とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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海外出張




その日、上条当麻(28)は絶体絶命の窮地にあった!!

7月5日。
フィンランドの夜は明るい。
白夜。
沈まぬ大陽が戦場を照らしている。
原野で岩の裏にしゃがみこむのは、上条当麻と土御門元春。
対するは、

「無駄じゃぁ、この空の下、わらわから逃れることかなわぬぞえ」

美女、もとい魔神。
右手でも処理しきれない雷が2人を襲う。
慌てて右手で逸らしつつ、2人は避けた。
さらに走り別の岩影に隠れる。

「はぁ、はぁ、聞いてくれ、土御門」

「どうした、魔神撃破経験者? そろそろ打開策でも思い付いたか?」

その言葉を聞きながら、すでに上条は携帯の画面を土御門に見せていた。
サングラスの裏で、青年の目は驚きに染まる。

「見ろよ、うちの麻琴も大きくなっただろー? かーわいいんだよなぁ」

「なぜに超余裕!!?」

携帯の画面は、彼の嫁と愛娘が一緒に写っている写真。
背景には、笹に吊るしてある色とりどりの短冊が写り込んでいる。
いや、知らんがな。

「状況わかっとんのかいワレェ!! ほぼ毎日ノロケられてすっげー不愉快だというのに、シリアスでも逃れられないのかにゃー!!?」

「生きて帰ったら、週末一緒に麻琴を愛でような。あ、手出したら殺すよ」

「死亡フラグに勝手に巻き込むんじゃねーぜよ!! 戻ったとしても死亡フラグだし!!」

その瞬間2人は跳ぶ。
後ろにあった岩が木端微塵に砕けた。

「っふー!! 危ねぇ…………ん?」

上条は手元の携帯から視線を動かさない。
めちゃんこかわいい天使(麻琴)と、史上最も美しい女神(美琴)の後方。
笹に吊るされている短冊。
そこに記されている文字は…………。

『パパがはやくかえってきますように まこと』

魔神は目を細めた。
雄叫びをあげながら駆けてきたのは幻想殺し。
ヤツの味方が制止する声も聞こえる。

「ほう、無策に突っ込んでくるか!! オティヌスを下し、僧正を魅了したその力をわた「げ ん こ ろ !!」へ? ペルケレっ!!」

魔神が、とんだ。
背中から着地。白目までむいてる。
その様をスローモーションで見た土御門は大混乱だ。

「え? えーーー!!? 1発ーー!!? 魔神だよ?」

「よし」

「いつもの説教は? 僧正を理解できなかったっていう後悔は!!?」

土御門が標準語で突っこみを入れるなか、魔神がピクリッと動く。
あ、上半身は起き上がれたよ。
めっちゃ戸惑ってるよ魔神さん。

「そこらへんの下りはまた今度な!! いまちょっと急いでるから!!」

そういって、走り出すツンツン頭。
魔神はついに体育座りで泣き出した。

「待つぜよ!! この魔神どうすんの!!? おーーい!!」




7月6日。
あと数分もすれば日付が変わ頃、
上条家には、まだ明かりが灯っている。
寝室で麻琴を寝かしつけた美琴は、来月末までに提出しなければならないレポートに取り組んでいる。

「う、う~~」

美琴、ぐぐっと背伸び。

自己主張の激しいお胸様に、諸君はひざまずきたまえ!!
んでもって、ここまで育て上げた上条を賛美せよ。

と、ここで玄関から物音。
警戒しつつ向かうと、見慣れた人物がいた。

「当麻!!? どうしたの? 帰りは金曜って言ってたじゃない!!?」

駆け寄ろうとして、止まる。
汗まで流れた。

「ほんとどうしたの??」

目の前の愛しの人は満身創痍だった。

「魔神との戦いは無傷だったんだけどさ」

「へー」

「ヒッチハイクで捕まえたのがオリアナでさ、事件に巻き込まれて」

「ふむ」

「ようやく飛行機に乗ったらテロに巻き込まれて」

「ふむふむ」

「ようやく解決したら、学園都市で新レベル5とかいうやつが暴れてて」

「うんうん」

「警備員に預けてここまで来る直前で魔術師×20と鉢合わせしました」

「さっすがー」

「…………」

「ごめんごめん!! ほらー、こっちおいでー!! 手当てしてあげるから!!」

リビングに連れていき、救急箱を取り出す。
旦那は治療される際の定位置、ソファに鎮座した。
テキパキと治療する美琴。

(おっ、今日は軽傷ばっかりね)

