まれていた。

「ゼェ、ハァ、み、御坂さん、元気すぎる……いくらなんでもはしゃぎすぎですよ……」

「あぁ、財布が、どんどん寂しく……」

「今思えば、ジェットコースターまで付き合う必要なかったなー……」

「今それを言わないでください。むなしくなります……」

と、そんな時だった。



「ふー、流石にオープンしたての遊園地ともなると、パトロールが大変ですわね……テレポートが使えてホントに良かったですの。全く、こんなときに初春は何をやってるのやら……」

白井黒子だった。昨日から無事復活を遂げ、風紀委員の仕事に打ち込んでいるようだ。

「ちょ、ちょっと初春ぅ!!!?? 話が違うじゃん!?」

「ぬ、ぬっふぇぇ!? 何で白井さんがここに!? ちょっと調べます!!」

「なんだなんだ? 知り合いかにゃー?」

「あーアイツは御坂のルームメイトだぞー。ふむー、アイツに今見つかるのは不味いなー」

「わかりました! 今日のパトロールはこの遊園地で行うみたいです!」

「ば、バカー!! てことは何? 私達がいる間、白井さんもいたってこと!? なにそれ怖い!」

「いえ、白井さんの担当は午後3時からなのでまだ……」

「そんなことはどうでもいい!! 今はそれよりも白井さんをどう遠ざけるかだよ!!」

「うむむ、お兄さんにも分かるように話してほしいにゃー」

「言うなれば白井は御坂にとっての兄貴達からした青髪ピアスってとこだなー」

「なるほど、変態さんかにゃー」

「「まあ、その認識であってます」」

そこ、友達二人! それ結構ひどいからね!

「要はあれを遠ざけたらいいんだにゃー?」

「そうですけど、どうしたら……」

「ちょっと待つにゃー」prpr

そう言って土御門は誰かに電話をかける。
「あーもしもし? 一方通行? 悪いんだが今から廃ビル一棟潰してくれないかにゃー? へ、駄目? そうかー仕方ない、それじゃこのお子さまランチ一年分チケットは処分……へ? やってくれる? 助かるにゃー」ブツッ、ツーツー


「「「……」」」

「よし、これですぐに召集が来るぜい……あれ? 皆さんどうしたんぜよ?」

「いえ……」

「あの、一応私も風紀委員なんですが……」

「うん? それがどうかしたのかにゃー?」

「いえ、何でも……へ、召集!? ホントに来た!? いくらなんでも早くないですか!?」

「あーそれは今通報したからなー」

「え、舞夏? 舞夏さん?」

「さ、兄貴、お縄につく日が来たようだぞー」

「そ、そんにゃー!?」

「うぅ、召集来たからには私も行かないと、白井さんは……もう行ったみたいですね。佐天さんと舞夏さんはどうするんですか?」

「私は戻るぞー、そろそろ戻らないとメイド長に怒られそうだしなー」

「私は……帰ろっかな、一人で見てても仕方ないし、それにこれ以上はちょっと野暮かなーって」

「そうですか……じゃあ今日はここで解散にしましょう」

「そ、そうだにゃー、じゃあ俺は用事があるからお先に……へ?」ガチャ

土御門が変な、嫌な音がした所、自分の手首を見るとそこには……

「あのー、この手錠はずしてくれないかにゃー」

「駄目です。元春さんは私と支部に来てもらいます。重要参考人として」

「ふ、不幸だにゃーーー!!!!」

こうして、傍観者達は人知れず去った。後日談だが土御門は証拠不十分とゆうことで無事釈放された。まぁそれまで一週間牢屋にいたのだが……
因みに、ビルをぶっ壊した当人は証拠どころか目撃もされなかったため、無事であり、何処かのファミレスで幼女と居るのを目撃されたとかしないとか

