とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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第2部 第09話 第二章(3)


8月12日(水)

日中まだ暑いが、今朝はさわやかさすら感じるすがすがしい朝だ。
熱帯夜も解消し、23度そこそこで初秋の雰囲気すら感じる。
私はちょっと気分がいいので空中散歩を試みる。

磁力とプラズマ流体力学を応用した、空中浮遊で約10キロを1分ほどで移動し、操車場の
被害状況を確認する。

一方通行が、ベクトル操作で大量の鉄骨をばらまいた以外は、被害はさほどない。
昨日、自分は極力戦いを回避し、当麻を全面に立てたのは、被害を最小にすることも
あったのだから。被害状況を確認し、自宅へ戻る。

それにしても当麻は大物だ、あれほどの騒動があったのにまだ眠っている。
頼りになる婚約者。だけどな・・一方通行の反射さえ無効にする右手を持っているのに、
あっさり麻酔銃で拘束されるなんて・・。アンバランスすぎる。

だけどな・・もうそろそろ自分の過去にけりをつけるか・・・。
このままでは安心して当麻と付き合うことができない。
私は自分らしくもなく内心はためらっていた、過去の問題に体面することを決める。

「当麻おはよう」
私は声をかける。珍しく今日は起きて食事を作っていた。
(へえもう起きているのね・・どうゆう風のふきまわし?)
「美琴に迷惑をかけたから、飯くらいさっさと作ろうと思ってな」
「とんでもない。私が自分の過去にけりをつけないからこんな問題がおこる」
当麻は、しゃべりながら手際よく食事をセッテイングする。
今日は、焼き魚と小松菜の和え物、かぶの白味噌汁をベースにした和食。
小皿の冷やしトマトとキュウリが色合いを飾る。

「できたぞ美琴食事食べよう」
「ええ」
そしてひととおり食事を終え、食器乾燥機に食器を入れ会話を始める。

「当麻、どうやって拘束されたの?」
「俺がコンビニで雑誌を買おうと外出したときに、銃で撃たれたそのあとで急に
 睡魔に襲われたから多分麻酔銃だと思う」
「当麻の前兆の感知てそうゆう場合には感知しないの?」
「前兆の感知て・・そんな便利な能力あるわけないだろう。俺は右手以外は、ただの
 高校生だぞ」

「当麻の普通は普通じゃないと思うけどな、だって一方通行の攻撃は
                      動きを読んでいたじゃない?」
「あいつは動きが単調だからかわしやすいじゃない。だからなんとかなる。」
「すごいわね。一方通行の音速攻撃をかわすなんて普通じゃできないわよ
 レーダーもないのにね。それって多分AIM拡散力場の揺らぎを、当麻の脳が感知できるから
 だと思うわ。」

「AIM拡散力場の揺らぎ?」
「ええ・・、当麻の右手は異能以外の攻撃には無力なんでしょ。多分それは発動にAIM拡散力場
 が関与する現象を当麻の右手が感知できるからでしょうね」
「美琴て大学教授みたいだな。そんな話は誰も教えてくれなかった。」

「私は研究者だからね。当麻の右手も立派な観測対象よ。それに私を守れるのは
 当麻だけだから真剣に観察するわ」
「美琴を守るなんて、ミッション・インパッセブルだな・・」
「他の人には頼めないわよ。当麻だけが頼りよ。お願いね」 

「で今日は、どうする」
「私を超荷電粒子砲にした張本人に一緒に会いましょう」
「え?」
「今回の一方通行襲撃事件の張本人よ」
「それって」
「当麻もよく知っている人よ あえばわかるわ」
美琴はスマートフォンを取り出し、連絡する。

「もしもし、御坂です。業務開始前にお時間をいただけませんか?」
「ああわかった。で上条君も一緒か?」
「はい。」
「では11時でいいかな」


「はい」
美琴はがざごそ、クローゼットを漁り、土曜日に量販店で買った
黒の上下の男物と女物のスーツを出し、ハンガーに掛ける。
「じゃ・・9時に出ましょ。」
「早いな。今日は飛ばないのか」

