小ネタ the first father's day
朝起きたら隣のぬくもりはなかった。
わたくしこと上条美琴は起き上がり、大きく伸びをする。
そして、少しずつ大きくなり始めたお腹を、そっとさすった。
妊娠してるとわかったのは、1ヵ月前。
正直、当麻が喜んでくれるか不安だったが、いざ話してみると杞憂だった。
言葉にならない喜びってやつを、全力でぶつけてきてくれた。
思い出しただけでニマニマがとまらない。
「……って、その当麻はどこにいったんだろ?」
本日は父の日。
アイツの最初の父の日だ。
今日は思う存分甘やかせてやるのだ。
「…………だから、今日は危ないことしないでよね~」
ベッドから出るときに、飛び出る独り言。
しかし、誰かを助けることを生き甲斐とし、仕事にまでしてしまった男だ。
もう、家にいないかもしれない。
おそるおそるドアを開けた。
「なに? これ」
輝いていた。
なにがって、部屋が。
もうピッカピカである。
それだけではない。
テーブルの上には豪勢な朝食が並び、
ベランダには真っ白なスーツが整列している。
「おう、起きたか」
廊下から出てきたのは、
旦那である上条当麻だ。
エプロン姿である。
ぬっふぁぁぁぁあああああああ!!!!
カッコイイイイイイイイイイイイ!!
「どしたん? ポカンとして」
「…………べ、別ににゃんでもないし」
全力で飛び付こうとしたなんて言えない。
「お腹の子に悪いから、跳んだり跳ねたりするなよ」
「わ、わかってるから!! 心を読まないでよ!!」
「…………図星かよ」
「……ぁぅ」
顔が真っ赤になったのがわかる。
ヤツは、温かい笑みで頭を撫でてきた。
やめんか!! 全身赤くなるわ!!
「そ、そんなことよりどうしたのよ!!」
「ん?」
「なんで家事を当麻がしてんの?」
今日の父の日は、当麻をゆっくりさせてあげたかったのに。
あれ?当麻がニヤニヤしている。
さらに引っ張られてソファに座らされた。
「さて問題、なぜオレは頑張ったでしょうか? ヒントは父の日」
???
「わ、わからないなぁ……いつまで撫でるの?」
「だめ、考えてください。あと満足するまで撫でる」
「うーん…………、家事が趣味だから?」
「嫌いじゃないけど違います。外れたのでペナルティー、ギューっとさせていただきます」
「きゃっ!! ……ペナルティーになってないし、お腹の子に悪いかもしれないから手加減しなさいよ?」
「わかってますって。はぁ~抱き心地最高」
「…………自分の好物食べたかったから?」
「ハズレ。じゃ、ペナルティーでホッペチュー」
「んっ♥ …………だからペナルティーじゃないじゃん」
「いいのいいの」
「うーん…………まさか、また別の女とイチャイチャしたおわびか? おんどりゃ」
「あれ? このムードでそうなんの!!? オレには美琴しかいないってのに、 証拠にペナルティーの耳ハムッ」
「いやっ♥ ……もうっ、証拠もペナルティーも関係ないじゃない」
「次間違えたら、唇奪っちゃいます」
「(ま、間違っちゃおうかな//////////)ん~、甘える時間が欲しかったから?」
「ピンポンピンポーン!! 大正解!!」
「え? ホント??」
「ホントホント」
なぜ? 突然?
「あと数ヵ月で子供生まれるだろ? だからさ 」
ギューッ、とわたしを抱く力が強くなった。
「いまのうちに、少しでも長く美琴を独り占めしとこうと思ってさ」
なるほどね。
こっちのセリフだバカヤローーーーーーーーー!!
「どんな子に育つかな」
「アンタに似るなら無鉄砲でモテまくりね」
「モテた覚えはねーし、そんな危険なことはさせねー。お前に似たら……」
「似たら?」
「いや、きちんと躾はしないとな、と」
「なにおう!!」