傷の程度を把握できることも、
傷の手当てがプロ顔負けになっているのも、
2人が共にいる時間が長い証拠。
さらに、一番の証が現れた。


「う~、ん?……あー!! パパー!!」

自分の体より大きいゲコ太を抱えた、寝巻姿の麻琴。
目を擦りながら登場したが、父親の姿にテンションMaxである。
丁度手当てが終わったパパは走り寄り、抱き上げた。

「麻琴~~!! 明日も幼稚園だろ? まだ寝てなきゃダメだろー」

説得力皆無。
顔デレッデレなんだもん。
美琴も苦笑してため息を出す。
親バカは顔面崩壊のまま話しかけた。

「パパがはやく帰ってきてほしいって、短冊に書いただろ?」

織姫たちに頼まれたから速く帰ってきたぞー、と話す旦那に吹き出す嫁。
娘は、ぱぁっ!! と顔を輝かせる。
父も、にかーっ!!と顔をほころばせる。

「ふーん。じゃ、まことねむるねー」

「……………………うん、そだなー」

しょぼーん、
と落ち込みながら娘を下ろす当麻。
さっき寝ろっていっただろ、お前。
父親の哀愁なんてどこ吹く風、麻琴はママに向き直る。

「よかったねー、ママ!!」

「ん? なにがかな、麻琴ちゃん」

しゃがみこみ、目線を娘に合わせるママ。
娘は、ものっすごくいい笑顔で話す。

「だってね、ママね、ずーっとね、パパがね、いなくてね、さみしいってね、いうんだもん」

「え?」

麻琴いわく、毎日毎日言ってたらしい。
口癖にまでなってたようである。
ふとしたときに、

『あーあ、パパいなくて寂しいな』

といい、
食事のときも

『いただきます。パパいなくて寂しいね』

といい、
幼稚園のお迎えの時も

『今日も暑かったねー、パパいなくて寂しいしねー』

といい、
寝てるときも

『う~、ぐすっ、当麻~~、寂しいよ~ぐすっ、ひぐっ』

と言っていたそうだ。
因みに海外出張に出たのは7月2日のことである。

「だからね、パパはね、わたしよりもね、ママとね、あそんであげてね!!」

真っ赤な顔の母親を眼中に入れず、父親にのたまう麻琴。
そのまま元気に挨拶して寝室に向かった。
お利口さんである。
残された夫婦はしばし沈黙。
先に言葉を発したのは当麻だった。

「…………ママ」

「イヤ」

「まだ何も言ってないでしょーが」

見ると、美琴は麻琴に視線を合わせた状態で固まっている。
真っ赤だ。

「みこっちゃーん」

「…………」

「みこにゃーん」

「…………」

ため息を吐く。
正面にまわって、先程美琴本人が麻琴したように、視線を合わせた。

「ぅ~~~~」//////////

赤面の半泣きである。
ふむ、といった当麻は美琴の後ろに回り、腰を抱えて持ち上げた。
美琴は頑なに しゃがんだ体勢を維持している。
夫は妻の耳元で囁いた。

「…………美琴」

ビクンッ、と美琴が震える。

「抱くぞ」

「ふにゃぁ」///////

そのまま寝室に消え行く夫婦。
さながら織姫と彦星である。
7月7日の念願の逢瀬は、それはそれは熱帯夜だったそうだ。





だから当麻は天帝(上司である旅掛)から1週間出張追加されても仕方ないと思うのだが、
皆さんはどう思いますか?










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