「たまにはタクシーでいいじゃないの。型崩れしたら困るし」
当麻には、美琴がスーツを持ち出した理由がよく理解できない。
美琴の性格なら、落とし前をつける以上スーツなんて動きにくい恰好をする
理由がよくわからない。だけど瞬間湯沸かし器な性格な割には用意周到な
美琴は理由もなく、こんな格好をさせるはずもない。

(まあいいか・・美琴のことだしなんかわけがあるんだろう。)
美琴は風呂を入れ、2人で入るように手招きをする。

ちょっと前まで、女の子と一緒に風呂に入るというシチュエーションなんて想像も
しないイベントだが、人間の適応力は驚くべきで、発育途上だが、引き締まった
ボディの触りたくなるほど、贅肉のない引き締まった体も当然のように受け入れる
自分が恐ろしい。

とはいえ狭いバスタブで、想い人と入浴すれば、当然反応すべきところは反応し、熱
膨張を始めるのは世のならいで、いろいろやばい。
そんな甘美なひとときは美琴は、残酷な一言で終わる。

美琴は優しい性格だが仕事とか時間には厳しいのでいちゃいしゃしたくても
時間にない時はドライに終わらせる。
当麻から見て美琴のそうゆう大人なところは嫌いではなくむしろ好きな要素ではある。
「当麻、今はやらないわよ」
「ああ。9時に外出するからな」
「じゃ・準備しよう」

2人は風呂を出て短時間に身支度を済ます。美琴は上下黒のスーツに白のブラウス
当麻は白のワイシャツに赤のネックタイその上に上下黒のスーツに身を包む。
美琴が手配したタクシーがエントランスに到着したというメールが届いたので
2人で施錠し外出する。

 ・・タクシーの中・・・
美琴は一言もしゃべらず目をつぶりながら思考を重ねる。
当麻はそんなただならぬ美琴を不安そうに見ている。

美琴は何度も反問したことを再度問い直す。
(もしも、自分が自分にとって許しがたいをしていても
               自分はそれを許すことができるか?)

正直無視すればよかったのか知れない。それを知ったところで自分は
しでかしたであろう事実は変えようがない。

だけど心の完全な制御を前提とする私が、過去の過ちに蓋をして先へ
進むことなんてできるのか?

それに婚約者がいる以上自分の過去の過ちを済ますことなんてできやしない。
どんなにそれがつらかろうとも、私は過去の過ちに向き合い、前に進む
しかないのだから。それに今の私はひとりじゃない。
誰よりも強い心をもち、私をだれよりも愛してくれる彼がいるのだから。
(そうは私はひとりじゃない。)

私は目を開け、当麻の右手を左手で握る。
暖かい彼の右手は私の力を与える。
その心地よさが私に勇気を与える。

私は腹を込め現実に立ち向かう覚悟を決める。
それはなんの根拠もないかもしれない。
でも当麻と一緒ならどんな理不尽も耐えられそうな気がするのだ。
それを人は根拠のない楽観論というかもしれない。
だけど自分にとってはなにより確実な自分だけの現実なんだから。

さあ過去に向き合うのよ。御坂美琴。
私は未来への希望と過去への不安で揺れ動く心を当麻への信頼で包み
所長室という名の戦場を向かう。

木原幻生 SYSTEM実現のためには手段を選ばない、木原一族の長老
そして人間兵器御坂美琴の開発責任者。


学園都市の光と影を生み出した、化け物 それが私の相手だ。

 ・・・・・・
私は、かよいなれた研究所の所長室へ向かう。
所長といつもまにか入れ替わっていた木原幻生に会うためだ。
それにしても・・木原幻生は、私が構築したあらゆる認証システムを潜り抜け、
完全に所長になり替わっていた。

ありえないだろう? 指紋、脳波、DNA、網膜、9桁のワンタイムパスワード
約10万台のナノ監視マシン。開発者の私以外にこのセキュリティを突破できる人間
などいないはずだ。

なのに生体電流や脳波すら観測できる私の目を完全に欺き、何食わぬ顔で完全
になり替わっていた。その恐るべき手際に戦慄する。食蜂がミスをしなければ
気がつかなかった。