さて、話がそれて申し訳ない。ではこの物語の主役に視点を戻そう。



「えーと、あと乗ってないのは……!?」
「どうした? ってはは、なるほど」

「よ、よーしもう一回ジェットコースターに……」

そこまで言って上条に手を引かれたため話を止める。

「ちょっ、ちょっと! 引っ張らないでよ!」

「さーいくぞー、ここまで来たら全部乗らないと終われませんよ。行くぞ観覧車」

「わ、わかったから引っ張るなぁぁ!!」

そうして二人は観覧車に向かった。

ーーーーー

「わあー!! 綺麗!! 高い!!」

「だなー。ちょうど夕焼けが出てていい感じ」

「そうねー。凄い綺麗。この高さから見る夕焼けはまた格別ね」

「そうだな。 ……御坂」

その時、上条の声色と表情が変わった。
何故かは理解しているため自然と美琴も夕焼けから上条に視点を移す。

「この観覧車で、今日のデートは終わりだ。終わってしまう。だから、ここで、返事をさせてくれ。」

「うん……」

「今日さ、年甲斐もなくはしゃいで、お前とバカみたいな話して、一緒に笑って、すげぇ楽しかったよ。」

「じゃ、じゃあ!!」

上条の言葉に美琴の顔がパァっと明るくなる。だが……

「けど!」

「!?」

「ごめん。まだお前の気持ちに答えることは出来ない。」

上条から告げられたのは謝罪だった。
それは美琴にとって、最悪の結末を示す、謝罪。

「……まだ、まだって何よ!? 私を都合のいい女にしようとでも!?」

上条を信頼していて、そんなことはしないとわかっていても口から出てくる罵詈雑言。止めようと思っても止められなかった。
「違う!! そんなこと微塵も思ってない!! 俺はただ、お前の気持ちに答えるには、『まだ』、俺の気持ちが足りてないって言いたかったんだ!!」

「何よ、何よそれ!? 結局断るんでしょ!? 振るんでしょ!? なら、そんな、希望を抱いちゃう様なこと言わないでよ!!!!」

「!? ……ごめん」



それから、遊園地を出るまで、二人の間に会話がされることはなかった。



ーーーーーー

上条の学生寮付近

あれから美琴とはほとんど無言で別れて、それからここに至るまではよく覚えていない。

「あいつ……」

泣いていた、と思う。俯いていたため表情を伺うことは出来なかったが、確かに。

「はは、女の子の泣かせるなんて、サイテーだな、俺。ホント、サイテーだ……」

断れば彼女を、美琴を泣かせてしまうことはわかっていた。彼女が自分をそれくらい慕っていてくれると理解していた。いつも素直じゃない彼女が珍しくぶつけてきた本音だ。信じない訳がない。では何故、わかってて、振ったのか。

「それでも、俺の中の気持ちに整理がつくまでは、許しちゃ駄目だと思ったんだ。好きでもないのにとりあえず付き合うなんてのは、あれだけ俺を慕ってくれてるやつには絶対にやってはいけないことだから。でも……」

上条はそこで一度言葉を区切って、続けた。

「なんで、こんなに胸が痛いんだろうなぁ……自分から振ったくせによ。女々しいよな。はは、終いには俺まで泣きそうになってきたよ……」

そこで上条はふと、携帯を開く。着信どころか、メール一つ来てない。それが以上に悲しかった。「ホント女々しいな」と呟き、視点を液晶画面の上部分に注ぐ。

「ヤバ!? もう20時じゃねえか!? 流石にインデックスも限界だ!!!」

気をとりなおすためだろうか無駄に明るい振りをして、上条は自宅へと駆け出した。



ーーーーーー

上条の自宅

「なんだよ、これ……」

帰宅した上条の前には凄惨な光景が広がっていた。

「なんだよこれ!? 俺がいない間に何があった!! インデックス!! おい、インデックス!! いないのか!!」

上条の部屋は何者かに荒らされていた。なにやら、争った様な形跡もある。

「まさか、新手の魔術師か!? くそ、平穏続きのせいか? 油断した!!」

なにか、足跡を辿るものがないかと、部屋をくまなく探す、その時だった。目が、見てはいけないものをとらえたのは。

「これは、血?」

血痕だった。まだ乾いていない。それを見たとき、上条の中で何かがブツっと音をたて、確実に切れた。

「う、あ……」


上条の部屋に、家主の物とは思えない雄叫びが響き渡った。











タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー