とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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匿名ユーザー

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第2部 第12話 第二章(6)


8月15日 (土) 5時30分

私が着信拒否をした結果、一方通行奪還部隊の代役はアイテムに決まったらしい。
監視カメラの映像で事実として確認する。

学園都市4位の麦野沈利を中心とする女性だけの暗部。
巡洋艦の装甲を一発で貫通する粒機波形高速砲を放つ麦野を
AIMストーカの滝壺がサポートし、強大な破壊力を持つ統括理事長直属の
暗部組織のひとつであるアイテム。

構成員は他に爆発物のプロであるレベル4のフレンダ、同じく
レベル4で窒素装甲を有する
絹旗の計4名と統括理事会のマル秘ファイルには記載されている。

今回スキルアウトは、強力なキャパシティダウンを使用しており、能力者は半径1km以内
は正常に能力を発揮できない。脳へ直接音波を送る改良型のために耳せん程度では防ぐ
ことはできない。

麦野が粒機波形高速砲を連射し、複数の遮蔽物を突き破り
キャパシティダウンを破壊するのが上策だが、監視カメラの画像を見る限り
キャパシティダウンに一方通行が縛られており、
攻撃すると人質の命が失われる危険があり麦野は簡単には行動できない。

これは長引くな・・・
私は、麦茶を飲みながら嘆息する。余り体力があるとは言えない一方通行の体調も不安だ。
自分がキャパシティダウンを壊しにいけば簡単に終わるが、暗部の仕事を奪うと後が面倒だ。
( 先に風呂でも入るか )
私は浴槽に41度に設定した温水を入れ始める。
少し気が緩み思考が柔軟になった時にふっと気がつく。

(あれは木原・L・テレスティーナ謹製よね。キャパシティダウンの遠隔操作ソフトが
 どこかにあるんじゃないのかしら?)
私は研究所のクラウドにアクセスし、キャパシティダウンを解析するために入手
したOSを解析する。幾重にもロックのかかった領域を能力で解析し、遠隔強制停止
ソフトとキャパシティダウンと交信する周波数の情報を入手する。

私は遠隔強制停止ソフトを起動し、研究所のアンテナから停止信号を送る。
もくろみどおりキャパシティダウンは停止する。
(さあ・・ボランティアは終わり。麦野さん頑張って・・)

さあ風呂だ。気が付けば41度の温水はほぼ満水状態。
手を伸ばし、疲れをとる。疲れ知らずの体が悲鳴を上げている。
(それにしてもな・・)
ここんところ凡ミスが多い。昔経営学の本で読んだハインリッヒの法則を思い出す。
「1つの重大な事故の背後には29件の軽微な事故があり、その背景には300件の異常がある。」
こうゆう軽微な事故が重なるのはやばい。そのうち重大な事故を引き起こしそうだ。

私は41度の湯につかりながら瞑想する。事件の背景を心を無にして瞑想する。
何点が疑問点が浮かぶが明確な像を結ばない。
(まだ情報不足か・・もう少し情報を入手するか)

私はモニターに目を移し戦況をうかがう。

麦野の粒機波形高速砲が数十人はいた銃器やアタッチメントで武装した首謀者達を
粉砕する。スキルアウトは自動小銃でアイテムに抵抗するが、フレンダは陶器爆弾と
会話で翻弄し、しだいに追い詰められ、そこを絹旗の怪力で金属製の重量物を放り投げ
逃げ惑う。最後は麦野の原子崩し(粒機波形高速砲)が戦意を削ぎ、投降を始める。

麦野は首謀者らしき人物へ迫るが、突然地下室から現れたモデルケース・ファイブ・オーバ
レイルガンの一斉射撃を食らう。麦野の除く3名は慌てて床に伏せなんとかしのぐ。
麦野は原子崩しを反射板を使い乱射し盾にする。絹旗が搬送機械を投げつけ
麦野を補助する。そのわずかな時間を利用し、態勢を立て直し特大の原子崩しが
ファイブ・オーバに突き刺さり、射撃を停止する。

そして多少もたもたはしたが制圧は完了する。なぜか型遅れの
モデルケースファイブ・オーバレイルガンが1台あったのが
気に障るがそれはあとで調べよう。
(まあ当然よね...ただあっけなさすぎるわね)
一方通行が解放されたことを確認し、モニターを切る。

表面的にはあっさり事件は解決したようだが、
なんともいえない違和感が
心の中でわだかまりとして残り続ける。
一体何だったんだ?まあいい今日のところは解決したんだから。


私は、この時点ではまだ、この件の本質には辿り着いていなかった。
「魔術という巨大な存在」が現実世界を侵蝕しつつあることを。

 ・・・・・・・・・・・

さあ。。
たった2日しか入院していないのに。
あの凛々かった御坂美琴はどこにいったの?

心が寂しい。心が満たされない。無性に当麻を抱きたい。無性に当麻に抱擁されたい。
ちょっと前まで恋なんて心の病とさげすんでいたのは誰?
若干14歳で、学園都市の最先端の研究所で、ファイブ・オーバーシリーズを
はじめとする、最先端の研究チームを引きいる敏腕主任研究者なんて関係ない。

統計学の学習の一環で、常盤台のお嬢さま達のこずかいを元手にそれを
幾何級数的にふくらまし、金融危機のどさくさで、食蜂と共同で、ほとんど
片手間で大財閥に比肩する富を築いたことなんて関係ない。

あの上条当麻のまえでは、私はただの恋する乙女にしかすぎない。
それは、当麻が世界の基準点たるなぞの右手を持っているから?
それは、当麻が神をも殺す八龍の力を持っているから?

私は心の中で叫ぶ
「そんなの関係ない」
裸が売りの芸能人の決め台詞を頭に思い浮かべ、私再度言う。
「そんなの関係ない。]

私は当麻のまっすぐな、何者にもとらわれない。何者も恐れない、
まっすぐな、ぶれない心に惹かれたのだ。
だから・・私は決心する。何があっても、何よりも当麻とともに
生きぬくことを優先すると。

さあ御坂美琴 当麻を迎えにいくわよ。
.........
AM 9:00

当麻の病室は綺麗に整理され、退院準備は整っている。
冥土帰しの医師の腕は確かで、当麻の骨折や傷はほぼ回復している。

「当麻、迷惑かけたわね。もう2度と当麻をケガさせない」
「美琴は気にしすぎだぞ。悪りいのは頭に血が上った一方通行だ。
 だけど・・美琴はすごいな。あの火球を消したんだからな・・」
「もしもプラズマ火球を消さなけば、学園都市は10万単位で死者が出た。
 人工密集地で戦術核兵器に匹敵する出力で、たかが喧嘩で当麻に叩きつける
 無謀さに怒りを通り越して、殺意すら覚えたわ。だから消した。」

「あれはそんなにやばかったのか?」
「ええ。あの時点で広島型の原爆の10%ほどの威力はあった。
 TNT火薬1キロトンの威力になるわね。
 多分火球が地面に到達するころには広島型原爆並みになったわね」
「一方通行はやばいな。ようは目的のためには手段を選ばずか」
「ええ・・しかも精神と能力のバランスがとれていない。彼は子供よ。
         でもその子供は世界を滅ぼしえる力を持っている。」
「そうだな。」

「私はこの問題をうやむやにはしない。」
「力を持つものはそれに伴う責任がある。一方通行だって例外ではない。
 いえ強大な力を持つ彼だからより責任は大きいわ」
「ああ・・そうだな」
「そしてそんな彼を甘やかし、スポイルした開発者の責任だって私は問うわよ」

当麻は何かに目覚めたような美琴の変貌ぶりに目を見張る。
自分の衝撃の過去を知り、吹っ切れたようだ。美琴にいままでにない
オーラを感じる。美琴は淡々と話し続ける。

「その道は険しいし、敵は多い。私はそのために命だって失うかもしれない。
 だけど、誰かが止めないと学園都市は・・このままではうまくいかない。
 きっとダメになる。学園都市1位の私にはその方向を少しでもましな方向に
 変える責務があるんじゃないかな。そう思っている。」

「美琴・・」
感情がこらえきれなくなったのだろうか。
美琴の瞼からボロボロと涙があふれでている
当麻には信じられない。あの勝気で快活な美琴が
儚げな表情を浮かべているのが。

強大な力と財力、卓抜した頭脳、
神に寵愛された少女がただの可憐な年相応の


少女にしか見えない。いつも生気と自信にみちあふれた天才少女の面影はどこにもない。
年齢の割には大きいはずの身長161cmの美琴が今日は小さく見える。
当麻は心の中でつぶやく。
(美琴てこんな華奢だったのか?)

普段は勝気な口調と、強大な能力が覆い隠しているが、こんな可憐な美少女が
学園都市の230万人の頂点に君臨する化け物なんて今は誰が想像できよう。
いったん力を振るえば世界さえ崩壊させ、そして再生できるほどの。

だけど、上条当麻は目のまえの運命の打ちひしがれる少女を放置なんてできない。
上条当麻は、美琴を見つめ、言葉を紡ぎだす。


「俺には美琴の抱えている難しい問題は正直理解できない。だけど、いくら
 力があろうとも、簡単にはそれを行使しない、人を殺さない美琴の覚悟はよくわかって
 いる。だから一緒に無理せずやれるところから少しづつやろう。
 俺は美琴を信じるし、どこまでもついていく」

当麻は、立ち上がり、美琴を優しく抱擁し、接吻する。
「美琴、俺は地獄の底までお前についていく。だから美琴は自分の好きな道を歩めば
 いい」
美琴は涙をぬぐい、当麻をみつめなおす。涙が鼻に入ったのだろうか
少々鼻声になりつつも言葉を発する。
「当麻ありがとう。今の私には、当麻だけが心の支えよ」

美琴は素早く心理的な再建を果たし、いつもの勝気で精彩にあふれた表情を取り戻す。
「じゃ当麻 そろそろでよう。会計は自動精算機で済ましているわ 
 今タクシーを呼ぶわね」
美琴はタクシーの配信サービスで手配を終え、到着時間を確認する。
「後5分くらいだから、もうでましょう」
「ああ」
2人は荷物をまとめ、エントランスへ向かう。
すでにタクシーはエントランス前のロータリーに停車し、乗車を待っている。

当麻は美琴の頭の回転の速さと日常生活での手際のよさに感心している。
万事そつなく無駄がない。当麻が普段あたふたやっている作業が流れ作業にように
何事もなく終わる。自分の不幸は、結局は自分の要領の悪さにも起因していることを
いやでも悟らざろう得ない。

宿題を後回しにしない。面倒くさいことを先にやる。わからないことはわからないと
はっきりさせ、とことん調べる。美琴は年下だが、学生として社会人として優れた
素質を持っている。

自分は甘えていた。自分はいつも不幸と嘆くだけで、なぞの右手を有することを
理由に、日常の努力を怠っていた。
美琴と自分を比べる。彼女は元々、幻想殺しという強大な才能のない、ただの
レベル1だった。

彼女は自分の才能のなさに打ちひしがれこともなく素直に自分の足らないものを、たゆみ
のない学習と、鍛錬で獲得し、ついにレベル5に上り詰めた。
その努力が、大きな事件を引き起こすが、結果的に才能のないはずの彼女は頂点へ上った。
当麻は心の中で誓う。
(もう不幸だ・・なんて自分を茶化すことはやめよう。)

 ・・・・・・・・

タクシーの後部座席で、美琴に密着しながら、当麻はすっかり、自信を取り戻し
眩いばかりのオーラを放つ美琴の横顔を眺める。
機嫌もよさそうだし。あの不幸な美少年を助けたい。
いまなら大丈夫だ。当麻はそう判断し、発言する。

「美琴 一方通行はどうなる?」
「さあ統括理事長しだいだけど、電極は取り外さないかもね」
「ええ?」
「あの凶暴な一方通行へ取り付けた首輪だもん、簡単にははずさないと思うわ」

「美琴・・許してやらないか」
「ごめんで済むならアンチスキルはいらないわよ」
「美琴の言うことはわかる。美琴が簡単に許せない気持ちは分かる
              だけど、一方通行は所詮は駒だろう?」
「当麻・・どうしたの?」
「いや・・拳を交わして思ったんだが、アイツがそう悪い奴には見えない」
美琴は、少し唖然とするが、当麻の発言の真意を5秒ほど考え苦笑いする。
そして口を開く


「最低限本人の謝罪と誠意がいるわよ」
「分かっている」
「善処はするけど保証はできないわよ。つてを使ってためしてみるわ
  でも本人の謝罪なしにはダメよ」
「ああ俺が一方通行に謝罪させる」
「そう・・まあいいわ。だけど金銭的な補償は別よ。」
「わかった。」

「さあ当麻ついたわ」
2人はタクシーをおり、自宅へ向かう。
「さあ、久しぶりにやろう」
「ああ」
「午後1時にうちでるから、1時間くらいかしら」
美琴は当麻と手をつなぎ、マンションのエントランスへ向かう。
(雨降って地固まるか・・当麻ありがとうね。)
2人は新婚さんがひさしぶりに再開したかようにいちゃいちゃしながら、手をつなぎあい
自宅へ入る。
美琴は満足げに寝室へ入り当麻へねだる。
「じゃ 当麻後は頼むわね」

 ・・・・・・

19:30 研究所

「所長、御無事で」
「ああすまん。御坂さんに手間をかけたファイブ・オーバシリーズ・
   ロールアップおめでとう」
「ええ、開発責任者として感無量です」
「後で、竣工記念を行おう。ところで幻生先生は、留置所か?」

「ええ。ですが、保釈手続が終われば釈放されるでしょう 私のほうで
 保釈手続済みです。8月末には釈放されるでしょう」
「御坂さんに朗報がある」
「一方通行の条件つき赦免が決まった」

私は当麻が一方通行を説き伏せ、事件への謝罪と反省の意を示した映像を思い出す。
そしてその映像を見て所長経由で一方通行赦免の根回しをしたのだ。
「条件?」
「御坂さんに訪英後アメリカ合衆国へ訪問してほしい」

「理事会の特命事項ですか?」
「ああそのとおり。理事会の依頼だ。
 実は天井という研究員が妹達の実験データと
 テスタメントのOS及び、一方通行のDNAデータを
 合衆国へ持ち出した。」

「はあ?天井は暗部の監視下にあったのでは?」
「実は統括理事の1名が裏切り、天井とともに訪米した。」
「私がその問題を解決しろと?天井の拘束には
 米国の国家主権の問題がありますが」
「これは合衆国の国家元首とも了解済みだそうだ。」

「米国が学園都市へ要請するなど通常ならありえませんが」
「どうやら合衆国で超能力者による国家転覆計画が進行中らしい」
「なるほど。だから米国は要請したんですね。
           ですが、精神系なら食蜂の専門分野では?」
「食蜂君もあとで合流する。それから何名か支援要員が合流するらしい」

「わかりました。今回は上条当麻を同行させますが、よろしいですか?」
「チームの指揮運用は御坂さんに一任されている。構わないよ。御坂さんが
 いないと閉店休業状態だが、研究所は私が留守番をするよ」

私は、その超能力者が魔術師だとあたりをつける。
私の力だけでは容易には解決できない事態がいよいよ到来したことを確信する。
美琴の頭にとある人物の影が浮かぶ。
米国の影の支配者オーレイ・ブルーシェイク 
世界最大の複合コングロマリットの総帥。世界一の大富豪。
ふう・・アンタを追い落とすなんて
わくわくするわ。

私はこの陰謀がさらなる大きな陰謀の序章にすぎないことをまだ知らない。
そしてその陰謀が何を引き起こすかもまだしらない。
だけど私には確信がある。当麻の大いなる龍の力が大きく世界を変えると。










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