その恐るべき人物に対面するのに私は恐怖心を感じないで済むのもすべて
当麻のおかげだ。もしも当麻と手をつないでなければ恐怖で身がすくむかも
しれない。

当麻とドアの前に並びノックをして入室する。
「木原幻生先生 御坂美琴です入室します。」
「入りたまえ」

「さすがだねよく気がついた」
「正直気がつきませんでした。今日なんとなく気がつきました。」
「なんとなくか、はは・・そうゆうことにしておこう。それで用件は何かな」
「私の過去を返してくれませんか?2007年8月にとんだ私の記憶を」
「御坂君は等価交換という言葉を知っているな」
「力を得る以上それ相応の対価を払えと?」

「理解が早くて助かる」
「私が最初のレベル6になるためにはそれ相応の対価を払えと?」
「最初のレベル6?そんなものは単なる通過点だ。」
私は木原幻生の以外な言葉に動揺する。

学園都市の180万、特にレベル4以上の高位能力者にとって、甘美な響きを持つ最初の絶対能力者という言葉。それを絶対能力者進化実験の提唱者が紙くずのように吐き捨てることに私は衝撃を受ける。

「なぜならそれはすでに御坂君が一度到達済みだからだ。」
「え?」
「あらゆる観測結果が、御坂君が2007年8月31日にレベル6
                 になったことを示している」
「つまり封印とは私のレベル6能力の事ですか?」

「御坂君は自分をどう捉えている?」
「1000兆KWの発電能力をベースに電子とプラズマが引き起こすあらゆる現象を再現できる
  最高の電子操作系能力者で学園都市1位」
「まあ・・そうだな。だがそれは御坂君の本当の能力の一部にしか過ぎない」
「それは・・」
所長は淡々と2007年8月の真実を語り始めた。

御坂美琴は元々はレベル1の微弱な能力者にしかすぎなかった。
だが、素養格付けでレベル5になる可能性が明示され、かつ本人が貪欲に開発に努めた
事もあり、異例のバックアップ態勢が取られ急速に進捗した。

さらに確実にレベル5にするために、VRによる戦闘実験が行われ、模擬戦闘で
能力を急速に高めた。多量の薬剤も投入し、脳の強度を高めた。

小5の春にレベル5の3位になり、予想以上の成果を示した。
卓越した電子操作能力、抜群の応用力、一人で電子戦で国家を機能不全に
陥れるほどのサイバー攻撃能力。教育成果としてもてはやされ、学園都市の
広報紙にも取り上げられた。万事が順風満帆だった。

だが小6の8月21日にたまたまであった一方通行は彼女の自信を吹き飛ばした。

彼女の自慢の攻撃は一切通じず、ただ逃げ回るだけだった。超電磁砲は反射され
10億ボルトの電撃も、砂鉄磁気嵐も、高層ビルをぶつけても、酸素をO3に換え呼吸をふさいでも何もかもが通じない。一方通行は反射するだけで一切の攻撃をしのぎ切った。
彼は一通り攻撃をさせ、しのぎ切った後、舐めるような視線を美琴にむけ虫けらの
ように何もしゃべらずに去った。


御坂美琴はいままで築いてきた何もかもが、崩壊する音を聞いた。
努力は通じなかった。才能のない物は所詮は才能のあるものにかなわない。
彼女の心は大きな喪失感に襲われた。そして彼女の自分だけの現実は1度死んだ。

だが。。その喪失、自分だけの現実の死は彼女の何かを変えた。
彼女の中の眠れる何かが、彼女を食い尽くし表面へ現れた。
彼女のかわいらしい容姿は、変容をとげ御坂美琴とは言えない何かへ変容した。

彼女は、電子戦能力を使い、書庫を乗っ取り、ツリーダイアグラムを乗っ取り
強大な演算能力を手に入れ、さらに軍事クラウドを乗っ取った。

そして、彼女は学園都市に充満するAIM拡散力場を吸収し、さらに姿を変容させた。
本来ならレベル6の53%で失われるはずの彼女の自分だけの現実は、ツリーダイアグラムで
補強され、PHASE5.3になってもさらに膨張を続けた。
学園都市は対策に動き彼女を攻撃する。だが11次元に及ぶ彼女の反射膜には阻まれ攻撃は
一切通じない。彼女の体全体が眩い光を放つ。

そして8月31日ついに異変は起きた。
御坂美琴は、学園都市180万人全員のAIM拡散力場を吸収しつくし、レベル6になった。
そして・・学園都市は1度消滅した。
ここで木原幻生はコップの水をとり話を切った

「正直な話学園都市いや世界が崩壊する事なら大した問題ではない・今の御坂君でも超荷電粒
 子砲を放てばすぐに実現する話だ。
 問題は崩壊したはずの、学園都市いや世界が何事もなく、すべて復活した事だ。そして暴発
 したはずの御坂美琴は、超荷電粒子砲と1000兆kWの莫大な発電能力それに伴う
 電子・プラズマ操作能力以外のレベル6としてのすべての能力を失った。」

「そんな都合のいい話が?」
「すべてが御坂美琴にとって都合がよく世界が変えられたわけだ」
「まるで神サマみたいですね。とても自分にそんなことができたなんて思えないですね」
美琴は安堵する。自分は今の地位を得るためになにひとつ失うことはなかった。
「御坂君は安堵したようだが、もし封印を解けばどうなるかな?」

「それは・・」
「誰にもわからない。もちろん君もだ」
「だから君が暴走しないように君を抑えられる存在が必要だとは思わないか?」
「はあ・・」
当麻は話がでか過ぎてただ口を開けて聞いているだけ状態だ。
愛する美琴が、世界を一度滅ぼし再生したなんて理解ができない話だ。
木原幻生はさらに話を続ける。
「御坂君は上条君を買っているようだけど、それは一方通行君より適切だと証明
 できるかな」

「それは・・・先生もご存じのとおり彼は一方通行に勝っています」
「ああそうだな。だがそれは1位である君がほぼ筋書きを書き、しかも協力した
 うえの話だ。
 君が一方通行の攻撃を封じているんだから、上条君がピンで一方通行に
 勝った証明にはならないだろう。」

「ええ確かに。それで先生は私と当麻に何を要求するのですが?」
「上条君と一方通行君と差しで勝負すること。そして上条君が勝って力
 証明すること。日時は明日8月13日20時30分場所は操車場」
「それでもし当麻が負ければ・・」
「そして御坂君と一方通行君がさしで勝負することなるな・・」

「仕方ないですね。どうせ理事会も承認済みですよね 」
「ああ・・君たちに逃げ場はない」
「上条君、そうゆうわけだ 御坂君に意にそわない戦いをさせたくなければ
 戦うしかないがいいかね?」
 当麻は美琴の身に降りかかった過酷な運命を自分が変えると決意し、木原幻生に
 承諾の意を伝える。

 ・・・・・・

8月12日 夜 自宅
「当麻、悪いわね。大変な事に巻き込んで」
「美琴が困っているんだ、なんだってやるよ」
「ふふ頼もしいわね、でも・・一方通行は強いわよ」
「へえ?瞬殺した美琴がよく言うよ」
「2人ならね。最強の盾と鉾、一方通行には相性はいいわね でも
 当麻だけでは、どうだろうね」
「そうなのか・・?」
「大丈夫よ。一方通行は私に負けたとしかおもっていないから。
 だから十分勝機はある。」
「あ・ああそうだな」
上条は美琴との力の差を思い出す。圧倒的な力。あっというまに腕を切断された過去・・
「美琴は一方通行に差しで勝てるよな」
「エエ、殺す気なら、瞬殺。だけどこの街では無理かな。勝てなくはないけど時間が
 かかるわよ。反射があるから」
「そうか・・」
「当麻は反射を無効にできる。だから多分何とかなる。」
「美琴胸を貸してくれないか?」
「模擬戦ね。いいわよ でも・・今日は寝ましょ。」
「ああ・・」
2人はベットに入り、互いをむさぼり始める。
「今晩は短めにね。」
「ああ」
戦闘前の高揚感が2人に歯止めをかけない。
私は70億人を殺し復活させた。
衝撃の過去が自分の心を打ちのめす。
だけと、もう私は過ちを犯さない。
当麻とともにあるならどんな困難にも立ち向かえる。
そんな気がした。

続く










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